健康生活TOP 虫歯 虫歯予防にフッ素は有効か害か?子供の歯に塗るその前に

虫歯予防にフッ素は有効か害か?子供の歯に塗るその前に

フッ素と言うと虫歯予防と言う言葉が連想されるぐらい一般化しています。一方で、フッ素は毒だから使わない方が良いと言う意見も少なくありません。

推進派・反対派が入り乱れての論戦が長期間続いていますが、果たしてどちらが正しいのでしょう。

特に歯への直接フッ素塗布は、成長期の子供の歯に行うものですから慎重にならざるを得ませんよね。一方で、成長期だからこそ虫歯を予防しなくてはいけないのも事実です。

果たして私たちはフッ素にどう向き合ったらいいのでしょうか。

フッ素にはどの程度の毒性があるのか

口に入れるものの多くには致死量があります。例えば食塩の致死量は体重1kgあたり3.0~3.5gですし、ビタミンCの場合は同じく体重1kgあたり12gくらいです。そりゃまぁ、大人でも塩を200gも一気に食べたら死にそうな気はします。

それに対してフッ化ナトリウムの致死量は成人で5gくらいですから、塩よりは40倍くらい危険ですが、決して猛毒とかいうレベルではありませんね。なぜなら、フッ化ナトリウムはそのまま使うのではなく、うんと薄めて使うものだからです。

まずはフッ素とフッ化物の区分けから

フッ素と言うのは元素の1つで、元素記号はFです。ハロゲンと呼ばれるヨウ素や塩素と同じグループの元素で、その中では最も軽いものです。単体分子は常温で気体ですので、酸素や水素と同じようにF2と言う2原子分子の形を取ります。

フッ素分子は空気よりもわずかに重く、塩素に似た臭いを持ち、そして猛毒です。それどころか、ガラスやプラチナさえ侵してしまうため、事実上保存することもできない物質なのです。

一方、例えばフッ素を含む化合物の1つであるフッ化カルシウムは、自然に産出したものは蛍石と呼ばれて装飾品に使われたり、工業原料になったり、中国医学で咳止めのお薬に使われたりしています。

こうしたフッ素を構造中に持つ化合物は「フッ化物」と言います。私たちが普段「歯にフッ素を塗る」と言っているのは、このフッ化物のことです。

ですのでこれ以降は、元素や単体分子を示す場合は「フッ素」、フッ素を含む物質を示す場合は「フッ化物」で統一するようにします。

実際にフッ化物塗布に使われる薬品の毒性と効果

例えばフッ素含有と書かれた歯磨きペーストと、歯科医院で行われているフッ化物塗布の薬剤では、最低でも9倍の濃度差があります。それだけに、フッ化物塗布は原則として歯科設備のある病医院で歯科医師など有資格者が行う医療になっています。

その結果、フッ化物塗布に使われる薬品のフッ素総量は、思ったよりずっと限定的になるのです。

フッ化物塗布は虫歯を完全に防ぐことはできません。飽くまで虫歯になりにくくするのが目的です。それでもかなりの効果は認められています。

乳歯のむし歯予防として、新潟県の一つの村の全乳幼児を対象に、生後10ヶ月から3歳まで2ヶ月毎に年6回の塗布をおこなった特別な研究があります。

乳歯のむし歯数が平均6.69から2.04本へと69.5%の減少、むし歯が全くない3歳児の割合が17.7%から51.5%に増加し、予想をはるかに超える大きな予防効果が得られました。

これは、診療所にこられなかった幼児にも、全村にわたり家庭訪問までして2ヶ月に1回の塗布を徹底しておこなったものです。

しかし、普通おこなわれている年2回程度の塗布では、むし歯の予防効果は20%程度、やったりやらなかったりではほとんどその効果は期待できないということも知っていなければならないでしょう。

このように、2か月に1回と言う頻度で行うとかなりの効果が期待できるようですね。一方、引用文にもあるように中途半端な塗布では効果が得られません。

中途半端に行うと、リスクだけを負ってベネフィットが得られないということになるので、きちんと処置を受けられないのであれば最初から行わない方が良いでしょう。

このフッ化物塗布に使われる薬剤は、9000ppmの濃度でフッ素を含んでいます。一方、生後10か月の赤ちゃんの適正摂取量は1日当たり0.5mg、許容摂取量は0.7mgです。

このことから逆算すると、塗布する薬剤の適正使用量は約55mg、許容量は約77mgです。この量は、1歳を超えると約77mg/約144mgに増えます。さらに4歳以上では約122mg/244mg、9歳以上になると約222mg/約1110g、中学生以上の大人になるとさらに1.5倍くらいになります。

許容量がミリグラムからグラム単位に上がる9歳以上ならともかく、むずがる赤ちゃんに、この微量のフッ化物を塗布するのは大変な作業ですね。

フッ化物洗口は永久歯の虫歯予防

フッ化物洗口と言うものがあります。フッ化物の入りマウスウォッシュを使って、口の中を洗うと言うものです。濃度や量は、年齢に応じて変えますが、洗口液を口に含んで1分間ブクブクうがい(顔を前に向けたままのうがい)を行います。

家庭で行う場合はフッ素イオン濃度250ppmの市販洗口剤(商品名:ミラノールやオラブリス)を使って毎日行います。幼児の場合は予め真水で練習させ、きちんと全部吐き出せることを確認してから行います。

虫歯予防率は30%~80%ですので、手軽な割には効果的ですね。ただ、乳児や3歳以下の子供には使わせられません。その段階での虫歯予防は歯科医院でのフッ化物塗布と言うことになります。

気になるのはどの程度が口に残って飲み込んでしまうのかと言うことです。

実はお茶にはフッ化物が割合多く含まれているのですが、この洗口剤が口に残る分を実際に測定した結果では、お茶1~1.5杯を飲んだ程度のフッ素が飲み込まれていました。全く問題のない量ですね。

さらにもう一つ、子供の場合練習させたからと言って、完璧に吐き出せるかと言うと保証の限りではありません。そこで、一回分の全量を飲んでしまったとしたらどうなるでしょう。

この場合も、就学前の子供が全量飲んだ場合ですら、急性中毒を起こす量には届きません。もちろん、毎日全量を飲み干し続けたらどうなるかはわかりません。

また、フッ化物洗口を学校でしているのに、家でフッ化物入りの歯磨きを使っても大丈夫かと言う心配をする人もいますが、それについても特に問題は起らない程度の含有量です。

フッ化物洗口とフッ化物入り歯みがき剤の併用は安全性において全く問題なく、学校などの施設でフッ化物洗口を行い、家庭ではフッ化物入り歯みがき剤を使うことが効果的です。

時折、フッ化物洗口の安全性に不安を抱かせる情報が散見されますが、科学的・論理的に根拠のないものです。そもそも、世の中には絶対安全というものは存在せず、人類の知恵として、安全な使用方法があるのであって、フッ化物洗口もそのひとつです。

このフッ化物洗口は、世界保健機構(WHO)はじめ世界的に信頼できる機関、学会等でも推奨しているすぐれた予防法で、フッ化物洗口をはじめむし歯予防のためのフッ化物の応用は世界では常識となっています。

上の引用文を作成した「ひらか歯科医師会」は日本国内で、歯科の大規模コホート研究が行われている秋田県横手市の歯科医師会です。

水道水にフッ化物を入れているところは世界中にある

もともとフッ化物が虫歯を防ぐのではないかと言う研究は、飲み水にフッ化物が多く含まれていた、アメリカのある地域の子供の歯が茶色く斑になる病気の研究から始まりました。

この子供たちの茶色い歯は、健康的には見えませんでしたが、実際には虫歯が普通の子供たちより少なかったのです。この茶色い斑の歯は、飲み水に含まれていたフッ化物が原因でした。

そして、どうやらフッ化物のおかげで虫歯が少ないのではないかという、研究のきっかけになる事実もわかったのです。この地域の上流にはフッ化物でできた鉱脈がありました。

この時の飲料水中のフッ化物濃度は、現在フッ化物添加が行われている水道水の数十倍以上と言う高濃度だったのです。

水道水にフッ化物を入れる理由

一部の国ではフッ化物を水道に入れることを義務付けています。アメリカでも人口の過半数がフッ化物を添加された水道水を供給されています。

日本では昭和の一時期、水道水へのフッ化物添加が京都や三重、沖縄などで行われたことがありますが、現在行われているという情報は見当たりません。

また、厚生労働省の水道水の水質基準項目と基準値を見るとフッ素とその化合物はフッ素換算で0.8mg/L以下となっています。

この値は、アメリカで実施されているフッ化物添加水道水のフッ素濃度0.7~1.2ppmの下限値に近い線です。ですので、あまり有効なフッ化物添加は難しいかもしれませんね。

なぜ多くの地域でフッ化物添加が行われているかと言う理由ですが、例えば乳児の歯に対するフッ化物塗布や、フッ化物洗口などは個人にコスト負担を強いるため、公衆衛生の観点から良くないと言うのがその理由です。

水道水に添加してしまえば、費用負担なしに町中の人の虫歯が予防できると考えたからです、

一方、飲みたくない人にまでフッ化物入りの水道水を供給するのは、選択の自由を奪う行為だとして反対している人も少なくありません。

フッ化物反対派と言っても、飲料水に入れることに対して反対しているのであって、虫歯予防には有効だから歯科医でフッ素塗布を行ってもらったり、フッ素入り歯磨きを使うことを勧めている団体もあります。

また、そもそもフッ素は危険だという考え方をしていて、虫歯予防に関するすべてのフッ素使用に反対するグループも存在しています。

フッ素入り歯磨きに危険はないのか

フッ素入り歯磨きは非常に一般的ですね。国内で販売されている歯磨きの多くに、1000ppm以下の濃度で含まれているそうです。この濃度は薬機法(以前、薬事法と呼ばれた法律)の規定によるものですので、これを超えることはありません。

フッ素入りの歯磨きの適量は大人の場合1cmで、約1gと歯磨きメーカーなどから案内されています。これで1000ppmとすると1mgですので、毎日全量飲み込んだとしても、大人の上限量の1割にしかすぎません。

歯磨きの後吐き出さずに全部飲むのが好きという人はめったにおられないと思いますが、万が一おられた場合でも病気にならないだけの配慮は行われているのです。

フッ素徐放性シーラントの有効性と危険性

シーラントと言うのは軽い虫歯の時に歯を埋める白い樹脂のことです。そのシーラントを子供の第一大臼歯の溝に入れてしまうことで、最も虫歯ができやすい部分を保護するのが子供に対するシーラント処置です。

この樹脂にフッ化物を入れておいて、徐々にフッ化物がしみ出してくるようにしたのがフッ化物徐放性シーラントです。

これについては現在のところ危険性に関する信頼できる情報が見当たりません。また、虫歯の予防効果についても、もともとシーラント自体が予防効果を持っている上、最も虫歯になりやすい歯に施しているので効果のほどが良く判りません。

ですので、シーラントについては医者さんから提案されたときに、フッ化物入りを選ぶかどうかは、歯医者さんの説明をじっくり聞いた上で判断して下さい。

特に学校や幼稚園でフッ化物洗口を行っている場合、そのことや家庭でのフッ素入り歯磨きとの併用に関することも、よく相談してくださいね。

その他の身近なフッ素化合物

私たちのもっとも身近にあるフッ素化合物は、フライパンなどに使われているテフロン樹脂です。これはデュポン社の商標ですので、ポリテトラフロロエチレンと言うべきかもしれませんね。日本語では四フッ化エチレン重合体です。

テフロンは非常に化学的に安定していて、他の物質と反応しませんので、フライパンのものを全部剥がして食べてしまっても、おそらく問題は起こりません。

ただし、350℃以上の高温でフライパンを空焼きするとテフロンが分解する際に有毒なガスが出る場合があります。それでもその毒性はそれほど高いものではないということですね。

身近ではありませんが、電気でお世話になっているのが六フッ化ウランです。原子炉の燃料を作る時に、天然ウランを加工しやすくするために作られる物質です。

なんと天然ウランでは4000℃近い温度まで上げて気化させないと加工できないものが、六フッ化ウランにしてやると湯煎レベルの60℃くらいで気化して濃縮加工できるんです。

フッ素の効果は欲しいけれどフッ素自体に不安もあるという人は、フッ化物洗口かフッ化物入りの市販歯磨きペーストぐらいがちょうど良いかもしれませんね。

フッ素を食事から摂ることはできないのか

フッ素は動物の骨や天然水に含まれています。しかし、特に上流に氷晶石の鉱脈でもない限り高濃度のフッ化物は期待できませんし、もしあったら先に紹介したような歯が茶色の斑になるフッ素症になるかも知れません。

また、フッ素が大量に取れるほど動物の骨を食べるというのは不可能ですね。実は、フッ素を日本人の食事摂取基準の中に入れるかどうかという議論もあったんですよ。結局次のように否決されましたが。

フッ素にはう歯予防機能があることが確定しており、う歯予防の立場からフッ素の食事摂取基準策定を要望する声のあることは事実である。

しかし、う歯予防に効果のあるフッ素の摂取量は、食事からの摂取量を明らかに上回っている。

したがって、う歯予防のためにフッ素の目標量を策定した場合には、食事以外からフッ素を摂取することを奨励することになる。

食事摂取基準は、その呼称が示すように、ごく稀な例外を除き、食事から摂取することを前提とした基準である。

以上より、食事摂取基準にフッ素を含めることについては、見送るのが妥当と判断した。

このように、フッ素の虫歯予防効果を期待するなら、何らかの形で人工的にフッ化物を利用するしかないのです。

今回紹介したような上限量があることを知った上で虫歯予防効果を期待するか、それよりは他の方法で虫歯を防ぐからフッ素は避けて通るかと言うのは皆さんが判断して下さい。

こうした判断を行うことについて、私たち日本人はあまり慣れていないという部分が否定できません。

しかし、まずは肯定否定の両面から「客観的な情報」を集めてみることから始めましょう。

安全性と危険性を主張する論調にはどちらも無理がある

いわゆるフッ素については、推進派が安全性と有効性を強力に押し出すのに対して、反対派が有効性の否定と危険性の主張に躍起になっているという構図が見て取れます。

しかし、子供たちに健康な身体と歯を与えたい親にとって、知りたいのは「使うべきなのか使ってはいけないのか」と言うことだけですよね。

現在のところ、日本では使用推進の方に傾いているとは言え、あくまで使用は個人の判断に委ねられています。そのために、両論併記のような形になりましたが、今回情報を提供するように努力してみたと言うわけです。

最終的には皆さん自身で判断を下して頂きたいのです。そして双方の主張に対して、本論から外れているので無視した方が良いと思われる情報の選び方を書いておきましょう。

フッ素が自然や人体に含まれているからと言って安全とは言えない

フッ化物推進派がよく示す安全性の根拠に、フッ素は人体にも自然にもたくさん存在していると言うことがあります。しかしその事実は安全性の根拠として使うことはできません。

自然に存在するものに毒物がいっぱい存在していることは説明するまでもないですよね。ましてやフッ素と言う元素や単体分子を指して安全だとは絶対に言えません。単体分子としてのフッ素の危険性は先にお話しした通りです。

また、例えば人体に含まれる物質の1つにアンモニアがあります。これは有毒物質で肝臓で無毒化されるようになっていますが、これが空気中にあると0.1%くらいの濃度で危険なことになります。

そして、フッ化物については先の蛍石のような例もありますが、異なる化合物の安全性を保障するものではありません。ですから、少なくとも動物実験レベルでの致死量などを提示した上で、安全が推定できる使用量をフッ化物ごとに示すべきでしょう。

有効性については、残念ながらコホート研究などで大規模な調査をした国内データがありませんから、国内での小規模な研究データや、もし行われていたとして海外の研究のデータを利用するしかない状態です。

国内では平成17年から25年の間、歯科に関するコホート研究が行われました。ここではフッ化物塗布などの調査は行われなかったようです。

現在、さらに歯科に関する大規模なコホート研究が行われています。しかし平成24年に始まったその研究は20年間追跡され、さらに10年の解析期間が置かれますので、フッ化物に関するデータが入っていたとしても結果が判るのは西暦で言えば2042年です。

確かにフッ化物の塗布によって虫歯が予防され、子供の虫歯が減ったという実績はわが国に存在しています。だからこそ、むやみに安全性を強調するのではなく、リスクとベネフィットを公平に紹介してほしいと思いますね。

フッ素が神経毒物として使われた歴史があっても危険とは言えない

ナチスが使った神経毒が飲料水に添加されたフッ化物だと言う話があります。残念ながら詳しいデータを記載した信頼性の高い文書が見つからなかったので、どんなフッ化物が用いられたのかはわかりません。

具体的な物質名がわからずに、その物質がフッ化物だったからフッ化物全部が危険と言うのは乱暴すぎる考え方です。ですのでこれを根拠とした危険論は無視すべきです。

なお、神経に対して働きかけるフッ化物は存在します。商品名セボフレンと言う吸入麻酔薬です。効果が高く安定していて害が少ないため世界中で使われています。

殺鼠剤にもフッ化物が使われているから危険だという論調もよく見聞きしますが、同じ理由で無視すべき考え方です。それに、殺鼠剤の中にはワルファリンカリウム(商品名:ワーファリン)そのものもあるのです。処方されている人の多い抗凝固剤ですね。

要は使い方次第なのです。危険性を論じる時も、安全性を主張する時と同じなのです。実際に虫歯が減るという実績よりも、実験的に確かめられた最少中毒量との関係で、危険性が上回ることを論理的に示さなければいけません。

ひどいのになると企業の利益追求や科学者の功名心と言った物を中心に据えた陰謀論さえ見られる始末です。

どんな意見であっても、実際に陰謀があろうがなかろうが、科学的な見地に立つべきものに陰謀論を混ぜた段階で、その考え方は無視されなければいけません。

また、フッ素塗布は自由診療で儲かるという誤解もありますね。歯科医院にとっては自由診療であろうと保険診療であろうと入ってくるお金は一緒です。患者の側の支払いが多いか少ないかだけなんですよ。

それどころか、自由診療についてはクレジットカード対応の医院も多いのですが、その場合、カード手数料は歯科医院持ちになります。保険診療だと患者側も気楽に受けてくれますから、むしろ保険診療の方が歯科医院は儲かるんです。

事実よりも感情論が先に立っていると言えるのが、いわゆるフッ素問題です。

まずは正しいデータを見つけて、その上で感情論を抜きにして考えるべきなんですよね。

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