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謎の体調不良は甲状腺疾患かも?特に女性はサインを見逃さないで

いわゆる「膠原病(こうげんびょう)」など、原因がはっきりしないのに、なぜか身体の不調が続くといった不可解な症状に見舞われることもあります。人間の身体はコンピュータよりもはるかに精密ですから、そういうことは意外と多いです。

しかし、身体に異変や何らかの症状が出ているにもかかわらず、何も原因がないということは、基本的にはあり得ません。原因が「わからない」というだけのことであって、「ある」ことは間違いないと考えるべきです。

人間の身体は精密だからこそ、たとえば風邪のような一般性の高い疾患や、どこかにぶつけてその部分が痛いといった明らかな、あるいは目に見える原因ばかりが疾患を引き起こすわけではありません。

自覚症状はあるけれど、原因の特定が難しいことがある疾患の1つに、「甲状腺疾患」があります。

今回は、近年不安視する人も急増している甲状腺疾患についてお話します。

なぞの体調不良はもしかしたら…?甲状腺疾患にはいろいろな種類がある

甲状腺疾患には多様な種類がありますので、その理解や把握は簡単ではありませんが、そのためにも、まずは「甲状腺」に関する知識つけておきましょう。

甲状腺とは
「のどぼとけ(甲状軟骨先端)」の直下に位置する重さ10〜20g程度の小型臓器で、全身の新陳代謝や成長の促進にかかわるホルモン(甲状腺ホルモン)を分泌する。

羽を広げた蝶ちょうのような形で、その左右をそれぞれ左葉(さよう)、右葉(うよう)と呼び、気管を取り囲むように位置する。

(参考:甲状腺がんとは-国立研究開発法人国立がん研究センターがん対策情報センターがん情報サービスより)

甲状腺疾患とは
甲状腺の異常や障害によって引き起こされる症状の総称。甲状腺ホルモンの分泌過剰による甲状腺機能亢進症や、分泌不全による甲状腺機能低下症、急性・慢性甲状腺炎、単純性甲状腺腫、甲状腺がんなど。

(参考:甲状腺疾患とは-笠間糖尿病・甲状腺センター友部セントラルクリニックより)

甲状腺ホルモンの異常による疾患は非常に多様で、全身にいろいろな形でさまざまな症状が現れます。

つまり、これが冒頭でお話した、「よくわからないけれどとにかく体調が悪い」状態を招く原因になります。

結果的に、ちょっと風邪をひいたかな、気のせいかな、年齢のせいかな・・・といった、自分を納得させるための思考がスタートします。これが、甲状腺疾患のさらなる悪化に進展することになるのです。

このあたりが、甲状腺疾患が「原因がわかりづらい」といわれるところなのですが、原因がわかりづらいというよりも、甲状腺疾患に原因がある諸症状への理解がなかなか追いつきにくいという印象のほうがむしろ強いです。

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甲状腺疾患はなぜ起こる?そのメカニズムと原因は?

甲状腺疾患の症状が現れる原因は、「ホルモン合成・分泌の異常」が主な因子となります。ただ、なぜ甲状腺におけるホルモン合成・分泌の異常が起こるのかという根本的な部分については、残念ながら原因がわかっていません。

そういった意味では、甲状腺疾患の多くが原因不明の病気であるといわなければなりません。しかし甲状腺疾患としての症状が表面化するメカニズムはおおむねわかっています。

甲状腺疾患の多くは、自己免疫疾患であると考えられています。自己免疫疾患というのは、自分の免疫機能(外部からの有害・有毒な物質を攻撃する機能)が自身の正常な細胞や組織に働いてしまうことで起こる疾患の総称です。

膠原病は自己免疫疾患の代表的な病気ですが、膠原病と甲状腺疾患の症状が似ていて間違えられやすいのも、両者ともに自己免疫疾患だからという理由が挙げられます。

もしかしたら「遺伝」が原因かもしれない

ホルモンの合成・分泌に異常が起こる明確な原因はわかっていませんが、近年の研究うでは、「遺伝」の線で手がかりを模索中です。

ただ、風邪のような明白な外部因子による疾患を除けば、甲状腺疾患や膠原病のように難しい病気であっても、あるいはもっと一般的な生活習慣病であっても、多かれ少なかれ遺伝の影響は加味される必要があります。

ですから、甲状腺疾患が仮に遺伝と関係が密接であったとしても、遺伝意外の何か重要な因子が絡んで発病すると考えるほうが自然であるといえるのです。

そのあたりも含め、甲状腺疾患に関する多くが、現状は闇の中であるといわなければなりません。

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ホルモンの合成や分泌が過剰になる「甲状腺機能亢進症」

生活習慣の多くは、ホルモン物質の合成や分泌が停滞することで発症するケースが多い印象があります。

しかし甲状腺機能亢進(こうしん)症はその逆で、ホルモン物質の合成・分泌が過剰になり、代謝が高くなりすぎるタイプの疾患です。

甲状腺疾患では最も有名な「バセドウ病」はこのタイプの疾患で、全身にいろいろな症状、不調が現れます。

甲状腺亢進症の発症部位と症状

  • 頚部(首やのど周辺)腫れ(たいていは無痛で腫れの程度には個人差がある)
  • 動悸や呼吸の早まり(呼吸器疾患や心疾患の可能性もあるので注意)
  • 暑がり、多汗、のどの渇き(代謝が異常に上昇すると起こる全身症状)
  • 手足のふるえや筋力低下(代謝異常によるエネルギー変換の異常)
  • 下痢、過食などの消化器異常(代謝上昇による体重減少や過食による体重増加)
  • 眼球突出(バセドウ病)、まぶたが腫れて目つきが鋭くなる、視覚異常
  • 気分の高揚やイライラなどの気分障害、疲れやすさからくる集中力の低下
  • 女性の生理不順や無月経

(参考:甲状腺機能亢進症-笠間糖尿病・甲状腺センター友部セントラルクリニックより)

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ホルモンの合成や分泌が低下する「甲状腺機能低下症」

甲状腺機能亢進症と真逆のタイプの甲状腺疾患です。亢進症のほうが症状としては特殊ですが、こちらの甲状腺機能低下症のほうが、症状のタイプとしては「よくある醜状」という印象があります。

バセドウ病と並ぶ代表的な甲状腺疾患である「橋本病(詳細は後述)」も、タイプとしては甲状腺機能低下症のたぐいになります。

甲状腺低下症の発症部位と症状

  • 物忘れや言語障害(ホルモン低下による脳障害)
  • むくみ、寒がり(ホルモン低下による全身症状)
  • 肌の乾燥などの皮膚症状
  • 無気力症、眠気の頻発(うつ病などの精神神経疾患の可能性もあるので注意)
  • 便秘、食欲不振などの消化器異常
  • 女性の生理不順、無月経

(参考:甲状腺機能低下症-笠間糖尿病・甲状腺センター友部セントラルクリニックより)

甲状腺機能亢進症の呼吸や心拍の異常や気分障害、甲状腺機能低下症の無気力や眠気などをはじめ、ほかの疾患(場合によっては重篤な疾患)と似た症状が現れることが多いので、甲状腺疾患の自己判断は危険です。

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甲状腺疾患には、バセドウ病や橋本病のほかにも、甲状腺機能(ホルモン合成・分泌)とはあまり関係が深くない腫瘍性疾患(主に甲状腺がん)、単純性びまん性甲状腺腫、亜急性甲状腺炎などがあります。

そして広義の甲状腺疾患に、指定難病に加えられることが多い膠原病の一部や重症筋無力症、手根管症候群などがあります。

甲状腺疾患「甲状腺がん」

がんは全身のいたるところにできる、現代人にとって最も怖い病気の1つとされますが、甲状腺がんは、特に日本国内では、かつてそれほど注目されることがないがんでした。

しかし、あの痛ましい福島原発事故以来、特に東北地方や関東地方の住民をはじめとして、多くの人が甲状腺がんの不安に脅かされるようになってきています。

実際旧ソ連のチェルノブイリ原発事故をきっかけとして、地域住民の、特に子供の甲状腺がんが急増した事実がありますので、あまり多くを語ろうとしない日本政府の下ではますます不安が搔き立てられてしまうところもあるようです。

甲状腺がんは、甲状腺に腫瘍ができる「甲状腺腫」の一種です。多くは良性の腫瘍で事なきを得ることになりますが、中には、残念ながら悪性甲状腺腫、つまり「甲状腺がん」である腫瘍もある・・・そんな形で発見されます。

早期発見・早期治療が重要!甲状腺がんの初期症状は?

甲状腺がんは、多くは「進行しない、もしくは進行が極めて遅いがん」であるとされますが、しかしがんである以上はやはり早期発見・早期治療が非常に重要なポイントになってきます。

そのためには、まずはごく初期的な段階で症状を自覚することが何よりも重要であるといえます。甲状腺がんの初期症状は、甲状腺付近の「しこり(結節)」に現れることが圧倒的に多いです。

ごくまれに、のどや頚部の違和感(痛み、軽度嚥下障害、声のかすれなど)を訴える患者さんもいます。これらの症状を自覚したら、できるだけ早く医療機関で診察・検査などを受けていただきたいと思います。

ところで、甲状腺がんというと、のどぼとけの下に位置する甲状腺にがんができるのではないか・・・と思われがちですが、意外にも、単に「甲状腺にがんができた」では説明しきれないくらい種類が豊富なんです。

甲状腺がんの種類:乳頭がん

乳頭がんというと、乳がんの一種なのではないかと思われがちですが、乳がんとはまったく関係ありませんし、乳頭(乳首)にできるがんを指すわけでもありません。

乳がんの一種でも「乳頭がん」と名前がつくがんはあります(たとえば浸潤性微小乳頭がんなど)が、このタイプはあくまでも「乳がん」の分類であって、甲状腺がんの一種である乳頭がんとは異なります。

こうした混乱を避けるために、乳頭がんのことを「甲状腺乳頭がん」と呼ぶこともあります。ではなぜ「乳頭がん」という名前がついたのかというと、甲状腺にできるがんの形が乳頭様だったから、と説明されます。

名前は非常にややこしいですが、実は甲状腺がんの9割がこの乳頭がんにあたります。やはり女性に多い種類のがんです。年代は、40~50代にかけて特に多くみられます。多くの甲状腺がんと同様に、進行はきわめて遅いです。

とはいえ、悪性であることには違いないため、リンパ節転移が見られることが多いです。ただ、リンパ節転移があっても進行自体が遅いため、リンパ節郭清(がんが進んだリンパ節を切除)することで、多くの乳頭がんは完治します。

ただ、中には悪性度が高い乳頭がんもありますので、油断はできません。高齢になってからの乳頭がんのほうが、悪性度が高くなりやすい特徴があります。

甲状腺がんの種類:濾胞がん

「ろほうがん」と呼びます。濾胞というのは、甲状腺を構成している組織というとわかりやすいと思います。「胞」の文字から想像できるかもしれませんが、甲状腺組織は、濾胞と呼ばれる微小な袋が集まってできています。

濾胞がんは、この濾胞をつくる濾胞細胞もしくはその外側に隣接する濾胞傍細胞(C細胞)から発生するがんの総称です。濾胞がんは、乳頭がんよりもやや高齢者層に多い甲状腺がんです。

濾胞がんの発生確率は高くありません。甲状腺がん全体の5%にあたるのが濾胞がんです。遠隔転移のリスクが高いがんですが、やはりがん自体の進行が遅いため、治療しやすいがんであるといえます。

ただ、リンパ節転移ではなく、血行性転移(がん細胞が血管内を運ばれることで起こる転移)による予後は決して高くなく、油断はできません。

甲状腺がんの種類:髄様がん

「ずいようがん」と読みます。濾胞傍細胞の腫瘍が悪性化したものです。甲状腺がん全体の1~2%の発生率で、比較的発生リスクが小さいがんです。

ただし、乳頭がんや濾胞がんにくらべると進行が速く、それだけ危険ながんであるといえます。それゆえ、リンパ節転移だけでなく、肺や肝臓などへの遠隔転移が見られやすい特徴があります。

こちらも乳がんの一種に同名のがんがあるため、甲状腺がんの一種である髄様がんを「甲状腺髄様がん」と呼ぶことがあります。甲状腺髄様がんの2割~3割は、遺伝による可能性が極めて高いです。

そのため、家族単位で検査が推奨されることもあります。

甲状腺がんの種類:未分化がん

未分化がんは、甲状腺がん全体の1~2%の確率で発生するがんです。髄様がん同様、進行のスピードが速いのが未分化がんの特徴で、甲状腺周辺への、もしくは遠隔臓器への転移が多い危険ながんです。

甲状腺から比較的近い臓器(反回神経、気管、食道など)への転移では、浸潤が深く広範囲にわたり、遠隔臓器(肺や骨)への転移も含め、悪性度が高いがんであるといえます。

甲状腺がんの種類:悪性リンパ腫

悪性リンパ腫は、イメージ的には白血病やMDS(骨髄異形成症候群)に近いがんと思われるかもしれませんが、その一般的な悪性リンパ腫が甲状腺にできることもあります。

これを特に「甲状腺悪性リンパ腫」と呼ぶことがあります。甲状腺悪性リンパ腫は、橋本病(慢性甲状腺炎)が原因となっていると考えられるケースが多いです。

特に、長期にわたり橋本病を患っている高齢者層に多いがんであるとされます。甲状腺腫大、声のかすれ、進行すると呼吸困難などの症状がみられることがあります。

甲状腺肥大ってどんな症状を指すの?

甲状腺腫大は、これまでお話ししてきた各種甲状腺疾患の多くでみられる「症状」であって、甲状腺肥大自体が病気・疾患として定義されてはいません。甲状腺肥大は「腫大」と似たイメージがある症状と思われるかもしれません。

実際同じとして説明されることもあるようです。そして甲状腺肥大もまた、腫大と同様病気として定義されていません。あくまでも何らかの原因で甲状腺に現れる「症状」であると解釈されます。

「腫大」はあくまでも「腫れ」をはじめとする何らかの異常が甲状腺の一部に起こっている現象であって、「肥大」は、異常の有無にかかわらず、甲状腺全体が大きくなってしまう症状です。

もちろん甲状腺自体の異常により甲状腺肥大が起こることがありますが、甲状腺自体に異常がないのに甲状腺肥大が起こる症例もあります。いろいろな原因で慢性的に肥大するケースと、何らかの突発的な原因で起こる単純性肥大があります。

甲状腺肥大の原因がはっきりしないこともありますが、明らかになる場合は、ヨードの不足もしくは過剰摂取が原因であると考えられることが多いです。

ちなみに「ヨード」というのは、甲状腺ホルモンの主成分となる物質で、海藻類に多く含まれます。

ヨードの摂取不足や過剰摂取によって正常に甲状腺ホルモンがつくられないストレスとして、甲状腺肥大が起こるケースが多いです。

外観的には、甲状腺腫大との見分けが難しく感じられることのほうが多いため、いずれにしても甲状腺付近の様子に違和感を覚えたなら、できるだけ早く医療機関で相談してみてください。

不安が増大する甲状腺疾患とどう向き合うべきか

福島県内では、甲状腺がんの患者数が急増しています。その原因として真っ先に疑われたのが、「福島第一原発事故」でした。

放射性ヨウ素や放射性セシウムをはじめ、自然界に存在しない放射性物質が大量に放たれたわけですから、疑いの目が向けられるのは当然でしょう。

しかし国は今のところ、甲状腺がん患者数の増加と原発事故の関係を完全否定しています。原発事故の不安から、検査する人が増えたために潜在的な(原発事故とは無関係の)甲状腺がん患者が露見しただけ、というのがどうやら国の見解です。

これを受けて、「ああそうか、関係ないのか」とスンナリ納得する人はおそらくいないと思います。ただ、関係を否定している以上、国が何かしてくれるわけではありませんので、自分で何らかの行動に出る以外ありません。

つまり、不安を感じている人は自分の意思で検査してもらうことが大切である、ということになります。

チェルノブイリのときには国の指導で検査が実施されたようですが、今のところ日本ではそういう動きはありませんので、この国では、自分の身を守るのは自分以外にない、と判断すべきでしょう。

原発事故の話はさておき、甲状腺疾患全体を見ても、非常にやっかいな病気であることをご理解いただけたかと思います。今回はあまり触れませんでしたが、症状として「精神的な不調」が大きいのも甲状腺疾患の特徴です。

甲状腺疾患に悩んでいる患者さんは、できることならストレスをかけないよう、ご自愛いただきたいと思います。

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