健康生活TOP 脳卒中 「牛乳は上質なカルシウム源」は嘘?実は脳卒中予防効果がある!

「牛乳は上質なカルシウム源」は嘘?実は脳卒中予防効果がある!

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ここ数年、「実は牛乳が体に悪かった」と言うような情報が、まことしやかに囁かれています。これって本当なのでしょうか。結論から言うと嘘です。

もちろん、どんな物であっても摂り方や摂る量を誤ると身体に害が出ます。

しかし、そのことを理由に害を論じるのは、「摂り方に誤りがあった」という問題を「摂った物に害があった」と言う形で、論理のすり替えを行ったにすぎません。

例えば、昨今悪者として人気沸騰の活性酸素に関して、「体に悪い活性酸素が産まれるから、息をするのをやめよう」とは誰も言いませんよね。呼吸する酸素を悪者にしても、きっと得をする人がいないのでしょう。

人は情報に騙されやすい?パンの害や化学物質DHMOのトリック

アメリカのジョークだったと思うのですが、「パンを食べると犯罪を起こす。その証拠に、すべての犯罪者の97%はパンを食べてから24時間以内に犯罪を起こしている。」と言うものがあります。

そりゃそうですよね。犯罪者だって食事くらいしたいでしょう。これは健康産業の宣伝に使われる「身体に良い食べ物・悪い食べ物」の風潮を皮肉ったものだったのです。

人はいかに言葉に騙されやすいかと言うもう一つの例

詳細は省きますので、興味のある人は検索してみてください。

DHMOと言う化学物質についての話です。この物質に関して「吸引すると死ぬ」など、多数の否定的な説明を加えた上で「この物質を規制すべきか」というアンケートを採ったと言う話題です。実際、90%近い人が規制すべきだと答えたそうです。

しかし実は、DHMOとは、”Dihydrogen Monoxide”=一酸化二水素=『ただの水』、だったのです。そりゃ吸引なんかしたら、溺れて死にますよね。

つまり、決して間違っていないデータであっても、正体を隠されて、否定的な方向にバイアスのかかった情報だけを示されると、人は簡単にそれが悪いものであると信じてしまうと言うことです。

このことは人生の様々なシーンにおいて、知っておいて注意すべきことです。

特に健康関連の情報では、ビジネスに絡むことも多い上、歴史的に「○○は身体に良い・悪い」の噂と言うのが好まれますから、このようにバイアスのかかった情報はよく流れます。

情報の取捨選択について信用できるものを選ぶ慎重さを持とう

あるものについて、健康に効果があったとか害があったとかいう実験を行ったと言うデータは結構多くあります。そのなかで、参考にはなっても決定打にはならないと言う、研究中のデータと言うのが良く引き合いに出されます。

例えば、あるものを100人に食べさせたら、33人が体に不調を感じ、33人が健康の向上を自覚し、34人は何の影響も感じなかったとします。このデータをどのように紹介するかだけでイメージはうんと変わります。

「なんと33%の人が効果を実感、67%の人が健康を維持または向上したと言っています。」

「実に33%の人が健康を害してしまい、67%の人が健康の向上に役立たなかったと言っています。」

「結局、最も多数の人が毒にも薬にもならなかったと感じ、影響のあった人も平均すればプラスマイナスゼロになりました。」

全部同じデータに基づいて正しいことを言っていますが、受けるイメージは全く異なりますね。ですから、効果や害について、その根拠となるデータと、導かれた結論の間に誤誘導がないかと言うことには注意して見て行きましょうね。

牛乳ははたして正義の味方か悪の手先か

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データの読み解き方については、また機会があったらお話しすることにして、今回の話題である牛乳の話に入ります。牛乳は身体に良いのか悪いのかと言うことですね。

しかも、特に話題になることの多い「牛乳のカルシウム」が今回の話題の中心です。

カルシウムを牛乳から摂ると脳卒中が減る

国立がん研究センターの予防研究グループは、1990年の段階で脳や心臓の血管障害のない40歳から59歳の男女約4万人を対象に13年間の追跡調査を行いました。食事についてはアンケート調査の形だったと言うことです。

それによると、カルシウムをどのくらい摂ったか、そのうち牛乳・チーズ・ヨーグルトなどの乳製品からと、大豆製品・野菜などの乳製品以外からの量を比較して、病気との関係を探ったとあります。

その結果、非常に興味深い結果が得られています。

まず、カルシウムを多く摂った人は少なく摂った人より脳卒中を発症しにくいことが判りました。

摂取量ごとに5つのグループに分け、最も少なかったグループを1とした場合、最も多かったグループの脳卒中発症率は0.7と30%程度少なくなっていたのです。

さらにこれを乳製品から摂ったものと、乳製品以外から摂ったものに分けてデータを分析しています。

それによると、乳製品以外から摂った人は、最も少ないグループから最も多いグループにかけて、多少の差はあっても、統計的に意味があるほどの差は見られませんでした。

一方、乳製品からカルシウムを摂った人は、摂取量が多くなるほど発症が少なくなり、最大量のグループでは0.69倍と、30%を超えて脳卒中が減っていたのです。

残念なことに、この研究は統計的なものですから、なぜ乳製品のカルシウムだけが有効だったかの推論は得られていません。今後の研究に期待したいところですね。

なぜカルシウムと摂ると脳卒中が減るのかと言う理由

今回の研究以前に、カルシウムを良く摂る人は血圧が低いと言う研究データがありました。実際のところ、カルシウム不足は高血圧を招きますし、高血圧の人はカルシウムを摂らなくてはいけません。

高血圧のお薬に「カルシウム拮抗剤」と言うのがあるため、高血圧だとカルシウムを摂ってはいけないと良く勘違いされるのですが、カルシウム拮抗剤はカルシウムを邪魔するお薬ではありません。

血管の筋肉にあるカルシウムチャンネルと言う部分の働きを弱めて、血管が拡がりやすくするお薬です。ですのでカルシウムを摂っても影響されませんし、このお薬を飲んでもカルシウムの吸収が邪魔されることもありません。

また、カルシウムは血液中にある止血因子の血小板が集まる力を弱め、食べ物として摂ったコレステロールの吸収を抑制することが判っています。これらが脳卒中を予防していると考えられますね。

残念ながら心筋梗塞などの虚血性心疾患には効果がない

脳卒中に効果があるなら、同じく動脈硬化など血管の病気に絡む、心筋梗塞などにも効果があるんじゃないかと期待してしまいますよね。

一方で、カルシウム摂取と虚血性心疾患との間には明らかな関係は認められませんでした。

その理由として、乳製品を多く摂取するとカルシウムと同時に飽和脂肪酸という虚血性心疾患の発症リスクを上げる栄養素を体内に取り込むことになるため、カルシウムの効果を打ち消してしまっている可能性が考えられます。

このように残念な結果となってしまったようです。確かに牛乳は飽和脂肪酸の含有比率が高いです。含まれている脂肪酸のうち、約70%が飽和脂肪酸です。

一方、お魚で見るとアジやサバでも飽和脂肪酸は30%内外です。サバにはカルシウムが少ないですが、比較的カルシウムの含有比率の多いイワシでも牛乳の60~70%程度です。

ですので、飽和脂肪酸とカルシウムの比率で見るなら、キャベツやキンカンなど、野菜や果物が良いと言うことになりますが、それでは脳卒中の防止効果がなかったと言う結果が、今回の研究で明らかになっています。難しいところですね。

データの読み解き方で気になる情報

ここまでの情報を何となく読んでいると、単に「牛乳を飲んでおくと脳卒中にならないんだ。」としか感じられませんが、実はよく読んでみると気になることが現れています。

整理してみると、予防医学のプロたちが集めたデータとそれによる牛乳のカルシウムについて、プロたちはこのように分析しているのです。

  • 乳製品のカルシウムを多く摂ると脳血管障害が抑制される
  • 乳製品以外のカルシウムには脳卒中抑制効果はない
  • 脳血管障害に効果があるなら虚血性心疾患にも効果があるのだろうか
  • 飽和脂肪酸の害によって効果が相殺されるため、心筋梗塞は防げない

ここまでが、これまでお話しした内容です。でも、下から上に読んでみると「乳製品の飽和脂肪酸は脳卒中を引き起こさないのではないだろうか」と感じますよね。

残念ながら、そうした研究は見つかりませんでした。しかし、もともと短鎖・中鎖脂肪酸の多い乳脂肪ですから、今後の研究が楽しみです。

カルシウム・パラドックスが示すバランスのとれた食事の勧め

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牛乳の効果を否定する説の根拠になっているのが、北欧における牛乳の消費量と骨折の多さを調べたデータです。残念ながら私の調べた範囲では、信頼に足る機関の発表したデータが見当たりませんでした。

それでも一応、『日本よりずっと多くの牛乳を摂る北欧の人は、日本人より良く骨折すると言うデータがあった』と言うカルシウム・パラドックスの存在を前提としてお話しします。

WHOはカルシウムとたんぱく質摂取の関係に重要性を見出している

世界保健機関WHOは国連食糧農業機関FAO、それに国連大学UNUと合同で研究した成果として「人間の栄養素におけるたんぱく質とアミノ酸の要件」と言う大きなレポートを発表しています。

そこでは、たんぱく質と骨の健康についての関係にも注目されています。

骨のミネラルバランスは、酸塩基平衡に非常に敏感であり、カルシウムは、硫黄含有アミノ酸・メチオニンおよびシステインの酸化により生成する酸の負荷を緩衝する必要に応じて骨から動員されることがあります。

(中略)

特に女性で、たんぱく質によってもたらされ、カリウムによって低減される内因性の酸が抑えられることは、骨の健康に寄与していることが判りました。

つまり、カルシウムと骨の健康の関係は、たんぱく質の摂りすぎ、あるいは野菜の不足によって、アミノ酸由来の酸が多くなってしまうのを中和するために骨からカルシウムが使われてしまうと言うことにあったと言うわけです。

牛乳とはあんまり関係ありませんでしたね。確かに北欧では日照時間の関係で骨が弱くなったり、肉の消費量が多かったり、野菜の供給が不足ぎみだったりして問題が起こっている可能性は高そうです。

その他、牛乳のカルシウムは非常に吸収率が高いので、血中カルシウム濃度が急上昇し、余った分を排泄する際に余計に捨ててしまうという説もあります。

しかし、上の文献で示したように、WHOはバランスのとれた食事こそが骨の健康にも寄与すると明言しています。この場合、『肉を食べたら、バランスするだけ野菜も食べましょう』と言うことです。私たちにとっても最もなじみが深いですよね。

牛乳にももちろんたんぱく質は含まれていますが、飲み物ですからその比率は低めになります。そしてカルシウムは高い吸収率を持ってたくさん含まれています。

日本人の食生活において、虚血性心疾患には効果もない代わりに悪さもしない、しかし脳卒中は明らかに減らしてくれる牛乳、飲まない手はないですよね。

乳糖不耐症と言う名前が事態をややこしくしている

牛乳に含まれる炭水化物、乳糖は、それを分解するラクターゼと言う酵素が充分にないとお腹が緩くなることがあります。

そのことを理由に牛乳を忌避する向きもあるようですが、それが誤りであることは簡単に見分けられます。この健康生活の記事でも牛乳の栄養の摂り方の記事がありますので参考にしてくださいね。

乳糖不耐かどうかは程度問題でもある

例えば、牛乳100mL分の乳糖しか分解できない人がいた場合、「カフェラッテなら大丈夫なんだけど…」と言うことになるかもしれません。

例えば、牛乳900mL分の乳糖しか分解できない人の場合、「牛乳1リットル飲んだらお腹壊した」と言うことになるでしょう。

どちらも『乳糖不耐症』ですが、1リットル飲んだ人のことを不耐症だと思う人はいませんよね。要するに程度問題なのです。

牛乳悪者説は牛乳に対する昔の人の偏見かも

オリゴ糖は小腸の消化酵素で分解できないから、大腸にいる腸内細菌のエサになって発酵、大腸の運動が活発になって便の水分が多くなり良く出る。

乳糖はラクターゼと言う酵素が足りない場合に、大腸にいる腸内細菌のエサになって発酵、大腸の運動が活発になって便の水分が多くなり良く出る。

実は乳糖と、食物繊維やオリゴ糖の効果は非常によく似ているのです。牛乳を飲む習慣が少なかった時代の人たちは、今より牛乳でお腹が緩くなる人が多かったのでしょう。

歴史的な経緯もあって悪者扱いですが、広い意味では乳糖もオリゴ糖なのです。覚えておいていただいて良い情報だと思いますよ。

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