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みぞおちの痛みや胃痛胃もたれが治らない!機能性ディスペプシアかも

腹痛に苦しむ女性

「機能性ディスペプシア」という病名、聞いたことはありますか。最近になって新しく確立された病気の概念で、2013年に新しく保険病名になりました。

これは胃もたれや胃痛がずっと続いているのに、病院で検査をしてもなんの異常も見つからないというような病気です。以前は「慢性胃炎」「神経性胃炎」と診断されることもありました。

胃もたれや胃痛がずっと続いているのに、検査で「異常なし」と言われてしまったことはありませんか。食事してもすぐお腹いっぱいになったり、吐き気が出てしまうことはありませんか。もしかすると「機能性ディスペプシア」なのかもしれません。

「機能性ディスペプシア(FD)」は検査で異常が見つからない

「機能性ディスペプシア(functional dyspepsia:FD)」といっても、あまり耳馴染みのない病名かもしれません。「機能性胃腸症」と呼ばれることもあります。

これは胃もたれやみぞおち付近の痛みといった症状が慢性的にあるものの、内視鏡検査や血液検査などをしても特に異常が見つからないといった病気です。日本の一般成人の1割もの人が悩んでいるとされます。

症状は数ヶ月以上前から、継続して起きています。みぞおちを中心とした腹部の症状で、排便したり放屁しても改善しません。いろいろな検査をしてもその原因となる異常を認められなかったものを、「機能性ディスペプシア」と診断します。

内視鏡検査を必ず行い、胃潰瘍や胃ガンなどでないことをきちんと確認しなくてはいけません。ストレスが強く影響しているとされ、症状がひどくなると生活の質がかなり落ちてしまいます。

機能性ディスペプシアでは次のような症状が現れます。

  • みぞおちの痛み
  • みぞおちの焼けるような感じ
  • 食後の胃もたれ感
  • 少し食べただけでお腹いっぱいになり、それ以上食べられない
  • 胃の不快感
  • お腹が張る感じ
  • 食欲がない
  • 気持ちが悪い、吐き気がある
  • ゲップが多くなる
  • 気分が落ち込み、何となくやる気が出ない

この中でも特によく現れる症状は「みぞおちの痛み」「みぞおちの焼けるような感じ」「胃もたれ」「食べるとすぐにお腹いっぱいになる(早期膨満感)」です。

これら4つの症状のうちのどれかがあることに加えて、胃や全身的な病気がないこと、症状が慢性的に続いていることが機能性ディスペプシアと診断をする条件になります。

機能性ディスペプシアは「胃の働きの異常」によって起きていると考えられます。異常には大きくわけて2つのタイプがあります。それは「運動機能異常」と「内臓知覚過敏」になります。

運動機能異常による食後愁訴症候群(PDS)

胃の動きが悪くなる「運動機能異常」になると、食事をしてもすぐ満腹になってしまったり、食後に胃もたれ感が出るようになってしまいます。

食事をして食べ物が胃に入ってくると、通常は食べ物を受け入れるために胃の上部が膨らみます。しかしここが十分に膨らまないと、少量の食事でも満腹感を感じるようになってしまいます。

また胃に入った食べ物は、胃のぜん動運動(収縮運動)により胃酸とよく混ざり、そして次の十二指腸へと送られていきます。しかしこのぜん動運動が低下してしまうと、胃にいつまでも食べ物が残って胃がもたれるようになってしまうのです。

他にも胃の運動機能に問題があると食後に吐き気が出たり、ゲップがひどくなってしまったりします。

このような胃の運動機能異常によって症状が出てしまうタイプを「食後愁訴症候群(PDS)」と言います。

内臓知覚過敏による心窩部痛症候群(EPS)

「心窩部」とは「みぞおち」のことです。

食事をすると、胃では食べ物の消化や殺菌のために胃酸が分泌されます。胃酸は強酸性ですが、この胃酸によって胃壁が溶かされてしまうことはありません。それは胃液に含まれる粘液が、胃を保護してくれるおかげです。

しかし胃や十二指腸が知覚過敏になると、胃酸の刺激に敏感になってしまいます。胃酸の量に関係なく少し分泌されただけでみぞおち付近に痛みが出るようになり、また焼けるような不快感を感じるようになってしまうのです。

このように内臓知覚過敏によって症状が出てしまうタイプを「心窩部痛症候群(EPS)」と言います。

食後愁訴症候群なのか心窩部痛症候群なのかによって、使用される薬も多少違ってきます。ただしこの二つのどちらかにはっきり分かれるというわけではなく、両方が併存していることもあります。

機能性ディスペプシアと過敏性腸症候群を合併している人も多いとされます。また胃食道逆流症を合併していることもあるのです。

胃腸の症状で辛いときには、医療機関を受診してみましょう。

機能性ディスペプシアにはストレスが強く影響している!

機能性ディスペプシアの明確な原因についてはまだ不明です。ただストレスが強く影響していることは確実だと考えられています。

脳と胃腸などの消化管の間には、お互いに影響を与えあう「脳腸相関」と呼ばれるシステムがあります。自律神経系やホルモンなどの内分泌系を介して、脳と消化管の間で情報が伝達され影響を与えあっているのです。

例えば緊張で下痢してしまったり便秘になってしまったりした経験のある方も多いのではないでしょうか。これは脳がストレスを感じて自律神経のバランスを乱し、それが消化管の働きに影響を与えたために起きています。

胃腸は自分の意思では動かすことができません。胃腸の働きをコントロールしているのは自律神経やホルモンなどで、それらが自分の意思とは関係なく働くことで胃腸が正常に動いて健康でいられます。

自律神経には「交感神経」と「副交感神経」があります。体が活動しているとき、ストレスを感じたり緊張しているときには交感神経が優位に働きます。逆にリラックスし安静にしているときには副交感神経が優位です。

胃腸は、副交感神経が優位なときによく働きます。緊張しているときよりも、リラックスしているときのほうが胃腸の働きはよくなるのです。

交感神経と副交感神経は、どちらが優位の状態が良いというものではなく、両方がバランスよく働いている状態がベストです。しかし強いストレスが続くと、ずっと交感神経が優位になってしまい、副交感神経の働きは抑えられてしまいます。

副交感神経の働きが抑えられると、胃腸の動きは悪くなります。ぜん動運動が低下し、胃酸の分泌も変化し、また知覚が過敏になることで胃酸の刺激を感じやすくなってしまいます。このように、ストレスは胃もたれや胃痛を引き起こしてしまうのです。

その上、胃腸の調子が悪いと食事が楽しくなくなります。自分はガンのような重い病気なのではと不安になることもあります。胃腸の調子の悪化が日常生活にも影響して、脳はさらに強いストレスを感じるようになってしまうのです。

ストレスを感じている女性のイラスト

脳がストレスを感じると自律神経のバランスはさらに乱れていきます。このように、ストレスがきっかけで胃腸の調子が悪化し、さらにそれによってストレスを感じてしまうという悪循環に陥ってしまうのです。

この悪循環を断ち切るためには、とにかくストレスをなくすことです。「ストレスをなくす」と言っても、そんな簡単なことではないでしょう。ただ少しでもストレスを和らげていくことで、胃腸の症状を軽くしていくことができるのです。

ちなみに脳にとってストレスと感じてしまうのは、精神的な悩みだけではありません。仕事や家庭での悩みや人間関係のイザコザなどは大きなストレスになりますが、他にも引越などの環境の変化、季節の変わり目の気候の変化などもストレスになります。

昇進や結婚といった良い出来事でさえ、脳にとってはストレスと感じてしまうことがあります。春先や夏から秋に移り変わる季節は、自分でも気付かないうちにストレスがかかっていることもあります。

最近胃腸の調子が悪いというときには、どこかにストレスがかかっていないか生活を見直してみてください。気がつかないうちに実はストレスがかかっているということもあります。

ちなみに機能性ディスペプシアだけでなく、過敏性腸症候群も脳腸相関のシステムが関係していると考えられています。脳と胃腸には深い関係があるのです。

機能性ディスペプシアを改善するには?

機能性ディスペプシアで胃腸の調子が悪いとき、それを改善するには大きくわけて4つの方法があります。それは「薬物療法」「生活の改善」「運動習慣をつける」「食事の改善」です。

胃腸の調子が悪く日常生活にも影響が出るようなら、薬を使うということも必要でしょう。現れている症状によって、処方される薬は多少違ってきます。また最近新薬も発売されました。薬物療法については後で詳しく説明します。

薬を使うことで胃腸の調子はだいぶ改善されてくるでしょう。でも薬だけに頼って同じ生活を続けていたのでは、薬を止めたときにまた症状が再発してしまうかもしれません。普段の生活を見直して、良くない習慣は改善していくことが重要なのです。

機能性ディスペプシアを改善するには:規則正しい生活にする

規則正しい生活をして、生活のリズムをきちんと整えることは重要です。

朝は決まった時間に起きて朝食をとるようにしましょう。休みの日も、遅くまで寝ているのは止めた方がよいでしょう。体内時計が乱れてしまいます。

朝起きたら朝日を浴び、日中は活発に体を動かすように心がけます。こうすることで交感神経が優位になります。

そして夜はリラックスして過ごし、副交感神経が優位になるようにしましょう。シャワーで済まさず、ぬるめのお湯でゆっくり入浴したほうがよいです。夕食はあまり遅くならないようにし、寝る3時間前からは飲食を控えましょう。

夜更かしはよくありません。寝る直前のテレビ、パソコン、スマホなどは寝つきを悪くしてしまうため止めましょう。

睡眠不足が続くと自律神経のバランスが乱れ、胃腸の調子が悪くなります。やらなくてはいけない事や悩み事があったとしても、寝る時間になったらきっぱり止めて次の日に回す勇気を持ちましょう。

機能性ディスペプシアを改善するには:食事を見直す

食事は時間を決めて、規則正しくとるようにしましょう。一食抜いたりといったことはせず、決まった時間に食べるようにしましょう。早食いや食べ過ぎは良くありません。

脂肪分の多い食事もなるべく避けた方がよいでしょう。アルコールはたしなむ程度にしておきましょう。もちろん空腹のまま飲んだりはしないでください。

機能性ディスペプシアを改善するには:タバコは止める

タバコはガンや慢性閉塞性肺疾患(COPD)のリスクになるだけでなく、胃にも非常に悪影響を及ぼします。タバコは胃の血流を悪化させ、また交感神経を優位にさせてしまうのです。

胃の調子が悪いといったときには、タバコを止めてみるのもひとつの方法でしょう。

タバコは全身に様々な害を及ばします。糖尿病や心筋梗塞などといった病気のリスクを高めますし、老化も進めてしまいます。また経済的な負担にもなります。

この機会にキッパリ禁煙に踏み切ってみてはいかがでしょうか。ちょうどよいきっかけかもしれません。

もしも自分ひとりでの禁煙が難しければ、禁煙外来を受診してみる方法もあります。自分意思でがんばってみたり、市販の禁煙補助薬を使ってみても無理だった場合には、病院で相談してみましょう。

機能性ディスペプシアを改善するには:例えばウォーキングなどで体を動かしてみよう

体を動かすことは、胃腸にはとてもよい刺激です。エネルギーを消費するのでお腹がすいてきます。

それだけでなく、よい気分転換になりストレス解消にも繋がります。昼間に体を動かし活動的になることで、自律神経のバランスも整ってきます。

体を動かすといっても、激しい運動をする必要はありません。ウォーキングのような軽い負荷のもので十分です。ウォーキングでなく30分程度の散歩でもよいですから、体を動かす習慣をつけてみてください。

規則正しく一定のリズムで同じ運動を繰り返していると、脳の中には「セロトニン」という物質が増えるとされます。セロトニンには心をリラックスさせてくれる効果があり、また不眠に対しても良い効果があります。

ウォーキングは胃腸の刺激になり、ストレス解消にも睡眠改善にもよいのです。次のようなことに気をつけて歩いてみてください。

  • 室内ではなく、屋外で景色を楽しみながら行う
  • 会話ができるくらいのゆったりとした速さで歩く
  • 毎日10~15分でよい
  • 無理して運動の強度を高めるより、長く続けられることを行う

短距離のダッシュや筋力トレーニングは無酸素運動であり、これらはリラックス効果に対してはあまり期待できないとされます。ぜひ景色を楽しみながら歩いてみてください。

機能性ディスペプシアを改善するには:ストレスをためない

ストレスが機能性ディスペプシアに深く関係していることは、先ほど説明しました。胃腸症状を改善させるためには、やはりストレスを軽くさせていくことは大切です。

友達をおしゃべりしたり、カラオケで思いっきり歌うなどストレス解消方法を見つけるとよいでしょう。

機能性ディスペプシアの患者さんには完璧主義者が多いとされます。でも、仕事も家事も、全てに100点満点を目指す必要はありません。75点くらいで合格だと考えるようにしましょう。少し気持ちが楽になります。

機能性ディスペプシアに効果のある薬が発売されました!

機能性ディスペプシアでは、それぞれの症状に応じて薬も処方されます。薬による治療も、胃腸の症状改善のためには重要です。

またピロリ菌に感染しているかどうかの検査も行われ、感染していた場合には、まずピロリ菌の除菌が行われます。

治療では次のような薬が使われます。

食後愁訴症候群(PDS)には運動機能改善薬

食後に胃もたれが出たり、少しの食事ですぐ満腹感を感じてしまうといった「食後愁訴症候群」の症状は、胃の動きが悪くなっているために起きています。このような症状がある場合には、「消化管運動機能改善薬」が使われます。

「消化管運動機能改善薬」は胃など消化管の動きを良くします。動きが良くなることで食べたものを十分に貯められるようになり、すぐに満腹感を感じてしまうことがなくなります。

また胃の中のものを十二指腸へとスムーズに送ることで胃に内容物が停滞することがなくなり、胃もたれも改善されていきます。

消化管運動機能改善薬

  • モサプリド(商品名:ガスモチン)
  • アコチアミド(商品名:アコファイド) など

実は日本では2013年に機能性ディスペプシアの治療薬として「アコファイド」という薬が世界で初めて発売されました。アコファイドは副交感神経の刺激を強めることで胃の運動を活発にさせる薬です。

胃腸の動きは、副交感神経が優位に働いているときに活発になります。ストレスがかかると、副交感神経の働きは弱まり、交感神経が優位になってしまうために胃腸の動きが悪くなっています。

副交感神経では「アセチルコリン」という神経伝達物質の存在が重要です。アセチルコリンが増えれば、副交感神経からの刺激が十分に伝わって、その結果胃腸の動きも良くなるのです。

アコファイドにはアセチルコリンを増やす作用があります。(アセチルコリンを分解してしまう物質の働きを失わせます。それによりアセチルコリンが分解されなくなり、結果的にアセチルコリンが増えます。)

アセチルコリンが増えると副交感神経の刺激が強まって、胃腸の動きが良くなるのです。そのおかげで胃もたれやすぐ満腹になってしまうなどといった症状を改善することができます。

使い方は1日3回、食前に服用になっています。食後服用では効果がだいぶ減ってしまうため、食前に忘れず服用することが大切です。副作用はあまり多くないようですが、まれに下痢、便秘、吐き気などがあるかもしれません。

使ってみて効果がなかったり逆に悪化したといったときには、早めに医師に相談してください。なおみぞおちの痛みに対しては有効性が確認されていませんが、改善したという例もあるようです。

心窩部痛症候群(EPS)には胃酸分泌抑制薬

みぞおちの痛みが出たり、みぞおち付近に焼けるような不快感が出るといった「心窩部痛症候群」には胃酸分泌抑制薬が使われます。

みぞおちの痛みなどは、胃腸が胃酸の刺激に過敏になってしまったために起きています。そのため胃酸の分泌を抑えることで、胃腸への刺激を抑えて症状を改善させられるのです。

胃酸分泌抑制薬

  • プロトンポンプ阻害薬(PPI)
  • H2受容体拮抗薬(H2ブロッカー)

プロトンポンプとは胃の壁細胞にある、胃酸を分泌する部分です。プロトンポンプ阻害薬は、ここの機能を阻害することで胃酸の分泌を抑制することができます。

H2ブロッカーは、胃の壁細胞にあるH2受容体という部分に作用します。通常、ヒスタミンがH2受容体に結合すると、胃酸が分泌されます。H2ブロッカーはヒスタミンがH2受容体に結合するのを邪魔することで、胃酸の分泌を抑制します。

プロトンポンプ阻害薬にはタケプロンやネキシウムといった薬があります。H2ブロッカーとして有名なのはガスターです。

運動機能改善薬や胃酸分泌抑制薬で効果ない場合には

消化管運動機能改善薬や胃酸分泌抑制薬を使ってもあまり効果がなく症状が改善しないといったときには、「抗不安薬」「抗うつ薬」「漢方薬」が使われることもあります。

機能性ディスペプシアの原因のひとつにストレスがあげられます。強いストレスがあったり、不安感や気持ちの落ち込みなどがあると、自律神経のバランスが乱れてしまい機能性ディスペプシアの症状が出てしまいます。

そのため抗不安薬や抗うつ薬などを使って様子をみるのです。実際、これらの薬を使うことで症状がすっかり改善するということもあります。

胃の動きを活発にするような漢方薬が使われることもあります。みぞおちの痛みなども楽になります。使われる漢方薬は「六君子湯」や「半夏瀉心湯」などです。

ただし薬を飲むだけでなく、今までの生活を改善したり体を動かすようにしたりといった日頃の習慣の見直しもとても大切です。薬だけに頼ってしまわないで、今までの生活習慣も見直してみましょう。

治療には医師との信頼関係も大切です。医師に話を聞いてもらうだけで、症状が良くなることだってあるんです。

もしも診察に不満があるのなら……病院を変えてみることも選択肢のひとつかもしれません。

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