健康生活TOP 視力低下 暗いところで本を読むと目が悪くなる、は本当?明るさと視力のお話

暗いところで本を読むと目が悪くなる、は本当?明るさと視力のお話

暗闇で読書する女の子

「暗いところで本を読むと目が悪くなるから、明るくして読みなさい。」と言うしつけを受けて育った方は多いでしょう。ですから、一般的には暗いところで本を読むと目が悪くなると信じられています。

しかし、どうやら暗さと視力低下には明らかな相関関係は見つかっていないということが2012年あたりからささやかれだされました。テレビの健康バラエティが発端であったと記憶しています。

本当に明るさと視力は関係ないのでしょうか。単純化しすぎた考え方は間違いを産みますので、少し詳しく見てみましょう。

「関係がない」と言う表現は誤解を生みやすい

学問的に研究する際には、例えば「暗い場所での読書と視力低下について」を研究するのであって、「視力低下とは関係がない」と言うことを研究するのではありません。「関係がない」などのような、否定を目的とした証明は大変困難なのです。

もし、現段階で視力と明るさについて関係がないと言うのであれば、実際のところ「暗い場所での読書と視力低下についての関係は見つかっていない」と言うことになるでしょう。言い換えればこれから見つかる可能性は否定されていないということでもあります。

視力低下についてどの段階を対象にするかでも変わる

なぜ暗いところと視力と言う話題が広がり始めたのかを疑問に思って、何か論文の発表があったのかと探してみましたが、特にそれらしいものは見当たりませんでした。

ただ、1999年に有名な科学雑誌”Nature”に発表される直前の論文の要旨を、発表される学者さんが所属していた大学がリリースして見たものを見つけました。

チームが得た結果によると、2歳から16歳の子供のうち、2歳未満の時点で夜間真っ暗な中で眠っていた子供の場合、この研究の時点で10%に近視が見られました。

また、2歳未満の時点で夜間常夜灯を点けて寝た子供のうち、研究時点では34%が近視になっていました。そして、2歳未満の時点で夜間にもかかわらず通常の室内灯を点けて寝ていた子供の場合、55%が近視になっていました。

研究時点での眼の屈折異常と夜間の照明との関連性は2歳未満の場合にのみ見つかっていて、その後の年齢層では関連性は見出されませんでした。この期間に眼が急速に成長するので、研究チームは2歳を区切りにして研究しました。

(要旨のみ抜粋翻訳)

※引用文を掲載していたページがペンシルバニア大学のサイトから削除されました。1999年と少し古いものだったせいだと思われます。この論文はnature誌の電子版に掲載されていますが、有料会員しか読むことができません。

そこで、この論文を紹介した雑誌のページをリンク先として紹介しておきます。
(参照記事(英文))

このように、2歳未満の赤ちゃんを夜に明るい中で寝かせていると、眼の成長に異常が出て近視になりやすいと言う内容の研究発表が行われていました。

この論文から、暗いところと近視の関係の話題までは10年以上のギャップがあるので、直接は関係ないかもしれませんが、赤ちゃんが夜に寝る環境と、将来の近視に関係があるという情報は貴重なので紹介しました。

赤ちゃんのいる環境では、夜間は常夜灯も点けずに、真っ暗にしておくことが望ましいでしょう。特に日が暮れてから、親御さんがベッドに入るまでの間が問題ですね。大人にとっては夕方・宵の口であっても、赤ちゃんにとっては夜間です。

できるだけ眠っている赤ちゃんの目に、照明の光が直接当たらないようにするなどの工夫をしてあげることが、将来の近視を防いでくれることにつかがるかも知れません。

この論文に関しては、最も眼が成長する時期に、日没後の時間帯に光の刺激を与え続けることが、眼を成長させすぎて目の奥行きが深くなり、将来の近視につながるのではないかと言う、お医者さんの個人的見解も見られました。

近視は眼本体あるいはレンズに問題がある

近視と言うのは、上でお話ししたように目が大きくなりすぎたり、奥行きが長くなりすぎて起こる「軸性近視」と、レンズ(水晶体)の部分が分厚くなりすぎる「屈折性近視」の2種類があります。

例えば、子供のころによくある、近くのものを長時間見続けたために、眼の水晶体を分厚くして屈折率を上げる状態が元に戻らなくなって発生する「仮性近視」は屈折性近視です。

あまり繰り返すと、本当の屈折性近視になってしまうかもしれませんが、多くの場合、水晶体の厚みを変える毛様体の緊張が解けると、仮性近視の状態は解消されます。

それに対して、何らかの事情で目の奥行きが長くなってしまったがために、水晶体によって像を結ぶ位置が網膜より水晶体寄りになることで近視が起こるのが軸性近視です。

近視の多くは軸性近視です。軸性近視は遺伝によって要因が決められることが多いため、両親のいずれかが近視であると子供も近視になりやすいです。

また、上で引用したように、2歳までの赤ちゃんの時の生活環境によっても軸性近視が起きやすいという報告もありますから、充分注意してあげましょう。

一方、屈折性近視は目を酷使した時に起こる仮性近視や、その延長上にある近視です。ですので、目を酷使する作業に従事すると視力が低下する可能性はあります。

夕食後など、大人にとってはテレビを見て楽しめるくらいの時間であっても、赤ちゃんにとっては眠るべき夜と言うことになります。そんな時に明るすぎる環境は良くないと言うことですね。

暗いところで作業や読書をしても視力に悪影響がないのか?

実際、暗いところでの読書などが視力に影響を与えなかったという研究もあるようですが、ここで誤解してはいけないのは「暗いところで本を読んでも視力は落ちなかった」と言う結果は「眼に悪影響を与えなかった」とイコールではないと言うことです。

簡単に言えば、「暗いところで本を読むと眼が疲れる」ということも悪影響の1つですが、これを否定した研究と言うものは見当たりません。

対象物が暗いと瞳孔を開いて見る必要がある

近年普及が進んでいるデジタル一眼レフカメラを使っておられる方なら理解しやすいと思いますが、絞りを開くとピントが合わせにくいんです。逆にそれを利用して、主題の対象物以外をぼかして撮るテクニックもよく使われますね。

人間の眼には、虹彩とそれによって眼の中心に形作られる瞳孔があります。この瞳孔の大きさが絞りの状態を表しています。網膜に届く光の量を調節するため、明るいところでは瞳孔が小さくなり、暗いところでは瞳孔が大きくなりますね。

これはカメラの絞りと同じ役目を果たしますので、明るいところで瞳孔が小さくなっている時には、何もしなくても視界の範囲のどこにでもピントがあいます。

あまり良い例の写真ではありませんが、対象物の前後にもピントが合うか、対象物だけにピントが合うかのイメージだと思ってご覧下さい。

視界の範囲のどこにでもピントがあっている状態の像

これに対して、暗いところでは絞りを開かないと光量不足になりますから、瞳孔が大きくなって光を多く取り込もうとします。その結果、絞りが開いてピントが合わせにくくなります。

この様なシチュエーションでは、水晶体の厚みを変えて、見たいところにピントを合わせないと見えないという現象も起こります。

さらに、暗いところで本を読もうと思うと、顔の近くに本を持って来ないと見えにくいため、さらに水晶体を厚くして「頑張って見る」状態が要求されます。

見たいところにピントを合わせないと見えない状態の像

暗いところの読書や作業は眼が疲れる

このように、水晶体の厚みを変えて狙ったところにピントを合わせようとすると、毛様体を構成している筋肉が疲れます。眼のレンズ部分は、毛様体筋がドーナッツ状に存在していて、水晶体との間をチン小帯と言う組織が繋いでいます。

毛様体筋に力が入っていないときは、チン小帯を通じて水晶体は外側に均等に引っ張られ、薄くなっています。何かを注視しようとして、毛様体筋に力が入ると、ドーナッツの穴が小さくなります。

水晶体はもともと自分自身の曲率のせいで、直径が小さく、厚みが分厚くなろうという性質があるため、ドーナッツの穴が小さくなると外側へ引っ張られなくなるので、分厚く小さくなって、屈折率を上げることになります。

明所と暗所の目の働き

すると、近くのものを凝視しやすくなるわけですね。しかし、力を入れっぱなしでは筋肉が疲労しますし、場合によっては元に戻りにくくなって、遠くのものが見えにくくなります。これが屈折性近視です。

そこまで疲労しなくても、いわゆる「眼の疲れ」は起こりやすくなります。照明を準備することが難しくない現代のことですから、わざわざ眼が疲れやすい環境で読書や作業、勉強をする必要はないでしょう。照明を点けて行って下さい。

暗いと眼が疲れやすくなるのは確かです。特に読書など外光の反射で眼に情報を入れているものはそうなります。では、テレビやスマホなど、自分で光を出すものはどうなのでしょう。

反射光ではなく自発光で表示するものと環境の明るさの関係

テレビやパソコン、スマホなどで使用されている液晶パネルや有機ELパネルは、パネルが光を出しているので、照明を当てなくても見えます。では環境の明るさは関係ないのでしょうか。

実は、こうしたモニター画面を見ている時に、環境が暗いとかなり目に負担がかかるのではないかと言うことが疑われ始めているのです。

周辺を映している部分にも眼の調整機構が関与する

私たちの視野と言うのは意外に広く、テレビを見ている最中に自分の真横にある壁を不快害虫が走っても、「なにか黒いのが動いた」と言う感じで見えるくらい、広い範囲から光が入ってきています。

つまり、正面からくる光だけではなく、脇から入ってくる光も網膜に届いているということになります。もちろん網膜中央に届く光が、最も眼の調節に関与していることは言うまでもありませんが、周辺からの光も目の調節に関与している可能性があります。

そうなってくると、暗い部屋で明るいテレビを見ていた場合、その明るさの差によって眼に大きな範囲の調整を要求することになりますし、一時的か恒久的かは別にして視力にも良くない影響が出るでしょう。

実際に、厚生労働省のVDT症候群に関する対策を見てみると、モニター画面とその他の環境の明るさの差をできるだけ小さくするように呼びかけられています。

(VDT症候群:パソコンモニターなどの視覚表示端末(Visual Display Terminal)による長時間作業で起こる目の症状で、IT眼症、テクノストレス眼症とも呼ばれるものです。)

このことから、自分で光を出す装置であっても、明るい環境の下で使うようにすることが、眼にストレスをかけないということが明らかですね。ただし、暗い環境下でモニターを使用することが視力低下を招くかどうかは充分なデータがないので判りません。

液晶パネルは裏側からバックライトと言う照明を使って透過光を見ていますから、液晶自体は光っていません。一方、有機ELパネルは、パネル自体が光ります。しかし、私たちの目から見た場合、どちらも「見る対象物が光っている」状態と言えるのです。

モニター画面には照明や自然光が入らないようにする

例えば窓を背にしてパソコンを使っていたり、昼間に外でスマホや携帯を使っていたりすると、太陽の光が画面に映り込みますね。これは非常に目に負担を掛けますので、モニターの向きを変えたり、影になっている場所に移動するなりして対策して下さい。

パソコンの場合、モニターを切った状態で画面に何かが映り込んでいないかをチェックしましょう。ノングレアタイプのモニターだと、照明にさえ気を付けていれば問題ありません。

発色が美しい、つやのあるタイプのモニターでは、明るい色の物が映り込むこともあるので、自分にとって不快でない状況を良く調べましょう。

暗い環境下ではスマホや携帯を見ない方がいい

これは視力・眼の疲れと言う観点からだけではなく、全般的な安全と言う方向から見て、暗いところで携帯などを見続けることは避けた方が良いだろうということです。

例えば夜の住宅地で歩きスマホでもやっていた時に、向こうから同じように歩きスマホの人が近付いてきた場合、足音で気づいて前を見ても、スマホ画面の明るさに慣れた目では、相手がはっきり見えない可能性が高くなります。

こんなことで他人にぶつかって転倒でもしたら、怪我をしたりさせたりする恐れもありますし、そうでなくともかなり恥ずかしい思いをするでしょう。

歩きスマホは論外としても、夜の道で携帯やスマホに熱中している人は、ひったくりなどの犯罪を行う者に取っても格好のターゲットになります。しかもとっさに人相風体すら見えないのでは警察に被害を届けるにしても情報が少なくなりますよね。

ですので、携帯・スマホ・タブレットなどの移動型携帯端末の使用は、充分に明るい環境で行うようにして下さい。

電子書籍は電子ペーパーを使っているので、最もシンプルなものは紙と同じで照明が必要です。照明付きのものもありますが、結局周辺の明るさが必要なのであれば、一番安い照明なしのもので良いかもしれませんね。

明るすぎる環境は眼に悪くないのか

ここまでは暗い環境で見たり読んだり作業したりと言うことの弊害について見てきました。では逆に明るすぎる環境と言うのは眼に悪くないのでしょうか。

特にLED照明が普及しはじめて、ちょっと明るすぎるなと感じることも少なくありません。こうしたことは眼に悪くないのでしょうか。

明るすぎるほどの環境は作るのが大変

物が照らされるときの明るさの単位はルクス(lx)で測ります。太陽の光で照らされている時の明るさが10,000ルクスくらいですので、それ以内であれば眼に悪影響はないでしょう。もちろん光源である太陽を直接見ちゃダメですよ。

一般的な事務所で明るめのところであれば400ルクスくらい、テレビ局のスタジオですらせいぜい1,000ルクスくらいです。

ですので、一般的にテレビ局のスタジオより明るい環境をわざわざ作ることも珍しいでしょうし、ましてやその数倍以上の明るさと言うのは異常だと言って差し支えありません。

もちろん明るすぎる環境は眼によくありませんが、眼に異常をきたすほど明るい環境と言うのは普通では考えられません。例外はアーク溶接のスパークでしょうか、あれは特に紫外線領域で太陽光より明るいですから、防護マスクが必須です。

LED照明器具にはワット数相当の換算値が載っている

これまで使っていた照明器具をLED照明に換えたら、なんだか明るくなりすぎたと言う話も聞きますが、これはLED照明が明るいというより、機器の選定の際に「つい明るいのを選んだ」と言うことが多いのではないかと考えます。

ただ、従来の照明器具では消費電力を基準に表示されていたものが、LED照明は消費電力が少ないため、実際にどれだけの光を出しているのかと言う「光束密度」(単位:ルーメン(lm))で表示されるので判りにくくなっているということもあるでしょう。

ですから、対応表を良く見て、従来ついていた照明器具と同じレベルのものを選ぶのが確実です。とはいえ、シーリングライトなどは調光機能が付いたものが多いので、多少明るくても、明るさを落として使えば問題ありませんね。

また、電球型LEDでは下だけを照らすタイプと、可能な限り広い範囲を照らすものがありますので、そうした場合同じルーメン数で表されていても、真下での明るさが変わるという場合もあります。

いずれにせよ、家庭用の照明で目を傷めるほど明るくなるということはないと考えて差し支えありませんから、神経質になる必要はありません。

ブルーライトについても家庭用製品では特に心配ない

LED照明器具によるブルーライトがサーカディアンリズムを乱すなどの問題が提起され、以来LED照明が眼や身体によくないのではないかと言うことが心配されてきました。

例えば、アメリカ医師会は高輝度街路灯によるブルーライトの害を減らすための提言を2016年夏に出しています。一方、メーカーなども対策に乗り出していますし、これからはさらにブルーライトの弊害は減ってくるでしょう。

それに、現段階でも家庭用のLED照明のブルーライトによる網膜傷害のリスクは、従来の照明と変わらないというデータも出ています。

日本照明工業会は、専門家からのアドバイスとして次のようなことを提案しています。

  • 起床時刻より14時間が経過したタイミングで夜間照明を意識する
  • 常に全灯ではなく適切な明るさにする
  • 日中は色温度を上げ、日没後は色温度を下げるなどの対応を取る
  • スタンドを利用して直接目に入る光の量を減らす

これによると、メラトニンの分泌は習慣的な起床時刻から14時間後が分泌開始の目安になるそうです。そして、ついついいつも全灯させる人が少なくありませんが、TPOに応じた明るさ設定を意識してください。

色温度と言うのは光の色の質です。例えば白っぽい「昼光色」は色温度が高く、黄色っぽい「電球色」は色温度が低いです。シーリングライトなどは、明るさだけでなく色温度を変えることもできる物もありますので、時間帯に応じて切り替えましょう。

日が高いうちは昼光色、日が沈んだら電球色と言うのがお勧めです。また、切り替えが効かない電球型LEDの場合、色温度が機器に表示されています。色温度の単位はケルビン(K)です。

昼光色で5000K~6500Kぐらい、電球色は2700K~3000Kぐらいです。その間は白色で、数字が小さくなるほど黄色っぽく柔らかい色になります。

こうしたことを踏まえて、テレビやパソコン、スマホなどを使うときは充分な明るさを確保しながら、夜間には色温度を下げた照明がお勧めですね。

LED照明は虫が寄りつきにくいというメリットもあるそうですね。いずれは全部LEDに替わってゆくのでしょうか。

昔から言われている「明るいところで本を読め」は正しかった

このように、不十分な照明の下で読書や勉強、作業などをしても、視力が落ちるということは確認されていませんが、眼精疲労には繋がるので「暗いところで本を読むと近視になるは迷信だ」と切って捨てることなく、先人の経験を尊重しましょう。

また、自分で光を出すから暗闇でも見えるテレビやパソコン、携帯、スマホなども、画面と周辺との明るさに差がない程度の照明の下で使うと、眼が疲れにくくなります。

さらに、照明が明るすぎて眼が疲れるという声も聞かれるLED照明器具については、明るさや色を切り替えられるというメリットを生かして、これまでにはなかった照明による環境作りを楽しんで下さい。

最後におまけを一つ。これからスマホなどに多く採用されるであろう有機ELは、原理としてはLEDと同じものです。ですので、有機EL照明と言う物もそのうち普及してくるでしょう。ブルーライトも少ないと聞いています。

七夕の有機led短冊

これは照明のデモンストレーションとして作られた「七夕の有機EL短冊」なんですよ。

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