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プールの後にベッドで死亡!原因は乾性溺水と呼ばれる二次性溺水

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溺水と言うのは「溺れること」です。もう少し突っ込んだ言い方をすると、溺死するまでの途中経過を溺水と言っても良いでしょう。でも、タイトルにある二次性溺水とか乾性溺水と言うのは、何か妙な響きですよね。

溺れていたところから助かったら、一次も二次もないじゃないかと思えます。さらに「乾性」の状態で溺れるって、いったいどういうことなのでしょう。

これは、言い換えるとプールや海水浴で溺れかけた後、時間が経ってからそのことが原因で呼吸器不全を起こして、生命の危機に見舞われると言う現象なのです。

乾性溺水と言う言葉は誤用?溺水・溺死の種類とその症状は

溺水と言うのは溺れている、あるいは溺れていたと言うことです。その現象が救命されて終われば溺水と言う名前のままですし、死で終われば溺死と言うことになります。

そして、この溺水・溺死は発生したメカニズムによって4種類に分類されています。

(1)wet drowning
(湿性溺水)
液体が肺胞内に入り、窒息を起こす型で、頬度が高い。
(2)dry drowning
(乾性溺水)
液体の刺激により反射的に喉頭けいれん、気管支けいれんを起こすもの。肺内に水分は認められない。
(3)immersion syndrome 冷水に浸った瞬間に副交感神経反射により心停止を起こすもの。
(4)secondary drowning
(二次溺水)
一時的に症状が軽快しても数日後肺水腫、肺炎にて悪化するもの。

このようになっています。今回の話題は一番下の4番の溺水です。

プールの後で体調不良を起こすのは「二次性溺水」

2013年6月、インターネット上で話題になった事故がありました。アメリカの10歳の少年がプールから帰宅後、疲れたからと昼寝をしているうちに、母親が気づいたときには泡を大量に噴き出して亡くなっていたと言う痛ましいものです。

この事故に関して、日本でも充分起こり得るからと、様々なサイトが全国の親御さんに注意を呼びかけたわけですが、どこかで用語が誤用され、この現象を乾性溺水と呼んでしまったのが拡がったようです。

泳ぎが継続できなくなったり、水中に転落したり、乳幼児がお風呂に落ちたり、高齢者が入浴中に気分が悪くなって溺れたりと言う事故では、最初に水を吸い込んでしまいます。

その際に、最初に水を吸い込んだ刺激で、声門など喉頭部分や気管支が閉じます。これは気管や肺の中に水が入ってくるのを防ぐための、身体の反射的な防御反応です。その反応が過剰になると、咽頭部分が痙攣を起こして完全に閉じてしまいます。

そうなると、呼吸が全くできなくなるため、その状態が継続して意識を失ったり死んだりすることを乾性溺水と言っています。この場合、ほとんど肺に水を吸い込まないので「乾性」溺水と呼ぶのです。

一方、痙攣が起こるほどの強い反射的動作が出なかった場合には、意識を失ってしまった際に気道が開いてしまって、水の中で終末期のあえぎ呼吸が発生して肺の中まで水が入り込み呼吸が止まってしまいます。

肺の奥にまで大量の水が入り込むため、これを「湿性」溺水と呼んでいます。

この2つの現象は、溺れた人の中には、ほとんど水を飲んでいない人と、大量の水を飲んでいる人がいることを良く説明してくれています。

ですので、最初にあった少年の事故のように一旦普通の生活に戻りながら、泳いでいた時に何らかの原因があって、溺水・溺死に繋がるものは、乾性でも湿性でもなく正しくは「二次性」溺水と呼ぶのです。

二次性溺水は肺水腫などの急性呼吸器疾患!そのメカニズムとは

アメリカの少年の例では、大量の白い泡を吹いていたと言うことですので、おそらく肺水腫ではないかと想像されます。実際に、溺れて救助された時には軽症でも、その後で肺水腫や肺炎などを引き起こすケースがあります。

肺水腫は心臓病などの病気によって引き起こされることの多い病気ですが、外傷性のものも少なくありません。この場合、肺に吸い込んだ水が原因で、肺胞が壊れることで発生したと考えて良いでしょう。

実際に、二次性溺水はどちらかと言うとプールよりも海水で溺れた場合に多く発生します。とは言え、お風呂で溺れたような例でも発生していますので、プールだから安心と言うことはありません。

肺水腫では、壊れた肺胞から水分が滲み出して、呼吸によって吸い込んだ空気から酸素が血液に届かなくなる状態になります。肺に水を吸い込んで溺れた時と同じと言えるでしょう。

正常な肺と肺水腫の酸素の供給の簡略図

肺水腫では白い泡だけではなく、ピンクの泡を吹くこともあります。

溺れた時の状況によってその後の運命は大きく変わる

万が一溺れた場合でも、本人ががんばって助かったり、誰かの手を借りて水から上がることができればそれほど酷いことにはなりません。

逆に10分以上水没していたり、一旦は息を吹き返しても、蘇生に20分以上要したものはまず助かりません。何とか助かっても植物状態など、かなり大きな後遺症が残ります。

一方、先に紹介した4種類の溺水のうち、immersion syndromeと言う冷水によって心臓が止まったと言うような場合で、氷水レベルの冷水であった場合、一気に体温が下がるため脳が保護される場合があります。

溺れて長時間心肺停止状態だったのに、奇跡的に生き返ったと言うレアケースは、こうした条件が整っていたと考えられています。子供の場合体が小さいため、冷やされやすいので、こうした奇跡的な現象は子供に見られるようです。

さて、ここで問題なのが、溺れて人工呼吸によって息を吹き返した場合です。人工呼吸が必要になった人の72%に後から肺水腫が、14%に肺炎が見られたと言いますから、人工呼吸で助かった人の86%になんらかの異常が後から起こると言うことです。

ですから、そうした事故にあったら入院して経過を観察してもらうと言う措置が重要になるでしょう。もちろん、確率は下がるものの、遊泳中に誤って水を呼吸器に吸い込んだら、あとでトラブルが起こる可能性は出てきます。

肺水腫は、言ってみれば自分の身体から出た水分で溺れてしまうと言う状態です。その肺水腫の原因が泳いでいる時に吸い込んだ水だから「二次性溺水」と呼ばれると言うわけなのです。

水を飲んでしまったらその日の遊泳は終了する

大人でも子供でも、溺れかけて水を飲んでしまったり、ひどく咳き込んでしまったりした場合は、大丈夫だと思ってもその日の遊泳は終わりにして、身体を休める屋内へ戻って下さい。

二次性溺水の症状は早ければ1時間ぐらいで出ることもあります。「ちょっと溺れかけたけど平気」などと思って泳ぎを続けていて、水中で発症したら助からなくなるかも知れません。

まずは屋内で身体を休め、症状が出ないかをチェックしておきましょう。子供の場合は親御さんが付き添ってあげて下さい。

  • 唇や皮膚が紫色になる
  • 呼吸が苦しくなる
  • ゼーゼーと言う呼吸音がする
  • 横になると苦しい
  • 白やピンクの泡や痰を吐く
  • 冷や汗が出る
  • 発熱
  • 咳・痰
  • 全身の倦怠感
  • 胸の痛み

これらの症状が出てきた場合や、原因不明の体調不良がある場合などには、すぐに受診して溺れかけたと言うことをお医者さんに伝えて下さい。一刻も早く適切な処置を受けることが、症状を重くしないために最も必要なことです。

滅多にないことですが、重症化して急性呼吸窮迫症候群と言う状態になってしまうと、死亡率が40%くらいもある、重大な状態に陥ります。

もう溺れていないからと安心するのではなくて、念のため注意しておくと言う姿勢が生命を救ってくれることもあるのです。

子供の二次性溺水は親が子供に注意を向けることが大切

二次性溺水の可能性があるのは、肺に水を吸い込んでから120時間以内と言いますので、5日間です。これは非常に長い期間ですが、早い場合数時間で初期症状が現れます。

ですから、子供がプールなどで泳いで帰ってきた時には、トラブルがなかったかどうかを確認し、疲れ方が普段に比べて激しすぎないかと言った子供の様子をしっかり観察しましょう。

溺れかけたと報告したら、親に叱られると思って隠す子もいると思われます。親御さんの観察力が重要なのです。

乾性溺水では二次性溺水は起こりにくい

肺の中に入り込む水の量がごく少量ですから、乾性溺水では肺炎や肺水腫が引き起こされる二次性溺水の可能性は、湿性溺水に比べると低くなっています。

それでも全く可能性がないかと言うと、そうとは断言できないので、「今日溺れかけて、大丈夫だったけどひどく咳が出て苦しかった。」と言うような話を子供さんから聞かされたら、様子を良く見ておいてあげて下さい。

もちろんすぐに受診してお医者さんに相談するのも悪くないです。水があまりきれいでないような場所で溺れかけたりした場合、お医者さんが必要に応じて、抗生物質を予防的に処方して下さることもあります。

もちろん、「溺れかけて水を飲んでしまった」と言うような場合は、特に問題や異常がなくても、お医者さんに相談に行くと言うつもりで受診されるのが良いでしょう。

また、すぐに受診するのが大げさだと思われるような場合には、目の届くところで寝させてあげるのが良いですね。もし、夜中に息苦しさを訴えてベッドに起き上がるようなことがあればすぐに病院へ行って下さい。

肺水腫の初期には、寝ていると苦しくて、起き上がると楽になるという現象が起こることがあります。その他にも唇が紫色になったり、冷や汗をかいたり、ゼーゼーと苦しそうな呼吸音が聞こえたりしたらすぐに救急車を呼んで下さい。

二次性溺水の予防はプールで泳ぐこと

二次性溺水を完全に予防する方法はありません。しかし、汚れた水や浸透圧の高い海水で泳ぐと、誤って吸い込んだ時に感染して肺炎を引き起こしたり、浸透圧で肺胞の血行障害が起こったりしやすくなります。

ですので、学校やスイミングスクールなど、きちんと消毒された水のプールで泳ぐことが、万が一水を気管に吸い込んだ時にも二次性溺水の原因になる肺炎や肺水腫を起こしにくいと言えるでしょう。

そうしたところでしっかり泳ぐ技術を身に付ければ、海や湖、川などで泳ぐようになっても、溺れかけると言うそもそもの原因を防ぐことができます。

現在の都市部では、プール以外で泳げることは少ないですが、遊泳区域に指定された河川などでは、全くゼロと言うわけではありませんし、海が近いところでは都市部近辺でも海水浴はできます。

そうしたところへ出かける前には、しっかり泳げるようになっておくことが重要です。

一方、乳幼児では水に落ちた時に水を飲まないようにすると言う反射が充分ではない場合がありますので、大量の水を飲むこともあります。そうした場合には必ずお医者さんに診てもらって、体液に変調が出ないようにする対処を行ってもらいましょう。

アメリカの例ではプールから帰った後の発症だったようですが、アメリカの公立小学校にはめったにプールがありません。私立ですら少ないですね。ですので、日本とはちょっと状況が異なったのかも知れません。

むしろ注意しなければならないのは乳幼児の二次性溺水

つかまり立ちができるようになったくらいの乳幼児では、家庭内で浴槽に転落する事故が割合多く起こっています。これによる溺死事故も海外の先進諸国に比べると高い頻度で起こっています。

これは浴槽にお湯を張ったままにする習慣がある日本と、そもそも浴槽を使うことが少ない海外との差とも言えるわけですが、とりあえずお子さんが小さいうちは浴槽にお湯を張りっぱなしにするのは避けた方が安全ですね。

日本では、入浴後にすぐ浴槽のお湯を抜くご家庭は30%程度だそうです。私自身も子供のころから「火の用心として、お風呂の残り湯は絶対に抜いてはいけない」としつけられてきました。でも時代は変わったと認識すべきなのでしょう。

溺れなくてもお風呂のお湯が不潔だと二次性溺水の原因になる

レジオネラ菌と言う肺炎の原因菌があります。主に公衆浴場や温泉施設の衛生管理が悪くい場合に繁殖して、水しぶきが常に上がるような環境でお子さんやお年寄りが肺炎を起こす起炎菌になるものです。

家庭用のお風呂では、めったに同じ原因で肺炎を起こすことはありませんが、赤ちゃんを浴槽に入れている時に、少量のお湯を飲んでしまうことがあります。

それが運悪く肺の方に入ってしまうと言うことが繰り返されると、ある種の二次性溺水としてレジオネラ肺炎を引き起こすことがあります。

また、年配の方がお風呂でうとうとしたり、足を滑らしたりしてお湯を吸い込んでしまった場合にも、多少のリスクは発生します。

ですので、赤ちゃんの場合は「ちょっと元気がない」と言う程度の状況であっても、念のため聴診器を当ててもらって下さい。もちろん熱が出たらすぐに受診です。

年配の方は自分で思い当たる節があったらご自分で受診をお願いします。レジオネラ菌は肺炎桿菌で肺炎球菌ワクチンは効きませんので、「肺炎の予防注射を打っているから大丈夫」とは考えないで下さい。

年配の方の場合高熱が出ることも少なくありません。ここでもお風呂は入浴後にお湯を抜いておいた方が良いのかもしれません。お風呂のぬめりはいわゆるバイオフィルムと呼ばれるもので、ここにレジオネラ菌が繁殖する可能性もあります。

小さなお子さんだけでなく、ご高齢の方がおられるご家庭でも、お風呂の残り湯は入浴後すぐに抜いておいた方が良いかもしれませんね。

子供の場合はお風呂遊び程度では感染しにくい

学童期ぐらいになるとそこそこ免疫力もついてきますし、お風呂で親御さんの手がすべって水没することもありませんから、まず心配はありません。

しかし、この年齢になるとお風呂で潜りっこをしたり、スーパー銭湯などに出かけてはしゃぎまわると言うことは良くあります。

もし、息苦しさや発熱など、肺水腫や肺炎を疑うような症状が出た時には、プールや海水浴の他、スーパー銭湯などの施設に出かけたことがないかもよく思い出して受診させてあげて下さい。

子供にお風呂でおとなしくしていなさいと言うのは、まず無理な話ですよね。でも、けがや病気につながらないよう、親御さんが注意しておいてあげて下さい。

泳げない子供は波のあるところで遊ばせない

親御さんがついておられる場合はともかく、小さなお子さんだけを波打ち際などで遊ばせてはいけません。できれば親御さんが一緒でも、波のある時には避けた方が良いです。

小さいお子さんの場合、波をかぶっただけでパニックになり、水を吸い込んでしまいかねないのです。それどころか泳ぎの達者な選手でも、オープンウォーターでの大会などでは、高波をくらって溺れることがあるくらいなのです。

波は常に変化するので海水浴では注意を

遊泳中はもちろん、波打ち際で遊んでいたも高波にさらわれると言う事故は発生します。波の高さと言うのは常に変動しています。

例えば、60cmの波が打ち寄せている浜辺では、8分に1回ぐらい90cmくらいの波がやってきますし、1時間余りに1回ぐらいの割合で1.2mを超える波がやってきます。

そうした場合、波打ち際で遊んでいると、高い波がやってきた場合、頭からかぶるかもしれませんし、引き波にさらわれて海に引き込まれるかもしれません。

その場所が運悪く離岸流の発生する場所であった場合、泳ぎの達者な人であっても、どんどん岸から沖へと流されてしまいます。

離岸流とは、沖から打ち寄せてきた波が海に戻る際に、次の波と干渉しあうため、水の流れが沖へ向かう帯状のエリアが海の中に発生している部分のことです。いわば海の中の川のような物で、沖が川下に当たるのです。

波にさらわれた時だけでなく、遊泳中に海岸に戻れないと感じたら、大抵の場合この離岸流に捕まっています。取り敢えず海岸と平行に数十メートル横に泳げば離岸流から逃れられますので、それから岸に向かって泳いで下さい。

この離岸流に捕まると、パニックになって水を飲んでしまう人が多いのです。もし、そんな経験をしたら、健康な大人であっても数日間は体調に変化が出ないかを注意しておいて下さいね。

お風呂や洗濯機も危険!家庭でも起きうる溺水

海やプールで溺れるということはもちろんイメージできると思いますが、家庭でも小さなお子さんは溺水してしまう可能性があるので注意が必要です。

大人ではなんともないと思える水の集合が、子供の溺水を招いてしまうのです。浴槽、洗濯機は特に以下のような対応をとってください。

  • 浴槽に落ちないように、お風呂場の鍵を閉めて置く
  • 浴槽に落ちないように、浴槽には蓋をしておく
  • 洗濯機は覗きこまないように、踏み台になるものを近くに置かない
  • 洗面台には水をためておかない

例えば食器の洗い物をつけておく桶や、靴下などをハイターしたいわ…というときに桶や洗面台に栓をして水をためておくと思いますが、このような小さな水のかたまりも危険です。

非常に少量の水でも溺水してしまうのです。レジャーやプール遊びだけでなく、家庭でのリスクにも目を向けてくださいね。
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