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やたらに皮膚をかきむしる癖は心の病気?皮膚むしり症を治すには

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「ニキビをつぶすと快感」「かさぶたを剥がすのが楽しい」傷のためにはしない方がいいと知りつつも、こんな感覚をおぼえることがありますよね?

皮膚疾患をいじってもきれいに治れば問題ありませんが、皮膚疾患をいじるのが大好きで患部を悪化させてしまうことが多い方は「皮膚むしり病」になっているかもしれません。癖になると厄介な皮膚むしり病の特徴と治療法について説明したします。

思春期・女性に多い!心の病気「皮膚むしり病」とは

ニキビをつぶす、かさぶたをはがす、ささくれを剥く…といった行為は、日常で何気なく行うことの多い行為。皮膚の一部に何か飛び出ていたりガサガサしている物を見つけたら除去してなめらかな皮膚に戻したくなるのは自然な心理です。

皮膚疾患は自分でいじると細菌が入って悪化しやすくなるため、むやみにいじることはおすすめできません。ただし患部をいじってもしばらく経ってきれいに治り、本人も傷のことが気にならなくなれば、行為自体はそれほど気にしなくても良いでしょう。

もしも皮膚疾患のことがやたらと気になって頻繁にいじってしまう場合は問題です。患部が悪化するほど繰り返しいじってしまう場合は「皮膚むしり病」という病気が原因になっている可能性も考えられます。

皮膚むしり病は強迫性障害と関連した病気

皮膚むしり病は、皮膚をむしる行為をやめようと試みてもやめることができず、健康な皮膚組織まで損傷してしまう病気です。あまり知られていなかった病気でしたが、近年はしばしばメディアで紹介されるようになってきました。

皮膚疾患をいじる癖があっても自分でコントロールできる場合は病気とは言いません。健康な人の約半数の人は、一度は自分の皮膚疾患をむしった経験があるといわれます。

しかし皮膚をむしりたい欲求がコントロールできない場合は、単なる癖とは言えない可能性があります。

皮膚むしり症と診断されるのは、「繰り返しむしることで皮膚が損傷し、病変になっている場合」です。皮膚むしりの行為をしたり、そのことを考えたり、やめようと苦闘している時間が1日のうち少なくても1時間以上費やされています。

皮膚むしり病は、心の病気として認められています。2013年には精神科医療の現場で精神疾患の診断基準として広く用いられる「DSM-5( 精神疾患の診断・統計のマニュアル)」によって「強迫性障害に関連した疾患」という一つのカテゴリーにも分類されました。

強迫性障害は、強迫観念が頭に浮かんで消し去ろうとしても消すことができず、その不安を消し去るために特定の行動を繰り返さずにはいられなくなる病気です。

患者の3/4が女性で、成人の約1%が皮膚むしり病を経験していると推測されています。思春期のニキビがきっかけで発症する人が多い病気ですが、小さな子供にもみられます。

皮膚むしり病はスキン・ピッキング(Skin-Picking)、皮膚摘み取り症、皮膚はがし障害、グルーミング障害、などと呼ばれることもあります。

行為には指で爪を使うほか、毛抜き、安全ピン、シャーペンの先でつついたりすることもあります。

皮膚むしり病の特徴

皮膚むしり病には次のような特徴があります。

  • 皮膚をむしる前は強い緊張がある
  • 皮膚をむしり始めると気持ちが軽くなる
  • いつでもどこでも皮膚がむしりたくなる
  • 何かをしながら無意識に皮膚をむしり始めることが多い
  • 皮膚をむしった後には自己嫌悪に陥る

皮膚むしり病は強迫性障害に関連した病気ですが、強迫性障害とはまた少し特徴が異なります。

強迫性障害のような「絶対に~しなければならない」といった強迫観念や、環境や時間、方法に儀式的なこだわりがなく、あまり意識せずに皮膚をむしり始めてしまうことが多いのです。

皮膚をむしる行為は、

  • 爪の甘皮
  • 髪(頭皮)

など全身の様々な場所が対象となります。中でもニキビをきっかけに顔の皮膚をむしる人が多くなっています。

こんな症状があれば単なる癖ではないかも?皮膚むしり病の症状

ニキビやかさぶたなど自分の皮膚をいじることが多いと自覚している方は、皮膚むしり病の兆候について次の項目をチェックしてみてください。

皮膚むしり病の症状

  • スマホやパソコンを見ながら皮膚をむしることが多い
  • 退屈している時、手持ち無沙汰な時にやってしまう
  • 皮膚をむしり始めると夢中になってしまう
  • 皮膚をむしっている間はリラックスできる
  • やってはいけないことは分かっているので、やった後には後悔の念に襲われる
  • ニキビやかさぶたなどをいじっていたら悪化し、余計にいじるのがやめられなくなった
  • ニキビや傷の存在が気になって頻繁に様子を見てしまう
  • 傷がなければ健康な皮膚をわざとむしることもある
  • 行為を指摘されてからは隠れて皮膚をむしっている
  • 爪がガタガタになるまで噛んだり自分の毛を抜いたりしても気分がスッキリする
  • 皮膚むしりをする癖や傷跡は、絶対に人にばれたくないと思う
  • 傷跡のある皮膚を露出するのが嫌なので人前に出たくないと思う

上記の症状が複数当てはまる方は、皮膚をむしる行為が単なる癖ではなく皮膚むしり病が原因で起こっている可能性もあります。

皮膚むしり病は心の問題にとどまらず、皮膚の傷が深くなって瘢痕が残りやすくなるという深刻な問題を伴うので、早く行為を止めて傷の悪化を防がなければなりません。

皮膚をむしる癖が治らない人は受診を!皮膚むしり病の治療法

皮膚むしり病は特殊な原因で起こる病気ではなく、ニキビやささくれといったほんのささいな皮膚疾患を見つけたことがきっかけで、誰にでも起こる可能性がある病気です。

一度患部をいじると出血や化膿が起こってかさぶたができ、それ以降はかさぶたをはがしては出血や化膿を繰り返す悪循環に陥りやすくなります。

皮膚疾患を見つけたら自分でいじって悪化させる前に、薬を塗ったり皮膚科を受診したりして適切な治療で早く治しましょう。

塗り薬を使えば皮膚の傷は治りますが、皮膚をむしる癖は自然には治りません。本人の意志で行為をやめることができれば一番良いですね。患部をばんそうこうや医療用のテープなどで物理的に隠せば、無意識に皮膚をむしる行為を減らすこともできます。

ただし、自分の意志でやめることが難しいようであれば、早めに精神科または心療皮膚科の治療を受けることがのぞましいです。

専門科では次のような治療が行なわれています。

  • ハビット・リバーサル訓練
  • 弁証法的行動療法
  • セルフアセスメント・セルフモニタリング
  • 薬物療法

皮膚むしり病の治療法:ハビット・リバーサル訓練(Habit reversal training)

ハビット・リバーサル訓練は、癖(Habit)が出そうになった時に意識して逆の行動をとり、癖をしなくても済むように慣らしていく認知行動療法です。

もともと吃音やチック症の治療に用いられていた訓練法で、抜毛症や皮膚むしり症の治療にも一般的に取り入れられるようになってきました。

①気付きの練習(Awareness Training)

まず、自分がどんな時に皮膚をむしるのか確認します。行為が始まる瞬間を見つけ、その時に伴う感情や感覚を探って記録します。

②拮抗反応の練習(Competing Response Training)

皮膚がむしりたくなった時に、拮抗行動(その逆の行動)をとる練習をします。例えば、皮膚をむしりたくなったら、手を握りしめたり腕を組んだりして数分間固定し、皮膚に手が出ないようにします。

これらの動作は容易で周りの人が見ても怪しまれることはないので、いつでも練習することができます。

③周りのサポート(Social support)

患者が拮抗反応の練習に取り組んでいる間は、家族、知人、医師が患者を温かく見守り、練習に成功した場合に褒めるよう努めます。成功した時の嬉しい感覚を重ねて自信を付けさせます。

数週間かけて①~③を繰り返し、皮膚をむしらなくてもよい状態に慣れていきます。

皮膚むしり病の治療法:弁証法的行動療法

境界性パーソナリティ障害など自己破壊的な行動を起こす患者の治療に広く用いられている認知行動療法です。

ネガティブな感情をコントロールして場面に適応した行動を取ることができるよう、個人または集団で訓練に参加し、スキルを習得していきます。

皮膚むしり病の治療法:セルフアセスメント・セルフモニタリング

セルフアセスメント(自己判定)やセルフモニタリング(自己観察)を取り入れた認知行動療法も用いられます。自分の感情や言動を客観的に評価し、思いこみや歪んだ考え方を見つけて修正していく方法です。ハビット・リバーサル訓練に併用することもあります。

皮膚むしり病の治療法:薬物療法

残念ながら、皮膚をむしる行為そのものを抑える特効薬はまだありません。ただし、強迫性障害に用いられる抗不安薬や抗うつ剤が効く場合があり、薬が処方されます。

癖になる理由は脳にあり!なぜ皮膚をむしるとスッキリする?

ニキビをつぶす、かさぶたをはがすといった行為が癖になりやすいのはなぜでしょう。

皮膚をむしる、はがすといった行為は痛いにもかかわらず、なぜかワクワクしたり気持ち良かったりもしますよね。その上、やった後はなんともいえない達成感があってストレスが解消されます。

これは「悪い所が消えた」という安心感だけでなく、脳内から分泌される「エンドルフィン」の作用による多幸感による感覚なのです。

エンドルフィンは、鎮痛・鎮静作用を持つ神経伝達物質で、その効果はモルヒネの数倍と言われるほど強いことから「脳内麻薬」との異名があります。

エンドルフィンは、食事や性行為をした時に分泌されて満足感や高揚感をもたらすほか、苦痛を感じた時、頑張って何かを達成した時にも、ストレスをやわらげるために分泌されます。苦しいマラソン中に訪れる恍惚状態「ランナーズ・ハイ」もエンドルフィンによる現象ですね。

皮膚をむしる時には少し痛みを伴いますが、悪い所が取れるという達成感があるため、脳内でエンドルフィンが分泌され、いい気分になるのです。

ニキビをつぶすなどのきっかけでこの快楽を覚えると、以降はストレスや緊張が強くなった時にエンドルフィンの分泌を求めて無意識に皮膚をむしる癖がついてしまう可能性があります。

ちなみに皮膚をむしる癖は自分の体を傷つける行為ですが、自傷行為ではありません。

自傷行為は極端に追い詰められた精神状態を肉体の苦痛(自傷)に置き換えて精神的な苦痛を紛らわせようとする行為です。リストカット、ヘッドバンギングなどがあります。

一方、皮膚をむしる行為はストレスが強い時に起こりやすくなりますが、意図的に肉体に苦痛を与えようとして行なう行為ではありません。

どちらにしても体を傷つける行為をそのまま放置するわけにはいきません。心の問題を解決することも必要です。強いストレスや悩みがあれば早めに家族や友人に相談して、解決法の矛先が自分の体に向かないようにしたいですね。

皮膚をむしるとスッキリするという感覚は、脳がもたらす自然な現象だったのです。しかしその快感に依存してはいけませんよね。

前向きに治そう!皮膚をむしる癖が気になる方は病院に相談を

家族や知人に行為を指摘されたことのある方、記事を読んで皮膚むしり病かもしれないと感じた方は、病院に一度相談してみることもおすすめします。

前述したように皮膚むしり病は、DSM-5の診断基準で評価され医療機関で治療すべき病気となっています。

皮膚むしり病の人は皮膚をむしる癖のせいで自己評価が低くなりがちですが、治療で改善しやすい病気なので「これは決して悪い癖などではなく、病気のせいなのだ。」と受け止め、前向きに治療を受けることをおすすめします。

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