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食事から脂肪分を減らすことは心臓病の予防にならないかも

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心臓病、特に心筋梗塞など心臓に酸素や栄養を送る冠状動脈にトラブルが発生する病気は、脂肪分の取り過ぎが原因であるから、食事から脂肪分を減らしましょう。あるいは動物性を減らして植物性にするべきです。

こう言う指導があったとして皆さんはどうお感じになりますか。きっと当然だとお感じの方が多いでしょう。ところがこの数年、研究者の皆さんの間では、このことの妥当性について激論が交わされていたのです。

そして、現在では、どうも脂肪分は濡れ衣を着せられていたようだと言う方向になってきています。

日々行われる様々な血中脂質と死亡リスクについての研究・・・

私たちが普段摂取している食べ物の中には、もっともメジャーな栄養素が三つあると分類されています。脂肪・炭水化物・たんぱく質の三大栄養素であることはみなさんよくご存じのとおりです。

その中で、脂肪が血管の中で起こる様々な病気について悪さをしているのではないかと言う考え方をもとに、これまで脂肪を減らしたり動物性脂肪を避けたりする栄養指導やお薬を使った治療が行われてきました。

しかし、ここにきて、どうも血中脂質のコントロールは、特にお薬を用いたものは不要だったのではないかと言う議論が世界中で巻き起こっているのです。

結論はまだです

世界中でたくさんの研究者が血中脂質と死亡リスクについての研究を日々行っておられます。そして、その研究成果を集めて分析し、より正確な結論を導き出そうとするメタアナリシスの手法を用いて分析しておられる方もおいでです。

この議論が起こったきっかけは、お薬を使って血中脂質の改善を行っていた人と、そうではない人との間に、死亡リスクの差がないのではないかと感じたお医者様が少なくなかったことから始まったようです。

しかし、このことは非常に複雑な要素が絡みますから、現在のところ、これが正しいと言いきれるだけの結論はまだ得られていないようです。

なぜたくさん研究しているのに結論がまだなのかと言うことについて、一例をあげると次のようなことがあるからなのです。

まず、研究の結果として、「これまでの常識とは逆に、悪玉コレステロールの値が高い人の方が総死亡率が低く、値が低い人の方は総死亡率が高かった。」と言う実際のデータが得られています。

これを元に悪玉コレステロールと寿命の関係を考える際に出てくる答えは一つではありません。

  • 高齢者では悪玉コレステロール値が低下しやすい
  • 慢性病による死の数年前から悪玉コレステロール値が低下する
  • 悪玉コレステロール値が高い方が健康を維持しやすい
  • 死因になる他の病気が悪玉を含めてコレステロールを消費する

これらのどれが正しいのかは、もっとほかの研究を重ねないと判りません。さらに、こうした候補の他に、悪玉コレステロールと死亡の間に隠れている関係があるのかもしれません。

だから、今のところはっきりしているのは「薬を使ってまでコレステロール値を下げる必要は、あんまり無いのではないだろうか」という程度なのです。

長い歴史の中で未だ決着がつかないコレステロールについてのさまざまな考え方

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お医者様は科学者です。ですから、自分自身や他の研究者たちの成果を集めて、より正しい科学のあり方を目指すわけです。しかしながら、商業社会でもある現在は、そこにビジネスの要素がからみついてくることが避けられません。

つまり、営利団体としての医療関係法人から、研究に横槍のような形で影響が及ぼされることがあるのは、ある程度やむを得ないと言わざるを得ません。これを100%否定してしまうと、医療の研究が進まないのもまた事実なのです。

しかし、さまざまなお医者様が、さまざまな議論を闘わせて下さっているのは、営利目的ではなく科学者としての責任感からだと信じて、発表される色々な研究に注目していきたいところですね。

100年以上の歴史

コレステロールが心筋梗塞の原因であるという仮説は、既に100年以上前から信じられてきた、歴史ある学説なんですね。しかしながら今世紀に入ってそれを覆す研究結果が次々に発表されました。

ただその否定のされ方が、「高コレステロールは必ずしも心筋梗塞の原因とは言えない」という形であったため、従来の血中脂質改善について完全否定するには至っていないのが現状です。

つまり、高コレステロールと心筋梗塞の間に関係がないようだと言うことが判っても、「高コレステロールは心筋梗塞の原因になるが、別の要素がそれを邪魔するため見えにくくなっている」のかも知れませんよね。

その心筋梗塞を高コレステロールから守ってくれる要素と言うのは今のところまだ見つかっていません。一方で、「高コレステロールは完全に濡れ衣を着せられていただけで真犯人は別にいる」のかも知れません。

この真犯人もまだ見つかっていません。ただ、高コレステロールだけを取り上げて、それだけが心筋梗塞の原因だとは言えなくなってきていると言う現実があるだけなのです。

善玉コレステロールも完善ではない!?血中脂質のさらなる分類

少し前から、LDL-c、つまり悪玉コレステロールには、より性質の悪い超悪玉コレステロールと思っていたほど悪さをしないものがいるようだと言うことが、テレビやネットなどでも良く話題になっていますよね。

実はHDL-c、つまり善玉コレステロールにも、本当の正義の味方と、それほどでもない奴がいると言うことも判って来たのです。

善玉コレステロールの種類

善玉コレステロールは、最初ほとんどコレステロールを含んでいない【新生HDL】として肝臓で作られ、血液の中へ送り出されて全身を回ります。

そして血液や血管壁にいる、余ったコレステロールを捕まえたマクロファージから、その余ったコレステロールを受け取ることで【原始HDL】に育ちます。

この【原始HDL】は肝臓へ戻ってゆくわけですが、途中さらにどんどんコレステロールをため込んで【成熟HDL】に育ちます。そして、肝臓の収集用受容体から肝臓に取りこまれて、コレステロールを胆汁の中に排出します。

一方、成熟HDLはLDLにコレステロールエステルを引き渡す代わりに中性脂肪(TG)を受け取って【TGリッチHDL】と言うものに変化することもあります。これは肝臓にたどり着いた時にはLDLの受容体から取り込まれるんですよ。

現在のところ、HDLはおおまかこの4つが知られているようですが、体の各部からコレステロールを回収する役目を担っているのは新生HDLと原始HDLの2つだけです。

もちろん成熟HDLも肝臓への運搬役ではありますが、既に満杯になっている運搬役ですので、これがいくら多くても、それ以上は身体の各部から余ったコレステロールを回収できません。

ましてやTGリッチHDLは中性脂肪でいっぱいになっているため、コレステロールの回収を行うことはできないのです。

血液検査の方法

今のところ、私たちが病院で受ける検査では、血中脂質についてHDL-c・LDL-c・中性脂肪の3つであることがほとんどです。もちろんそこから計算で割り出される総コレステロールやH/L比などがある場合もありますが。

しかしながら、HDL-cについては、上でお話しした4つをひとくくりにして測定するしかないのが現在の状況ですので、本当に余ったコレステロールを肝臓に回収できているのかどうかがしっかり見えないのです。

ある有名な血中脂質改善薬の実験で、心臓の血管に起こる病気が減らなかったと言う結果が出ました。それはどうやらこの成熟HDLを増やす働きを持っていたからだと推定されています。

つまり、見掛け上善玉コレステロールは増えているんですが、実際のところ、増えていたのはこれ以上コレステロールを回収する力を持たない成熟HDLだったと言うオチだったんですね。

この研究を発表されたお医者様は、血中脂質の検査において、より細かく現実に即した分類検査の開発を提言なさっています。早く実現してほしいですね。

それでも運動と禁煙は有効です

これまで、HDLを増やす生活習慣として推奨されてきたのは運動と禁煙です。これについては、肝臓での新生HDL産生を促すアディポネクチンの活性化が明らかになっていますので、余ったコレステロールの回収には役立ちます。

これまでにお話しした内容は、飽くまでお薬と血液検査の内容と言う、病院の中でのお話ですので、運動と禁煙と言う生活習慣が、心臓の血管に起こる病気を減らすことに変わりはありません。

中性脂肪を減らすには糖質制限と完全禁酒が大事!

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ここまではコレステロールについてお話ししましたが、同じ血中脂質である中性脂肪についても、ある程度の見直しが議論されています。

ただし、中性脂肪がいくら増えても大丈夫なんて思わないでくださいね。現在、脂質異常症についてお薬は不要であると言う方向の仮説が立てられてはいますが、その中でも一定以上の場合にはお薬は不可欠とされているのです。

中性脂肪の減らし方

これまでにも機会があるごとに書いてきましたが、中性脂肪を減らすには食事から脂肪分を減らすのではなく、糖質制限と完全禁酒が最も有効なのです。

現在、心筋梗塞などの心臓の血管に起こる病気の予防という観点から150mg/dL以上の人には治療が行われていますが、海外では、1000mg/dL未満の場合には食事指導だけでお薬は出さない国もあります。

それでも、基準値の6倍以上と言う1000mg/dLを超えると薬によって中性脂肪値を下げる治療を行うのは、脳や心臓の血管に起こる病気ではなく、急性膵炎のリスクが非常に高くなるからなんですね。

例えば、脳血管障害で起こる脳梗塞、死亡率は15%ほどですが、急性膵炎では30%以上と言うデータもあります。脳梗塞より2倍以上の確率で死ぬ病気になるリスクが高まると言うなら、お薬でも何でも使うでしょうね。

脂質制限の食事の意味は果たしてあるのか?

お薬での治療に疑問符が打たれると言うことは、同時に脂肪が多い食事を制限してきたこれまでの栄養指導にも疑問がわいてくるわけです。

そして、脂質制限食を実施した場合でも、やはり心臓の血管に起こる病気との関連性が薄いと言う、いくつかの有効な実験結果が得られたようです。

日本と欧米の違い

証拠をもとにした分析研究の結果、欧米では脂肪を食べた量と死亡率の間に相関性はないと言うのが大方の見方でした。それは全死亡数においても、心筋梗塞などが原因の死亡においても関係がなかったと言うことなんです。

ただ、その場合でも、既に「脂肪分の摂り過ぎが健康に悪い」と言うことが常識となった世界では、患者自身が無意識に、食事からある程度脂肪を減らしていたかも知れないと言う推測が否定できないと言うことがあります。

その場合、「死亡率に影響がなかったんだから食事制限は不要だ」と言う考え方も「ある程度の脂肪制限が浸透しているからこそ死亡率に差が出なかったのだ」と言う考え方も、どちらにも理があります。

しかし、日本ではむしろ逆相関、つまり脂肪を食べる量を減らした方が、死亡率が上がったと言う研究があるのです。

これはおそらく、脂肪を制限することで、肉類を食べる量が必要以上に減らされ、それに連動してたんぱく質が不足することで病気を呼び、死亡を早めたのではないかと言うことが考えられますよね。

ですから、日本では脂肪を食べましょうと勧めることは必要なくても、脂肪制限を緩め、肉類を食べましょうと勧めて、たんぱく質をよく摂ることの方が長生きにつながるのではないかと言うことになるのです。

脂肪酸の種類について

最近の研究で重視されているのは、飽和脂肪酸の健康に与える影響についてという部分も少なくありません。

これはLDL-c増加の原因は飽和脂肪酸の摂取によるものだと言うことも、結果として脳や心臓の血管に起こる病気の原因に繋がっていないのではないかと言うことからなんですね。

結果として得られたのは、飽和脂肪酸をω6不飽和脂肪酸に置き換えても心臓の血管に起こる病気は減らなかったか、むしろ増えてしまったと言う結論でした。

このことを取り上げて、欧米では “Eat Butter” (バターを食べろ) と言う雑誌記事まで出る始末です。まぁ、今までと変わったことがあると殊更センセーショナルにあおるのが雑誌の商売ですから、仕方ないのかもしれません。

また、もともと肉食文化だった欧米において、動物性脂肪が必要以上に悪者とされ続けたことに対する、潜在的な不満が爆発したとも言えるんでしょう。

必須脂肪酸の罠

ただ、ここで注目すべきは不飽和脂肪酸の代表として使われたのがω6不飽和脂肪酸、つまりリノール酸に代表される物だったのです。

しかし、リノール酸は、たとえば日本人においては過剰摂取が問題になるほど大量に摂っています。植物油の大半は、このリノール酸が一番多い脂肪酸構成になっているので、当然と言えば当然ですね。

このω6不飽和脂肪酸は、アレルギーや炎症などにも深くかかわる物質であるだけに、健康のために、ω3脂肪酸とのバランスを謳うことが最近よく見られます。ω3と言うとαリノレン酸やDHA、EPAなどの脂肪酸です。

残念なことに、あまりω9不飽和脂肪酸との置き換えや、その効果などについて触れられることはほとんど見つけられませんでした。

これには理由があって、人間が体の中で他の脂肪酸から合成できないため、必ず食べ物から摂らなくてはいけない必須脂肪酸と言うのは、ω6不飽和脂肪酸のリノール酸とω3不飽和脂肪酸のαリノレン酸だけだからです。

ただし、αリノレン酸から合成されるDHAとEPAについては、必要量を合成するのは事実上不可能なため、これも食べ物から摂りましょうと言うことになっています。

αリノレン酸とDHA/EPA

一口で言うと魚を食べましょうってことなんですね。最近ではαリノレン酸の効果を前面に押し出した高価な植物油も売られていますが、ちょっともったいない気もします。

実はω3脂肪酸は高度不飽和脂肪酸が多いので、とても酸化されやすいんですね。エゴマ油、シソ油や亜麻仁油なんかで、封を切ってしばらくすると生臭くなったと言う話はよく耳にします。これは油の酸化によるものなんですよ。

αリノレン酸も魚介類、それも川魚やマグロなどに多く含まれています。ですから、敢えてαリノレン酸だけの効果を求めて植物性の油を買うより、DHAやEPAも同時に摂取できる魚介類の方がお勧めですね。

酸化して生臭くなった魚は食べないので健康にも悪くないですし。

サケマス類も、絶対量はともかく、リノール酸とのバランスがいいのでお勧めです。欧米でも昔から釣りの対象になってきた魚ですよね。

オリーブオイルの効能は不明です

先にお話ししたように、飽和脂肪酸とω6不飽和脂肪酸、ω6不飽和脂肪酸とω3不飽和脂肪酸と言う形の比較研究がほとんどなので、オリーブオイルの主成分であるω9不飽和脂肪酸のオレイン酸との置き換え研究はあまりありません。

もともとオレイン酸は、肉類に多く含まれる飽和脂肪酸のステアリン酸から、人間の体の中で合成可能なので必須脂肪酸じゃないから研究対象になり難かったんだろうとは思います。

しかしながら、体内での炎症反応に寄与するリノール酸を、オレイン酸に置き換えることで、血管内の炎症を起こりにくくしている可能性を明らかにした研究も少なくありませんから、これまで通りオリーブオイルはお勧めできると思います。

肉の脂身を食べても良いの?脂肪を食べる時に意識してほしい事7つ

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様々な情報を、私なりに整理してお届けしましたが、まだまだ研究段階のことも多いので、ちょっと複雑怪奇になってしまったかもしれません。

しかしながら、現段階で言えるのことがいくつかあります。

これからの脂質の取り方と意識

脂肪を食べる時の考え方と、それに関する意識ですが、これまでとは少し変えて、こんな風にしてみてください。

  • これまでのように肉の脂を目の敵にする必要はありません
  • 川魚を含めて、魚介類を食べましょう
  • 肥満にならないことが大前提です
  • 動物性のたんぱく質は豊富に取りましょう
  • リノール酸は控えめにしましょう
  • トランス型脂肪酸の害はこれまでと変わりません
  • 今後も新しい情報には敏感でいましょう

厚生労働省がこっそり修正

厚生労働省が5年ごとに発表している「日本人の食事摂取基準」の2010年度版では、成人における脂肪の目安摂取量をエネルギー比率で20~25%としていましたが、2015年度版を見ると20~30%と、こっそり改定しています。

それを見ると、欧米では30%の実現が事実上不可能だから35%にしているが、わが国では30%にするといった記述も見受けられます。2020年度版では、どう変わるかが楽しみですね。

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