健康生活TOP 筋肉痛 湿布薬を使っていたら猫が死んだ!動物に危険な種類の成分もある

湿布薬を使っていたら猫が死んだ!動物に危険な種類の成分もある

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2015年4月中旬、FDA(アメリカ食品医薬品局)が一風変わった注意情報を発しました。それは筋肉や関節痛などの治療のために外用薬を使っている人は、ペットの健康に注意してほしいと言うものだったのです。

報告のあった可哀そうな事例は2件、5匹の猫で、うち3匹は獣医さんによる治療の甲斐なく死んでしまったそうです。

NSAIDsと言うありふれた普通の薬

NSAIDsと言う分類の薬、最近よく聞きますよね。これは「Non Steroidal Anti Inflammatory Drugs」(非ステロイド性抗炎症薬)と言う意味の略語です。最後の小文字の”s”は複数形の”s”で、なくても構いません。

一言でいうと、普通の痛み止めのお薬のことです。

  • 内服
  • 外用
  • 注射用

のすべてを含む分類です。読み方は単数でも複数でも「エヌセイズ」です。

湿布や塗り薬

もちろん痛みの質や強さによって内服薬を選ぶことも有りますが、筋肉や関節の痛みに対して使うお薬と言えば、やはり湿布などの外用薬が圧倒的ですね。

薬店の売り場には、昔から続いている古典的有名ブランドもあれば、最近流行の新しい成分の物も各種色々揃っています。今回アメリカから報告のあった成分はフルルビプロフェンと言うものです。

あまり聞き覚えのない名前ですが、内服・外用ともに用いられ、プロドラッグ(体内に入ってから有効化される薬)としては、がんの痛み止めとして注射薬にもなっているものです。

アメリカではすでにスイッチOTC薬(もともとは処方箋薬だったものが、薬店で販売されるようになった市販薬)として売られています。

一方、日本では2007年段階ではスイッチOTC薬の候補として挙がっていたのですが、現在のところ市販薬にはなっていないようですね。

同じ時期に候補になっていたのが、内服薬としてのロキソニンです。こちらは既に市販薬になっていて、知名度も抜群です。

薬が原因でまさかの・・・!猫の命を奪った事故の概要

アメリカで報告された2件の事故は、いずれも筋肉痛などの治療のため、フルルビプロフェンを主成分とする塗り薬を飼い主が使っていました。

部位としては足や首に使っていたと言うことですので、必ずしも動物が触りやすい低い位置だけではなかったようです。

猫の症状

1件目の家では、猫2匹が腎不全を起こしました。幸い、こちらの2匹はその後の治療によって回復したとありました。良かったですね。

もう1件では、3匹の猫が非常に重篤な症状に陥ったそうです。食欲不振に始まり、

  • 嗜眠(異常に眠り続けること)
  • 嘔吐
  • 下血
  • 乏尿
  • 貧血

などの症状が起こり、間もなく2匹が死んでしまいました。

その後、NSAIDsの影響を疑った獣医師の勧告に従って、飼い主がNSAIDsの使用をやめましたが、残念なことに最後の1匹もその後死んだと言うことです。

この獣医師の検死によって、猫の腎臓と腸からNSAIDsの毒性によるものとみられる証拠が見つかりました。

鎮痛効果を持つフルルビプロフェンが原因で腎前性急性腎不全になる!?薬の持つ威力

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プロピオン酸系と言うグループに分類される消炎鎮痛剤です。このグループにはイブプロフェンやロキソプロフェンナトリウム(商品名・ロキソニン)が含まれています。

いずれも優れた鎮痛効果を持つお薬ですね。

NSAIDsの効果と副作用

NSAIDsもお薬である以上副作用があります。そして、そのお薬固有の副作用とNSAIDs全体に共通する副作用があるのです。

なぜ共通の副作用があるかと言うと、NSAIDsの痛みを抑える働き方が、薬の成分に関わりなく共通している部分があるからなのです。その消炎鎮痛効果は次のようにして働きます。

最近、摂りすぎが問題になっているリノール酸と言う脂肪酸があります。ω6不飽和脂肪酸で必須栄養素なのですが、摂りすぎるといろいろ問題が起きます。

このリノール酸は次のような過程を経て代謝されます。化学反応は上から順番に起こります。

  • Δ6不飽和化酵素の働きでγ-リノレン酸に変化
  • エロンガーゼ酵素の働きでジホモγ-リノレン酸に変化
  • Δ5不飽和化酵素の働きでアラキドン酸に変化
  • シクロオキシゲナーゼ酵素によってエイコサノイドが作られる

エイコサノイドが痛みの元

エイコサノイドは、様々な神経伝達を担う重要な生理活性物質で、身体にとってなくてはならない物です。しかし、一方で生理活性が過ぎていろいろ不快な症状が出ることも多いのです。

エイコサノイドには10数種類のプロスタグランジン類、2種類のトロンボキサン、7種類のロイコトリエン類が含まれています。これらはいずれも炎症に深くかかわっています。

また、プロスタグランジンのひとつ、PGE2-EP3は発熱と痛みにも深くかかわる物質なのです。

そこで、エイコサノイドを作られることを抑えることで消炎鎮痛効果を発揮しようと言うのがNSAIDsと言うお薬なのです。

先にお話しした代謝経路の最後でシクロオキシゲナーゼ酵素と言うものが登場しますが、これの働きを抑えるのが目的と言うことになります。

副作用との関係

シクロオキシゲナーゼ酵素には3種類のたんぱく質があり、構造はそれぞれ異なるものの、働きとしては近いので各々にCOX-1、COX-2、COX-3と言う名前が与えられています。

まだ性質がよく判っていないCOX-3は別にして、COX-2が一番炎症に関わる部分が大きく、ステロイド剤に良く反応する酵素です。そのためCOX-2を狙い撃ちにするNSAIDsもありますが、血栓症と言う厄介な副作用があります。

一方、ステロイド剤にあまり反応しないCOX-1にも効くNSAIDsは胃腸に副作用が出やすいと言う難点もあります。現在のところ、症状に応じて効果と副作用のバランスを取って使い分けられているようです。

そして、重大な症状として共通するのが腎不全です。もともとエイコサノイドの一つプロスタグランジンができるのを抑えて痛みや炎症を抑えるのが目的のお薬ですが、それが裏目に出たのがこの副作用なのです。

痛みの原因はPGE2-EP3でしたが、これに非常に近いPGE2-EP2の働きも抑えられます。このプロスタグランジンは末梢血管の拡張を担っているものですが、これが抑えられることによって腎臓への血流が減ってしまいます。

これが原因で腎前性急性腎不全と言う重大な病気が起こってしまうのです。そしてさらに重症になると腎臓の組織が壊れてきてしまいます。

ペットと人間

人間では適用量が決められていますので、滅多に重大な副作用は発生しません。しかし、ペットとして飼われている動物がこれを口にしてしまうと危険性は高いと思われます。

人間とペットの動物とでは身体の構造も働きも異なる部分がありますから、一概に同じ危険がある、あるいは同じ安全性が期待できると言うことはありません。

しかし、身体の大きさから考えてペットの方がより危険に晒されると考えた方が良いでしょうね。

先にご紹介したアメリカの事故の例でも、腎臓と腸からNSAIDsの影響が検出されていますから、可哀そうな猫は飼い主の身体に付いた、あるいはそれを拭いた衣類やティッシュを舐めたのでしょう。

あなたの家族を救うために!責任を持って注意を払おう

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本来であれば嫌な臭いがして避けるような物であっても、大好きな飼い主の身体についているものであれば舐めてしまうかもしれません。

あるいは飼い主に体をこすりつけることで、皮膚から吸収される経皮毒性と言う問題もあります。湿布薬なんかだと、はがして捨てたものをペットが触ったりする可能性もありますよね。

NSAIDsの副作用は皮膚からの吸収でも起こる場合がありますから要注意です。

全てのNSAIDsに気を付ける

アメリカ食品医薬品局・FDAが出している警告は、飽くまで実際に起こった事故で使われていた成分、フルルビプロフェンだけです。もちろんこのお薬は日本でも処方箋薬として内服・外用ともに使われています。

まずはFDAが出している注意事項を具体的に見てみましょう。

フルルビプロフェンを含む全ての局所薬は、ペットの手の届かないところに安全に保管して下さい。
薬品が付着している可能性のある容器や包帯などは、安全に廃棄あるいは洗浄して下さい。そして、衣類やカーペット、家具などに薬が付着・残留しないように注意して下さい。
薬を塗ったり貼ったりした治療対象の部位を、包帯などの保護材で覆っても治療上の問題がないか、お医者さまや薬剤師さんに相談して下さい。(問題がなければペットに舐められないよう覆って下さい。)
フルルビプロフェンを含む全ての局所薬を使用中に、ペットがそれに晒された場合、可能な限り綺麗に拭ったり洗ったりした上で、獣医さんに相談して下さい。
あなたのペットが、嗜眠・食欲不振・嘔吐などの症状や、普段は見られない体調の異常が生じた場合、すぐ受診させると同時に、獣医師さんに今あなたが使っている局所薬を示して、相談して下さい
現在のところ、FDAにはフルルビプロフェンを含む局所薬によって、犬など他の動物の健康被害の報告は寄せられていません。しかし、こうした動物もまたフルルビプロフェン毒性に対して非常に弱い可能性があることを知っておいて下さい

このFDAの警告はフルルビプロフェンに関するものだけですが、先にお話しした通り腎毒性はNSAIDsに共通する副作用の影響と考えられる症状だったわけですから、すべてのNSAIDsについて注意すべきだと思います。

たかが湿布と軽く考えずに、ペットの健康にも気を配ってあげて下さいね。

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