健康生活TOP カビ カビによる病気は水虫だけじゃない!危険は肺・心臓から脳にまで

カビによる病気は水虫だけじゃない!危険は肺・心臓から脳にまで

カビ菌のイラスト

2015年10月スペインの研究チームが、11人のアルツハイマー病患者の遺体のすべてにおいて、脳の組織や血管から複数の真菌類(カビの仲間)の細胞などの痕跡を発見したと発表しました。

まだ真菌類がアルツハイマー病の原因と断定されたものではありませんが、比較対照群のアルツハイマー病にかかっていなかった人たちの脳からは、これらの痕跡は検出されなかったそうです。

カビと言えば代表的なのが水虫ですね。しかし水虫は皮膚表面の、しかも免疫の効かない表層の病気です。それが身体の最も奥深くと言える脳に感染することがあるのでしょうか。

真菌症と言う病気は条件次第で全身のどこにでも起こりうる

カビイラスト

繰り返しになりますが、私たちにとって最も身近な真菌症は白癬、つまり水虫・たむし・しらくもの類です。これらは皮膚の表面の角質に感染し不快な症状を引き起こしますが、傷口から他の病原体に感染しない限り重症化はないでしょう。

一方、もう一つの有名な真菌感染症にカンジダ症があります。これも、皮膚や口の中、性器などの表在性の場合は命に関わることはありません。

しかし、免疫が落ちている時に現れる全身性カンジダ症やカンジダ敗血症となると生命に関わる危険な病気になり得ます。そして、その他にも意外なほどカビは私たちの身体を狙っているのです。

カビが身体に入り込む深在性真菌症は重症になりやすい

水虫の類や表在性カンジダ症などに対して、真菌類が体内に入り込んで病気を引き起こすものを深在性真菌症と言います。これらは多くの場合免疫力が落ちている時に発症しやすいのですが、最近では健康な人でも発症するものも増えています。

わが国で多く見られるものとしては、コウジカビの仲間が主に呼吸器に感染して起こるアスペルギルス症です。

アスペルギルス属のカビには、ニホンコウジカビ(アスペルギルス・オリゼー:清酒の醸造に使われます)やショウユコウジカビ、カツオブシコウジカビなどがあり、私たちの生活になくてはならないものになっています。

このうち、ニホンコウジカビが醸造にかかわる人のアレルゲンになることがまれにある程度で、いわゆる「麹」は毒素も作り出しませんし、病気の原因になることもありませんから安心してください。

一方、アスペルギルス・フミガタスと言う真菌は、例えばエアコンの吹き出し口などどこにでも繁殖しているカビで、これがアスペルギルス症と言う呼吸器疾患の原因になることが知られています。

エアコンイラスト

アスペルギルス症は治療が遅れると致命的になりやすい危険な病気ですが、免疫が落ちていたり、過去に肺疾患などの既往症があって発症しやすい人でない限り、そんなに簡単に起こる病気ではありません。

ですので、免疫抑制剤やステロイドホルモン剤などを使用していて免疫力が低下している場合は十分な注意が必要です。また、結核やCOPDなどの既往症がある人もかかりやすくなっています。

様々な部位で発生し重症になるムーコル症

肺の他、脳や消化器、皮膚、はては全身に症状のでる接合菌症と言う病気があります。日本ではそのほとんどがムーコル症と言う病気なのですが、発症したらそこを切除することになる厄介な病気です。

原因となるのはクモノスカビなどが多いようです。これも重症化しやすい病気ですが、やはり重度の免疫低下状態でないと発病には至りませんので、健康な人は特に心配する必要はありません。

しかし、高齢者や病気療養中の人では注意が必要になるでしょう。

輸入真菌症は健康な人でも発病する厄介者

感染する日本列島イラスト

輸入真菌症は名前の通り、日本には存在しないか、日本に存在はしていても海外で見つかることの方がずっと多い真菌類による感染症です。

主な感染ルートは流行地域への渡航によるものですが、渡航歴のない人が輸入品を原料として扱う工場で感染した例もあります。

輸入真菌症の大きな特徴として、免疫力の低下がなくても発病するものがあると言うことです。元気な若者が発病することもある病気なのです。

見落とされていることが多いかもしれない病気

輸入真菌症の特徴の一つは、これといった特徴を持たないことが挙げられます。

  • 慢性的な頭痛
  • 体重減少
  • 微熱
  • 発熱

風邪症状男性イラスト

など、普段誰でもが経験するような症状に始まります。ですので、この段階で受診しても風邪扱いされる可能性が高いのです。

日本のお医者様もこのような病気に接した経験のある人は少ないので、見落とされる可能性は非常に高くなっています。

現在、輸入真菌症で最も恐れられているコクシジオイデス症やヒストプラスマ症では、年間4~5人程度の患者が確認されていますが、実際にははるかに多い患者数があるのかもしれません。

正確な診断がついた例では、患者さんが自分の渡航歴をお医者様にきちんと報告したことから、お医者様がその病気にターゲットを絞ることができて診断がついたことも少なくないそうです。

強烈な感染力を持ち時として死に至るコクシジオイデス症

最も恐れられている真菌症、コクシジオイデス症は主に北米で、そして南米でも半乾燥地域で多く見られます。

  • アメリカ・アリゾナ州
  • アメリカ・ニューメキシコ州
  • アメリカ・カリフォルニア州の一部
  • アメリカ・ネバダ州の一部
  • アメリカ・ユタ州の一部
  • アメリカ・テキサス州の一部
  • アメリカ・オクラホマ州の一部
  • アメリカ・コロラド州の一部
  • メキシコ西部
  • アルゼンチン・パンパ地域
  • ベネズエラ・ファルコン州

別名、砂漠熱・渓谷熱とも呼ばれるこの病気は、半乾燥地帯の土壌に生息していて、雨が降ると菌糸を伸ばすカビによって引き起こされます。これが強風や土木工事など様々な原因でちぎれて空中に舞うことでヒトの肺に侵入するのです。

感染した人の30~40%が発病し、1割弱が重篤化、致死率は3%程度です。症状としては風邪や肺炎に似たようなもので、悪化すると血痰や喀血をもたらすこともあります。

この病気の特性として、発病者の大半が免疫力の低下を伴っていないことです。日本で報告された患者すべてが健康な状態で感染発病したとされています。

また、日本国内において20世紀後半まではレアな病気であったそうですが、1991年以降増加傾向にあるということです。21世紀に入っての統計は見つかりませんでしたが、おそらく減少する要素はないと思われます。

この病原菌は、診断確定のため菌の培養をしていた検査機関の職員が、無造作にシャーレの蓋を開けただけでも室内が汚染されて職員が感染したという事例があるくらい感染力の強いカビなのです。

これまでに報告された日本人の感染者は、アメリカへの渡航歴のある人がほとんどで、現地で感染した可能性が高いとされていますが、2人だけはアメリカから輸入された綿花を扱う工場の人だったそうです。

この2人に渡航歴はありませんでしたので、輸入綿花に付着していたのでしょう。

このような菌ですので、アメリカの砂漠地帯へ渡航した場合、自動車では空調を室内循環にしたり、マスクをするなどの対策も意識しておきましょう。特に埃っぽいと感じるようなところには行かない方が安全です。

この病気の潜伏期間は7日~1か月ですので、幅を見て帰国後2か月以内くらいに気になる症状が出たら、必ず渡航歴・渡航先・具体的にどのような場所に行ったかをお医者様に伝えるようにしましょう。

また、輸入綿花を直接触ることは少ないでしょうが、植物検疫の対象にはならないと思うので、お土産などでもらったりすることは避けた方が安全ですね。

ヒストプラスマ症は海外8割・国内2割、コウモリに注意!

ヒストプラズマ症はヒストプラズマと言う真菌を空気とともに吸い込むことで、気道に感染することで始まります。この病気も健康で免疫力に問題のない人でも発病しますから要注意ですね。

発生地域は世界中で散発的に起こっています。時として集団感染が見られますが、それは洞窟の中のコウモリの糞の中で増殖したヒストプラズマが原因だったとされています。

現在、日本国内でヒストプラズマ症と診断された患者さんの8割は海外渡航歴があり、それが原因と考えられていますが、あとの2割の人には渡航歴がなく国内感染だったということです。

ヒストプラズマ症も風邪のような症状で始まり、肝臓や脾臓など全身に及ぶこともある病気です。発病すると致死率も高いだけに注意が必要ですが、コクシジオイデス症ほど強烈な感染力があるわけではなさそうです。

一方で、日本国内ではイヌ・ウマ・ウシにもヒストプラズマ症が報告されています。今のところペットの犬から人間に二次感染した症例は報告されていませんが、万が一の際には獣医さんとよく相談することが必要です。

日本国内でも、コウモリのいる洞窟を観光できるところが少なくありませんが、必ずマスクを着用し、肌の露出を避け、洞窟から出たら外側の衣服はすべて着替えてビニール袋に入れて持ち帰るくらいの注意はした方がいいですね。

パラコクシジオイデス症はブラジルで多発する真菌症

この病気は、ほかの2つと同じように、病原体を空気と一緒に吸い込むことで感染しますが、首のリンパ節が強烈に腫れたり、口の粘膜がただれたりするという特徴的な症状もあります。

時によっては重い呼吸不全に陥ることもありますが、現在までわが国での死亡例は出ていません。また、1人を除いてすべて来日ブラジル人の発病だったそうですので、まだわが国では少ない病気と言えるでしょう。

しかし、やはり免疫量の低下していたという患者さんはなく、健康な人が感染して発病することには注意しておいた方がいいですね。

抗真菌剤は作るのも使うのも難しい薬

この項目はちょっと複雑な説明があるので面倒な人は次の「キノコまで~」の見出しまで飛んでくださっても結構ですよ。

インフルエンザやヘルペスには抗ウイルス薬と言うお薬が使われますし、細菌に対処するのには抗生物質が使われます。

それに対して、真菌類をやっつけるためには抗真菌薬と言うお薬を使うのですが、じつは真菌類をやっつけるお薬と言うのはいろいろな意味で難しいものなのです。

生物としての構造がまったく違うウイルス・細菌・真菌

ウイルスと言うのは、そもそも生物であるかどうかが微妙な存在です。遺伝子もあるし突然変異も起こしますが、ほかの生物に比べると「ただの物体」に近いものなのです。

生物学では最小の生命単位を細胞であるとしていますが、ウイルスに細胞と言う共通要素はありません。ですので、ウイルスの種類ごとに違った形のお薬が必要になるのです。

しかし、その有効なものが見つかれば、ウイルスをお薬でやっつけることは難しくありません。

一方、細菌は細胞を持っている生き物です。それでも、細胞の中心になる細胞核と言うはっきりした構造物を持たない原核生物と言う分類になります。

この原核生物である特徴に対して破壊力を持つ物質として抗生物質があります。ですので、スペクトラム(有効性の範囲)によって様々ですが、一つのお薬で複数の菌種に有効なものが作れるのです。

そこで真菌です。真菌は真核生物と言う分類になります。人間もこの真核生物に分類されています。つまり、真核生物の特徴を破壊するお薬は人間にも有害であることが多いのです。

このことが抗真菌薬の作りにくさの原因なのです。研究者さんたちの不断の努力のおかげで、現在では様々な抗真菌薬が作られていますし、水虫も治る皮膚病になってきています。

それでも抗生物質や合成抗菌薬に比べて開発の難しいお薬だということは知っておいて損はないと思います。

まれだけどキノコまで感染力を持っているだけに予防は大切

毒きのこイラスト

キノコに感染って、身体にキノコが生えるの?…マンガじゃないので、そんなことはありません。子実体(いわゆるキノコの形をしたもの)ではなく、本体である菌糸体が身体の中で伸びることがあるんです。

おいしいけれど、お酒と一緒に食べるとひどい悪酔いを起こすヒトヨタケ。抗がん剤の原料にはなるけれど食用には不向きなスエヒロタケ。この2種類が、これまでに国内で感染が報告されたことのあるキノコです。

ヒトヨタケ写真

スエヒロタケ写真

この胞子を吸い込んだ人の気管支でキノコが菌糸を伸ばし、それが粘液とからまって気管支が詰まったという例が報告されていますが、ほとんど奇病と言っていいレベルのレアケースです。

真菌類は大きいのでマスクが有効

マスク男性イラスト

真菌類は小さくても細菌類の5倍以上の大きさがあります。ウイルスに比べると100倍以上大きいものです。ですから、マスクは非常に有効になります。

真菌類の胞子や菌糸が浮遊していそうな場所では、必ずマスクをしましょう。安物の使い捨て不織布マスクでも十分役に立ちます。

イメージとしては花粉症対策に近いと言っていいでしょうか。そうした場所に行くときはマスクをして出かけ、危険のない場所に移動したら、室内に入る前にマスクをしたまま外側の服を脱いでよくはたく。

そして、衣服は洗濯、自分はシャワーでよく洗うことでかなり予防できるでしょう。国内ではそういった機会は少ないと思いますが、海外旅行の折や、国内でも洞窟探検観光などではそうした方がいいですね。

怪しいと思ったら遠慮せずにお医者様に相談しよう

診察イラスト

普段行かないところへ行ったあと、不審な症状が出たらしっかりお医者様に伝えて受診しましょう。それでもらちが明かない場合、お医者様から専門機関に相談してもらうのがいいですね。

一般人が相談できる窓口はありませんが、お医者様からなら相談を受け付けてくれる窓口がありますので、ご紹介します。

真菌医学研究センターには外来や病棟はありませんので直接診療することはありませんが、各医療機関と連携して診断・治療のお手伝いをしております。

主治医の先生からのご相談はお受けしておりますので、ご心配の方はまずはお近くの医療機関を受診していただき、主治医とよくご相談ください。

【連絡先】 千葉大学真菌医学研究センター 臨床感染症分野 043-222-7171
 亀井 克彦(k.kamei@faculty.chiba-u.jp)

比喩的な表現で「身体にカビが生えちゃうよ」なんていうこともありますが、本当に生えたらシャレになりません。気にしすぎる必要は全くありませんが、正しい知識を身につけて予防する意識だけは持っておきましょうね。

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