健康生活TOP 薬の副作用?せん妄など高齢者が入院時に注意すべき変化と対策

薬の副作用?せん妄など高齢者が入院時に注意すべき変化と対策

入院した高齢者とその家族

長い年月を生きてきた高齢者は、心身ともに打たれ弱くなっています。ちょっとした環境の変化や体調不良でも、体や心に大きな影響となって現れやすいのです。

高齢者がケガや病気で入院した時には、入院中からさまざまな変化が見られる場合もあります。「ちょっと入院しただけなのに、退院したときには入院前とは別人のようだった」と驚くこともあるかもしれません。

たとえ今は元気でも、ケガや病気での入院は、今後いつでも起こりうることです。

入院の理由となりやすい事象や、入院中におこりやすい変化について、今のうちから知っておきましょう。知識を得て心構えをしておけば、家族や親類にもしものことがあった時、その後の生活のためにきっと役に立つはずです。

高齢者に特に多くみられる入院の理由は?

高齢者が入院する理由として、多いものはなんでしょうか。また、入院するとどのような治療をすることになるのでしょう。まずは、入院の原因となりうる疾患やケガについて見てみましょう。原因を知ることで、日常生活上で注意が必要なことにも気づくはずです。

高齢になると、筋肉や骨・関節など、体のいたる部分がもろくなっていきます。認知症になる確率も加齢によって増加しますし、呼吸器や心臓、血管などの疾患にもかかりやすくなります。

厚生労働省による、平成26年度の患者調査の概況では、病院に入院した患者数の中で、高齢者が占める割合が大きいことがわかります。

では、高齢者がなぜ入院するのか、理由を考えてみましょう。一般的に、加齢による影響や、高齢になることによって現れる身体的特徴から見ていきます。

心疾患・脳血管疾患
高齢になると、血管の弾力がなくなったり、血管が狭くなって流れが悪くなったりすることが多いです。身の回りに高齢者がいれば、降圧剤や血栓予防薬を服用されている方が見つかると思います。高血圧の加療をしている高齢者は、それほどに多いのです。

血圧が高いということは、全身に血液を巡らせる役目をする血管や、血を送り出すポンプである心臓にも負荷がかかっているということです。心臓の弁などに支障が生じて、心疾患を招くこともあります。

肺炎など、呼吸器の病気
高齢になると免疫力が低下し、身体の中に入った菌から病気にかかりやすくなります。体力のある健康な身体であれば悪化しない程度のものでも、体力がなく回復力の弱い高齢者にとっては、重篤な症状を招く危険性もあります。

特に、肺炎は、高齢者にとって死因となる割合が高い疾患です。下の表は、平成21年度の厚生労働省の調べです。85歳以上の高齢者では死因の第3位が、90歳以上の高齢者では死因の第2位が、肺炎となっています。

85歳以上 悪性新生物 心疾患 肺炎
90歳以上 心疾患 肺炎 悪性新生物
95歳以上 心疾患 肺炎 老衰
100歳以上 老衰 心疾患 肺炎
骨折などのケガ
人間の身体は、取り替えることができません。長く生きてきたということは、それだけ、その身体を長く使ってきたということ。長く使えば年月の分だけ、もろく弱くなっていきます。それは、視力の低下や難聴などの見えやすいところばかりでなく、身体のなかにも及びます。

骨がもろくなれば、転倒などのちょっとした衝撃で骨折しやすくなります。椎間板や軟骨などの骨のつなぎ目がすり減れば、歩くのが困難となるような傷みを招きます。手術や加療のために入院を要することも、少なくありません。

消化器系・泌尿器系の疾患
高齢になると、内臓の働きも弱ります。粘膜によって保護されている胃や食道も、粘膜が弱くなれば、潰瘍や炎症などがおこりやすくなります。腸の動きが悪くなれば便秘や腸閉塞がおこる可能性もありますし、食欲不振から栄養不良となることもあります。

また、膀胱の弾力や伸縮性がなくなることで、頻尿になりやすくなります。水分を控える傾向になり、体調や清潔面の問題から、膀胱炎もなりやすくなります。膀胱は腎臓とつながっている器官ですから、膀胱炎が悪化すれば腎臓へ影響することも考えられます。

認知症や服薬の影響による周辺症状
認知症や精神疾患、また服薬の影響により、幻覚や幻視、妄想など、精神症状が見られる場合があります。症状や家庭環境、介護力の有無などのさまざまな理由で、病院に入院しての加療を要することもあります。

医師から処方された服薬は、指示通りにしっかりと服用し、その経過や反応を医師にしっかりと伝えることが大切です。が、それが正しくおこなえずに精神症状が悪化し、入院を要するまでになるケースもあります。

高齢者の場合は、特に薬の作用や副作用が強く現れやすい傾向があるため、注意が必要です。

人の身体には個人差があります。高齢者がかかる疾患はこれがすべてではありません。ですが、一般的な高齢者の身体の特徴を知っておくことで、身近な高齢者がどのような疾患やケガを負いやすいか、推し量ることができるようになるでしょう。

高齢者は、治りにくく、かかりやすい

人間の身体は、日々新しい細胞に入れ替わっていきます。傷ついたり古くなったりした細胞が入れ替わることを新陳代謝といいますが、これは20代がピークと言われています。高齢になればなるほど、新しい細胞が造られにくくなっているのです。

これはつまり、ケガの治りが遅いということ。そしてそれだけではなく、身体の中に入れた薬物が排出されるのも遅いということです。これは、薬の作用・副作用が強く現れやすい理由でもあります。

  • 身体の痛みが長く続く
  • アザや内出血がなかなか消えない
  • 熱を出して寝込んだ後、いつまでも体力が戻らない
  • 一度食欲がなくなったら、その後あまり食べないようになってしまった
  • 睡眠導入剤や安定剤を飲んだ翌日、いつまでもぼんやりしている
  • あっという間に床ずれができて、治療をしてもなかなか治らない

高齢者によく見られる現象についてまとめてみました。いくつかは、自分自身や身近な方に「そういえば、こういうことがあったな」と思い当たるのではないでしょうか。

入院するときに備えておきたいこと3つ!入院中の変化にはご用心

どれだけ気をつけていても、ケガや病気にかかってしまうことはあります。そんな時、ただ慌てているだけでは何の解決にもなりません。また、いたずらに悲観的になっていては、事態は悪化する一方です。

ご自身はお若くても、父母や祖父母など、親族には必ず高齢者がいるはずです。ちかしい高齢者が入院してしまった時、自分はなにをすべきか。入院中からでもできることを考え、退院後の生活をより良いものにするために、準備をしておきましょう。

1.入院前の状態について、病院に情報を渡しておく

入院したときに、今までの生活や、入院の原因となったことについて、病院から聞き取りをされるでしょう。まずは、それらの情報を、病院へとしっかり渡すことが大切です。

入院された方がお一人暮らしの場合、一人でどのように暮らしていたかは把握しにくいかもしれません。ですが、普段の食事や家事のやり方など、ご本人がどれくらい自分のことをできていたかは大切な情報です。できるかぎり、事実に即した情報を渡しましょう。

ご本人の性格や気質も、大切な情報です。治療には直接の関係がないようにも思えますが、入院中に性格の変化がみられる場合もあります。認知症の発症や進行だったり、疾病に起因するものである可能性もあります。そういったものの発見にも役立つはずです。

2.入院中の変化を知っておく

入院の際に、病院にしっかりと情報を渡していれば、病院側でも変化に気づくことがあるかもしれません。「もともと活発な人だったのに、入院中は気力をなくして、リハビリにも取り組もうとしない」など、入院前の情報と比べることができるからです。

入院中でも病院に任せきりにせず、面会に行った際には、入院中どのように過ごしているのかを観察しましょう。面会に行くことで、入院前の日常を忘れさせないように意識づけることもできます。

面会時だけでは見えないことでも、病院側で気づいている変化もあるかもしれないので、可能であれば病院スタッフへ「入院中の様子はどうか」と聞いてみるのがお勧めです。

悪い変化が一時的なものであったとしても、回復後の精神状態などに、その時の記憶や感覚が残ってしまう場合もあります。入院中に起こりやすい変化は、精神的なものから身体的なものまでさまざまで、個人差もあります。

  • 現実にはないものが見える、せん妄が現れる
  • 急に機嫌が悪くなったり、理由もないのに怒っていたりする
  • いつもぼんやりとして、日にちなどもわからず、話しても反応が鈍い
  • 治療のために身体の動きを制限され、床ずれができてしまう
  • 安静に過ごしているため、筋力が弱って歩けなくなる
  • 活動がなく昼夜ともウトウトして過ごすため、認知症が進行する

経過を知っておかないと、病院から退院を提案された際に、慌てる羽目にもなりかねません。退院時の状態だけを見て退院後の準備をするよりも、入院中からの変化を継続して観察したうえで準備をしたほうが、より良いものとなるのは確実です。

3.病院や介護サービス、家族と連携をとる

高齢者人口の増加と、医療費削減の観点から、入院日は短く設定される傾向にあります。思いがけず短い日程で退院を促されることもあるかもしれません。入退院や退院後の生活に関わる人々にはまめに連絡をとり、連携を図っておきましょう。

病院の相談窓口
ほとんどの総合病院には、相談を受け付ける部署があります。地域連携室や退院支援室など、その名称は病院によって異なりますが、退院後の生活に向けて話をできる担当者がいる部署です。部署が分からない場合は、ナースステーション等で訊いてみましょう。
担当のケアマネジャー、地域包括支援センター
入院前に介護保険サービスを利用していたのなら、その時に担当されていたケアマネジャーとの連絡をこまめにとりましょう。ケアマネジャーと病院とで連携をしてもらうことも重要です。

「入院前は介護保険サービスを利用していなかったけど、退院後は利用したい」というのであれば、まず介護認定の申請が必要になります。病院の相談室から、地域包括支援センターや市役所の相談窓口を案内される場合もあるでしょう。

家族間での話し合い
最も大切なのは、「退院後の生活をどうするか」について、家族の間で話しておくことです。入院中の様子を観察していれば、おおよその状態は把握できるでしょう。退院後、どのような支援が必要かについても、なんとなく見えてくるはずです。

退院後、自宅に戻るとしたら、今まで通りの生活ができるのか。本人だけでは今まで通りの生活ができない場合、どういった支援が必要か。それは、現実的におこなえる支援なのか。

退院後、施設に入る場合は、いくらくらいの金額を出せるのか。本人の収入だけで賄えない場合、誰がいくら出せるのか。施設に入れるという選択を、本人も含め、家族みんなで受け入れているのか。

これからの生活について、退院や、施設入所・介護保険サービスの利用など、手続きなども含め、誰が主体となっておこなうのか。キーパーソンは誰なのか。

入院中、入院してからちょっと変かも?せん妄の症状

せん妄とは意識レベルが低下し、急に興奮したり、幻覚や妄想を伴った異常な行動をとったりする症状です。軽症なら独り言を認める程度ですが、ひどくなると徘徊したり暴言、暴力を認めることもあります。

症状としては認知症と似ていますが、時間的経過などに大きな違いがあります。

せん妄は数時間から数日の間に急に起こります。1日のうちでも状態の変動があり、特に夕方から夜間にかけて悪化する傾向があります。翌朝には前日のことを全く覚えてなかったりします。

入院経験のある高齢者の10~30%が、入院中にこのせん妄を経験すると言われます。

せん妄の原因とは?薬も関係しているかも

せん妄を引き起こす原因は様々なことが考えられ、それらの原因が重なりあうことで発症します。

その原因として考えられるものは

  • 脳梗塞などによる脳機能の低下
  • 呼吸器疾患や心疾患による低酸素状態
  • 脱水などによる電解質異常
  • 糖尿病
  • ビタミン不足
  • 重度の感染症

などがあります。また心理的ストレスも大きく関係していて、入院や手術、激しい痛みや環境の変化なども原因となります。

入院、特にICUに入った時にはせん妄を起こしやすくなります。また高齢者介護施設などへの入所もせん妄を起こしやすくなります。

高齢者は加齢によって脳が変化しているため、せん妄になる危険性は増加しています。何かのきっかけが加わることでせん妄を発症しやすくなっているのです。

薬の副作用によってせん妄を起こすことも少なくありません。若年者と同じ量でも高齢者にとっては過量の状態となっていることもあります。

せん妄を引き起こす薬は、実はいろいろとあります。

薬剤性のせん妄は初期のうちに原因薬剤を見つけて中止することが一番です。しかし、薬剤性せん妄だと診断されずに認知症と診断され、認知症の治療薬によってさらにせん妄を起こしてしまうこともあります。

具体的には以下のような薬でせん妄を引き起こすことがあります。

  • バルビツール酸系、ベンゾジアゼピン系などの睡眠薬、抗不安薬
  • 三環系抗うつ薬(トリプタノール、アモキサンなど)
  • フェノチアジン系(コントミンなど)などの抗精神病薬
  • 抗コリン薬(アーテン、アキネトンなど)、レボドパ製剤などの抗パーキンソン病薬
  • プロプラノロール(インデラル)、ベラパミル(ワソラン)、スピロノラクトンなどの抗不整脈薬、降圧薬、利尿薬
  • シメチジン、ファモチジン(ガスター)、ラニチジンなどのH2ブロッカー
  • アスピリン、インドメタシンなどの解熱鎮痛薬
  • その他テオフィリンや抗生剤、抗ウイルス薬 など

ここにあげたものはほんの一例で、他にもせん妄を引き起こす薬剤はいろいろとあります。

家族が突然認知症のようになってしまったという時には、医師に普段飲んでいる薬(特に最近追加された薬)を伝えて、まず薬の副作用を確認してもらうとよいでしょう。

ガスターのような、一般的によく使われている薬でもせん妄を起こすことがあるので注意してください。

また、環境の変化なども引き金になります。今までと違うこと、何か不安になるようなことはなかったか見直してみてください。

入院は本人も家族も不安なこと。だからこそ備えが大切

突然の変化に応じにくいのも、高齢者によく見られる傾向です。入退院など、自分の身体の不調に伴う変化であれば、なおさらに受け入れにくいことでしょう。精神的なショックもあり、不安な気持ちが強くあるはずです。

不安なのは、家族も同様です。今まで元気だった人が、入院をきっかけとしてがらりと変わってしまうかもしれないショックもあるでしょう。伴って、自分の生活スタイルも大幅に変えなくてはいけないかもしれなくなるのです。

高齢の身内の入退院は、いつ起こるかわからないことです。ですが、必要になってからでは、必要な対応を調べるどころではなくなってしまいます。今のうちから知識として得ておくことで、いざ必要な時に慌てずに動くことができるようになるでしょう。

キャラクター紹介
ページ上部に戻る