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漢方薬で下痢に?意外とよくある漢方の副作用と正しい選び方とは

漢方薬

漢方薬はお薬です。お薬である以上副作用は必ずついてきます。もちろんお薬と体質によって程度の差は大きく出るでしょう。しかし、副作用のないお薬はないのです。

例えば便秘のお薬を飲んで下痢の副作用が現れたとしましょう。これはお薬の本来の効果が行き過ぎただけですね。でも、これは副作用です。こうした「お薬の効き過ぎによる副作用」は漢方でも珍しいことではありません。

「漢方は自然で身体に優しく副作用がない」と言うのは、単なる思い込みによる誤解です。漢方薬にも副作用があることを知って、より効果的で安全に使いましょう。

漢方薬は新薬とは異なり「一人一人の個性に合わせた処方」と言う考え方があります。これは現代のオーダーメイド医療にも相通ずるものですね。そうした事を含めて漢方薬を上手に利用しましょう。

漢方薬使用で不調が出たら漢方医の先生・薬剤師さんに相談

漢方医療や鍼灸医療には瞑眩(めんげん・めんけん)と言う現象があって、お薬の飲み始めや鍼灸の最初のステージでは回復前に不調が増悪することがあるとされています。しかし、一般人には副作用と瞑眩の区別はつきません。

また当然のことですが、漢方医の先生方の間でも、瞑眩自体をできるだけ起こさない方が良いと言う考え方があります。一旦症状が悪化して、それから快方に向かうと言う現象であっても、一旦悪化した時に死んでしまったら医療じゃないですものね。

漢方医療では個人の体質を重視した処方が行われる

例えばうつ病に処方されるお薬として有名なのが「柴胡加竜骨牡蛎湯」(さいこかりゅうこつぼれいとう)です。しかし、このお薬は比較的体力のある「実証」と呼ばれるタイプの人向けのお薬です。

体力がない「虚証」と言うタイプの人が飲むと、ひどい下痢をしたり肝臓に副作用が出たりします。この下痢に対処するため、虚証の人向けには、柴胡加竜骨牡蛎湯の処方から大黄と言う下剤成分の生薬を省いたものが使われることもあります。

また肝臓のトラブルが起こる可能性のある虚証の人には桂枝加竜骨牡蛎湯(けいしかりゅうこつぼれいとう)と言うお薬が投与されます。

この「証」と言うのは漢方でよく使われる用語で、体力の有無やお薬自体の性質など割合広い意味で用いられます。人間についてもお薬についても、その性質を分類するための手法です。ですので、証が合わないと副作用が出やすくなります。

副作用にみまわれたら証の再判定が必要になる

例えば、体力についての診立てで、虚証・中間証・実証のうち、中間証と判断されて、虚証から中間証向けのお薬が出されていたのに副作用が出てしまった場合、実際には実証寄りの中間証であったために、そうした副作用が出た可能性も考えられます。

ですので、漢方薬を使っていて副作用が出た場合は、基本的に証の再判定が必要になります。副作用に困ったら、まず処方してもらったお医者さんに電話して、すぐお薬をストップしても良いかどうかを確認しましょう。

漢方薬の場合、新薬より薬の中断によって元の症状がより重くなって現れる反発症状は少なめですが、それでもまったく反発症状が存在しないわけではありませんから、念のため素人判断でいきなりストップはしない方が良いです。

漢方処方の市販薬を購入されていたのであれば、薬剤師さんに相談しましょう。

西洋医学は病気を診断し、漢方は人を診断すると言う言い方は、この証による部分が大きいのでしょう。しかし、西洋医学でも個人をしっかり見ないと危険ですから、実際にはちゃんと診てるんですよ。

漢方薬は基本的に配合薬なので配合原料の持つ副作用が出る

漢方薬と言うのは、基本的に複数の生薬を配合したものです。昔は患者さんの証に合わせて何をどれだけ配合するのかと言うことを漢方医の先生がしっかり決めていました。今でも微調整のことを「さじ加減」と言いますが、このさじとは「薬匙」のことなのです。

一方、昔から既製品的なお薬もありました。有名な葛根湯(風邪薬)や安中散(胃腸薬)などがそうですね。こうしたお薬はそのまま市販されることもありましたし、お医者さんが処方される時のベースになることもありました。

生薬も漢方薬もたくさんの種類がある

日本の医薬品の規格基準書である「日本薬局方」には150種類以上の生薬が収載されています。また、健康保険の適応対象になっている方剤(漢方薬として配合されたお薬)も300種類以上あります。

これらにはそれぞれ副作用もありますし、適合する証もまちまちです。ですので、全部を網羅することはとてもできません。

そこで、今回は良く配合される生薬に絞って解説を行い、その生薬が使われている主なお薬をリストすることで漢方薬と副作用の関係を見て行きたいと思います。胃腸症状などの軽い副作用はすべてのお薬にあるので、重い副作用のみを記載します。

また、市販薬を購入されるときの参考のために、副作用が出やすいとか効果が出にくいとかの、そのお薬に向かないタイプ(証)の人も書いておきます。ただし、これは素人で判断しきれるものではありませんので、必ず薬剤師さんに相談して下さい。

現代の漢方薬は基本的にエキス剤になっている

漢方薬の名前と言うと、葛根湯に代表される○○湯と言う物や、安中散のような○○散と言う物などがあります。これらは漢方薬の剤型を表しています。

新薬でも○○錠とか○○カプセルなどのように商品名に剤型が示されることが多いですね。それと同じと考えて頂いてOKです。

名称 剤型
○○湯 生薬を水と加熱して煮出した煎じ薬
○○散 生薬を物理的に粉にした粉薬
○○丸 散を練って丸め粒状にした丸薬
○○膏 生薬をペースト状にした塗り薬や、それを布に伸ばした貼り薬
○○エキス 漢方薬の有効成分を抽出乾燥し顆粒などにしたもの
このようなものがありますが、現在処方箋薬として出してもらえる漢方薬は、軟膏である紫雲膏を除いて、基本的にはエキス製剤の顆粒や粉末を飲む形式になっています。

もちろん漢方薬局で処方してもらった場合、昔ながらの物もありますが、30分もかけて毎日煎じ出すのも大変ですから、やはりエキス製剤は便利ですね。

エキス製剤の○○湯は、お湯に溶いて飲むと本来の使い方に近くなるので吸収が良いんですよ。ひどく苦いのもありますが、風邪薬の葛根湯なんかは甘味があって美味しいですね。

漢方生薬ナンバー1は甘味料としても使われる「甘草」

甘草(カンゾウ)は漢方の処方に最も多く使われる生薬です。漢方方剤のおよそ70%に配合されているとも言いますね。名前の通り、もともと甘味料として使われることの多かった植物です。

普通のお砂糖の50倍くらいの甘味を持ち、醤油の醸造やたばこの風味付けなどにも使われています。

甘草は副腎皮質ホルモンを利用して抗炎症効果を発揮する

甘草の有効成分はその甘味成分であるグリチルリチンです。この成分は体内の副腎皮質ホルモンの効果を長引かせることで炎症を抑え、血管内の水分をキープすることでショック症状を抑える効果を持っています。

人間の体内には副腎皮質ホルモンと言う強力な抗炎症効果を持つホルモンが存在しています。そのうちの一つがコルチゾールです。コルチゾールは人工のステロイド剤の原料になるものでもあります。

このコルチゾールは、体内にある11-β-ヒドロキシステロイド脱水素酵素と言う物質で不活性化されます。甘草のグリチルリチンはこの酵素の効果を抑制する働きがあるのです。

つまり、体内にある副腎皮質ホルモンが不活性化されるまでの時間を長くすることで、抗炎症効果や水分維持と言う効果を発揮するのです。

人工の副腎皮質ホルモン、いわゆるステロイド剤には感染症にかかりやすくなったり、骨粗鬆症になったりと言った強い副作用がありますが、甘草はもともと体内にあるものを利用するので、その副作用はありません。

しかし、甘草にも副作用があって、尿が出にくくなり、むくみが出たり、高血圧になったりします。その他、低カリウム血症が起こることもあります。さらに全身の倦怠感や体重の増加、手足のしびれ・痛み、筋肉の痙攣・脱力にも注意が必要です。

こうした症状は、尿からナトリウムの再吸収を促進させる働きのある、アルドステロンと言う副腎皮質ホルモンが増加した時と同じ現象ですので、偽性アルドステロン症と呼ばれ、甘草の重い副作用として知られています。

先に紹介した通り、甘草は漢方方剤の70%に配合されていますから、漢方薬の70%には重い副作用として偽性アルドステロン症がリストされます。ただ、お薬の配合によってそれが多いか少ないかはまちまちになりますので、心配な人はお医者さんや薬剤師さんに尋ねてみて下さいね。

甘草を含む方剤は非常に数多くある

甘草を含む処方は、先にお話しした通り現在健康保険の対象になっているお薬の70%にも上ります。ですので、一部を抜き出して名前を紹介します。副作用については、全部に共通する偽性アルドステロン症以外の重い副作用物のみを示します。

漢方薬名 主な効能 重い副作用 向かない人
葛根湯
(かっこんとう)
風邪薬 肝臓障害 虚弱体質
胃腸不調
発汗過多
甘草湯
(かんぞうとう)
鎮痛薬 (重い副作用なし) 特になし
芍薬甘草湯
(しゃくやくかんぞうとう)
鎮痙鎮痛薬 不整脈
心不全
間質性肺炎
肝臓障害
特になし
小青竜湯
(しょうせいりゅうとう)
気管支拡張薬
抗アレルギー薬
間質性肺炎
肝臓障害
虚弱体質
胃腸不調
発汗過多
循環器系
 の既往症
小柴胡湯
(しょうさいことう)
肝臓病薬 間質性肺炎
肝臓障害
虚弱体質
肝硬変・肝がん
麦門冬湯
(ばくもんとうとう)
鎮咳薬 間質性肺炎
肝臓障害
体力充実(実証)

料理でおなじみの「生姜」も生薬の一つ!重い副作用の心配はない

ショウキョウと言う名前で呼ばれる生薬の生姜は、私たちが普段薬味として使っているショウガです。生のまま使うこともあれば乾燥したものを使うこともあります。さらに、蒸してから乾燥したものもあるのです。

生姜の特徴は重い副作用がないことです。もちろん証が合わないと、軽い副作用が出たり効果がなかったりすることはあるものの、一般食品でもあるため、重い副作用の心配はありません。

生姜は他の生薬の副作用を抑えてくれる

後で登場する大棗(ナツメの実)と生姜を組み合わせると、他の生薬の副作用を抑制する効果があるので、多くの方剤に処方されています。

生薬本来の効果としては発汗作用による解熱作用、健胃作用、吐き気の抑制などがあります。また、鎮咳・去痰作用もありますので、風邪薬の系統にも良く配合されています。

現在はエキス製剤が多く使われますからあまり関係ないかもしれませんが、生姜とは私たちが普段食べているショウガをそのまま乾燥させたもの、乾姜(かんきょう)とはショウガの皮をむいて蒸してから乾燥させたものです。

生姜を含む漢方薬にも副作用はある

生姜自体には重い副作用をもたらすことはないものの、生姜が配合された漢方薬は、他の生薬のせいで重い副作用が出ることがあります。次の表の中で「偽性アルドステロン症」とあるのは、同じ薬に甘草が配合されているために出る副作用です。

漢方薬名 主な効能 重い副作用 向かない人
柴苓湯
(さいれいとう)
胃腸炎
浮腫
間質性肺炎
肝臓障害
偽性アルドステロン症
虚弱体質
半夏厚朴湯
(はんげこうぼくとう)
抗うつ
抗不安
(重い副作用なし) 体力充実(実証)
加味逍遙散
(かみしょうようさん)
生理不順
更年期障害
腸間膜静脈硬化症
肝臓障害
偽性アルドステロン症
胃腸虚弱
補中益気湯
(ほちゅうえっきとう)
疲労回復
病中病後
間質性肺炎
肝臓障害
偽性アルドステロン症
体力充実(実証)
大柴胡湯
(だいさいことう)
肝臓病
胆嚢疾患
間質性肺炎・肝臓障害 虚弱体質
下痢・軟便

また、先の甘草の所で紹介した葛根湯や小柴胡湯にも生姜は配合されています。

「茯苓」はサルノコシカケの仲間のキノコの根

茯苓は「ぶくりょう」と読みます。松塊(まつほど)と言うサルノコシカケ科の菌類ですが、キノコ(子実体)ではなく、地中で菌糸が絡まった硬い塊のような根っこのようなもの(菌核)を利用します。

その松塊の菌核の皮を全部むいて乾燥させたものが生薬としての茯苓です。松塊はキノコを生やすことはあまりないそうですので、見つけにくく貴重な生薬であったと言うことですね。

茯苓は慢性気管支炎に効果がある

茯苓は慢性気管支炎による泡状の痰が続くときに効果があります。また、抗炎症作用や鎮静作用、利尿作用などもあります。

さらに健胃作用などもあるため、現在生薬として漢方薬に使われるベスト3に入っています。

漢方薬名 主な効能 重い副作用 向かない人
八味地黄丸
(はちみじおうがん)
夜間頻尿
足腰の痛み
(重い副作用なし) 体力充実
のぼせ
暑がり
胃腸虚弱
当帰芍薬散
(とうきしゃくやくさん)
冷え症
生理不順
PMS
更年期障害
(重い副作用なし) 胃腸虚弱
桂枝茯苓丸
(けいしぶくりょうがん)
更年期障害
子宮内膜症
肝臓病
肝臓の重い症状
(黄疸)
(褐色尿)
(倦怠感)
虚弱体質
抑肝散
(よくかんさん)
神経症
不眠症
統合失調症
パーキンソン病
偽性アルドステロン症
心不全
横紋筋融解症
間質性肺炎
肝臓の重い症状
胃腸虚弱
六君子湯
(りっくんしとう)
食欲不振
胃もたれ
吐き気
軟便
偽性アルドステロン症
肝臓の重い症状
体力充実(実証)

また、先の生薬の所で紹介した柴苓湯・半夏厚朴湯・加味逍遙散にも茯苓は配合されています。

さて、生薬ベスト3が紹介できました。以下もおおむねよく使われる順に紹介しますが、できるだけたくさん紹介したいので、各々については少し短めの紹介にさせてもらいます。

「芍薬」は美しい花を咲かせる多年草の根っこ

「立てば芍薬、座れば牡丹、歩く姿は百合の花」と言うのは美人のことをうたった都々逸です。この芍薬の根を乾燥させたものが生薬としての芍薬です。

▼芍薬の花
芍薬の花

(都々逸(どどいつ):7・7・7・5(厳密には3+4・4+3・3+4・5)の音数律を持つ、江戸後期から明治にかけて流行した俗曲です。主に色恋や女性の色香を題材にしています。)

面白いことに、この3つの植物はいずれも薬用で、「シャクヤク」「ボタンピ」「ビャクゴウ」として日本薬局方にも収載されています。しかし、芍薬が圧倒的に利用頻度が高い生薬なのです。

芍薬は副作用の少ない鎮痛鎮痙薬

芍薬は副作用や使用上の注意点が余りない、使いやすい鎮痛鎮痙薬です。つまり、胃痙攣のような強い胃の痛みなどに効果が期待できます。消炎作用や血流をよくする作用もあるため、風邪薬や消炎薬としても使われます。

一方、最近では脂質の抑制や抗酸化作用が期待されて、美容関係からも注目されているようです。

芍薬自体には目だった副作用はありませんが、薬としての効果を求める場合、他の生薬と組み合わせた方剤が使われます。そのため、他の配合成分による副作用に注意が必要です。

芍薬が配合された漢方薬の例

漢方薬名 主な効能 重い副作用 向かない人
温経湯
(うんけいとう)
更年期障害
生理痛
偽性アルドステロン賞 胃腸虚弱
桂枝湯
(けいしとう)
風邪のひき始め 偽性アルドステロン賞 体力充実
(葛根湯の
方が適切)
防風通聖散
(ぼうふうつうしょうさん)
肥満症
便秘
むくみ
偽性アルドステロン症
間質性肺炎
肝臓の重い症状
虚弱体質
胃腸虚弱
発汗過多

この他、先に紹介した葛根湯・小青竜湯・加味逍遙散・大柴胡湯・桂枝茯苓丸などにも芍薬は配合されています。

食用をさらに蒸して干したものが薬用になる「ナツメ」

大棗(だいそう)はナツメの実です。ナツメの実は夜露に当てて、日に干すことで食用になります。良く見る赤いドライフルーツがこれです。これをさらに蒸してから干し上げると黒くなって薬用になります。

先にも少し紹介したように、他の生薬の持っている胃腸症状を引き起こす副作用を緩和する働きがあるため、様々な漢方薬に配合されています。

ナツメの種も生薬だが大棗とは異なるもの

ナツメの種は酸棗仁(さんそうにん)と言う異なる種類の生薬です。不眠に効果があるとされているものですので、大棗とはまったく異なる作用を持っています。

もし生薬からのエキスや健康食品として「ナツメ」という商品があった場合、果実なのか種子なのかに注意して下さいね。胃腸に効果があるのは「果実」の方で、安眠効果があるのは「種子」の方です。

種子の方が中心の漢方薬は「酸棗仁湯」(さんそうにんとう)と言う、酸棗仁に甘草や茯苓、川キュウ、知母を配合した沈静・睡眠導入薬です。

大棗は漢方薬の配合の中では脇役になりやすい

先に紹介した通り、他の生薬の持っている強すぎる部分を緩和して胃腸症状を起こさせないという働きがあるため、どうしても脇役的な配合になることが多いようです。

漢方薬名 主な効能 重い副作用 向かない人
呉茱萸湯
(ごしゅゆとう)
頭痛
肩こり
嘔吐
(重い副作用なし) 体力充実(実証)
平胃散
(へいいさん)
消化不良
胃もたれ
偽性アルドステロン症 (特になし)
柴陥湯
(さいかんとう)
鎮咳
胸の痛み
偽性アルドステロン症 虚弱体質

先に紹介した多くの漢方薬にも大棗は配合されていますが、大棗自体に重い副作用はありませんので、それぞれの漢方薬の使用上の注意に気を配っておけばOKです。

なお、ここの3つのうち2つにある偽性アルドステロン症も、甘草が配合されているために、稀ではありますか可能性があるという副作用に挙げられているのです。

スパイスでおなじみの「シナモン」も立派な生薬

最近では様々な健康効果に注目して、シナモンをもっと利用しようという風潮が高まっています。でも、シナモンは紀元前から薬草として用いられてきた歴史がありますので、健康にいいのは当然ですよね。

もともと東南アジア原産のようですが、ヨーロッパでもアジアでも北アフリカでも古代から使われていましたし、旧約聖書にも登場しています。

桂皮と言う名の漢方生薬はシナモンそのもの

日本薬局方には桂皮(ケイヒ)として収載されていますが、漢方では小枝を桂枝(ケイシ)と呼んで薬用とするともあるようです。桂皮はクスノキ科の常緑樹、肉桂(にっけい)の樹皮を剥いで乾かしたものです。

シナモンのことを「ニッキ」と呼ぶのは、この肉桂から来ています。厳密にはシナモンと肉桂は異なるものですが、ほとんど同じような効果を持っています。

また、桂皮も副作用の少ない生薬ですが、シナモンの大量摂取はクマリンと言う成分が持つ肝毒性が懸念されています。通常の食事から摂る程度では問題ありませんが、サプリによる摂取は量を過ごす恐れがあります。

ですので、桂皮・桂枝を配合した漢方薬を使っている時には、シナモンのサプリを摂らないように注意しましょう。

桂皮は胃粘膜の保護効果もある

漢方薬名 主な効能 重い副作用 向かない人
麻黄湯
(まおうとう)
風邪
インフルエンザ
喘息
関節リウマチ
偽性アルドステロン症 虚弱体質
安中散
(あんちゅうさん)
胃腸薬 偽性アルドステロン症 体力充実
五苓散
(ごれいさん)
利尿薬
頭痛
めまい
(重い副作用なし) (特になし)

安中散では桂皮の胃粘膜保護効果が利用されています。一般市販薬で言うと、お風呂の桶で有名な頭痛薬ケロリンは、主成分のアスピリンによる副作用から胃粘膜を保護するために桂皮が配合されていますね。

脱水には注意したい「蒼朮」はオケラの根を使った生薬

オケラと聞くと、普通はコオロギの仲間の虫を連想しますよね。無一文の隠語である「オケラ」も虫の方から来た言い回しです。

しかし、朮という文字は、植物のオケラを示しているんです。朮には蒼朮(そうじゅつ)と白朮(びゃくじゅつ)がありますが、この蒼朮はホソバオケラと言うキク科植物の根っこです。白朮はオオバオケラですが、もちろんこれもキク科です。

蒼朮は発汗効果・白朮は温熱効果

この2つのオケラは健胃・鎮静効果と言う面では共通の効果を持っていますが、水分の出入りや発熱に対しては逆の効果を持っているので、混用しない方がいいです。

一方、その競合を利用して、双方を配合した二朮湯と言う五十肩のお薬もあります。古く中国の明の時代(1368年~1644年)には成立していた処方だと言いますから奥が深いですね。

利尿発汗作用が強いお薬ですので、脱水症状には注意が必要です。特に使う前にすでに脱水気味の人や、喀血していたり鼻血が出ている人には禁忌です。

蒼朮が配合された漢方薬の例

漢方薬名 主な効能 重い副作用 向かない人
ニ朮湯
(にじゅつとう)
五十肩 偽性アルドステロン症
間質性肺炎
肝臓の重い症状
脱水
鼻血
喀血
越婢加朮湯
(えっぴかじゅつとう)
腎炎ネフローゼ 偽性アルドステロン症 脱水
鼻血
喀血
虚弱体質
胃腸虚弱
発汗過多
清暑益気湯
(せいしょえっきとう)
夏バテ 偽性アルドステロン症 体力充実
脱水
鼻血
喀血

血液に関係する生薬の「当帰」は使い方によっては注意が必要

砂糖漬けのお菓子でケーキなどのデコレーションに使われるアンゼリカですが、あれは西洋当帰と言う名前です。同じセリ科シシウド属の植物なんですよ。

この当帰ですが、漢方では婦人薬の中心に据えられています。それだけではなく活血という効果が強い薬ですので、出血傾向の人は使わない方が良いお薬です。しかし、出血をコントロールする部分もあるので、お医者さんに判断してもらいましょう。

使い方によっては副作用が出やすいので注意すべきお薬

普通の処方で用いている程度では全く問題ありませんが、長期または大量に使用するとのどや鼻が痛んだり、灼熱感が現れる場合があります。

漢方薬で、女性の生理に関するお薬のほとんどに当帰が処方されています。先にもお話しした通り、活血効果が高いお薬ですので、月経過多の方にはそのままでは使えません。

しかし、漢方薬は複数のお薬を組み合わせることで、他がいの欠点を補い相乗効果を狙うものですので、ちゃんと当帰の効果を利用しながら月経過多に対応できるお薬もあります。

次にも掲載しておきますが温経湯などがその処方の1つです。

貧血や痔疾にも当帰が効く

漢方薬名 主な効能 重い副作用 向かない人
温経湯
(うんけいとう)
更年期障害
生理不順
偽性アルドステロン症 胃腸虚弱
帰脾湯
(きひとう)
貧血 偽性アルドステロン症 体力充実
乙字湯
(おつじとう)
痔疾
便秘
偽性アルドステロン症
間質性肺炎
肝臓の重い症状
虚弱体質
胃腸虚弱

漢方薬にも無数の組み合わせがある!やっぱりプロに相談するのが良い

ここまで、漢方薬の処方でよく使われるベスト8の生薬を紹介してきました。最初にお話ししたように、日本薬局方収載の分だけでも150種類以上の生薬がありますので、とても紹介しきれません。

また、これらがそれぞれ患者さんの状態や体質に合わせて組み合わされるわけですから、その可能性は無限大に近いです。ですので、漢方薬を利用される場合も、しっかり受診するか、少なくとも薬局で薬剤師さんに相談しましょう。

漢方エキス製剤の市販薬は第2類であることが多いので、相談しなくても買えますが、薬剤師さんには自分に合った市販薬を見つけるお手伝いを無料でしてもらえるんですから、相談するに越したことはありませんよ。

漢方薬の副作用は使い初めと長期連用の際に注意する

新薬でも同じですが、重い副作用については使い初めに注意しておくことが重要です。「おかしいな」と感じたら、すぐにお医者さんか薬剤師さんに相談して下さい。

一覧表で見ていただいた通り、漢方処方の重い副作用は、甘草に起因する偽性アルドステロン症か、他の生薬による重い肝臓障害、間質性肺炎などに集中しています。

しかし、吐き気や胃の不快感、食欲不振、下痢などの胃腸症状は軽い副作用としてほとんどのお薬に見られます。また、発疹・発赤やかゆみなどが現れたり、肝障害も珍しくはありません。

こうした一般的な副作用については、上の表では紹介していませんが、不快であったり辛かったりしたら、お医者さんや薬剤師さんに相談しましょう。

効果のあるものには必ず副作用が付いて回る

もっとも理解して頂きやすいのは便秘薬なので最初に例として取り上げました。便秘薬の効果が行き過ぎると下痢をします。これと同じで、どんなお薬であっても「効きすぎ」と言うのは副作用としての症状を呼んでしまいます。

難しいお薬でいえば抗がん剤ですね。抗がん剤の多くは細胞分裂が早い細胞を狙い撃ちにします。がん細胞は細胞分裂が正常細胞より早いのです。しかし、正常細胞の中にも細胞分裂の早いものがあるので副作用が出るのです。

髪の毛や舌の上で味を感じている味蕾などは細胞分裂が早いため、副作用が出やすいんですね。そういう意味では、効果のあるお薬で副作用がないものは存在しないといってもいいでしょう。

漢方薬もこれと同じで、とてもよく効くお薬はたくさん存在しますが、やはり副作用もついて回るのです。

最初にお話しした、偽性アルドステロン症と言う重い副作用を持っている甘草は、漢方薬の中でも圧倒的に高い利用頻度を誇ります。もちろん偽性アルドステロン症はそれほど高い頻度で起こるものではなく、めったに起こらないといってもいいでしょう。

甘草は体内の副腎皮質ホルモンを上手に利用するという効果を持っているため、その裏がえしとして、副腎皮質ホルモンのアルドステロンが過剰になった時のような副作用を起こすことがあるのです。

漢方薬は自然だから身体に優しく副作用が起こらないというのは、ある種の幻想です。副作用に十分注意しつつ、自然薬品である漢方薬を上手に利用するようにしたいものですね。

おじさんの必須アイテムだった仁丹も、生薬の組み合わせでできています。今回紹介した8つのうち、甘草・桂皮・生姜の3つが配合されています。他には阿仙薬・丁子・木香・益智・縮砂・茴香・薄荷などが配合されているんですよ。
キャラクター紹介
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