健康生活TOP 感染症 重大な後遺症が残る小児麻痺がポリオウイルス以外の原因で発生!

重大な後遺症が残る小児麻痺がポリオウイルス以外の原因で発生!

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小児麻痺、イメージとしては既に根絶された病気ですよね。日本では野生種による感染発症と言う現象は、もう30年以上起こっていません。野生種と言うのは、ワクチンなど以外で自然に感染するウイルスと言うくらいの意味です。

一方、生ワクチンによる発症は今世紀になってからでも少ないながらあったようです。近年では不活化ワクチンが再承認されていますから、もう海外から持ち込まれない限り心配のない病気とも言えるでしょう。

しかし、同じように根絶されたはずのアメリカにおいて2014年の夏から秋の3か月間で10人前後の小児麻痺症状の患者が発生し、日本でも同年10月に1人の患者が出ました。ポリオが復活したのでしょうか。

ポリオウイルス感染によって起こる麻痺症状が残る小児麻痺(急性灰白髄炎)

急性灰白髄炎(きゅうせい かいはく ずいえん)と言うのが小児麻痺の正式名称です。ポリオウイルスの感染によって、脊髄の灰白質に炎症を起こし消えない麻痺が残る病気です。

もちろん感染者全部に麻痺症状が残るわけではなく、かなり少ない人数に残るとされています。とは言うものの、死に至ることもある怖い病気ですね。

ポリオウイルスの仲間

それほど遠くない昔にも、日本で大流行したことがあります。最後の大流行は1960年ごろでしょうか。その直後に緊急措置が取られ、患者数が激減、前の東京オリンピックの頃には年間100人以下になっていました。

その頃は夏から秋にかけて良く発生したと言うことです。春遅くから夏、秋の初めにかけてと言う、いわゆる暖かい季節に流行するウイルス性の病気と言えば、まずは夏風邪でしょうか。

そして、手足口病もこの季節の病気ですね。赤ちゃんから子供に多いヘルパンギーナもこの季節です。

手足口病の原因ウイルスは何種類かのコクサッキーウイルス(EV-A16など)とエンテロウイルス71(EV-A71)です。コクサッキーウイルスもエンテロウイルス属のウイルスですね。略号のEVはエンテロウイルス属のことを示しています。

喉が真っ赤になり、口の奥の上の方にブツブツができる夏風邪症候群のヘルパンギーナの原因もエンテロウイルスAのグループですね。EV-A2~6、8、10、71あたりだそうです。

さて、そこで小児麻痺の原因菌であるポリオウイルスですが、実はEV-P1、EV-P2、EV-P3とも呼ばれます。つまりエンテロウイルス属に含まれているんですね。

いまだに世界を見渡せば存在し続けているポリオですが、野生種の血清型P2のもの(EV-P2)は世界から根絶されたと考えられています。あと二つですね。

2014年に発生した病気

2014年にアメリカで発生した感染症では、コロラド州で12人の患者に急性の弛緩性麻痺(筋肉に力が入らず、ぐにゃぐにゃになるタイプの麻痺)が見られました。11.5歳を中心とする年齢層の子供たちです。

そしてMRIの検査では、そのうちの10人の中心灰白質(脊髄の灰白質)に病変があったと言うことです。また、9人には脳幹部にも病変がありました。

これは急性灰白髄炎(小児麻痺)と非常に近いそうです。そしてこの病気はアメリカで起こったウイルス性呼吸器疾患のアウトブレイクの中で認められた症状でした。

アウトブレイクとは、一つの国家など限られた地域の中で流行する伝染病や、その流行のことを指します。一方、世界中に拡がる流行のことはパンデミックと呼んでいますね。

呼吸器疾患のアウトブレイク

アメリカ疾病対策予防センター(CDC)によりますと、2014年8月中旬から2015年1月までの間に全米49の州とワシントンD.C.において、1153人の患者の発生を確認し、うち14人が死亡したとあります。

また、患者のほとんどは子供だったそうです。推定ですが軽症で済んだ人や検査を受けなかった人を含めると、おそらく数百万の感染者が出ていたのであろうとCDCは述べています。

この時の呼吸器疾患の原因菌はエンテロウイルスD68(EV-D68)でした。また先のコロラド州の子供たちの病気もEV-D68が原因であった事が判っています。

一方我が国では2014年に4例のEV-D68感染症の発症例が報告されていて、そのうち1人にポリオのような麻痺が現れたと報告されています。

と言うことで、どうやらエンテロウイルスD68には、小児麻痺のような症状・後遺症を残す可能性があるらしいことが判ってきました。

患者発生の周知が遅れる危険

小児麻痺を引き起こすポリオウイルス感染による急性灰白髄炎は、感染症の予防及び感染症の患者に対する医療に関する法律(通称:感染症予防法)によってお医者様が直ちに届け出を行わなければいけない2類感染症に分類されています。

しかし、急性灰白髄炎であると言う診断にはポリオウイルスの検出が必須になっていますから、今回のような例では、2類感染症としては扱われないかもしれません。

一方、手足口病やヘルパンギーナは、週単位で小児科医から届け出が行われる5類感染症です。ウイルスの検出は必須ではありませんが、大抵検査は行われるでしょう。

この段階でエンテロウイルスが検出されて届け出が行われれば、少しは医療関係者に警鐘を鳴らせるかもしれませんね。

でも、「夏風邪がおなかに来た」程度で済まされて受診しなかったり、届け出が行われなかったりすると、病気が広がる可能性もあります。

私たちにできることは、おかしいと思ったら病院で受診することだけですが、今回の例をベースに政令の整備が行われると良いですね。

手洗いはあなたが作るワクチン!大人もつとめたい予防と対策

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残念なことに、6種・数10血清型も存在するエンテロウイルス属の中で、ワクチンが存在しているのはポリオウイルスの3つの血清型だけです。したがって、他のエンテロウイルスによる感染症の場合、対症療法しかありません。

いくつかのワクチンや治療薬の候補はできていますが、まだ効果の検証中と言う段階です。

基本は手洗いとうがい

あまりにもありきたりな対策ですが、とどのつまりこれが一番効果的なのです。と言うのも、エンテロウイルスと言うのは腸の中で増殖するウイルスだからなんですね。

ですので、感染経路も飛沫や接触など、基本的には口から入る経口感染なのです。そうなってくると、手洗いうがいをよく行い、食べるものはしっかり火を通してすぐに食べることが予防の基本になります。

今回アウトブレイクが起こったアメリカでは、CDCが感染予防について詳細な説明を行っています。生活習慣が違うので、ちょっと違和感を覚えるところもありますが、なかなか参考になりますよ。

・石鹸と流水で20秒以上、こまめに手洗いをして下さい。
・洗っていない手で、目・口・鼻に触れないで下さい。
・患者とのハグやキスなどの密接な接触は避けて下さい、また、患者との食器やカップの共有はしないで下さい。
・咳・くしゃみは手で覆わず、ティッシュやシャツの袖で覆って下さい。
・特に患者がいる場合には、ドアノブやおもちゃなど、よく触れるものをこまめに清掃・消毒して下さい。
・病気の時は家から出ないで下さい。

シャツの袖と言うのにはちょっと笑ってしまいましたが、手で覆ってしまうと、汚れた手で他のものにウイルスを擦り付けてしまうからと言うことですね。飛沫から接触感染への移行防止なのでしょう。

使い捨てにできる分、ティッシュを持ち歩く方がよさそうですね。

なお、アルコール消毒が無効と言うわけではありませんが、インフルエンザや単純ヘルペスのウイルスなどに比べるとアルコールには強いウイルスです。ですので、殺菌消毒には塩素消毒が有効です。

あるいは100℃1分間以上の加熱で殺菌できます。エンテロウイルスは暖かい季節に良く活動しますので、春から秋の間は生ものを避けましょう。他の食中毒などを防ぐ意味も兼ねて、食べ物はよく火を通して食べましょうね。

大人でもかかる病気

エンテロウイルス感染症は、圧倒的に子供に多い病気ですが、大人がかからないと言うわけではありません。毎年少ないながら手足口病やヘルパンギーナも大人の発症者があるようです。

特に家庭内で患者が出た場合、大人にも広がる可能性はありますから、充分予防に努めましょうね。

そして、日本では縁がなくなったものの、小児麻痺と言う名前に騙されがちなポリオウイルスによる急性灰白髄炎も、数%程度とは言え成人してからの発症もあるんですよ。

感銘を受けた標語

アメリカの感染症予防に関するサイトには、必ずと言っていいほど掲載されている標語があります。それは、

「手洗いは あなたが作る ワクチンだ」 ( Handwashing is like a “do-it-yourself” vaccine. )

と言うものです。個人の健康ブログから、上はCDCやアメリカ陸軍に至るまで、ありとあらゆるサイトに書かれている標語です。

治療薬や予防薬がない病気にでも、確かに手洗いは最も有効な予防手段ですものね。日本にも輸入してほしい標語かもしれません。

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