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ペットから感染する病気はオウム病以外にも!人がかかるQ熱

children interact with pets

ペットから人間に伝染する病気と言えば、まず連想されるのがオウム病ですね。妊娠を意識する女性が注意されているのはネコ由来のトキソプラズマ症でしょうか。

ネコひっかき病はネコ自体が病気の原因にはなりませんが、人間に伝染すると病気を引き起こします。あまりひっかかないのでイヌからの伝染は珍しいですが、同じ病原体はイヌからも感染します。

この病気や餌の口移しで伝染するオウム病を除けば、ほとんどのペット由来感染症は糞からやってきます。今回話題のQ熱も糞が原因になることも多い感染症です。

感染を予防するために私たちが気を付けなければならない事をしっかり知っておきましょう。

実は危険!?知らずのうちにQ熱にかかっているかも…

Q熱は英語の”Query Fever”(質問熱:転じて不明熱)に由来しています。最初に確認された1935年当時、全く原因がつかめなかった流行性の熱病だったので付けられた名前です。

“Query”=クエリと言う言葉は、IT関連で「プログラミングの中における問い合わせ」と言う意味でよく使われる用語ですね。

現在ではコクシエラ菌と言う、レジオネラ菌やリケッチアに比較的近く、ウイルスのように宿主の細胞の中でしか生きられない細菌が原因であることが判っています。それでも病気の原因として特定しにくい性質から見て、今でもQ熱の名前が似合う細菌です。

Q熱は感染症法によって直ちに届出が必要な病気

Q熱自体は感染症法に基づいて、医療機関が確定診断を付けたらすぐに届け出が必要な4類感染症に分類されています。1~4類感染症はいずれもすぐに届け出が必要ですが、少しずつ性質の違う病気のグループです。

1類と2類は危険性が高いため早急な届け出が要求されます。1類の方がより危険性が高いです。エボラ出血熱やペストが1類、SARSや結核が2類に分類されています。

3類は危険性はそれほど高くない物の、集団発生の恐れがあるものが指定されています。O157感染症やコレラなどです。

では4類はそれほど危険じゃないのかと言うとそうじゃありません。4類は危険な病気の中で人間から人間への伝染は少なく、動物や飲食物によって人間が感染する病気なのです。

5類は週に1回まとめての報告を求められる病気で、厚労省などが統計的なデータを集めて、大規模な感染を防止する目的で情報収集しているものです。エイズやインフルエンザがこれに当たります。

日本では少ないQ熱だが特定されていないだけの可能性も

Q熱の感染者数は、おおむね年間20~40人程度ですから、非常に珍しい病気と言えるでしょう。しかし、問題なのはQ熱と診断できていない患者数が意外に多いのではないかと言う疑問がずっと持たれていると言うことなのです。

医師がQ熱の診断をする場合には、感染経路として、動物との接触歴、特に分娩前後の動物や新生仔との接触などの問診が重要である。

感染経路の不明な症例も数多く報告されているため、発熱を主体とした原因不明の症状が持続するときには、本症の可能性を検討する必要がある。わが国では、診断体制が確立されておらず、未だ実態が把握されていない。

客観性と再現性の高い診断システムの確立と簡易な診断キットなどの開発・早急な対策が必要である。この普及により、感染源や病態の詳細な解明が進展する。

なお、病原学的・血清学的診断が必要な場合は,弊所に連絡いただければ可能なかぎり対応したい。

この引用文は2004年のものですから、少し古いと言えば言えるのですが、それでも診断が付けにくい病気だと言うことはお分かり頂けるでしょう。ですので、厚生労働省に報告が上がっている数だけを見て「日本には少ない病気だ」と安心はできないのです。

原因菌が突き止められた今でも「謎の病気」って感じですね。

Q熱の症状は?インフルエンザに似ているため慢性化する恐れがある

Q熱には急性期と慢性期があります。急性期にQ熱だと言う診断が付けられずに時間が経ってしまうと慢性化します。

見落とされる可能性が比較的高い病気だけに、感染者数が過小評価されたり、慢性化してしまう事の多い病気でもあるのです。

急性期のQ熱はインフルエンザとよく似ている

Q熱の症状には肝炎が出る場合もありますが、一般的に多く見られるのは

  • 悪寒
  • 頭痛
  • 発熱
  • 関節痛
  • 筋肉痛
  • 咳などの呼吸器症状

です。この症状だけを見ると、一般人だけでなくお医者さまでも、まずインフルエンザやその他の風邪を疑うでしょう。Q熱が難しいのは、一般的な他の病気との鑑別(見分ける)診断がしにくいことに原因があります。

潜伏期間は2~3週間と言われていますが、原因菌の数が多い時はもっと早く発症するとも言われています。

リスク要因をお医者様に報告するのが重要

インフルエンザのような症状で病院に行けば、大抵インフルエンザとして治療に臨むことになります。しかしQ熱であった場合、ウイルスではなく細菌感染症ですので、インフルエンザ用の治療は無効です。

Q熱自体は他の病気の検査で偶然見つかることはなく、Q熱専用の検査を行わないと見つかりません。

そのため、もしインフルエンザのような症状が出てお医者さまに診てもらう場合、ペットを飼っている場合はそのことを必ず報告しておきまよう。特にペットに子供が生まれたと言うことは重要な内容になります。

ペットを飼っていなくても、1か月以内くらいに動物とのふれあいの機会があった場合も、どんな内容であったかを含めてしっかり報告することが大事です。

Q熱にかかってしまう原因は次の項目でお話しします。

「木の葉を隠すなら森の中」という推理小説発祥の言葉がありますが、まさにこれですね。

Q熱を隠すならインフルエンザの中、医師が名探偵になれるかどうかは患者さんが情報を与えてくれるかどうかで決まるのです。

Q熱の原因・感染経路は意外なほど広く存在している

この病気に感染するのは人間だけではありません。最初にお話しした通り、ペットなどの動物から人間に伝染し、人間同士ではほとんど伝染しない病気なのです。

しかもペットだけではなく、家畜や野生動物から感染することもあるんですよ。海外では畜産関係の人たちの間で多く発生しているため、オーストラリアでは畜産関係者にワクチンが使用されています。

残念ながら、このワクチンは副反応のトラブルなども多いため、わが国ではまだ使うことができません。

また、Q熱の検査は行える機関が少なく費用も高いので、ちょっと敷居が高いです。ですので感染機会を極力減らして予防するのがベストです。

人獣共通感染症だがハイリスクなのは糞と新生仔関連

私たちが特に注意しなければいけないのは、まずペットの糞尿です。掃除する際などに素手で触れてしまう事はもちろん、乾いて飛び散った微細粉末を吸い込むことでも感染の原因になります。

そしてそれほど頻度は高くないですが、感染しやすいものに生まれたての子犬や子猫、あるいは生まれた時の胎盤や流産した胎仔など出産に関係するものがあります。こちらも、汚物が乾燥して飛び散る目に見えない粉末に注意です。

ネコが原因と思われがちだが動物全般に広く危険性は存在する

注意を呼びかけるアナウンスの中には「ネコが原因」と明記してあるものも見かけられますが、これは間違いです。おそらくトイレを室内に設ける可能性があるのはネコだけになるからじゃないかと思いますが、様々な動物がこの病気を媒介します。

route of infection of Q fever

ペットの中でもイヌやネコ、ウサギ、その他の動物も危険性はありますし、牛や羊などの家畜、野生動物や野鳥も感染源になります。そして共通要因はダニですので、完全室内飼いでもわずかながらリスクはあると思われます。

海外では生肉や未殺菌牛乳などを飲食して感染した例もありますので、そうしたものには充分注意しましょう。

思ったより広く存在している病原菌なんですね。先に説明のあった「インフルエンザかなと思って病院にかかる場合」に報告する内容は、このようなことを含めておきましょう。

妊娠中や計画中の女性は特に注意する必要がある!

妊娠中や計画中の女性が注意するペット関連と言えば、ネコの糞から感染するトキソプラズマ症ですね。これは、妊娠の経験や計画をお持ちの女性の方なら、常識として知っておられるんじゃないかと思います。

実はこのQ熱も妊娠に関して非常にリスキーな病気ですので注意しましょう。妊娠中にQ熱にかかると流産や早産の危険性が高まることが報告されています。

ただ、トキソプラズマを警戒してネコのトイレの始末を完全に行っていれば、同時にQ熱の予防にもなりますから、それほど神経質にならなくてもOKです。但し、それ以外の動物や、ネコについても充分な注意が必要な事柄がもう一つあります。

Q熱は動物においても症状が出る場合がある

人獣共通感染症で問題になる病気は、動物が感染しても発病しないから、人間が油断してしまってうつりやすいと言うことがあります。

一方、Q熱については、多くの場合症状が出ませんが、妊娠中の動物が感染した場合、早産や流産を引き起こします。これは原因菌が胎盤で爆発的に増殖するためと考えられています。

つまり、Q熱に感染した動物が出産したり流産したりした場合、Q熱の原因菌が大量に出てきてしまう可能性があるのです。

ですから、飼い主が妊娠中にペットも妊娠したら、それは嬉しいことですが、できればペットには妊婦さんのいない家で出産してもらいましょう。

まだQ熱の検査体制は充分ではありませんので、獣医さんに検査できるかどうかを相談してみるのも一つの方法です。それで感染がないと判れば安心ですしね。

先にもお話しした通り、ダニが媒介するので完全室内飼いのペットでも、リスクは低いと言ってもゼロではありません。

可愛いペットにも子供が生まれるのはうれしいですが、やはり身体の構造も違いますから、病気の予防については慎重の上にも慎重を重ねたいものですね。

抗生物質は有効だが慢性化すると非常に厄介な病気

Q熱の原因菌であるコクシエラ菌は細菌ですので抗生物質・抗菌薬が有効です。しかし、急性期でも数週間の投与が必要になるので、ちょっと大変な治療になります。

また、一旦症状が治まってからの再燃と言うケースも少なくありません。そうした場合、しっかり治療しないと慢性化します。慢性化したら数年間投薬を受けても完治しないこともあるので、さらに厄介です。

慢性疲労症候群の原因にもなっている慢性Q熱

Q熱は急性期を過ぎた場合慢性化することがあります。その場合に現れる症状で最も危険なのは心内膜炎です。急性期のQ熱の死亡率は1%未満ですが、心内膜炎を併発すると数%に上昇します。

また海外からの報告ですが、急性のQ熱が治まってから数か月~十数年もの後、慢性疲労症候群と診断されたと言う報告も存在しています。

このように、いまだもって確定診断が付けにくく、治療についても慢性化してしまう事例が少なくないなど、まだまだ名前の通り「謎の病気」としての要素も持っているQ熱です。

ですから、感染者数の報告が少ないからと言って無視することなく、ペットの衛生管理については充分注意を払うようにしましょうね。

この時代に「謎の病気」と笑わないで下さい。まだまだ病気と言うのは判っていない部分も多いのです。

消毒薬も良いですが、まずは掃除で清潔さを保つようにしましょう。手袋とマスクも忘れずにね。

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