健康生活TOP 感染症 ウイルス感染症、中東呼吸器症候群MERSの症状と予防法とは

ウイルス感染症、中東呼吸器症候群MERSの症状と予防法とは

shutterstock_410542872

MERS(マーズ:Middle East Respiratory Syndrome:中東呼吸器症候群)は、2012年にサウジアラビアで初めて確認された呼吸器の重い感染症です。死亡率は50%に届くという報告もあるぐらい危険な病気ですが、幸いなことに爆発的な流行は起こっていません。

また2017年1月末時点では、日本に入ってきたという報告はありませんが、2015年には韓国での発症者が報告されていますので、油断しないでいることがとても大切だと言えるでしょう。

MERSはワクチンも治療法もない呼吸器の病気

2017年初頭の段階でMERSには予防のためのワクチンも、MERSを治療するための特別な治療法もありません。一般的な予防努力と対症療法で、人間の自然治癒力にまたなければいけないのです。

症状としては呼吸器の症状が中心で、発熱や呼吸困難を伴うこともある割合重い症状の病気です。

MERSの症状は風邪や肺炎に似た部分がある

MERSに感染すると、2日~14日の潜伏期間を経て症状が現れます。症状の重さは感染者の体力や基礎疾患の有無によって変わってきます。元気な人では軽症で済んでいる例もあるようですが、死亡率の高い病気ですので油断はできません。

具体的な症状として良く現れるのは、

  • 発熱
  • 息切れ
  • 呼吸困難
  • 下痢

などです。言葉だけを見ると風邪の症状によく似ていますね。実際には肺炎症状を起こしていることが大変多くなっています。肺炎は通常細菌性ですから、ウイルス性のこの病気では異型肺炎と言うことになるでしょう。

また、腎不全を発症した患者もいるという報告があります。

流行地は中東と韓国だったが2016年以降は中東だけ

流行地域は圧倒的にサウジアラビアに多く、全体の7割を占めているといわれています。一方、2015年5月には韓国で初動体制の誤りから、韓国国内で感染発病者が増加しました。その後、緊急対応の結果、同年年末に終息宣言が出されました。

ですので、2017年1月末現在、流行地域は中東だけになっています。一方で、中東では少ないながら新たな感染・発病者が継続的に報告されています。

2017年1月26日に公表された世界保健機関(WHO)の情報によりますと、サウジアラビアの国際保健規則(IHR)国家担当者は、2017年1月2日から7日までに、新たに死亡者2人を含む中東呼吸器症候群(MERS)の感染者9人を報告しました。

また、これまでに報告されたMERS患者2人の死亡も報告しました。

(中略)

WHOは、2012年9月以降、世界中で少なくとも670人の関連する死亡報告を含む、検査で確定された、1,888人のMERS-CoV感染の患者報告を受けています。

(出典…2017年01月27日更新 中東呼吸器症候群コロナウイルス(MERS-CoV)の発生報告(更新) – 厚生労働省検疫所・FORTH)

6日間で9人の感染と2人の死亡ですから、決して少ない数とは言えませんね。まだまだ中東への渡航の機会がある人は特に、充分な注意が必要だと言えるでしょう。

韓国での終息宣言から、日本ではあまり注目されなくなっていましたが、まだまだ注意しておかないと、誰が感染して持って帰ってくるか判りませんね。中東への旅行や出張の際は充分警戒しておいて下さい。

MERSは人から人へ感染することもあるウイルス感染症

現在までのところ、それほど強力な伝染力は見られていないものの、主に医療機関の中での院内感染の形で、人から人への感染が確認されています。

ですので、私たちは普段から行っている感染症予防の注意を常に忘れないようにしておきましょう。それだけでも、万が一感染者が日本に入ってきたとしても抑え込めるでしょう。

MERSにはワクチンも特効薬もない

MERSにはまだワクチンがありませんから、ワクチン接種によって免疫を獲得して予防することはできません。また原因ウイルスに効く抗ウイルス薬もありませんので、MERSに対する専用の治療法もありません。

ですから、まずはインフルエンザやかぜ症候群などに対する一般的な呼吸器感染症の予防法を実践して下さい。また、経口感染が疑われる例もありますので、ノロウイルス対策のような感染防止法も役立ちます。

MERSの病原体にはアルコール消毒も有効ですから、そういう意味ではノロウイルスより相手にしやすい部分もあると言えるでしょう。

でも、全体の死亡率の高さで見た場合、絶対に油断できない相手です。かなり進んだ医療体制を持っている韓国ですら、181人の確定患者のうち32人が死亡していますから、死亡率は17%を超えています。

万が一日本で発生した場合でも、場合によっては韓国なみの死亡率は覚悟しないといけないかもしれません。

流行地域への渡航の際は感染予防を徹底する

2015年末の韓国での終息宣言後は、ほとんどが中東地域での発生に留まっています。WHOのアーカイブを見ると、2016年1月1日以降2017年1月27日までの間に報告された発生地域は以下の通りです。

  • サウジアラビア
  • オマーン
  • アラブ首長国連邦
  • カタール
  • バーレーン
  • オーストリア(サウジアラビア人男性・67歳)
  • タイ(オマーン人性別不明・71歳)
  • タイ(クウェート人男性・18歳)

中東地域では国ごとに複数の患者が出ています。また、中東地域以外での発生は一人ずつ患者の属性も添えておきました。

このように中東以外でも発生していますが、それはたまたま中東の人が感染したまま海外に渡航して、渡航先で発病したものだということです。

また、ここには名前が上がっていない中東の国でも過去には発生していることや、中東自体が陸続きの1つのエリアであることから見て、中東全般に対して注意を払っておくことが望まれます。

ですので、今のところMERSについては中東に警戒しておけばいいと思われます。とはいえ、海外では日本にない感染症があるケースも少なくないので、どこに渡航する場合でも注意はしておきましょう。

特に旅客ハブ空港になっているようなメジャーな空港では、世界中から人が集まりますので厳重な注意が必要です。

旅客ハブ空港は、日本の成田空港をはじめ、韓国仁川空港、香港空港、フィリピン・マニラ空港、シンガポール空港、タイ・バンコクスワンナプーム空港、アラブ首長国連邦・ドバイ空港、アメリカ・デトロイト空港とシカゴ空港などです。

こうした空港を発着地や経由地に選ぶ場合には、特に感染予防を重視しましょう。

ハブ空港は航空会社が本拠地を置いていることが必要ですのでセントレアや関空はあてはまらないのです。

MERSウイルスはコロナウイルスの一種

MERSコロナウイルスと言う表記をされることもありますので有名でしょうが、この病原体はコロナウイルスの一種です。ですので、予防対策も共通するところがあります。

また、2002年から2003年に問題になったSARS(サーズ:Severe Acute Respiratory Syndrome:重症急性呼吸器症候群)の仲間でもあります。

コロナウイルスは普通の風邪のウイルス

コロナウイルスと言う名前はかぜ症候群に関してよく耳にする名前です。一般に風邪をひき起こすコロナウイルスはOC43・229E・NL63・HKU1株の4つです。

コロナウイルスにはα(アルファ)からδ(デルタ)まで4つの属が存在していて、人に感染するのはαコロナウイルスの229E・NL63とβ(ベータ)コロナウイルスのOC43・HKU1・SARS-CoV・MERS-CoVです。γ(ガンマ)とδは人に感染しません。

SARSとMERS以外の4つは、風邪の10~15%の原因ウイルスになっているありふれたものです。なのに、なぜSARSやMERSのような危険なウイルスが存在しているのかの理由は解明されていません。

もちろん突然変異が原因であろうことは容易に想像ができますが、数多く存在するコロナウイルスの、どのタイプのものから生まれたのかは謎です。

ただ、コロナウイルスは動物や鳥類にもそれぞれの種族ごとに病原性を持つものが知られています。犬や猫はもちろん、牛や豚、馬やねずみ、シロイルカにツグミにヒヨドリなどにもそれぞれのコロナウイルスがいます。

そうした中で、アメリカで2010年に見られたコロナウイルスによるインフルエンザのような症状の患者からは、通常のコロナウイルスの他、猫コロナウイルスが検出されたという情報もあります。

また、SARSは当時報道されたようにコウモリにも感染しますし、ハクビシンやシナイタチアナグマにも感染します。同様にMERSもコウモリやヒトコブラクダに感染するのです。

ですから、中東方面へ出かけられた時に、ラクダに乗ったり触れたりすることはできれば避けた方が安全ですし、もしやむを得ずそうした機会があったなら、マスクの着用や事後の手洗い消毒などを徹底して下さい。

エンベロープを持つウイルスなのでアルコールが効く

ウイルスはRNAやDNAのように遺伝情報を持ったものを収めておくカプシドと言うたんぱく質でできた構造物の外側に、エンベロープと言うコートのような構造を持っているものと持っていないものがあります。

このエンベロープは宿主になる生物に取りつくときに役立っているようですが、なくてもウイルスは存在可能です。でもエンベロープを持つウイルスがそれを失うと感染力を失い「死んだ」状態になります。

このエンベロープは脂質と糖質で構成されているため、アルコールに溶けます。ですからエンベロープを持つウイルスはアルコール消毒が有効なのです。

私たちになじみがあるものとして、インフルエンザウイルスはエンベロープを持っていますし、ノロウイルスは持っていません。なのでノロウイルスにはアルコール消毒が無効なのです。

コロナウイルスもエンベロープを持っていますので、アルコール消毒が可能です。ですので、消毒用アルコールも活用してMERSなどのコロナウイルス対策も行いましょう。

基本的にMERSやSARSはインフルエンザやノロウイルス感染症の対策と共通で予防可能です。接触感染や経口感染についてはノロウイルスと同じように考えればいいですし、飛沫感染についてはインフルエンザと同じと考えて下さい。

つまり、手洗い・うがい・眼鏡・マスクなどの防護策は有効です。もちろん100%効果があるという性質のものではありませんが、様々なシーンで感染確率を下げることが大変重要なのです。

個人的な経験ですが、2002年のSARS騒ぎの時にタクシーに乗ったら、降りた後運転手さんがスプレー式の消毒薬で車内を殺菌していました。会社から消毒薬が支給され、お客さんが降りたら必ず殺菌消毒を行うように指示されていたということです。

日本では台湾から感染した医師が観光にやってきたことが判り騒動になりましたが、そうした民間の地道な努力のおかげもあってか、発病者を見ずに終息しています。SARSは2010年以降、世界でも新規の感染者は現れていないようです。

韓国を他山の石としてMERS対策を行う

実は累計で見た場合、世界で最も患者数が多いのはサウジアラビアですが、2番目に多いのは韓国なのです。これは最初の感染者が出た時に対応を誤ったからだと、韓国の新聞が報じていました。

当時すでにアメリカ疾病管理予防センターCDCは、患者と密接な接触があった人の定義を発表していましたが、韓国の保健福祉部疾病管理本部はその定義を参考にしながら、ずっと甘い規定に変更してしまっていたのです。

おそらくCDCの規定を厳密に守ろうとすると、非常に幅広い人が対象になってしまい、現場が混乱してしまうと判断したんでしょうね。でも、結果は世界2位の感染者数を産みだしてしまったという訳です。

しかも、韓国には感染源になるような動物はほとんどいませんし、患者はほぼ1か所で発生したのですから人から人への感染であったことは間違いありません。

もちろん、こうした対応は保健当局が人手の問題などを現実的に判断した結果起こったことなので、判断ミスではありますがやむを得ないところもあります。

一方で、この感染発生場所になった病院で、日本人のようにみんながマスクを着用していたり、そこここにアルコール消毒剤が置いてあって、出入りする人がみんなそれを利用していたら、結果はかなり変わったかも知れません。

日本も毎年のように外国からの観光客が増加していってます。また、日本人も海外によく出掛けていますから、いつどんな病気が入ってくるか判りません。

国内で新しい病気が発生してから対策するのではなく、常に感染症に対する意識を高く保っていれば、「新しい病気にかかった最初のひとり」にならなくて済みます。

マスク姿が多いということで外国人に驚かれることが多い日本ですが、衛生意識の高さは間違いなく世界一でしょう。ですので、正しい情報を常に意識して生活すれば、世界一安全と言えると思いますよ。

ハイリスク群の人は常に警戒を怠らないようにする

こうしたワクチンや特効薬のない病気では、頼りになるのは自分の持っている自然免疫です。いわゆる免疫力として知られる自然免疫は、さまざまな病気やその治療によって力を大きく失っていることがあります。

もっとも有名なのはHIVウイルス感染による後天性免疫不全症候群、いわゆるエイズですね。ほかにも免疫力が低下する病気や状態は数多くあります。

免疫抑制状態は非常に危険

例えば糖尿病の人は免疫が低下していることが多いため、こうした感染症にかかりやすくなっています。もちろんMERSだけでなく、様々な感染症全般に注意が必要です。

移植手術を受けて免疫抑制剤を使っている人や、ステロイド薬治療を行っている人でも免疫はかなり抑制され、感染症にかかりやすくなっています。

さらに他の慢性疾患、例えば高血圧・喘息・腎疾患・心疾患・呼吸器疾患などでもリスクの上昇はありますから油断しないで下さい。さらに50歳を超えた方もハイリスク群に入れられるでしょう。

経口感染にも注意しておく

中東地域に出掛けた際は、非加熱食品は避けて下さい。特に非加熱の生乳は絶対に飲まないで下さい。中東ではラクダ乳も標準的な食品ですが、ラクダはMERSに感染する動物ですので、非加熱の生乳を飲むことは非常に感染の危険が高いものです。

その他、果物など非加熱で食べることがある食品も、できるだけ避けた方が安全です。水や氷に関しても、一般的な海外旅行での注意と同じように警戒しておいて下さい。

基本的には衛生的な環境が期待できない地域での食中毒対策と同じと考えておけば間違いありません。

2015年には環境に散布する抗体が日本で作られ、それを人に使っても大丈夫かをアメリカで研究しています。上手く行くかどうかはまだ判りませんが、治療薬の開発につながるといいですね。
キャラクター紹介
ページ上部に戻る