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異常な発汗は病気?多汗症と汗かきの違い、原因と治療法について

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暑くないのにだらだらと汗をかく、手汗で触ったものが濡れてしまう、脇の汗ジミが目立って恥ずかしい…人よりも発汗量が多く、その中で病的なものを「多汗症」と呼んでいます。

「たかが汗」と軽く見過ごされることも多い現象ですが、大きな病気が原因になっていたり、汗が仕事や人間関係のトラブルをまねいたりするので、きちんと向き合って対処しなければなりません。

このカテゴリでは意外と悩んでいる人が多い多汗症について、種類、原因、治療法、改善法の情報を紹介していきます。

その汗は健康的な汗?病的な汗?多汗症と汗かきの違いは

日常生活に差し支えるほど汗をかく症状のことを「多汗症」といいます。同じように大量に汗をかくことを「汗かき」といいますが、汗かきと多汗症は違うものなのでしょうか?

汗かきと多汗症の違い

汗かき 暑い時や体を動かした時に人より汗を多くかく
多汗症 暑くない時、じっとしている時でも大量の汗をかく

汗かきは、通常よりも新陳代謝が活発で少し動いただけで体温が上昇しやすい人、発汗機能が促進している人にみられます。子供、男性、脂肪が多い人、暑い地域で生活している人は汗をかきやすいタイプです。

発汗は体温調節のために起こる生理現象なので、汗かきな人のように体が暑くなった時に汗がたくさん出ることは特に問題ありません。

対して、多汗症は体温調節をする必要がないにもかかわらず発汗が起こるので、発汗に関する機能になんらかの問題があることが考えられ、病的な発汗とみなされます。

生活の質を低下させてしまう多汗症

汗かきも多汗症も汗でびっしょり濡れて不快さが増すことには変わりありませんが、多汗症の人は汗をかいてはいけない時に汗をかいてしまうので、日常のトラブルが起こりがちです。

多汗症の人が抱えやすい悩み・・・

  • 一人だけ汗がボタボタ落ちるほど汗をかいて恥ずかしい思いをする
  • 手汗が多くて人と握手ができない
  • 脇の汗ジミがすごくておしゃれな服が着られない
  • 顔に汗ダラダラかいてメイクが落ちてしまう
  • 足の汗がすごくてよそのお宅で靴を脱いで上がるのが怖い
  • 汗のニオイが気になる
  • 汗が気になって家から出られない

このように多汗症は生活の質を低下させやすく、社会的、対人関係の失敗が原因でうつ病などの二次障害を併発してしまう人もいるほど大きな影響を及ぼすので「たかが汗の問題」と軽視することもできないのです。

なぜ汗をかいてしまう?発汗の役割とメカニズムを理解しよう

なぜ過剰に汗をかいてしまうのでしょうか。多汗症の理解を深めるためにも発汗の役割とメカニズムについて、基礎知識を知っておきましょう。

発汗の必要性と役割について

発汗には体温調節をする役割があります。私達の体には、外気温の変化に関係なく体温を一定に保つ「恒温動物」なので、寒い時は筋肉を震わせて熱を作って体温を上げ、暑い時は汗と一緒に熱を逃がして体温を下げる体温調節機能が備わっています。

私達は、体温が下がり過ぎても上がり過ぎても体の機能に障害を受けます。特に脳が熱に弱く、脳の温度が高くなると体の機能が制御不能になるため、汗をかいて体温を下げることはとても重要です。

このように体温を下げるために起こる発汗は「温熱性発汗」とも呼ばれます。私達がかく汗のほとんどは温熱性発汗ですが、発汗の種類には精神的なストレスを感じた時に起こる「精神性発汗」や味覚の刺激を受けた時に起こる「味覚性発汗」もあります。

汗腺にはエクリン腺とアポクリン腺がある

汗を分泌するのは皮膚の表面に分布する「汗腺」という皮膚腺です。発汗する時、汗腺は汗腺を取り巻く毛細血管から水分を取り込み、汗を作って体外に排出します。

汗腺は全身の皮膚表面に約300万~400万個分布し、場所によって密集度が異なります。特に汗腺が密集している場所は、足の裏、手のひら、額、脇の下で、特に発汗量が多くなります。

汗腺は主に「エクリン腺」と「アポクリン腺」の2種類があり、それぞれ役割、性質、分布している場所が異なります。

エクリン腺
エクリン腺は全身に分布している汗腺で、主に体温調節のために汗を分泌します。エクリン腺から出る汗は私達がかく汗のほとんどを占め、多汗症の原因にもなっています。

エクリン腺から出る汗は水分が多くサラサラして、噴き出るように出るのが特徴です。色や臭いはありません。

アポクリン腺
アポクリン腺は脇の下、へその周り、性器、耳の穴などに分布している汗腺で、精神性発汗に多く含まれます。

アポクリン腺から出る汗は、たんぱく質や脂肪を含み、エクリン腺より粘度が高いのが特徴です。汗のニオイ、ワキガの原因になるのはアポクリン腺から出る汗です。

発汗のメカニズム

温熱性発汗
体温調節のためにエクリン腺から分泌される発汗です。

体温が上がると視床下部が反応し、自律神経のひとつ「交感神経」に「体温を下げなさい」と指令を出します。

すると、交感神経が放出した神経伝達物質「アセチルコリン」がエクリン腺を刺激して発汗を起こします。汗をかくと皮膚表面が濡れて気化熱が発生するので、体温を下げることができます。

温熱性発汗はほぼ全身に起こり、特に頭部や顔、体幹で汗の量が多くなります。この発汗機能に何らかの異常が起こると、多汗症を引き起こすことがあります。

精神性発汗
暑さに関係なく、精神的な緊張やストレスを感じた時にエクリン腺とアポクリン腺で起こる発汗です。

緊張、困惑、恐怖、興奮などを感じた瞬間、交感神経が反応して汗腺を刺激し、手のひら、足の裏、脇の下に発汗が起こります。

精神性の発汗は、危険な場面に遭遇した時に起こる防御反応です。手のひらや足の裏を湿らせて滑らないようにすることで、とっさに闘ったり逃げたりできるようにする目的があります。

これはまだヒトが進化する前に備わっていた防御反応の名残です。現代人には特に必要ない機能ですが、私達にとっては精神的なストレスこそ脅威のひとつといえ、多汗症の大きな原因にもなっています。

味覚性の発汗
味覚の刺激(辛味、酸味、塩味の強い物)を受けた時に起こる反射的な発汗を「味覚性発汗」といいます。

味覚の刺激を受けた交感神経が反応し、顔の汗腺を刺激するため、額、鼻の頭、口の周りから汗が出ます。

また唐辛子を食べると、唐辛子に含まれる辛味成分「カプサイシン」の作用で発汗が起こります。主に顔からたくさんの汗がふき出ますが、体温が上昇するので全身からも汗が出ます。

病気で起こるものから原因のないものまで…多汗症の種類

発汗の異常はさまざまな原因で起こっており、多汗症の種類もいくつかに分類されます。

まず、全身に大量の発汗がみられる「全身性多汗症」と、部分的に過剰な発汗が起こる「局所性多汗症」の2種類に大きく分けられます。

また、何らかの病気が原因で起こっているものは「続発性多汗症」、体に異常はないのに発汗が起こるものは「原発性多汗症」と呼ばれます。

多汗症の分類:全身性多汗症とは

全身性多汗症には、原発性と続発性のものがあり、 続発性の全身性多汗症は次に挙げる病気が原因で起こります。

自律神経のバランスの乱れ
自律神経失調症、更年期障害は、発汗をつかさどる自律神経のバランスの乱れから、暑くないのに汗をかいてしまうことがあります。更年期障害は上半身の多汗、のぼせを伴う顔の多汗などが多いのも特徴です。
発熱を伴う病気
感染症、結核、がんなど発熱性の病気が原因で、全身に異常な汗をかくことがあります。
内分泌系の病気
甲状腺機能亢進症(バセドウ病)は基礎代謝が亢進して汗をかきやすくなります。糖尿病にかかると、自律神経に障害が起こり異常な発汗を伴うこともあります。
脳神経の障害
脳卒中や外傷などによって脳神経のどこかに障害が起こり、自律神経と汗腺の連携がスムーズに行われなくなると、発汗機能が乱れて異常な汗をかくようになります。

続発性の全身性多汗症は、原因になっている病気の治療が必要です。中には、全身の異常な発汗で見つかる病気もあるので、以前に比べて汗かきになった人は体調に注意しましょう。

例えば、服がびっしょり濡れるほど体に汗をかく、寝汗がひどくなった、理由もなく汗をかいてぐったりする、といった汗のかき方は尋常ではありません。発汗と体調について、かかりつけ医に相談することをおすすめします。

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多汗症の分類:局所性多汗症とは

局所性多汗症にも続発性と原発性があり、局所性多汗症で受診する人の約9割が、特に原因のわからない「原発性局所性多汗症」です。

続発性局所多汗症には、更年期障害によるホットフラッシュ(顔ののぼせ)や不安や緊張による精神性の味覚性発汗、脳神経の障害による局所的な発汗があります。

原発性局所多汗症は、特に汗腺の集中する脇の下、手のひら、頭皮や顔面、足の裏に起こりやすく、交感神経が優位になる日中に発汗量が増え、睡眠中は特に発汗がみられないのが特徴です。

10~20代で発症することがほとんどで、精神的なストレスで発汗量が増える傾向があります。

平成21年度の全国疫学調査(厚生労働省特発性局所多汗症研究班)によると、日本人の原発性局所多汗症の有病率は次のようになっています。

腋窩多汗症(手のひら) 約5.3%
足蹠多汗症(足の裏) 約2.8%
腋窩多汗症(脇の下) 約5.8%
頭部多汗症(頭) 約4.7%

多汗症は比較的発症頻度の高い病気といえるでしょう。

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多汗症は受診すべき?気になる多汗症の検査・治療とは

汗が原因で生活の質が低下していると感じた人は、早めに医療機関に相談することが薦められています。多汗の原因がわからない場合は皮膚科を診察します。

多汗症の検査

多汗症の診断には、自覚症状による評価法(HDSS)、発汗量を測定する「ヨード紙法」「重量計測法」などが用いられます。

ちなみに、多汗症に最も多い原発性多汗症の場合は、次のような基準で診断が行われます。

日本皮膚科学会ガイドラインでは、次に挙げる5項目のうち2つが6か月以上続いている場合を原発性多汗症と診断しています。
 

  1. 最初に症状が出るのは 25 歳以下
  2. 発汗は左右対称に起こる
  3. 睡眠中は発汗しない
  4. 1 週間に 1 回以上、多汗が起こる
  5. 家族歴がみられる
  6. 症状によって日常生活に支障をきたす

参照…原発性局所多汗症診療ガイドライン 2015 年改訂版

続発性多汗症の可能性が考えられる場合は、血液検査や尿検査をはじめ全身の検査を行なって、原因となる病気を特定させる必要があります。

多汗症の治療法

続発性多汗症は原因となる病気の治療が必要です。原発性多汗症の治療は発汗を抑える対症療法が中心となります。

原発性多汗症の主な治療法には外用薬、内服薬、ボツリヌス療法、イオントフォレーシスなどがあります。重症の多汗症はレーザー療法や外科手術が用いられることもあります。

外用薬
発汗を抑える作用を持つ「塩化アルミニウム」「ミョウバン」が配合された溶液やクリームを患部に毎日塗ります。安価で体の負担が少ない治療法で、軽症の多汗症に高い効果があります。
内服薬
アセチルコリンの作用を抑える「抗コリン剤」を内服し、体の内側から過剰な発汗を抑えます。デメリットは、副作用として眠気が起こりやすいところです。
ボツリヌス療法
アセチルコリンの作用を抑える「ボツリヌス毒素」を患部に注射することで、過剰な発汗が3~6か月間持続します。デメリットは費用が高価なところです。
イオントフォレーシス
手のひら、足の裏を水道水に浸し、弱電流を流して発汗を抑える治療法です。脇の下に行われることもあります。保険が適応され費用も安価です。
外科的手術
皮膚科では、胸部の交感神経を切除する交感神経遮断術、汗腺を切除する手術などを行ないます。

治療の効果は高いのですが体の負担が大きく、手術によっては副作用による「代償性発汗」を起こすため、最終手段として用いられます。

多汗症の治療にはそれぞれメリット・デメリットがあるので、治療を受ける時はインフォームドコンセントによって治療のリスクを理解しておくことが必要です。

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セルフケアで多汗を抑えたい!多汗症の改善策は

発汗を抑えるためにはセルフケアをコツコツ行うことも重要。発汗機能を整えるために体調を整え、制汗対策を行ないましょう。 負担の大きい外科的な治療を受ける前には、まずこれらの対策を実践してみてください。

多汗症の改善策:ストレスを減らす

多汗症の原因で最も多いのは精神的なストレスなので、やはりストレスはなるべく避けるようにしたいです。

特に多汗症の人は「また汗をかいたらどうしよう」「人に見られたらどうしよう」と汗のことばかり気になって、ストレスの悪循環に陥りがちです。

自分で気にするほどほかの人は気にしていないものなので「汗はかくものだ」と開き直るのも一つの手です。

一人で解決できない場合は、精神科や心療内科に相談した方が良い場合もあります。精神科や心療内科での治療方法は、抗不安剤の処方やカウンセリングが中心になります。

多汗症の改善策:自律神経のバランスを整える

多汗症には、発汗を調整している自律神経の乱れも関係しています。自律神経のバランスを整えるように心がけると、次第に異常な発汗が抑えられるようになっていきます。

自律神経は自分で訓練することも可能です。色々な訓練法がありますが、簡単で効果の高い方法には腹式呼吸や入浴があります。

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多汗症の改善策:制汗剤やハンカチで汗対策を

汗をよくかく人でも、かいた汗をこまめに拭き取ったり濡れた衣類を着替えたりすることで、快適に過ごすことができます。常にハンカチ、タオル、着替えを用意しておけば安心です。

多汗症対策に制汗剤は欠かせません。市販の制汗剤または病院で処方してもらった外用薬を適切に使いましょう。 軽症の多汗症は制汗剤で症状が軽減されます。

多汗症の改善策:食生活で症状を改善

多汗症の人は、温熱性発汗を促進させるような食品はなるべく控えます。味覚性発汗を引き起こす香辛料、味付けの濃い物は良くありません。アルコール、タバコ、カフェインなどの刺激物は交感神経を刺激して発汗を促進させます。

また体調を整えることも大切なので、脂肪、塩分、添加物がたくさん入ったジャンクフードや加工食品は避け、栄養バランスの整った食事をとるようにしましょう。おすすめしたい食事のスタイルは、和食です。

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多汗症の改善策:発汗機能を鍛える

局所的な発汗は、発汗機能の衰えが原因で起こる場合もあります。発汗機能は使わないと機能が休眠してしまうので、意識して汗をたくさんかき、発汗機能を鍛えることも大切です。

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多汗症の改善策:汗を止めるコツを覚えておく

汗をかいてはいけない場面なのに汗がふき出てきた…こんな緊急時には、汗をすぐ止める方法を使ってその場をしのぎましょう。ツボ指圧は道具いらずでいつでもできるのが魅力。冷たいペットボトルや冷却材も役立ちます。

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もしセルフケアを続けても症状が改善されない場合は、皮膚科に相談することをおすすめします。

多汗症は重症になると大変!早めにきちんと治そう

罹患数(病院で診断を受けた患者の数)のデータから、多汗症が重症の人が全国に約80万人いることがわかっています。

ただ、多汗症は「単なる汗っかき」として片づけられ、受診に至らないことも多いことから、実際にはもっと多くの多汗症患者が潜在していることも考えられています。

重症の多汗症患者の中には「大切な書類が汗で破れたりにじんだりしてしまう」「パソコンやスマートフォンが濡れて故障する」といったトラブルを起こすほど汗をびっしょりかく人もいるようです。

多汗症は放置していると悪化しやすく、時に多汗症は仕事や対人関係に支障をきたすこともあるので、受診して専門治療できちんと治すことが大切です。

また発汗そのものは大切な生理作用なのであまり悪者扱いせず、健康的な汗はたっぷりかくようにしていただきたいと思います。

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