健康生活TOP 心臓病 近年見いだされた新型心筋症は中性脂肪がたまる「心臓の肥満」!

近年見いだされた新型心筋症は中性脂肪がたまる「心臓の肥満」!

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2015年3月にやっと診断基準が公表された新しい心臓病があります。遡ること7年、2008年に日本国内で心臓移植を待っていた重症の心不全の患者さんから見つかったものです。

まだ原因も治療法も確定していませんが、どうやらこの病気は「心臓の肥満」ではないかと言う事が判ってきました。病名は「中性脂肪蓄積心筋血管症」略称「TGCV」と呼ばれています。

心臓の肥満は原因の大半がまだ判っていない病気

この中性脂肪蓄積心筋血管症(長いので、以降略号の「TGCV」で呼びます)の原因ですが、現段階では病気の現れ方で3種類に分類されています。

そのうち1つは遺伝的な原因が判っているのですが、非常に罹患の少ないタイプです。もう1つは罹患者数が最も多く、全国で4~5万人くらいと推定されていますが、現段階ではまだ原因が明らかではありません。

遺伝性のものは中性脂肪が分解される第一段階でつまづく病気

まだ罹患者数が非常に少ないのですが、原因が判っているタイプのこの病気を原発性TGCVと呼んでいます。このタイプの原因は遺伝子の異常によってATGLと言う酵素が働かなくなっている人に起こるものです。

脂肪細胞から脂肪が使われる時には3つの酵素が働きます。第一段階ではトリグリセリドと言う状態の脂肪に、脂肪細胞特異的トリグリセリドリパーゼ(ATGL)と言う酵素が働いて、脂肪酸1分子を切り離しジグリセリドにします。

さらにホルモン感受性リパーゼ(HSL)と言う酵素がジグリセリドから脂肪酸1分子を切り離してモノグリセリドにします。最後はモノグリセリドリパーゼ(MGL)の働きで最後の脂肪酸が切り離されてグリセロール(グリセリン)だけになります。

こうして脂肪酸はすべて血中に放たれてエネルギーの材料になります。また、グリセロールは肝臓で糖新生の材料として使われるのです。

しかし、この最初の段階で働くATGLが遺伝的要因で欠損している人がいます。その場合、中性脂肪が脂肪細胞から取り出しにくくなるだけではなく、心筋や冠動脈に中性脂肪が蓄積されてこの病気になります。

いわば、心臓の細胞が脂肪細胞のようになってしまっていると言うことなんです。ただ、このタイプの罹患者が非常に少ないことについての説明はまだなされていません。

もっとも罹患者数が多いタイプについては遺伝的要因が不明

脂肪細胞から脂肪を取り出すための酵素ATGLは欠損していないのに、原発性と同じように心筋や冠動脈に中性脂肪がたまっているタイプのTGCVがあります。名前は特発性TGCVと呼ばれています。

この特発性TGCVは、日本全国で4~5万人の罹患者がいると言うことですので、概ね2500人に1人くらいの割合でしょうか。

少ないようにも見えますが、原因も治療法も確立されていない新しい病気に、2500人に1人がかかると言うのは決して少ない数字とは言いにくいように思えますね。

まだこの病気の仲間かどうかが確定的ではないタイプもある

このほかにも、似たような症状の病気が京都や九州で報告されていて、研究班が研究を継続中だと言うことです。

このタイプは、まだ同一性なども確認されていないため○○性TGCVと言った名前は付けられていません。

厚生労働省の研究班はこのように3タイプに分けて報告していますが、難病情報センターによる分類では、原発性TGCVと二次性TGCVと言う風に分けています。

二次性と言うことは、原因疾患が別にあってその病気のせいで中性脂肪が心臓に溜まると言うことですね。いずれにせよ、まだ確定していない要素が多いようです。

TGCVの症状は?現れたらすぐに診断を受けて治療して!

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TGCVの診断を受けた人のほとんどが、

  • 心不全
  • 狭心症
  • 心筋症

などの病名で診察や治療を受けています。その中で、いくつかの特徴をお医者様が見出してくれると診断がつきやすいんですね。

また、血液検査や心電図、心臓超音波エコーなどにも特徴が現れますし、心臓CTで見た場合、コレステロールの沈着とは明らかに違う形の映像が得られます。

発病までは健康であった人が多いのも特徴

発病前は健康であった人が、20代以降中年期までに発病することが多いようです。もちろん最初は心臓の症状が出ます。

  • どうき
  • 息切れ
  • 疲れやすい
  • むくみ
  • 体重が増える
  • 運動すると呼吸困難を起こす
  • 夜間を中心に頻尿が起こる

などの心不全症状が初期のものです。

症状が進むと、安静にしていても呼吸困難になったり、寝ていると苦しいため起き上がって呼吸するようになったりします。

胸を締め付けられる感じや胸の痛みも良くおこりますが、安静にしていたり夜間であったりしても、この症状は発生すると言うことです。

この病気は心臓死に繋がる危険性の高い病気ですので、早い確定診断と治療開始が重要になります。心臓に異常を感じたら他の病気の可能性も含めて早めに受診しましょうね。

健康診断などで、定期的に心電図検査を受けると言うのも早期発見に繋がりますから、億劫がらずに健康診断も受けるようにしましょう。

TGCVの特徴は”心臓病の薬の効きが悪い”心臓病

ニトログリセリンと言えば、爆薬以外に心臓病の薬としても大変有名ですが、主に狭心症発作のお薬として使われます。亜硝酸剤も同じ働きですね。冠動脈を広げ血圧を下げるお薬です。しかし、TGCVにはほとんど効きません。

また、主に心不全のお薬として使われるものに交感神経β受容体遮断薬(通称:β遮断薬(ブロッカー))と言うものがありますが、これもTGCVには効かないのです。

その他、寒い時やお腹が減った時に症状が悪くなることも特徴ですので、こうしたことがあればお医者様に必ず報告しましょうね。

原因や治療に関する研究は日本国内で集約的に行われている

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この病気に関する研究は、大阪大学医学部が集約的に行っています。こうした研究には珍しく、治療法の開発から「医薬品等品質管理基準」に基づいた医薬品の製造、治験までを大阪大学が一貫して行っています。

現在は中鎖脂肪酸を有効成分として高純度生成してカプセル化したものについて、お医者様が主導する治験が2015年9月から行われています。

この病気の方は治験に参加することもできます

この記事を書いている段階では、まだ治験に参加する患者さんを募集していました。もし、募集期間が終わっていても、リンク先から問い合わせを入れて次段階の治験について教えてもらえるかも知れません。

あなたの身近に患者さんがおられたら情報として知っておいていただくのも悪くないでしょう。情報提供と言うことで引用させてもらっておきます。

(以下抜粋)

試験進捗状況 : 一般募集中
(参加医療機関受診により、基準を満たせば被験者となれる)

試験名 : CNT-01の特発性中性脂肪蓄積心筋血管症患者を対象とした第I/IIa相試験

登録日(=情報公開日) : 2015/07/14

治療薬の第一候補はどんな薬?それは中鎖脂肪酸だった!

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中鎖脂肪酸と言えば、身体につかないアブラとして健康食品的に宣伝される食用油に含まれていますよね。あの中鎖脂肪酸なのでしょうか。

実は微妙に違うかもしれない部分はあるのですが、基本的にはあの中鎖脂肪酸を高純度に精製したものが今回は使われるようです。

中鎖脂肪酸とはどんなもの?学問と商売では少し範囲が異なる

今回治験薬に用いられている中鎖脂肪酸の内容は公表されていません。しかし、中鎖脂肪酸と言うのはそれほどたくさんあるものでもないんです。

脂肪酸は炭素が一列に鎖のように並んだ構造をしています。そしてその炭素の数で短鎖・中鎖・長鎖脂肪酸と言う分け方をされています。ただ、この分け方については多分に便宜的な要素が強く、一定の基準と言うものはないようです。

栄養のプロである日本栄養士会は、炭素数8のカプリル酸と炭素数10のカプリン酸を中鎖脂肪酸としているようですので、今回はこれに従います。

30代男性の加齢臭と言われる、炭素数9のぺラルゴン酸と言うものも存在しますが、食品ではないので今回は省きましょう。

と言うことで、炭素数2の酢酸や炭素数3のプロピオン酸、そして炭素数4の酪酸から上は炭素数7のエナント酸までが短鎖脂肪酸と言うことになります。

長い方はと言うと、ひまし油の成分である炭素数11のウンデセン酸や、食用油に含まれる炭素数12のラウリン酸からは長鎖脂肪酸と言うことになりますね。

一方、食品メーカーなどはラウリン酸までを中鎖脂肪酸に入れて、乳脂肪に含まれる炭素数13のトリデカン酸や炭素数14のミリスチン酸から上を長鎖脂肪酸としていることが多いようです。

なお、食品に多く含まれる脂肪酸の炭素数は、一部の例外を除いて偶数であることがほとんどですので、奇数の脂肪酸の名前は聞いたことがないと言う方も多いでしょう。

食べ物に含まれる中鎖脂肪酸は3種類だけ

ローヤルゼリーと言う特殊な食品を除けば、食品に含まれる中鎖脂肪酸は先に紹介した飽和脂肪酸のカプリル酸とカプリン酸に、一価不飽和脂肪酸のデセン酸を加えた3種類だけです。

ローヤルゼリー酸と呼ばれる固有の中鎖脂肪酸もデセン酸のトランス体ですから、これもデセン酸に含めれば3種類と言うことになりますね。

この中鎖脂肪酸や短鎖脂肪酸は、長鎖脂肪酸とは異なり腸で吸収された後、すぐに肝臓でエネルギーに使われてしまいますので、体脂肪となって身につきにくいと言う特性があります。

この性質を利用したのが、ダイエット用の食用油と言うわけですね。

今回治験薬に使用されているのがこれらの食品由来の中鎖脂肪酸なのか、あるいはデカジエン酸やオクテン酸など工業的に作られることの多い中鎖脂肪酸なのかはわかりません。

いずれにせよ心臓の難病に対して、私たちが普段の食事で予防することは困難でしょうから、別の視点から見てみる方が良いと思います。

バターは身体に悪くない?短鎖・中鎖脂肪酸も適度に摂ろう

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様々な研究から、実は飽和脂肪酸は今まで言われていたほど身体に悪くないことが判ってきました。むしろ飽和脂肪酸の不足が身体に悪影響を及ぼしていると言う事実は、この健康生活サイトの中でもお話ししています。

これまで肉食やバターが身体に悪いと言われ続けたことに対する反動でしょうか、欧米では”Eat Butter”(バターを食べよう)運動などと言うものが起こったりしています。

バターとココナッツ、どっちを選ぶべきか?TPOに応じて使おう

中鎖脂肪酸が多い油と言うことになるとココナッツ油が最右翼と言っても良いでしょう。含有脂肪酸の14.3%が中鎖脂肪酸と言うのは圧倒的です。バターの場合4.6%くらいですね。

しかし、短鎖脂肪酸を勘定に入れるとその差は縮まります。短鎖・中鎖を合わせた量はココナッツ油が14.8%、バターが10.9%です。

糖尿病性心血管病との関係

いずれにせよ飽和脂肪酸量の多い油脂であることは確かですが、ココナッツ油の83%と言うのは圧倒的です。バターはおろか、ラードやヘットよりも飽和脂肪酸が多いですね。

しかし、飽和脂肪酸の害が思ったよりましだったようなので、バターもココナッツ油も、料理に合わせて使い分けるのが良いんじゃないでしょうか。

先に紹介した新しい心臓病であるTGCVの研究の途中で、糖尿病性心血管病の原因として中性脂肪蓄積型動脈硬化が見られることも見つかったと言います。

治療薬はお医者さま方のお仕事として、私たちは中鎖脂肪酸や短鎖脂肪酸を上手く使うことで、体重を減らしインスリン抵抗性を下げることで糖尿病を予防改善するのも悪くありません。

その際に、たとえわずかなファクターであったとしても、TGCVや中性脂肪蓄積型動脈硬化が予防改善されるとしたら、まさに一石二鳥と言えるでしょう。

オリーブオイルの一価不飽和脂肪酸や、お魚のω3多価不飽和脂肪酸に加えて、バターの短鎖・中鎖脂肪酸をもテーブルに乗せることで、食生活が豊かになり健康にもつながるわけですから、こんな美味しい話はないですよね。

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