健康生活TOP 健康管理 無症状の肝硬変がある!精密検査で初めて見つかるPBCとは?

無症状の肝硬変がある!精密検査で初めて見つかるPBCとは?

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一般的な人間ドックや健康診断の血液検査で調べることが多い「肝臓の検査項目」と言えばAST・ALT・γGTPの3つでしょう。皆さんにもきっとおなじみだと思います。

いわゆる「肝臓が悪い」と言う場合、全部の数値が悪くなっていることが多くて、その結果「要精検」ということで精密検査を受けるハメになることも珍しくありません。

精密検査と言うことになれば、「脂肪肝」や「肝炎」と言うのは、誰でもある程度は覚悟するでしょう。けれど何の自覚症状もないのにいきなり「肝硬変」と言う病名が付いたら、悲しむより先にびっくりしちゃいますよね。

実はこの病気、稀な病気ではありますが、最近増えつつあるようです。

肝硬変じゃない肝硬変?原発性胆汁性肝硬変(PBC)という難病

この病気は、まだ原因すら確定できていない特定疾患(難病)で、医療費の公費補助が行われている110種類の病気のうちの1つです。原因が特定できていないため根治するための治療法も確立していません。

平成24年度で医療費の受給を受けている人が19701人おられますが、推定患者数は全国で5~6万人とも言われています。また、年々患者数が増える傾向にもあるそうですから注意が必要ですね。

肝硬変と言う名前だけれど肝硬変じゃない

歴史的な経緯から原発性胆汁性肝硬変と言う名前がついています。最初の頃は症状が出て受診、病名が確定した段階では皆さんが肝硬変にまで進んでいたためにつけられた名前なんです。

しかし、検査方法が確立した現在では、新たに見つかる患者さんの大半が肝硬変を起こしていません。ですから、名前が不適当じゃないかと言う疑問は誰しもが持つところです。

しかし、英語名でも”Primary Biliary Cirrhosis”と、肝硬変を表す”Cirrhosis”が入っているため、国際的な関係からも一度定着した病名は簡単に変えられないと、厚生労働省の研究班は患者さんの質問に回答しています。

自己免疫が原因ではないかと疑われている病気

この病気はまだ完全に原因が特定されたものではありません。しかし、肝臓の組織が壊れて行く過程において免疫反応の異常がある事が判ってきています。

通常、外部からの侵入者をやっつけるべき免疫機能が、自分自身の身体に対して働いてしまうこのような病気を自己免疫性疾患と言いますが、この病気もその一つではないかと考えられています。

この自己免疫に関する抗体も特定されてきているので、早期発見が可能になった結果、肝硬変には程遠い状態であっても診断がつくようになったのです。

早期発見で治療を開始すると寿命にはほとんど影響しない

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肝硬変と言うことになると、肝がんへの進行や、場合によっては肝硬変そのもので生命を落としてしまう事もある怖い病気です。

しかし、健康診断の血液検査などで偶然発見された場合は、症状が出ていない人が大半です。そうした場合、対症療法的ではありますが、症状が出ないようにするお薬もあります。

原発性胆汁性肝硬変のステージ

原発性胆汁性肝硬変は、その症状の現れ方によって次のように分類されています。

  • aPBC(無症候性):自他覚症状がないもの
  • s1PBC(症候性):自他覚症状があってビリルビン値が2mg/dl未満のもの
  • s2PBC(症候性):自他覚症状があってビリルビン値が2mg/dl以上のもの

大まかに言えば上が軽症で下が重症です。軽症の場合、投薬治療だけで現状が維持できることも多いようですね。

健康診断と精密検査の血液検査項目

一般的な血液検査で、AST・ALT・γGTPの数値に異常が見つかれば、精密検査を薦められます。この時に何の自覚症状もなくても、必ず精密検査は受けましょう。

良く知られる通り、肝臓は沈黙の臓器と呼ばれるくらいで、自覚症状が出た時にはかなり病気が進行していることが多いのです。この病気に限らず、肝臓に関わる病気全体がそうだと言って差し支えありません。

ウイルス性の肝炎では主にALTとASTの値が上昇します。アルコール性肝炎では全部の数値が上がると言っていいでしょう。特にγGTPの値はアルコール性肝炎で最も重要な指標になっています。

脂肪肝でも全部の指標が上がります。一方、ASTのみが上昇してALTが上昇しない場合は筋肉や心臓の病気が疑われます。あるいは溶血性貧血でも上昇しますね。

一方、γGTPとALPが高くASTはそれほど高くないのが原発性胆汁性肝硬変の一つの特徴です。この結果が出た場合は精密検査でさらなる項目について検査が行われます。

この時にチェックされるのは抗ミトコンドリア抗体(AMA)と言うもので、いくつかのサブタイプが知られています。その中のM2サブタイプは原発性胆汁性肝硬変に特異的に表れるものですので、血液検査だけで確定診断ができることがほとんどなのです。

しかし、症状としては原発性胆汁性肝硬変なのにAMAに異常が見られない人も非常に少数ですがおられます。この場合は肝臓に針を刺して組織を採る肝生検が行われるでしょう。

稀な病気で早期発見なら軽く済む場合もあるが油断は禁物!

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ここまでは、余計な恐怖感を持たずに読んで頂くため、怖い部分にはあまり触れませんでした。しかし、歴史的な経緯があるとは言え「肝硬変」の名前を持っている病気であることに変わりはありません。

また、国が医療費を公費補助対象にしている難病であると言うことは、治療法が見つかっておらず、かつ高額な医療費がかかる病気であると言うことも間違いないのです。

気になるのは医療費です

こうした難病の場合、一生医療機関にかかり続ける可能性が高くなります。そうなると心配なのは医療費ですね。この病気は公費補助対象になっていますので、一般の病気に比べると自己負担額は少なくて済みます。

難病医療費の公費補助の特徴的なのは、一般の医療費の1か月あたり負担額が一定以上の所得のある人は3回まで上限なしであるのに比べて、どんなお金持ちであっても上限が1か月あたり30,000円と定められていることです。

公費負担でない一般の病気では、保険医療の自己負担額は総医療費の3割になります。そして、例えば年収370万円未満であれば高額療養費制度の利用で1か月あたりの自己負担額は58,000円弱の定額負担になりますね。

しかし、その上である年収370万円~770万円くらいの層で見た場合、高額療養費制度を利用しても、医療費総額に応じて負担額も増えて行きます。

計算式は、[80,100円+(総医療費-267,000円)×1%] となっていますので、僅かずつしか負担は増えない物の、その金額には上限がありません。

例えば、3割の自己負担分が60万円(総医療費200万円)の時の自己負担額は97,000円余り、120万円の時は117,000円余りとなります。

税込年収1,000万円程度より多い人の場合の医療費自己負担限度額は、一か月あたり [252,600円+(総医療費-842,000円)×1%]です。

結構高額ですが、どの階層もこの制度が適用された月数が1年間に3回あった場合4回目からは軽減される制度もあります。これは一般の病気すべてに適用されますから、医療費がかさみそうな時のために知っておいて下さいね。

一方、公費対象の難病の場合、基本の部分で自己負担額は医療費の2割です。そして医療費総額がいくらであろうと、自己負担の上限額は年収が370万円未満なら10,000円、810万円未満なら20,000円です。

但しこれは、その難病の医療にかかる費用の部分だけですよ。もちろん入院と通院を合わせた費用です。また、入院時の食費は普通の病気やけがによる入院の場合と同じ負担が必要です。

1か月あたりの自己負担額の上限は、所得の低い方から、2,500円・5,000円・10,000円・20,000円・30,000円の定額です。さらに一定の条件を満たすと、より低い額になる場合もあります。

万が一、こうした難病にかかってしまった場合は医療機関を通じて、各都道府県の難病対策窓口に申請して下さい。無料にこそならない物の、かなり手厚く補助してもらえますから治療に専念できると思いますよ。

軽症ならお薬を確実に飲み続けると言う治療

さて、実際の治療について見てみましょう。先にお話ししたように、自覚症状も、他人から見た症状もない人の場合、大多数の人が病気の進行が遅いタイプです。

少し前までは、こうした人であっても数年後には症状が出てきて悪化し、本当の肝硬変になることが知られていました。

しかし、ウルソと言う商品名のお薬がこの病気に使われるようになってから、症状が出る人がかなり減ったそうです。

但し、この薬は進行を抑えるものであって、病気そのものを治す薬ではありませんから、本来の寿命まで生きるために一生飲み続けることになる人が多いのも事実です。

ウルソは一般名ウルソデオキシコール酸と言う化学物質で、実はとても有名な動物性漢方生薬の主成分を化学合成したものなのです。

副作用は非常に少なく、長期連用しても効き目が弱くなることもない大変優れたお薬ですが、軽症であっても一部の患者さんには効果がない場合もあります。

そうした場合には脂質異常症のお薬の中に、同じように進行を抑える働きのあるものも見つかっていますので心配はありません。一方、重症の患者さんに対しては、ウルソは効き目がないようです。

軽症でも進行してしまう人もいます

この病気の人の大半は緩徐進行型と言って、病気が悪くなるスピードがゆっくりで、ウルソなどの投薬治療を継続して行うことによって、症状が出ることもなく天寿を全うできることが多いのです。

しかし、中には比較的早い段階で黄疸が出て肝不全に至る黄疸肝不全型の症状を持つ人や、黄疸はないものの肝硬変が進行し食道静脈瘤などが現れる門脈圧亢進症型の症状を持つ人もいます。

自覚症状があるからと言って緩徐進行型ではないと言うこともありませんから、この3つのどのタイプに当てはまるのかは検査を受けて調べてもらう必要があります。

病気の進行の原因はまだわかっていません。しかし、黄疸肝不全型の人は、抗gp210抗体と言う自己抗体(自分の身体を攻撃してしまう抗体)の数値が高い事が判っています。

また食道静脈瘤に繋がる門脈圧亢進症型の人は、抗セントロメア抗体の数値が高いようですね。ですのである程度は検査で症状の予測が立つので、先手を打った治療もできるでしょう。

最後の手段は肝臓移植です

肝硬変など、重い症状に進行してしまった場合は、他の原因による肝硬変などの治療と同じような治療が行われます。

また、体力がしっかり温存できている状態である内に生体肝移植と言う方法が採られることもあります。

早期に発見して、ウルソによる治療を継続できている緩徐進行型の人であれば、特に寿命には影響ないとされています。

一方、s2PBCと診断される血清総ビリルビン値が2.0mg/dlを超える人では余命計算が出てくるレベルになるため、肝臓移植が検討されます。

◇血清総ビリルビン
予後予測因子としては最も重要な因子である.

(中略)

血清総ビリルビン値が2.0mg/dlになると約10年、3.0mg/dlになると約5年、6.0mg/dl以上になると約2年以下の余命であるとされる。
血清総ビリルビンが6.0mg/dl以上になると肝移植が考慮される。

危険な皮膚のかゆみに注意!症状にはさまざまな種類がある

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症状が出ている人で最も多いのが皮膚のかゆみです。見た目には何ともないのに皮膚にかゆみがあって眠れないなどの症状を訴えて受診される人もおられるようですね。

この場合は症候性PBCと言う段階になっています。もちろん、他の検査をしてからでないと重症度は判りません。

肝臓の病気ですから、強いだるさや疲れを感じることもあります。あるいは骨粗鬆症を合併することがあるので、それによる痛みがでる場合も。

この病気は女性に多く、男性の7倍くらいだと言われています。不思議なことに未成年の患者さんはおられません。最も若い人でも20歳くらいで、多くは中年以降の人です。

むくみ、さらには腹水がたまってお腹がせり出して来たりもします。食道静脈瘤や肝不全による黄疸、意識が混濁する肝性脳症などは肝移植が要求されるレベルですね。

ちょっと変わったところでは目の周りに脂肪の黄色い粒ができたり、関節リウマチなど、他の自己免疫疾患が合併することもあるようです。

生活習慣病ではないだけに健康診断が非常に重要になる

生活習慣病であれば、自分自身の生活を振り返って可能性に気付くこともできますが、こうした自己免疫疾患の場合、罹ったことに気付くのが遅れがちになります。

特にこの病気は症状が出る前に発見すれば、多くの場合寿命には影響せず、薬を飲み続けること以外生活への影響もありません。

ですから健康診断の血液検査による早期発見が非常に重要になるのです。おっくうがらずに、定期的な健康診断は必ず受けるようにしましょうね。

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