健康生活TOP 花粉症 花粉症治療も年々新しい技術が登場している!最新の治療前線を見る

花粉症治療も年々新しい技術が登場している!最新の治療前線を見る

毎年冬の終りになると、天気予報で花粉情報が流されるぐらい、花粉症は極めて一般的な病気になりました。

一方、花粉症対策のためにマスクを着けることもまた、ごくごく日常の風景になりましたね。

ところが、このマスク姿、海外の人々からは奇異の目で見られることも少なくありません。「日本人はいつも病気をしているのか」と揶揄されることもあるぐらいなのです。外国に花粉症はないのでしょうか。

まずは花粉症について、軽い雑学のお話から始めてみましょう。花粉症の最新治療は、この日本と外国の差からみえてくるのです。

スギはヒノキ科の植物で日本固有種

ヒノキと言うと、スギ花粉のシーズンが終わるころに花粉を飛ばし始める、やはり花粉症のメジャーな原因植物のひとつです。そして、スギとヒノキは同じヒノキ科の植物なんです。

そして、スギは日本固有種、つまり日本以外に自生地がないのです。現在では優れた木材用としていくつかの国で植林されていますから、外国に全くないわけではありませんが、スギ花粉症は、ほぼ日本だけの病気なのです。

ヒマラヤスギは松の仲間

ヒマラヤスギと言う木がありますが、これはスギと言う名前が付いているものの、松の仲間で花粉症の原因にはなりません。

ヒマラヤスギは公園などの植栽に良く利用されているので、心配している人がいるかもしれませんが、大丈夫ですので役所の公園課などにクレームを入れないで下さいね。

また、日本ではめったに見ませんが、ギルガメッシュの物語に出てくるレバノンスギも松の仲間ですので、花粉症を引き起こしません。

また、スギやヒノキの陰に隠れていますが、樹木の花粉症として比較的多く見られるのが、ハンノキやヤシャブシの花粉症です。どちらもハンノキ属の樹木ですが、花粉はハンノキの方が冬の間に開花するので、スギ花粉症に先立って現れることがあります。

ヤシャブシは、スギと同じころの開花です。この2種類の樹木も、日本とその周辺の一部地域にしか自生していません。

岡山理科大学植物生態研究室によると、ハンノキは葉っぱだけでは見分けがつきにくいそうです。花は特徴的ですね。

ハンノキの葉と花の写真
(出典:岡山理科大学 生物地球学部 生物地球学科 植物生態研究室)

ヤシャブシもハンノキ属なので、同じように垂れ下がる花が特徴ですが、種によって少しずつ垂れ下がり方などが異なります。

欧米にも花粉症はある

そうなってくると欧米には花粉症がないように思えますが、花粉症は19世紀のイギリスで、花粉によって起こる病気として特定されたのが最初です。でも、当時はアレルギーと言う概念がなかったので、花粉を病原菌のように扱っていたようです。

この時に注目されたのはイネ科のカモガヤです。つまり草の花粉だったんですね。と言うことで、花粉症発祥の地はイギリスだったんです。

ではアメリカはどうなんでしょう。実はアメリカにも花粉症は存在しています。ここでアレルゲンになっているのはブタクサです。ブタクサは移入植物として世界の広い範囲に散らばっていますが、原産地はアメリカなんです。

このブタクサは、秋の花粉症の原因植物として日本でもアレルギーの原因になっています。同じキク科のセイタカアワダチソウが花粉症の原因だと誤認されたのは、このブタクサとの混同だったと考えられています。

ブタクサもキク科の草ですので、草による花粉症と言うことになります。

世界の三大花粉症はイギリスを中心にしたヨーロッパのカモガヤ、北米のブタクサと日本のスギです。でも、日本には全部あるんですよね。だから国民病とまで言われるのかもしれません。

南京医科大学教授の三好彰先生によると、どうやら中国で柳杉と呼ばれている樹木は、日本のスギとかなり近い物らしく、中国華南地方の中心都市である南京市で花粉症の患者が確認されたそうです。

日本のように大量に植えてあるわけではないので、大きな影響はないようですが、今後中国の緑化に伴って増える可能性はあるかもしれませんね。

(参照:「花粉症」日英中比較考現学 ―日本人の「国民病」花粉症のルーツは、十九世紀にイギリスで発症した「枯草熱」にあった―|南京医科大学教授・三好耳鼻咽喉科クリニック院長・三好彰氏)

19世紀の花粉症は枯草熱とも呼ばれたそうで、今でもその呼び名は残っています。日本語では枯草熱となっていますが、英語を直訳するなら「干し草熱」なんですけどね。

花粉の出ないスギが開発されたが花粉対策には時間が必要

花粉症の原因は言うまでもなく花粉です。しかし、花粉を出なくしてしまうと、その植物の繁殖ができなくなってしまいます。それでも、花粉が出ないスギと言うものの研究は続けられてきました。

もちろん花粉が出なくても、その木を増やせなくては意味がありませんね。最近、一定の成果が得られたようです。

花粉の出ないスギを植えれば花粉症が解決する?

もちろん、現在植林されているスギの木を、花粉が出ない物で置き換えて行けば、飛散する花粉の量は激減し、その結果スギ花粉症については発症が抑えられることは間違いありません。では、花粉の出ないスギはできたのでしょうか。

独立行政法人・森林総合研究所が2013年の春に発表したところによると、遺伝子組み換えによって花粉を作らないスギの開発に成功したそうです。これは、花粉症対策の大きな一歩になると言えるでしょう。

しかし同研究所は、この成果に対してまだまだ実験段階で、効果と安全性の検証が必要で、国民の理解を得ながら進めることが不可欠だとしています。

(参照:プレスリリース・遺伝子組換えによりスギ花粉形成を抑制する技術を開発|独立行政法人・森林総合研究所)

つまり、まだ実用化までにはもう少し時間がかかると言うことです。そして、もう一つ大きな時間の壁があります。それは森林の更新には時間がかかると言うことです。

スギは植林してから、間伐を経て最終的に製材のために伐採するまでに50~60年かかります。花粉の出ない木が実用化されたとして、1年間に更新できるのは2%内外で、全部入れ替えるのには50年~60年かかると言うことでもあります。

花粉のために、全部のスギを一気に伐採することなどできるはずもありません。ですから、この技術によってスギ花粉症が軽減される恩恵に浴せるのは、次の世代以降と言うことになるでしょう。

現在でも使える品種はたくさんある

現在、スギ花粉症対策として使えるようになっている品種は、花粉が少ないタイプの杉が135品種、花粉ができないタイプの物が2品種あります。しかし、それらの物は使える地域に偏りがあるため、日本全国の花粉症対策には使えません。

それでも、適した品種のある地域では対策が進んでいる物と思われます。今後、先に紹介したような全国で使える無花粉品種が使えるようになったら、この少花粉品種もそれに置き換えられると思います。もちろん50年くらい先の話ですが。

さた、これは余談になるかもしれませんが、この開発された無花粉の品種は、挿し木ではなく種から生まれてきます。もちろんその木は次の世代を残せませんから、花粉のあるものから遺伝子操作で新しい木を作ることになります。

大まかに説明すると、まず、熟していないスギの種を準備して、それに手を加えて人工的に胚になる細胞を誘導します。そしてその細胞に組換え用の遺伝子を導入して胚を作ります。

その胚を培地に植えると芽が出て育ちますので、あとは順次ポットから地面へと植え替えて行けば、花粉の出ない杉が育ちます。言葉で言うと簡単ですね、たった1段落半です。

こうして遺伝子を組み替えられたスギに、何か害になる性質が生まれていないかとか、ちゃんと木材として使えるように成長するのかとかのテストを繰り返さなくてはいけませんから、まだ実用化段階ではないと言うことです。

でも、公的機関が発表したと言うことは、ある程度メドが経ったと言うことなのでしょう。未来の子供たちのために期待したいですね。

全部のスギの木から花粉を奪えなくても、せめて明治時代ぐらいのレベルにまで花粉の量が減れば、花粉症に苦しむ人は激減するでしょうね。

2017年春の段階で最新の花粉症治療は注射を使わない減感作療法

減感作療法と言うのは、アレルギーを引き起こす物質に「身体を慣らす」治療法だと考えれば良いでしょう。

「感作」と言うのは「免疫」と同じような意味で、1度身体に入ってきた抗原物質に対して、2回目以降で身体の免疫システムが働くようになると言う意味です。

厳密な定義ではありませんが、持ち主にとって不利に働くのを感作、有利に働くのを免疫と呼んでいると言って差し支えありません。

減感作療法は意外に伝統的

減感作療法と言う名前で呼ぶと、最新の治療法のように聞こえますが、実は伝統的に行われてきたアレルギー性疾患の対処法なのです。

ウルシと言う植物は、アレルギー性皮膚炎を起こすウルシオールと言う物質を樹液の中に持っています。山に入ってかぶれたことのある人も少なくないでしょう。一方で、ウルシの樹液は優れた塗料で、漆器には欠かせません。

この漆器を作る職人さんや、ウルシの木から樹液を採取するカキコさん(職人さんが自分で掻くこともあります)と言う人たちは、ウルシの葉を食べることでウルシにかぶれなくなると言うことを行ってきたそうです。まさに、減感作療法ですね。

もともとアレルギー症状は、本来反応しなくても良い外来物質に、身体の免疫機能が過剰に反応して感作し、炎症などを起こしている物なので、身体がその物質を排除対象としなければ症状は起こらないのです。

ですので、アレルゲンを少しずつ摂り続けることで、身体を慣らすと言うのが減感作療法です。

21世紀の花粉症治療は減感作療法

減感作療法は、現在では「アレルゲン免疫療法」と呼ばれることが一般的になってきているようです。2000年ごろにこの治療法で使うスギ花粉の皮下注射薬が開発され、2009年に保険の対象になっています。

最初はごく薄く薄めたものを微量、皮下に注射して身体にアレルゲンを入れ、アレルギー反応が出ないぎりぎりのところから開始します。最初は週に1~2回接種して徐々に濃度を上げ、維持量と呼ばれる規定量に達したら2週に1回の接種を数回行います。

だいたい、最初の3か月は週に1回、次の2か月が2週に1回です。そして、その後は1か月に1回の接種になります。この治療は対症療法ではなく、花粉症そのものを抑え込む治療ですので、上手く行くと花粉症とおさらばできます。

ただ、最低でも2年以上、だいたい3年ぐらいかかってやっと最大の効果が出てきますから、かなり粘り強く治療を行わないといけません。さらに、花粉症の季節の3か月以上前から始めないといけないと言う制限もあります。

でも、80%以上の人で症状が消え、2年以上継続して症状が消えてから注射をやめても、70%以上の人で効果が継続したと報告されています。ですので、取り組んでみる値打ちは充分にあるでしょう。

舌下液を使って自宅でアレルゲン免疫療法

2017年3月現在で、最新の花粉症治療はこれになるでしょう。標準化スギ花粉エキス原液(商品名:シダトレンスギ花粉舌下液・ジェネリックなし)と言うお薬は、2014年9月に薬価収載されて保険で使えるようになり、同10月に発売されました。

このお薬は、自分で舌の下に滴下して2分間保持し、その後飲み込むと言う使い方をします。その後は5分間だけ、うがいや飲食禁止です。どちらかと言うと副作用防止のため、滴下前後2時間ずつは入浴禁止と言うのが面倒かも知れません。

最初の2週間は徐々に量を増やすため、専用の容器に入ったものを順に使って行くと言う、やや難しい使いかたをしますが、3週目からは維持量に入るので、毎日同じように使います。このお薬も3年以上の継続が前提になります。

まだ薬価収載されて間もないので、花粉症に対する専門的な病院でしか処方してもらえない可能性がありますから、現在かかっているお医者さんに相談して、そこで処方できないようなら、処方してもらえる病院を紹介してもらいましょう。

同じように手間はかかりますが、注射と違ってお医者さんに打ってもらわなくても、自分で使えると言う手軽さや、維持量の時期に入ったら1か月に1~2回くらいの通院で済むようになるため楽です。

それに何より、身体に針を刺すと言うことをしなくていいのは大きなメリットですね。でも、副作用は注射の場合と同じレベルですので注意は怠らないで下さい。

花粉症の根治療法が注射を使わずにできるようになったのは大きいですね。今後他の花粉に対しても作られるのでしょうか。期待したいと思います。

従来の対症療法もまだまだ有効

根治療法が普及してきたとはいえ、年単位で時間がかかるわけですから、やはり花粉症の時期には対症療法もとても大切です。

特に花粉が飛び始めたら、症状が出る前にお薬を服用しておくことで、かなり症状が抑えられますので、積極的に利用しましょう。

対症療法に使われるお薬にも種類がある

花粉症と言えば「くしゃみ・鼻水」ですが、これを抑えるには第二世代抗ヒスタミン薬やケミカルメディエーター遊離抑制薬が用いられます。

ヒスタミンと言うのは、アレルギー発症の際に炎症に関わるケミカルメディエーター(化学伝達物質)として、マスト細胞などから特異顆粒の放出と言う形で出てきます。これがヒスタミンH1受容体に取り込まれることで炎症が起こります。

その受容体をブロックして炎症を抑えるのが抗ヒスタミン薬です。第二世代の物は、第一世代の物に比べて眠くなりにくいなどのメリットもあり、主にアレルギーの時に良く用いられるため、抗アレルギー薬に分類されることもあります。

エピナスチン塩酸塩(商品名:アレジオン・ジェネリックあり)、フェキソフェナジン塩酸塩(商品名:アレグラ・ジェネリックあり)、ロラタジン(商品名:クラリチン・ジェネリックあり)、セチリジン(商品名:ジルテック・ジェネリックあり)などが使われます。

これらのお薬は、要指導医薬品ですが、市販薬にも降りています。

一方、ケミカルメディエーター遊離抑制薬はその名の通り、マスト細胞からヒスタミンが出てくるのを抑えるお薬です。その他の炎症に関わる物質の放出も抑えてくれます。

内服薬としてはスプラタストトシル酸塩(商品名:アイピーディ・ジェネリックあり)などがありますが、実際には点鼻薬や目薬など、外用薬の形で処方されることも多くなっています。

この2種類のタイプのお薬は、くしゃみ・鼻水に処方されます。

鼻づまりには鼻噴霧用ステロイド薬が有効

鼻づまりが問題になる花粉症では、鼻の穴に直接噴霧するステロイド薬が良く効きます。さまざまなお薬がありますが、一例を挙げるとベクロメタゾンプロピオン酸エステル(商品名:リノコート・ジェネリックあり)があります。

ステロイド薬ですので、強力に炎症を鎮めてくれ、鼻の通りを良くしてくれます。一方で局所外用薬ですから、正しく使用している限り、飲み薬のような全身性の副作用は表れません。

さらに、鼻噴霧薬の補助として使われる抗ロイコトリエン薬と言うものもあります。ロイコトリエンもケミカルメディエーターで、その受容体をブロックするお薬です。

これもたくさんの種類がありますが、代表を一つ挙げると、プランルカスト水和物(商品名:オノン・ジェネリックあり)があります。

さらに、鼻づまりがとても強く、噴霧用のお薬では間に合わない場合、内服用のステロイド薬が処方されることもありますが、副作用に注意が必要ですので、お医者さんや薬剤師さんの服薬指導にはしっかり従って下さい。

点鼻薬としては血管収縮薬が用いられることもあります。

この他、レーザー治療や後鼻神経切断手術など、様々な対症療法がありますので、お医者さんとよく話し合って利用するかどうかを決めましょう。

2017年3月現在研究中の花粉症治療法

これは、2017年3月現在ではまだ利用できない物ですが、研究がつづけられているので紹介しておきたいと思います。

その中でも注目したいのは、花粉症緩和米です。つまり、ご飯で花粉症を治そうと言う取り組みが続いているのです。

花粉症緩和米はたんぱく質に工夫がされている

お米はほとんどがでんぷんですが、少しだけたんぱく質が含まれています。このたんぱく質に、花粉と同じ抗原決定基を持たせるようにしたものです。つまり、そのお米を食べると、ヒトの身体は花粉が入ってきた時の反応をすると言うことです。

お米にスギ花粉などを作らせることはできませんが、スギ花粉がアレルギーに関与する部分の目印になる物質を、お米のたんぱく質の中に作る技術が開発されたのです。

この量をコントロールすれば、注射どころか、毎日舌下にお薬を落とす必要もなく、普通に食事するだけでアレルゲン免疫療法が行えると言うものです。

既にこのお米は、開発元の農業・食品産業技術総合研究機構が、研究機関などへの配布を始めています。つまり治験段階にあると言うことですね。ですから、安全性と有効性が確認されれば、そう遠くない将来にデビューするかもしれません。

10年以内に登場するかもしれない免疫療法のお薬

  • ペプチド免疫療法
  • アジュバント免疫療法
  • LUMP(DNA)免疫療法

と言う、3種類の免疫療法が10年以内の実用化を目指して、現在研究を重ねられています。いずれも免疫療法と名前が付いている通り、アレルゲン免疫療法と同系統の考え方です。

しかし、ターゲットを絞り込んで、かなり短期間で治療を完了させられるようにするのが目標だと言うことです。最短で2か月くらいで完了できるようにしたいとされています。

現在のところ、治験段階、あるいは治験前段階ですので、まだしばらくは時間がかかるでしょうが、期待したいですね。

ご飯で根治療法が可能なら、とても良いことですね。10kgいくらくらいになるのでしょうか。そして、保険は効くのでしょうか。いろいろ興味を惹かれますね。

花粉症は生活の品質を維持するのが大事

新しい治療法、将来の治療法、そして従来の治療法。様々な選択肢がありますが、大事なのは「普段の生活が維持できる」と言うことですね。

お医者さんと話し合って、自分の生活パターンに最も適した治療法を選択してください。

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