健康生活TOP 胃がん 若い女性も発症する悪性のがん、スキルス性胃がんから命を守るには?

若い女性も発症する悪性のがん、スキルス性胃がんから命を守るには?

胃がん

胃がんはかつて、日本におけるがん死亡の首位を占めていました。1999年に肺がんが首位になり、現在は第2位になっています(男性では2位、女性では3位)。また、がんの罹患数(新たにがんと診断された数)としても胃がんは上位にあります。

胃がんにかかる人の数は50歳くらいから増加し、女性よりも男性のほうが約2倍も多くなっています。ただ若い女性の場合には「スキルス胃がん」というタイプが多く、発見時にはすでに進行してしまっていることもあります。

診断や治療の技術が進歩してきたことで、胃がんは早期に発見されれば治りやすいがんの一つになりました。しかしスキルス胃がんの場合には、発見時に進行してしまっているために死亡率が高くなっています。

スキルス胃がんとはどのようながんなのでしょうか。

スキルス胃がんは発見されにくく、転移もしやすい

「スキルス」には「硬い」という意味があり、「スキルス胃がん」は「硬がん」とも呼ばれます。スキルス胃がんでは進行するにつれて胃全体が硬くなっていってしまうため、こう呼ばれています。

スキルス胃がんは胃の一番内側の粘膜層にはあまり大きな変化をきたさないまま、胃の壁全体にがんがパラパラと増えていってしまう特殊ながんです。進行するにつれて胃壁は硬くなり、弾力性を失います。

正常な胃の場合には空気を入れると拡張するのですが、スキルス胃がんになってしまった胃では、胃壁が硬いために空気を入れても膨らみません。そのため「スキルス(硬い)胃がん」と言われるのです。

スキルス胃がんとその他の胃がんとでは、がんの進行の仕方が少し違います。スキルス胃がんは、発見しにくく転移しやすいのです。

スキルス胃がんの進行の仕方を見る前に、胃壁の構造について説明します。

胃壁は6層構造、胃がんは一番内側の層から発生する

胃壁はいくつかの層が重なった構造をしています。胃壁を縦に切ると、主には次のような6層から成り立っています。

胃の各名称と胃壁の構造

  • 粘膜層:胃の一番内側の、食べ物に接する層
  • 粘膜筋板
  • 粘膜下層
  • 固有筋層(筋層):胃の働きを担う筋肉の層
  • 漿膜下層
  • 漿膜:胃の一番外側で臓器全体を包んでいる層

胃がんは最初、一番内側の粘膜層に発生します。このときには本当に小さな点でしかありませんが、年単位の時間がかかって徐々に大きくなっていきます。そして大きくなるにつれてがん細胞は胃壁の深い部分にまで入り込み、また横にも広がっていきます。

「早期胃がん」「進行胃がん」といった言葉を聞いたことがあるかもしれませんが、これはがん細胞が胃壁のどの層にまで達しているかを表しています。

早期胃がん
がん細胞が粘膜層から粘膜下層までに留まっているもの。がん細胞が粘膜層に留まっている状態ならばほぼ転移の可能性はないが、粘膜下層にまで及ぶとリンパ節転移の可能性が多少出てくる。
進行胃がん
がん細胞が粘膜下層を越え、固有筋層より深くにまで浸潤したもの。がん細胞がここまで達すると、リンパ節転移や他の臓器への転移なども起きやすくなる。

がん細胞が粘膜に発生してから粘膜下層に及ぶまでには、2~3年かかるとされています。ただ進行速度は人によって違い、10年近くかかることもあればもっと早いこともあります。ある時期から急に速くなってしまうこともあります。

がん細胞の発育の仕方には、胃の正常な組織を押しのけかたまりを作りながら大きくなるタイプと、正常な組織に混じり込んでがん細胞が増えていくタイプがあります。正常な組織に混じり込んでしまうと、がんの境目がはっきりしなくなります。

またがん細胞の増殖の仕方も、正常な細胞と同じような配列で規則正しく増殖する「分化型がん」と不規則にまとまりなく増殖していく「未分化型がん」とにわけられます。未分化型がんのほうが転移しやすく、より悪性になります。

スキルス胃がんは正常な組織に混じり込んでがん細胞が増えていくタイプで、未分化型に分類されます。

スキルス胃がんとそれ以外の胃がん、進行の仕方の違いは?

スキルス胃がんとそれ以外の胃がんでは、がん細胞の増殖の仕方が違います。その違いのために、スキルス胃がんは発見が遅れてしまうのです。どのように違うのかをみていきましょう。

まずどのタイプの胃がんでも通常、一番最初は粘膜層から発生します。スキルス胃がんでもそれ以外の胃がんでも、粘膜層からがんが発生するということは同じなのです。それが少しずつ大きくなるのですが、その大きくなり方に違いがあります。

スキルス胃がん以外の胃がんの場合、がん細胞はがん細胞同士でかたまりを作り、正常な組織を押しのけて大きくなります。がんが大きくなるにつれ、胃の内側の粘膜層にはイボのようなできものやクレーターのような窪みが作られます。

胃内視鏡検査をすればこれらの変化はわかりやすく、そのため早い段階でがんを発見することができます。がんの部分と正常な部分の境界もはっきりしています。

それに対してスキルス胃がんでは、がん細胞はかたまりを作らずに胃の壁の中でパラパラと散らばりながら大きくなっていきます。粘膜層の変化はあまりないまま、それより下の層でがんが大きくなっていっているのです。

この場合、胃内視鏡検査などしても胃がんができていることになかなか気付けません。胃の粘膜層の変化はわずかで、イボのようなできものやクレーターのような窪みがあるわけではありません。がんと正常な部分の境界もはっきりしません。

そのためにスキルス胃がんでは、発見が遅れがちなのです。そして発見されたときにはすでに、かなり進行してしまっていることもよくあります。転移もしやすいため、診断されたときには手遅れになってしまっていることもあるのです。

若い女性にも多い!スキルス胃がんの特徴となりやすい人とは?

スキルス胃がんは胃がん全体の1割ほどです。胃がん全体の1割ほどにすぎないのですが、他の胃がんと比べるといくつか違った特徴があります。

スキルス胃がんにはどのような特徴があるのでしょうか。進行の仕方だけでなく、発症の年齢や男女差などにいくつか違った点があるのです。

発見が遅れやすい

先ほども言いましたが、スキルス胃がんはそれ以外の胃がんに比べると発見が遅れがちです。がん細胞同士がかたまりを作らず、胃の壁の中にパラパラと増えていくため検査をしても見逃されやすくなります。

そして発見されたときにはかなり進行していて、すでに手術ができない状態になっていることもあります。

進行が早い

スキルス胃がんは通常の胃がんよりも進行が早いとされます。1年ごとに検診を受けていても、突然進行した状態で発見されることもあるようです。

発見が遅れやすいうえに進行も早いため、スキルス胃がんはとても悪質なのです。

胃壁が硬くなり膨らまなくなる

スキルス胃がんでは、胃の壁の中でがん細胞が増えていく際に線維芽細胞も一緒に増えていきます。そのため次第に、胃の壁は厚く硬くなっていきます。

正常な胃は空気を入れるとよく膨らみますが、スキルス胃がんになると空気を入れても胃の壁が硬いために膨らまなくなります。

腹膜転移を起こしやすい

スキルス胃がんは腹膜への転移を起こしやすいという特徴もあります。胃の壁の中にパラパラと増えたがんは、やがて胃の一番外側の漿膜を突き破って腹腔内(お腹の中)にも散らばっていくのです。

胃からお腹の中へ種を播くようにがんが散らばっていくため、これを「腹膜播種(ふくまくはしゅ)」と言います。そしてがん細胞は腹膜(腹部にある、内臓を覆っている薄い膜)全体に転移して、進行するにつれ様々な症状が現れるようになります。

腹膜へ転移しても、初期には気付きにくくなります。がんは大きなかたまりになるわけでなく小さなできものが散らばるだけのため、検査ではわかりにくいのです。

やがて腹膜転移が進行すると、検査で発見されるようになります。このときには腹水が溜まったり、転移したがんが腸管を狭くしてしまって腹部膨満感、腹痛、吐き気といった症状が出るようになっています。

スキルス胃がん以外の胃がんで発見時に腹膜転移を起こしてしまっているのは2割弱ですが、スキルス胃がんでは6割近くになります。

比較的若い人にも多く、女性にも多い

スキルス胃がん以外の胃がんでは50代から発症する人が増え、60代が多くなります。近年はもっと高齢で発症する人も増えていますし、もちろん40代で発症することもあります。

また男女差では50歳未満ではそれほど差はないものの、50歳以降には男性のほうが罹患率、死亡率ともに高くなっています。男性のほうが女性よりも2倍もかかりやすいとされているのです。

それに対してスキルス胃がんではもう少し若い世代に多くなります。30~40代で発症する人も多く、平均すると他の胃がんより3~4歳若くなっています。また男女比では女性の割合がやや多くなっています。

治癒率があまりよくない

胃がんは、早期に発見されれば治癒率は90%を越えるとされます。診断技術の進歩などにより検査の精度も上がってきていて、早期胃がんの段階で発見されることも増えてきています。

また進行胃がんであっても、治癒率は以前より少しずつ良くなってきています。そして胃がん全体の死亡率は、近年は減少してきています。

ただしスキルス胃がんは、あまり治癒率が良くありません。

がんの治癒率の目安として「5年生存率」という言葉が使われます。これは「がんの治療を受けた患者のうち、5年後に生存している人の割合」です。

がんは治療後1~2年以内に再発してしまうことが多く、年月が経つにつれ再発の可能性は低くなります。治療後5年以上経つと再発の可能性はさらに少なくなるため、治療後5年生存したことを完治の目安にしているのです。

スキルス胃がんの場合、この5年生存率が10~20%程度とされています。もちろん以前に比べるだいぶ上がってきてはいるのですが、まだ厳しい状態と言えるでしょう。

自覚症状はあまり出ない!早期胃がん、進行胃がんの症状

スキルス胃がんで現れる症状は、他の胃がんとも同じです。ただ胃がんは、発症してもなかなか自覚症状は現れません。がんがかなり進行してからでも、あまり症状のないままのこともあります。

また症状があっても胸やけやお腹が張る、食欲がないといったような健康であっても感じるような症状のため、胃がんになっていても見過ごされてしまうこともあります。

胃がんの症状は以下のようなものです。「気のせいかな」と思っている症状でも長く続いているようでしたら、一度検査を受けてみてください。

早期胃がんの症状

  • 多くは無症状
  • 胸やけ
  • お腹が張る、不快感がある
  • 胃がもたれる
  • 吐き気
  • 食欲不振、食事がおいしくない
  • みぞおち辺りの痛み、違和感

症状がさらに進行すると、今まで気のせいかなと思っていた症状もはっきり感じられるようになってきます。ただし進行胃がんになっていても特に症状が出ないということもあります。

進行胃がんの症状

  • 無症状のこともあり
  • 食欲低下、体重減少
  • ふらつき、めまい
  • 動悸、運動すると息切れ
  • 吐血、黒色便
  • 食べ物がつかえる感じになる
  • 胃もたれ、胸やけ
  • 吐き気、くさいゲップ
  • 腹部のしこり

胃がんからの出血が続くことで、血を吐いたり便に血液が混じった黒色便になったりします。また貧血になるためにふらつきやめまいが出たり、動悸がするようになります。そして腹部を触ったときに、しこりのようなものを感じることもあります。

がんが腹膜に転移してしまうと腹水がたまるようにもなります。他に下痢や便秘になってしまうこともあります。

胃がんは少しでも早く発見することが大切です。年に一度検診を受けることで、変化に気付いて早期に発見できるチャンスは高くなります。40歳を過ぎたころからは、毎年検診を受けるようにしておきましょう。

また高齢になるほと胃がんを発症しやすくなります。検診はずっと続けていくことが大切です。もちろん定期検診で「疑いがある」と言われたときには、必ず早めに精密検査を受けましょう。

ところで胃がんの初期症状は胃潰瘍とも似ていますが、胃潰瘍が胃がんになることはありません。

胃潰瘍は胃粘膜がただれて穴があいたもの、胃がんは細胞ががん化してしまったものです。胃潰瘍だからいずれ胃がんになるのではと心配する必要はないのです。

塩分の摂り過ぎは高血圧だけでなく胃がんも呼び寄せる!胃がん予防対策

スキルス胃がんについては、まだはっきりわかっていないことも多くあります。ただその原因は、基本的に他の胃がんと同じと考えられています。

胃がんの原因になるとされるのは、以下のようなことです。

  • タバコ
  • 塩分の多い食生活
  • ヘリコバクター・ピロリ菌感染 など

この他アルコールなども原因になると考えられます。

この中でピロリ菌感染については、通常の胃がんに比べスキルス胃がんではあまり深く関係していないと考えられています。ただし全く無関係というわけでもないようです。

そしてスキルス胃がんでは、女性ホルモンのエストロゲンが何らかの原因になっていると思われます。また遺伝子の変化が起きているともされます。これからさらに研究が進むことで、いろいろなことがわかってくるでしょう。

ピロリ菌除菌すれば、胃がんにならないわけじゃない

ピロリ菌感染が胃がんの原因になるとして、検査で感染が確認されると除菌を行うことも多くなりました。

ただ気をつけておいていただきたいのは、ピロリ菌に感染しているからといって必ず胃がんになるというわけではなく、また除菌すればもう胃がんのリスクがないというわけではないことです。

確かにピロリ菌感染者のほうが、感染していない人よりも胃がんの危険性は高くなります。ただピロリ菌感染者の中で実際に胃がんを発症するのは、ほんのわずかともされます。

そして重要なことは、ピロリ菌を除菌しても胃がんの原因は他にもあり、胃がんを発症してしまう可能性はあるということです。ピロリ菌の除菌後も、定期検診は続けるようにしておきましょう。

塩分の摂りすぎは胃がんのリスクを確実に上げる

食事と胃がんとの関係については、いろいろな研究が行われてきています。まだ確実に胃がんのリスクになるとわかっていることは多くありませんが、その中で塩分の摂りすぎがリスクになることだけははっきりしています。

塩分を摂りすぎると血圧が上がってしまうイメージがありますが、胃がんにもリスクになるのです。

これは胃の中の塩分濃度が高くなると、胃粘膜が傷ついてしまうからと考えられます。実際、塩分の多い塩から・練りウニ・タラコ・イクラなどを食べる頻度と胃がんの関係について調べると、よく食べている人のほうがリスクが高くなりました。

また世界的にみて、胃がんの6割は東アジアで発症しています。そして日本から胃がん患者の少ない地域に移住した人のその後を調査すると、胃がんのリスクは下がって現地の人に近付いてきています。

これは食生活が変化したためと考えられます。日本に比べ胃がん患者の少ない地域(欧米やオセアニアなど)では、塩分摂取量が少ないのです。

同じことが日本国内でも言えます。国内でも胃がんの発生には地域性があり、東北や北陸地方の日本海側で多く発生しています。これらの地域の塩分摂取量は他の地域よりも多いと思われます。

反対に新鮮な野菜や魚を多く摂っているため塩蔵食品はあまり食べないと考えられる沖縄県では、胃がんの発生率が低くなっています。

野菜や果物は、胃がんのリスクを確実に下げる

胃がんについて様々な研究が進む中、胃がんのリスクをほぼ確実に下げるであろうものもわかってきました。

胃がんのリスクを下げると思われるもの

  • 野菜や果物の摂取
  • 食品冷蔵技術の普及
  • 食品からのビタミンCの摂取

野菜や果物を食べる人のほうが、ほとんど食べない人より胃がんのリスクが低いことがわかっています。ただたくさん食べれば食べるほど、リスクが下がるというわけではないようです。

いろいろな野菜や果物を、毎日十分に食べるということを心がけるとよいでしょう。食品からのビタミンC摂取も、胃がん予防にはよいとされます。これはサプリメントでなく、食品から摂ることによって効果があることがわかっているのです。

食品冷蔵技術が普及したことで、保存のために塩漬けされた食品を摂ることは減りました。塩分摂取が減り、新鮮な野菜や果物を摂ることが増えたことが胃がんリスクの低下にも繋がっているのです。

血圧のためにも塩分の摂りすぎはよくありません。この機会に一度、普段よく食べているものを見直してみて下さい。また年に1度のがん検診も続けていくようにしましょう。

胃がんを予防するためにも、塩分摂取を減らして新鮮な野菜や果物をしっかり摂るようにしていきましょう。やっぱり食生活の見直しは健康のために大切ですね。
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