健康生活TOP 胃がん 検査でピロリ菌が陰性でも安心できない!ハイルマニイ菌って何?

検査でピロリ菌が陰性でも安心できない!ハイルマニイ菌って何?

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胃潰瘍の原因菌として、そして胃がんの原因にもなる菌としてすっかり有名になったヘリコバクター・ピロリ。ねじれた棒状の形から、らせん菌と言う分類をされることもありますね。

片端に鞭毛をもっていて、それをくるくる回転させながら移動するところから、ヘリコ(旋回する)+細菌(バクター)と命名されました。ヘリコプターと同じ語源ですね。オプターは翼と言う意味です。

さて、このヘリコバクター・ピロリには性質の悪い親戚がいる事が判っています。今回はそれを含めて見て行きましょう。

ピロリ菌は胃炎を慢性化させて胃がんに繋がることが多い

ピロリ菌と言えば胃潰瘍の原因菌と言うイメージが強いですよね。しかし、胃炎や胃潰瘍だけでなく、実は胃がんの大きなリスクファクターなのです。

ピロリ菌が陽性だった人は、そうでない人の5倍以上も胃がんリスクが高いのです。そして、ピロリ菌感染による症状が進行してピロリ菌自体が隠れてしまうと言う現象もあり、それを含めるとピロリ菌による胃がんリスクはさらに高い事が判りました。

ピロリ菌は胃を委縮させ胃がんを起こす

国立がん研究センターによると、大規模な要因対照研究の結果、ピロリ菌の感染によって胃がんリスクは未感染者の10倍にもなると言う事が判ったとあります。

ヘリコバクター・ピロリ菌感染陽性者の胃がんリスクは、陰性者の5.1倍となりました。

(中略)

ヘリコバクター・ピロリ菌が胃に感染して胃粘膜の萎縮がある程度以上進行してくると、むしろ菌は胃粘膜にとどまることができなくなり、血液検査上は陰性と判定されることがあります。

一方、CagAはこの陰転化が遅れて起こることが知られています。CagAもあわせてみることにより、ヘリコバクター・ピロリ菌の隠れた陽性者を知ることができたわけです。

このグループをヘリコバクター・ピロリ菌感染陽性とすると、感染者の胃がん発生のリスクは10倍となりました。

もちろん、ピロリ菌だけが胃がんの原因ではありません。しかし、リスクが10倍になると言うことになると、座視するわけにはいきませんよね。何らかの対策を考えた方が良いかもしれません。

最近ではピロリ菌の除菌について、推奨する意見も多く見受けられるようになってきました。

胃がんの原因はピロリ菌だけではないが除菌療法は有効

もちろん、ピロリ菌に感染したからと言って必ず胃がんになるわけではありません。むしろならない人の方がずっと多いのです。それでも未感染者に比べてリスクが10倍と言うのはすごい数字です。

また、胃がんにならないまでも、胃炎や胃潰瘍の原因になることも良く知られています。

さらに、胃を原発巣とする悪性リンパ腫の一つ、胃MALTリンパ腫の患者さんは、実に90%以上がピロリ菌に感染していたと言うデータもあります。

ですので、胃のさまざまな病気でピロリ菌に感染していることが判ったら、保険対応で除菌治療を受けることもできるようになりました。その対応症は以下の通りです。

  • 内視鏡検査・造影検査で胃潰瘍や十二指腸潰瘍が見つかった人
  • 胃MALTリンパ腫が見つかった人
  • 特発性血小板減少性紫斑病の人
  • 早期胃がんに対する内視鏡的治療を受けた人
  • 内視鏡検査でヘリコバクター・ピロリ感染胃炎と診断された人

殆どのパターンが網羅されているのだとは思いますが、これ以外の場合は保険が効きません。

ピロリ菌の除菌療法と感染陰性者

ピロリ菌は様々な方法で検査できますが、内視鏡(胃カメラ)を使わずに血液や呼気の検査、検便などでピロリ菌の有無を調べることができます。

ただ、胃潰瘍や十二指腸潰瘍の場合は、その病気の診断のために内視鏡を使う事もあります。胃がんや胃MALTリンパ腫の疑いの場合も内視鏡で組織を取って調べますから、内視鏡検査は必要になることが多いでしょう。

除菌治療の実際

除菌治療と言っても、それほど特別な事をするわけではありません。胃酸を抑える薬と抗生物質2種類の合計3種類の薬を1日2回7日間飲むだけです。

但し、普通の風邪薬などとは違って、厳密に決められた用量用法を守って飲まないといけません。

それができないと効果がないだけでなく、ピロリ菌に抗生物質に対する耐性ができてしまい、それ以降の除菌が不可能になることもあります。

ですから、厳密に服薬時間を守り、必要に応じて禁酒や食事パターンなどの様々な制限事項について、確実に実行できる期間を選定して開始する必要があります。

予めお医者様とよく相談して行いましょう。基本的に外来治療ですから、保険が効いて数千円の費用で行える治療です。

そして、その後検査を行って除菌できたかどうかを調べます。1回目で除菌に成功するのは約75%と言いますから、最初の除菌では4人に1人は菌が残ってしまうんですね。

しかし、その場合でも抗生物質2種類のうち1つを別の薬に変えて同じように1週間投与する2回目の除菌治療が行われます。1回目と2回目の合計で除菌に成功する割合は95%です。

何らかの事情で2回の除菌に失敗する人も20人に1人はおられますが、そうした場合は別の方向からの治療のアプローチが行われるでしょう。

胃MALTリンパ腫と言う悪性腫瘍は除菌だけで治ることがある

リンパ腫と言う病気があります。悪性リンパ腫とも言いますね。実はリンパ腫に良性はありませんので、リンパ腫と言えば全部悪性なのです。ただ、明示的に示した方が良い場合に悪性リンパ腫と呼んでいるだけなんです。

悪性リンパ腫は白血病と同じ血液のがんです。造血細胞のたくさんある骨髄で起こる白血病に対して、リンパ系で発生することからリンパ腫と呼ばれています。

胃MALTリンパ腫は感染症

このリンパ腫にはたくさんの種類があるのですが、全体の8~9%を占めるものにMALTリンパ腫と言うものがあります。読み方は「マルトリンパしゅ」です。そしてMALTリンパ腫の半分は消化管、それも大半が胃で見つかるのです。

いえ、もともとMALTリンパ腫は胃の病気だと思われていたぐらいで、のちに他の部位でも多少見つかるようになってきたと言うイメージです。

胃MALTリンパ腫の主な原因はピロリ菌です。実際、胃MALTリンパ腫の90%以上からピロリ菌が検出されています。

また、進行が遅いのがこのがんの特徴ですが、初期のうちならピロリ菌の除菌だけでリンパ腫が消滅することもあるのです。

また、ある程度病気が進んでいて、除菌だけでは寛解(治癒)しなかった場合、近年では手術よりも放射線療法が行われることが多くなっています。

ピロリ菌陰性の時に疑うべき菌がある

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ヘリコバクター・ピロリは1983年に見つかった比較的新しい病原菌です。さらに1987年「ピロリ菌ではないらせん菌(ヘリコバクター)」が見つかったのです。

現在まで、大掛かりな研究が行われてこなかったため、謎に包まれたままと言う印象の強い菌ですが、これも胃炎~胃MALTリンパ腫に大きくかかわっていそうだと言う事が判ってきました。

ハイルマニイ菌の働きは少しずつ分かってきている

この新しい菌はヘリコバクター・ハイルマニイと言います。発見者のハイルマン博士にちなんで名づけられました。遺伝情報、全ゲノム情報の解析が終わったのは2011年とつい最近のことです。

まだ大掛かりな研究が行われていないので詳しくは判っていませんが、ピロリ菌が疑われる状況なのに検査してみても陰性だった人の半分以上から、このハイルマニイ菌が検出されました。

今後、ピロリ菌とハイルマニイ菌を合わせた研究などが行われれば、もっと詳しい事が判るでしょう。そうした情報が入手でき次第、また紹介しますのでお待ちくださいね。

感染性はピロリ菌よりずっと強いので要注意

ハイルマニイ菌にはピロリ菌と異なるいくつかの特徴があるのですが、そのうちの一つに構造に関するものがあります。ピロリ菌の数倍大きいと言うことも特徴ですが、実はエンジンが2つ付いてるんですね。

ピロリ菌は先にお話しした通り、長い身体の片端に鞭毛が数本付いていて、これをくるくる回転させながら進みます。一方、ハイルマニイ菌には前後に鞭毛がついていて、両側を使って進むので移動速度が速いんです。

移動速度が速いと言うことは伝染・感染の確率が上がると言うことになりますね。

また、ピロリ菌は人間やサルなどの霊長類にしか感染しませんが、ハイルマニイ菌はイヌやネコにも感染する人畜共通感染症菌なのです。ですので、人からペットに、ペットから人にと言う感染経路が成立します。

さらに動物実験では、ピロリ菌の場合「1億個を3回投与」しないとマウスの胃には定着しないのに対して、ハイルマニイ菌の場合「1万個を1回投与」するだけで感染が成立したと言うことです。

非常に感染力が強いことが見て取れますね。

胃MALTリンパ腫に関して発がん性は非常に高い

これもまだマウスを使った動物実験の段階ですが、ハイルマニイを感染させたマウスは3か月で腫瘍が確認され、半年で100%のマウスにMALTリンパ腫様の腫瘍が確認されました。

実験に携わった先生によると、過去10年間に行われた実験では例外なく腫瘍が形成されたと仰っています。つまり、ハイルマニイ菌もまた胃MALTリンパ腫の原因菌であることはほぼ確実のようですね。

しかし、ピロリ菌も非常に高い頻度で検出されています。この2つの菌の関係は今後の研究にまたなければならないでしょう。

ピロリ菌とハイルマニイ菌と除菌治療の関係

現段階で判ってきていることでは、この二種類の菌の間には厄介な関係があるようなのです。それによって除菌治療が少々複雑になるかもしれません。

それはピロリ菌とハイルマニイ菌が競合する関係にあるかもしれないと言うことです。つまり、ピロリ菌がいればハイルマニイ菌には感染しないかもしれないと言うことなんですね。

ピロリの空き家にハイルマニイが棲みつく?

国内外の様々な研究は、ピロリ菌がハイルマニイ菌と競合する関係にあるので、ピロリ菌を除菌してしまうとハイルマニイ菌に感染しやすくなると言う可能性を指摘しています。

つまり、同時感染の可能性は比較的少ないと言うことでもありますね。ですので今後の研究結果次第ですが、ピロリ菌の除菌治療を行ったら一定期間後、必ずハイルマニイ菌の検査を受けるようにした方が良いのかもしれません。

特にペットを飼っている人の場合リスクは上がってくる可能性は高いですね。

検査や治療方法は確立していない

確実な方法としてはハイルマニイ菌のDNAを検出する検査ですが、これは行える施設が限られていますので、もっと手軽で安価で素早く検査できる方法の確立が待たれています。

治療方法としては、ピロリ菌と同じ除菌方法が使えるだろうと考えられていますので、検査結果次第では、同じ除菌作業を2回行うことになるかもしれませんね。

それとは別に、除菌以外の研究も進められています。現段階ではやはり乳酸菌などを使ったプロバイオティクスやポリフェノール類を使った方法が研究されているようです。

ですので、今の私たちにできるのは、ハイルマニイ菌と言うものの存在を知識として持っておくことと、プロバイオティクスとしてヨーグルトなどを愛用する、ポリフェノールを上手に摂ることぐらいでしょうか。

当たり前すぎるくらい簡単な方法ですが、意外に医療技術を先取りすることに繋がるかもしれませんよ。

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