健康生活TOP 精神障害 人前で話せない…それは精神障害かも?社会不安障害の症状とチェック

人前で話せない…それは精神障害かも?社会不安障害の症状とチェック

知らない人との会話が怖い。人前に立つことが怖い。電話での受け答えすら恐い。

頭が真っ白になって、何も話せなくなる。緊張のあまり手足の震えて、汗が出て、動悸がして、顔が真っ赤になって、吐き気がしてくる。

自分でもあがり過ぎているとわかっているのに、どうしても苦しい。

そんなあなたは、「社会不安障害」の可能性があります。

単なる甘えと決めつけて自分や他人の首を絞めつける前に、心と身体の状況をきちんと把握してみませんか?

ここでは、「社会不安障害」の主な症状やチェック方法について紹介していきます。

7人に1人といわれる社会不安障害とは?どんな症状がでるのか

初対面の人や目上の人と話したり、大勢の人の前での発表や発言したりする時には、誰しも少なからず緊張するものです。

しかし通常、そうした不安や緊張は会話や発表、発言に支障をきたすほどではなく、時間の経過とともに徐々に和らいでいくものです。

けれど、そうでないときもあります。例えば、

1.不安や緊張、それにともなって現れる身体の症状、例えば顔が赤くなる、汗が異常に吹き出る等が、会話や発表、発言に支障をきたすほどに著しく、いつまで経っても治らない場合。

2.そしてその苦痛が、社会で生きていくこと自体を困難にしている場合。

そんな状態は、「社会不安障害」と呼ばれます。

社会不安障害では、緊張は意識すればするほど強まります。何をやっても上手くいかないため、あらゆることに自信が失くなり、社会と関わることに対して、どんどん消極的になっていきます。

結果として職業の選択が制限されたり、教育の可能性を失ったり、社会的技能の習得や結婚の機会を逃がしたりして、社会生活に明らかな支障が現れ始めます。さらにひどくなると、「引きこもり」にも繋がります。

これまで対人恐怖症、あがり症、赤面恐怖症と呼ばれていたものもこの障害に含まれます。

欧米の報告では、約13%の人が一生のどこかの時点で社会不安障害になると考えられています。

これは、程度の差こそあれ7人に1人くらいが社会不安障害になるということを示す統計結果です。 非常に多くの人が社会不安障害に悩んでいるのです。

自信喪失状態に陥ると「自分だけが異常」と考えがちですが、似たような悩みを持つ人は実はたくさんいます。

単なる「内気」や「あがり症」との違い

「社会不安障害」はれっきとした精神疾患の一つですので、明確な診断基準があります。診断は精神科医の診察によってなされるため、本人、または家族等が病気かどうかを診断をすることは出来ません。

ですが、単なる性格上の問題かもしれないのに、いきなり病院へ行くのは気が引けるという方も多いかと思います。特に本人がひどく自信喪失している状態ですと、到底診断を受けに行く気にはなれないでしょう。

そこで、詳しい診断基準は後で述べるとして、ここではまず社会不安障害の診断がどのように行われるのかについて紹介していきます。

診断の手順

「社会不安障害」の診断には、主に以下の3つの手順が用いられます。

  1. 診察
  2. 診断基準
  3. 心理検査

まず1の診察では、医者と患者が話をします。

医者は、患者本人が一番困っている症状(主訴と言います)や、今までの経過(病歴)、患者の性格や環境、精神疾患の家族歴、既往歴や服薬歴などを聞くことで所見を得ていきます。

身体の症状とは違い、こころの症状は血液検査や画像検査ではわかりません。専門家である精神科医が入念に話を聞くことで、診断が可能となるのです。

2の診断基準には、主としてアメリカ精神医学会(APA)が発刊しているDSM-5という診断基準と、世界保健機構(WHO)が発刊しているICD-10という診断基準の2つが使われます。

実際の基準の内容については後で触れますが、これらの診断基準の診断項目と、診察で得られた所見を見比べ、社会不安障害の診断基準を満たすかどうかが判定されます。

3の心理検査は、あくまでも補助的なものです。

心理検査の結果だけでは診断は下せません。けれど、他の診断基準の補助として有効な役割を担っています。

用いられる心理検査には次のようなものがあります。

LSAS-J 24の質問で、不安感/恐怖感と回避についてそれぞれ0~3の4段階で評価する
SATS 社交不安・対人恐怖評価尺度。3つの項目があり、それぞれ更に4~5つの質問がある。評価は0~4の5段階で行う
STAI 状態不安(今この瞬間の不安の強さ)と、特性不安(普段のいつもの自分の不安の強さ)を検出する。マークシート式

心理検査の内には、LSAS-Jなど、ネットで簡単にテストできるものもあります。もし疑いがある場合には、試してみるのも良いでしょう。

▼LSAS-J(社交不安症の評価スケール)
社交不安症の評価スケール

もっと詳しく! 診断の基準

先に紹介した診断基準について、より具体的に見ていきます。各項目を自身の症状と照らし合わせてみることで、セルフチェックの参考になるでしょう。

前章では、DSM-5とICD-10という診断基準があるとお話ししましたが、どちらも内容にあまり違いは無いので、ここではDSM-5を紹介します。

DSM-5の「社会不安障害・社会恐怖」の診断基準は以下のようになっています。

▼社会不安障害(社会恐怖)の診断基準

A.

他の人からの詮索の対象となりそうな社会生活場面で起こる顕著な恐怖・不安で、そのような場面が1つあるいはそれ以上ある。

例として、対人交流場面(会話・あまり親しくない人との雑談)、人目を引く場面、人前での行動場面(他人の前での板書・発言・飲食など)。

子供の場合は、常に不安は同世代の仲間といる時に起こり、大人の中では起こらない。

B.

自分の取る行動や不安な態度が変に思われるのを恐れる。(例えば、恥ずかしく感じたり、誰かに恥ずかしい思いをさせる。他人から拒絶・嘲笑されたり、誰かに不快感・苛立ちを与えるなど)

C.

その社会生活場面はほとんど常に恐怖や不安を引き起こす。

子供の場合は、恐怖・不安は泣く、癇癪を起こす、しがみつく、竦む、震える、言葉がでないなどで表現されることが多い。

D.

その社会生活場面を回避する、あるいは強い恐怖や不安を持ちながらひたすら我慢する。

E.

恐怖や不安は、その社会生活場面が持つ実際の脅威やその社会の文化的文脈にそぐわない。

F.

恐怖、不安、あるいは回避は一般には6ヶ月以上続く。

G.

恐怖、不安、あるいは回避は臨床的に大きな苦痛であり、また、社会上や職業上、あるいは他の重要な領域の機能の妨げとなる。

H.

恐怖、不安、回避は物質(依存性薬物・医薬品)による生理学的反応や他の身体疾患によるものではない。

I.

恐怖、不安、回避は他の精神障害、例えば、パニック障害、身体醜形障害、自閉症スペクトラムの症状ではよく説明できない。

J.

他の身体疾患(例えば、パーキンソン病、肥満、火傷や外傷による傷跡)が存在しても、恐怖、不安、回避はそれとは関係せず、その症状が顕著である。

専門的な言葉が多く、少し難しかったかもしれません。ですが、何となくでも内容が掴めれば、多少なりとも自分の症状について自覚できるでしょう。

また、医者に何を、どんな風に話せば良いのかについての参考にもなるでしょう。

社会不安障害という病気の本質は、「他者の前で普通に行動・発話ができない過度の不安・緊張・羞恥心」と定義されています。

つまり社会不安障害では「他人から変な人間と思われるかもしれない・他人からバカにされたり笑われるかもしれないという不安と恥ずかしさ(シャイネス)」が中核的症状となります。

そのため、「社会的場面(対人状況)に直面できずに回避しようとする不適応な行動」が診断基準として重要視されています。

社会不安障害の患者は、その症状を自分の性格の問題だと思って1人で抱え込みがちです。相談できる人や環境もなく、症状を悪化させてしまうことも珍しくありません。

「社会不安障害かな?」と思った時には、間違っていても良いので、早めに受診(あるいは、相談)してみることをおすすめします。

なぜ社会不安障害になってしまうの?発症の原因

社会不安障害の原因は、まだ十分には解明されていません。どんな病気でもそうですが、精神障害の発症には、生物学的(身体的)、心理的、および社会的要因がいろいろな度合いで関わってきます。

かつては心理的要因が主な原因であると考えられてきましたが、近年は脳研究の進歩によって、様々な脳内神経伝達物質系の異常が関係しているという説が有力になってきています。

特に、脳内の神経伝達物質であるセロトニン(精神を安定させる作用がある)などのバランスが乱れて不安を誘発しているとの説や、恐怖や不安に関与する脳内の扁桃体が過剰に反応しているのではないかとの説が有力です。

心理的要因としては、

  • 過去に何らかのきっかけがあった
  • 発症前1年間のストレスが多い
  • 小児期に親との別離体験をもつ

といった報告が多くなっています。

このほか、社会的要因も心理的要因の背後にあります。

時代や、その人が住んでいる国・地域の文化によって、ものごとの受け止め方や考え方は変わります。

例えば日本の場合、人の目を気にして恥を重視する文化のために、対人恐怖症が多いと言われてきました。しかし、今日そのような傾向が薄れつつあるのとともに、対人恐怖も減ってきているとされています。

学生時代は緊張する場面を極力回避して過ごしてきたものの、就職後には回避しきれなくなり、社会生活に支障をきたして病院を受診するケースが多々あります。

発症のきっかけは様々です。

一人で悩んでしまいがち…発症しやすい年齢と罹患期間の平均

実は、社会不安障害は子供に多い病気です。

研究者によって多少の差がありますが、平均発症年齢は15.5歳という報告があります。10代半ばでの発症が多く、日本においては中学3年生から高校1年前後にあたる時期となっています。

この発症年齢には二つの山があり、一つのピークは5歳以下、もう一つは13歳とされています。つまり5歳頃までと、11~15歳ころにピークがあり、25歳までにほぼ発症して、それ以降の発症は少なくなっているということです。

発症年齢=受診年齢?

発症する年齢は以上の通りですが、では初めて病院を受診する年齢はどうかというと、必ずしも発症年齢と一致しません。

実際に社会不安障害の疑いを持って医療機関を受診する人の平均年齢は、発症年齢よりも10歳以上も高くなっていると報告されています。

社会不安障害は10代半ばで発症して慢性に経過するため、患者は症状を自身の性格上の欠点と捉えてしまう方が多く、なかなか受診にはいたらないため、長期にわたって一人で悩み続けてしまいがちなのです。

罹患期間の平均は、短いものでも10年から20年。長いものでは30年にも及びます。

子供の社会不安障害

大人と子供では、社会不安障害の症状の現れ方に違いがあります。

大人の場合、自分の恐怖が道理に合わないものだとちゃんと認識できいますが、子供ではそうしたことはあまりわかりません。

子供は他人との関わりを避けるというのではなく、他の形で表現します。泣いたり、かんしゃくを起こしたり、固まってしまったり、親しい人にしがみついたり、また、全くしゃべらないといった形をとることもあります。

大人なら避けて通れることも、子供はただ混乱するばかりです。子供同士の遊びの輪に入らず、親しい大人の側にいようとする傾向が出てきます。

子供が社交不安障害であるかどうかを診断する場合は、親しい人と親しくできるかどうか、子供同士の場面でも障害が見られるかどうかを確認しましょう。

とはいえ、子供が幼い内には、これを見るのはとても困難なことです。無理せず早期に専門医の判断を求める方が良いでしょう。

合併症にも注意を

社会不安障害では、社会生活に支障がでるほか、次のような障害との合併が多く見られます。

  • うつ病
  • アルコール依存症
  • パニック障害
  • 摂食障害
  • パーソナリティ障害

また、自殺行動も多く、注意が必要です。

事態が複雑化し、引き返せないほど悪化してしまうより前に、必ず誰かに相談しましょう。

快方へ向けて…無理せず取り組める社会不安障害のセルフケア

快方へ向けて、無理せずに取り組めるセルフケアについて紹介していきます。

専門的な治療については触れませんが、こうしたセルフケアは不安や体調をコントロールする際の助けになります。日常生活の中でできるケアで、恐怖や緊張をやわらげましょう。

朝日を浴びる

朝、目が覚めたら日光を浴びてみましょう。体や脳が自然に覚醒し、気持ちの良い一日を送ることができます。ただし、強い日光を長時間浴び続けることは、疲労につながるので避けましょう。

食事はバランス良く、ゆっくりと食べる

栄養バランスの良い食事を心掛けることで、気持ちが晴れます。特に炭水化物は、脳のエネルギー源ともいわれています。食べ物をよく噛み、ゆっくりと食事をするようにしましょう。

リズム運動を楽しむ

ウォーキングや軽いジョギングなど、一定のリズムを刻む運動を楽しみましょう。長時間の運動は脳を疲労させるので、適度に休憩をとりながら続けると良いでしょう。

適度な運動は、体力向上だけでなく、脳内快感物質(エンドルフィン)の分泌や、海馬の神経細胞新生にかかわる因子の産生を促すことによって、うつ等の改善にも役立つとも言われています。

嗜好品を控える

タバコやアルコールは一時的に不安を軽減する効果がありますが、長く続けていると耐性や依存を起こしやすく不安障害にはよくありません。

アルコールは、抗不安薬として処方されるベンゾジアゼピン系誘導体と併用すると、副作用が増強し危険です。飲む場合は併用を避けて、十分な時間を空けてから控えめにするようにしましょう。

また、コーヒーは過剰摂取で不安を増強させることがあるので、やはり控えめにした方が良いでしょう。

規則正しい生活の基本は、食事、睡眠、それと運動です。

これらを正しくすることによって、体内リズムが整い、自律神経内分泌系が安定し、免疫力が向上します。身体が健康になると、おのずと不安も和らいでいくものですよ。

これまで紹介した方法のほかにも、

  • 腹式呼吸、筋弛緩などによるリラクゼーション法
  • ヨガ
  • 音楽
  • アロマ

などが気分を落ち着かせるのに役立ちます。体調に合わせて、自分好みの方法を探してみると良いでしょう。

不安障害の多くは、症状が誰でも経験するありふれたもので、内科的検査でも異常がみつからないために、「気のせい」「気にしすぎ」「性格的なもの」などとみなされて、本人も周囲も病気だとは考えないことが大変多いです。

まず、自身の症状は「社会不安障害」という精神疾患で、治療可能なものだということをよく理解してください。そしてできれば、本人だけでなく、家族など周囲の人々にも正しい理解を持ってもらえるとより良く生活できるでしょう。

社会不安障害の家族がいる方へ

最後に、社会不安障害の家族がいる方へのアドバイスをお話しします。

悩みに共感する

患者が不安や恐怖を感じていることに耳を傾け、共感する言葉を掛けましょう。自分に共感してくれる相手には次第に心を開き、悩みを相談してくれるようになります。

問題を解決するためには、ただ一直線に進むだけでは上手くいかないこともあります。相手を大切にするためには、必ずしも積極的な行動は必要ありません。静かにうなずいて、気長に話を聞いてあげましょう。

無理をさせないようにする

不安や恐怖による回避行動は、決して怠けているわけではありません。「頑張れ」などの励ましは、かえってプレッシャーを感じさせ、負担になってしまいます。

また、患者さんが失敗して落ち込んでいるときなどに、無理に外出させることは避けましょう。早く元気になってもらいたい気持ちはわかりますが、相手を思えばこそぐっと堪えましょう。

それとなく受診を勧める

社会不安障害が自分の性格の問題だと思っている患者は、なかなか受診しようという気持ちになれません。患者の悩みをよく聞いた上で、その症状が性格の問題ではなく、社会不安障害という病気の可能性があることを教え、それとなく受診を勧めましょう。

まずは、ご家族や周囲の方が社会不安障害をよく理解し、回避したい社会的状況があるのも無理はないと理解を示してあげましょう。

それから、有効な治療法もあることをよく説明してあげてください。

引きこもらず、無理せず、前向きに!

社会不安障害では、その苦しさと自分への不甲斐なさを呪うあまりに、さらに症状が悪化し、ドツボに嵌まってしまうことが珍しくありません。

無理をして自分の殻に引きこもらず(あるいは、引きこもらせず)、早期発見、早期治療に努めましょう。

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