健康生活TOP 味覚障害 味覚障害は何科が専門?味覚障害の原因からみる病院受診のポイント

味覚障害は何科が専門?味覚障害の原因からみる病院受診のポイント

口をおさえる女性

かつて大手広告代理店の新入社員の女性が過労による自殺と認定され、大きなニュースになった事件がありました。希望に胸を膨らませ入社した若い社員が、自ら命を断つという悲惨な結末に胸が痛みます。

自殺する人の8割にはうつ病が関係しているといわれています。そしてうつ病を判断する兆候の一つが”味覚障害”です。もし今「自分の舌の感覚がおかしい」、「何を食べても味がしない」という人がいたら、大変なことになる前に治療が必要です。

この記事では、味覚障害を自覚したら病院ではどの科を受診したらいいのか?ということを中心に、味覚障害が起こる原因とその裏に潜む恐ろしい病気、セルフチェックの方法や治療法について詳しく解説します。

味覚障害を侮ることなかれ!味覚とは命に関わる情報源

人類の長い歴史からみれば、飽食の時代といわれるのは、つい最近のことです。人間が生きていくために、食べても良いものなのか、食べてはいけないものなのか、を判断するための能力が味覚だといっていいでしょう。

私たちは、体に必要な糖分やタンパク質を甘みや旨みという心地のいい味覚として感じ、酸味や苦味は毒や腐敗したものとして不快に感じることで、食べていいのか悪いのかを判断しています。

味を感じるということは、”食べられるものかどうか”の生きていくために必要な情報を得るということでもあります。

その生死にも関わる重要な味覚の情報を感じなくなるのが”味覚障害”です。味覚障害が起こるということは、人間にとってかなりの緊急事態が起こっていると考えるべきなのです。

味覚は舌だけで感じているわけではない!

味覚障害は単に味を感じる感覚が鈍くなったで済まされる話ではありません。味覚は舌で感じるものと考える人が多いのですが、味覚はもっと繊細なもので、人は五感をフルに活用して味を感じています。

味を感じるのは舌からの直接的な情報だけでなく、見た目(視覚)、臭い(臭覚)、歯ごたえや舌触り(食感)、咀嚼音(聴覚)、刺激感(痛覚)、温感(冷温感)などのさまざまな感覚を総合して判断していることは疑うまでもないでしょう。

例えば、目隠しをして食べ物を食べるゲームをした時、ほとんどの人は何を食べたかすぐに当てることができません。これは味を感じるのは決して舌だけではなく、少なくとも視覚の情報からも味を判断していることの証明です。臭いも同様です。

また、温感に関しても、同じ食べ物でも温かくして食べるのと冷たいまま食べるのでは、味が全く違うように感じると思います。味の成分としては全く同じはずなのにです。

味を感じなくなることは、単に舌が鈍感になっているという程度の問題ではなく、人間が生きていく上でもっとも重要な”食べるという能力”が機能しなくなる緊急事態に他ならないのです。ですから味覚障害を決して侮ってはならないのです。

味覚障害の奥に潜む命にも関わる病気とは?

味覚障害の原因はいくつか考えられますが、命にも関わるかもしれないのが、うつ病が原因となっている場合です。

冒頭にあげた新入社員の過労死事件については、まだ真相が明らかにはなっていませんが、過労死の背景にうつ病が関係していると考えることは、決して不自然ではありません。

日本で年間で自殺する人の数は年間でおよそ3万人もいます。その8割はうつ病が関係していると考えられています。うつ病にもさまざまな症状がありますが、とくに女性に多い症状の一つが”味覚障害”です。

その理由は、男性より女性のほうが味や臭いに敏感だと考えられるからです。女性の方が生きるための本能のようなものが敏感なのかもしれません。

味覚障害が起こるということは、生命を維持するための本能の部分が壊れている状態だと考えることもできます。

ものを食べても「味がしない」「美味しいと感じない」のであれば、味を楽しむどころか、食べる意欲すら沸かなくなるでしょう。それは生きる意味や目的がなくなったに等しいことなのです。

味覚は人間の本能であり、生きる目的を生み出すものなのです。ですから、うつ病になると味覚障害が起こりやすいのは、生きる意欲や能力が低下したといえるとても危険な状態なのです。

味覚障害に気づき命拾いした大手電機メーカーOLの場合

味覚障害は決して他人事ではありません。厚生労働省のまとめによると味覚障害を発症する人は年間24万人といわれ、その数は年々増加しています。それだけ多くの人が生きる本能でもある味覚に異常が生じているのです。

実際にあった味覚障害を発症した女性の例を一つあげてみましょう。

今から数年前のこと。当時、A子さんは27歳独身で、ある大手電気メーカーの経理部に正社員として勤めるOLでした。

折りしも電気メーカーにも不況の波が訪れ、決算では初の経常損失(赤字)を計上、M&Aやリストラを強化し不況を乗り切ろうという厳しい時代です。

世の中の風潮としても、できるだけ正社員を解雇し契約社員やパート労働者に切り替えようという殺伐とした雰囲気の中、会社としてはどうにかして社員を解雇しようという苦肉の策がとられます。

仕事の量が極端に増やされ、A子さんは毎日のように午前0時を回るまで残業を強いられました。終電がなくなればタクシー代を支払うから、という会社の懐柔策にも乗せられ、連日過酷な長時間労働。月の残業時間は優に100時間を越えていました。

月の残業時間が100時間を越えるというのは、違法な長時間労働で冒頭の広告代理店の過労死事件と同じレベルです。こうした状況が3ヶ月も続いた頃、A子さんに現れた症状が味覚障害です。

A子さんが感じたその症状とは……、

  • 何を食べても美味しいと感じられない
  • 食べ物の味が分からなくなった
  • 大好きだった甘いものが苦く感じる
  • ゴムの塊を食べているような感じがする
  • 口の中に何もないのに渋く感じる

……というような症状で、食べることが苦痛にすら感じるほどでした。 

その後しばらくして、A子さんには、慢性的な睡眠不足の他、頭痛や吐き気、極度の疲労感、集中力の低下、月経不順などさまざまな身体的な不調が現われ、これ以上耐え切れなくなり、会社に辞表を提出したのです。

さて、ここで考えなければいけないことは、A子さんは命に関わるすんでの所で自らの命を守った、ということです。このまま働き続けたら過労死事件と同様、最悪の結末を辿っていったことも十分考えられます。

味覚障害は単なる舌の感覚異常ではなく、”自分の命が危機にさらされている”という体からの危険信号かもしれないのです。

味覚障害の症状は?セルフチェックしてみよう

A子さんの実話にも出てきたように、一般的に味覚障害には次のような症状が現れます。

味覚減退 味が感じにくくなる、味が薄くなったように感じる
味覚消失 全く味を感じない
異味症 しょうゆが苦く感じるなど本来とは別の味がする
味覚過敏 味が濃く感じる
異常味覚 口に何もないのに苦味や渋みを感じる

参照…味覚障害の症状について|厚生労働省ホームページより

こうした症状は味覚障害の典型的な症状です。単なる気のせいだと考えたり、一時的なことだと自己判断することは危険な場合があります。

味覚障害を自己チェックしてみよう!

A子さんの症状を参考に、味覚障害を自己診断するには次の項目に当てはまることがないかチェックしてみましょう。一つでも当てはまる項目があれば、味覚障害の疑いがあります。

  1. 以前は美味しかったものなのに、最近はそう感じない
  2. 食べ物の味が変わった
  3. 味はするが食べ物の美味しさがられない
  4. 口の中に何もないのに苦味や塩味を感じる
  5. 甘味、塩味など特定の味だけわからない
  6. 本当は甘いはずのものなのに、苦みなど違う味を感じる
  7. 食べ物が砂やロウのように感じる
  8. 食べ物の匂いがしない
  9. 何を食べてもまずい

味覚障害の原因は複雑!亜鉛不足と結論づけるのは短絡的

一般的に、味覚異常の原因として最も考えられやすいのは「亜鉛不足」です。固食や偏食、ダイエットなどが原因で亜鉛が不足し味覚異常が起こると考えられるためです。もちろん、亜鉛不足が原因で味覚異常が起こる可能性も十分考えられます。

しかし、東京歯科大学・味覚異常外来の専門医、井上孝医師によれば、亜鉛不足によって味覚障害が起こるのは味覚障害全体のうち2割程度だとしています。

味覚障害の原因の8割は亜鉛不足以外の原因で起こり、原因がはっきり特定できない場合も多いのです。

つまり、味覚障害の原因として代表格のように考えられる亜鉛不足は、味覚障害の原因のあくまでも一つであって、味覚障害=亜鉛不足と短絡的に考えるのは危険なのです。

もしかすると、うつ病のように命に関わるような病気が潜んでいる場合もあります。あくまでも結果として亜鉛不足が原因であればそれで良いのですが、他の病気である可能性も視野に入れた上で、総合的に判断しなければならないということです。

一般的に、味覚障害が起こるのは次のような原因が考えられます。

亜鉛不足 固食や偏食、ダイエットのしすぎ
薬の影響 持病の治療などで服用している薬剤による
老化によるもの 味を感じる味蕾(みらい)が減少する
心の病気 うつ病や精神的な影響による
だ液の分泌不足 口腔乾燥症、シェーグレン症候群など
糖尿病 神経の感覚が鈍くなるため
脳や脳神経の障害 がんや腫瘍の影響による
食品添加物の影響 食品添加物に含まれる化学物質の影響
風邪や花粉症の影響 感冒性味覚障害

参照…味覚障害の原因|武田薬品工業(株)武田健康サイト

味覚障害が起こる原因の中には、風邪をひいて鼻が詰まり味を感じなくなるというような軽度のものもありますが、心の病気や脳腫瘍というような命に関わる原因の場合もあるので、安易に自己判断するのは危険なのです。

料理の味付けが変わった時は、お母さんが味覚障害かも!?

家庭でいつも食べている食事の味が変わったという場合、自分の舌が味覚異常を起こしてしまったのか? と考えても不思議ではありません。しかし、その原因は、料理を作ってくれるお母さんのほうに味覚異常が起こっている場合もあります。

味覚異常は自分自身では自覚できないことも多いのです。料理を作っている人のほうに、味覚異常が起こり食事全体の味付けが変わってしまったということもあり得るのです。

この場合、料理を作っているお母さんなりに味覚異常が起こっていると考え、それを家族や周りの人が指摘してあげなければいけません。

こうしたことは良くあることで、自分に原因があるのか、相手(調理する人)に原因があるのか、判断する上で、間違えやすいので気をつけなければなりません。 

生活習慣が味覚障害につながる場合もある

それ以外にも、生活習慣が原因で味覚障害が起こっている場合もあります。次のような生活習慣を送っている場合は、味覚障害が起こりやすいのでチェックしてみましょう。

□ 外食やコンビニの食事を週に10回以上利用する
□ レトルト食品や缶詰を1日1品以上食べる
□ ご飯を食べずに主菜や副菜だけで済ませることがある
□ スイーツやアルコールを食事代わりにすることがある
□ サラダはマヨネーズやドレッシングたっぷりで食べたい
□ 甘い飲み物を1日3杯以降飲む
□ カレーや四川料理、韓国料理などの激辛料理が大好き
□ こしょうや唐辛子など辛味の強い香辛料をよく使用する

こうした生活習慣が多いほど、味覚障害を起こしやすいといえるので注意が必要です。
 

生活習慣によっても味覚障害が起こりやすくなるのですね。気をつけなければいけませんね……

味覚障害は専門医に相談!何科を受診すべきか

これまで述べてきたように、味覚障害にはさまざまな原因があります。安易に自己診断すると判断を誤ってしまう場合もあります。早めに受診したいところですが、味覚障害で受診する時、何科を受診すれば良いか分からないという人も多いものです。

医師の診察を受ける際には、持病の有無や他の病気の治療中か、などによって受診先を選択する必要があります。

【耳鼻咽喉科】
味覚だけに異常があり他にはこれといった症状がない
【内科】(かかりつけ医)
糖尿病や脂質異常症などの生活習慣病の持病がある
【心療内科(精神科)】【総合診療科】
味覚以外にも体の不調を感じる
【歯科・口腔外科】
虫歯などの治療中である
【味覚外来】
症状が深刻な場合・専門医に診察してほしい

症状や状況に応じてファーストコンタクト(一時受診先)は異なります。一般的には耳鼻咽喉科を受診する人が多いようですが、味覚異常の裏にはさまざまな病気が潜んでいる場合があるため、上記を参考に受診先を選択しましょう。

もしどうしても受診先が分からない場合は、決して放っておかずに、近くのかかりつけ医などに相談することをお奨めします。

味覚障害は1ヶ月以内に治療を!早く治療するほど治りも早い

器質的な原因で味覚障害が起こっている場合、症状が出てから1ヶ月以内で治療を開始すれば8割の人は軽快するようです。しかし症状が出てから6ヶ月以上経ってしまうと、治療を開始しても半数以上は根治が困難な状況に陥るといわれています。

もちろん原因にもよりますが、味覚障害はデリケートな病気なので、放っておくと後々大変なことになりかねません。

味覚に異常を感じた場合は、早めに医師の診察を受けたほうが良いですね!

味覚異常の対処法~コンビニ受診のススメ~

味覚障害の原因をはっきり特定するのは、なかなか難しいことです。自分では気づきにくく、1つの原因だけで起こっているともいい切れません。複雑な原因が絡み合い症状が起きていることも十分に考えられます。

そこで内科や心療内科、総合診療科など、比較的幅広い病気を扱う病院やクリニックをコンビニのように気軽に受診してはいかがでしょう。

多くの人がいうように亜鉛不足かと思い内科を受診したところ、唾液腺が詰まる病気で手術が必要だったという例もあります。

インターネットが普及してどんな情報でも簡単に手に入る時代ですから、自分で調べればある程度の原因が推測できるかもしれません。しかし、情報ソースに間違いがあったり、素人判断しては危険な場合もあります。

コンビニのように気軽に受診できるかかりつけ医を持つことも大切なのです。

いつまでも美味しく食べるために!味覚障害の予防する5つの心掛け

食べ物を美味しく食べれらることは、健康を維持するだけでなく、生きる喜びやエネルギーを与えてくれるものです。味覚障害を予防するために次のようなことを心掛けましょう。

  1. 毎日こまめにしっかり歯磨き(口の中を清潔にすることが基本)
  2. 時々舌の表面の汚れをガーゼなどで軽く拭き取る(強くこすらないように)
  3. できるだけ多くの食材を食べる(味覚のセンサーを幅広く使う)
  4. できるだけ和食を食べる(和食にはミネラルが豊富)
  5. 食事はゆっくり時間をかけて(早食いをすると口の中の細胞が乱れる)
味覚を維持する努力も必要なのです!

味覚障害は単に味を感じなくなるだけでなく、危険な病気が潜んでいるサインかもしれません。安易に自己判断せず、適切な受診先で治療を受けることが大切です。

キャラクター紹介
ページ上部に戻る