健康生活TOP ダイエット 倹約遺伝子とは?肥満遺伝子検査キットで簡単にわかる太りやすさ

倹約遺伝子とは?肥満遺伝子検査キットで簡単にわかる太りやすさ

腹囲を計測する肥満男性

太りやすく痩せにくい体質を作る、「肥満遺伝子」を持つ人が日本人には多く見られるということが時折話題に上ることがあります。これは食べ物を減らしても痩せにくいところから、「倹約遺伝子」とも呼ばれていますね。

そんな、ありがたくない物が存在しているのでしょうか。残念ながら存在していて、欧米人よりは日本人に多いと言うこともまた事実です。その実態と対策について見てみましょう。

遺伝子検査も思ったより安く手軽に受けられますよ。

肥満遺伝子は1つじゃなく多数ある!メジャーなのはこの3つ

肥満遺伝子、あるいは倹約遺伝子と呼ばれているものは、だいたい50種類ぐらい発見されていますが、実際に研究が進んでいて、大きく肥満に関わっているのは10種類、その中でも特に注目を集めているのは3種類です。

  • β3アドレナリン受容体遺伝子
  • 脱共役たんぱく質-1(UCP-1)遺伝子
  • β2アドレナリン受容体遺伝子

これらは単に遺伝子の一部に変異がこることで痩せにくくなると言う物ではありません。逆に変異があると痩せやすくなると言うものもあれば、筋肉が痩せて見た目の体重が少なくなると言う物もあるのです。

このため、「肥満関連遺伝子」と言う名前で呼ばれることもあります。

この肥満関連遺伝子の中でも特に注目を集めていて、簡易遺伝子検査の対象にもなっているのは3種類がどのようなものなのかを見てみましょう。

メジャーな肥満遺伝子:β3アドレナリン受容体遺伝子

この遺伝子が狭義の「倹約遺伝子」です。β3アドレナリン受容体にノルアドレナリンが結合すると、次にお話しする「脱共役たんぱく質」と言う物質が作られて、筋肉や褐色脂肪細胞で熱が生み出されます。

β3アドレナリン受容体は脂肪細胞に存在しています。その他、骨格筋や肝臓、さらに消化管にも存在していて、基礎代謝に大きなかかわりを持っています。

ところが、この遺伝子に変異が起こっているとノルアドレナリンに反応しにくくなるため、熱が生み出されにくくなります。その結果、消費カロリーが抑えられて痩せにくくなるのです。

これは本来生き物としては優秀な機能で、食べ物が少なくてエネルギーが充分に得られない時でも、体内に蓄えた分を少しずつ使って生き延びられるようにしていたと考えられています。

それが、食べ物に不自由しない社会においては、肥満を生み出してしまうと言う結果になっているのです。

この遺伝子に変異があると、体格によってばらつきはあるものの、基礎代謝の量で約200kcalのエネルギーが節約され、その分体重が減りにくくなっています。

また、この遺伝子変異のある人は内臓脂肪が溜まりやすい、いわゆるリンゴ型肥満の人が多いようです。

メジャーな肥満遺伝子:脱共役たんぱく質-1(UCP-1)遺伝子

β3アドレナリン受容体の所でお話しした、熱を生み出すたんぱく質がこれで、熱を生み出すところからサーモニゲンと言う名前で呼ばれることもあります。これを作り出す遺伝子も肥満遺伝子の1つなのです。

これに変異があるとβ3アドレナリン受容体にノルアドレナリンが結びついても、脂肪を熱に変えることが効率よく行えないので脂肪が減りません。基礎代謝の量では、だいたい100kcalほど低くなり、その分体重が減りにくくなります。

この遺伝子に変異がある人は、余分なエネルギーが皮下脂肪として蓄積されやすく、下半身が肥満する洋ナシ型肥満になりやすくなります。

動物実験レベルですが、このUCP-1の遺伝子に変異がある対象に遺伝子治療を行って、病的肥満の解消を目指せる可能性が示唆されています。この時同時にβ3アドレナリン受容体遺伝子の遺伝子変異に対する治療も試みられています。

人体に対して悪影響がないかどうかはまだまだ未知数ですので、そうした治療が実現するにはまだまだ時間がかかるでしょう。

メジャーな肥満遺伝子:β2アドレナリン受容体遺伝子

最初にお話ししていた受容体とよく似た名前ですが、働きは全く異なります。アドレナリン受容体は全部で9種類あって、それぞれが異なる部位に存在して異なる働きを持っているのです。

β2アドレナリン受容体は呼吸器系や循環器系に存在する受容体です。この遺伝子に変異があるとカロリーの消費が多くなり、基礎代謝で300kcalほど多く消費されます。言い換えれば変異があった方が痩せやすくなる遺伝子なのです。

しかし、これはあまり良いことではないのです。と言うのも、この遺伝子に変異があるとたんぱく質の代謝が早まるため、筋肉が衰えやすくなるのです。

そうなると、見た目にはほっそりした体形になるものの、体脂肪率の高い「隠れ肥満」になりやすくなります。さらに、一定以上筋肉が落ちると、基礎代謝が下がってくるので、今度は肥満の方に舵が切られることになります。

遺伝子変異は遺伝するが形質発現は組み合わせによる

遺伝子変異は親から子へと受け継がれます。しかし、どのような形で受け継がれるかによって、太りやすいとか筋肉が落ちやすいとかの形質が発現するかどうかは変わってきます。

遺伝子については、2個1組あるもののうち、1つずつが両親から引き継がれます。下の図は、両親ともに2個1組の内片方だけが遺伝子変異を起こしていた例です。

親から子への遺伝子変異

ホモ型と言うのは2個とも変異がある場合で、この時は必ず遺伝子変異による形質の発現があります。今回の話題では肥満遺伝子が有効になっている状態ですね。

一方、ヘテロ型と言うのは2個のうち、どちらかに変異がある場合です。この例では両親ともにヘテロ型の変異があります。ヘテロ型の変異ではどちらの親から変異があるものを受け継いだかは関係しません。

そして、幸運にも変異のある遺伝子を受け継がず、変異のない方だけを受け継いだ場合はワイルド型となって、肥満しやすいと言う形質の発現も起こりません。

さて、このヘテロ型ですが、β3アドレナリン受容体遺伝子については、ヘテロ型でもホモ型でも太りやすいと言う形質の発現は起こります。日本人ではホモ型が約4%、ヘテロ型が約30%と、肥満遺伝子が働いている人は全体の1/3に上ります。

一方、β2アドレナリン受容体遺伝子とUCP-1遺伝子では、ホモ型の時にだけ太りやすいと言う形質の発現があり、ヘテロ型では起こりません。

このためどちらの遺伝子についても太りやすい・筋肉が落ちやすいと言う形質発現は日本人の16%にとどまっています。

具体例として、β3アドレナリン受容体遺伝子を見てみると、ワイルド型は64番目のアミノ酸のペアがどちらもトリプトファンで、Trp64Trp型と表現されます。そして、片方がアルギニンに変異したヘテロ型はTrp64Argと表現されます。

さらに、両方ともアルギニンに変異したホモ型ではArg64Argと書かれ、この表現の中にArgが1つでも入っていたら「肥満遺伝子を持っている」と言う状態になります。

これは中学校の理科で習うメンデルの法則ですね。β3は変異ありの方が優性で、β2とUDP-1は変異なしの方が優性であると考えたら当てはまると思います。お子さんと一緒に考えてみるのも楽しいかもですね。

遺伝子変異は「肥満遺伝子検査キット」の通販で調べられる

さて、こうした遺伝子変異と言う物が存在しているのであれば、自分がどのタイプであるかを知っておくことが、健康管理の上でもダイエットのためでも有用であることは間違いありません。

また、夫婦の遺伝子タイプを知っておくことで、生まれてくる子供の遺伝子変異の可能性を知っておくこともできますし、子供のタイプを知っておくことで、将来の肥満に備えることもできますね。

さて、このように役に立つことが期待される遺伝子検査ですが、なんだか大変な作業のように思えますね。でも、実際には実に簡単で、値段もすごく高いと言うことはありません。

検査会社にもよりますが、だいたい1人の検査で5,000円から10,000円くらいです。通販で申し込んで、送られてきた検査キットに入っている綿棒のような物で頬の内側をこすり、それを検査会社に返送するだけです。

1か月以内には検査結果と、生活のアドバイスやレシピブックなどが送られてくるでしょう。検査結果以外の付属品は会社ごとに異なります。ネットで「肥満遺伝子 検査キット」で検索すれば、様々なものがヒットしますから参考にして下さい。

多くの会社は、未成年者が対象であっても、親権者の同意書を添付すれば検査は行ってくれるようですが、中には未成年者を対象から外しているケースもありますので、説明をよく読んで申し込んでください。

遺伝子の変異はどうだった?結果によって異なるダイエットの方法

検査の結果によってダイエットの指針がみえてきます。それぞれ次のように生活習慣をかえることが必要になります。

β3アドレナリン受容体遺伝子がホモ型またはヘテロ型で変異している

β3アドレナリン受容体遺伝子がホモ型またはヘテロ型で変異している場合には、どちらかと言うと糖質で太りやすいタイプです。ですので、生活習慣病予防には糖質制限が有効になるでしょう。

UCP-1遺伝子がホモ型で変異している

UCP-1遺伝子がホモ型で変異している場合は脂質の代謝が上手く行っていないことが多いので、脂質を抑えた食生活がお勧めです。脂質はカロリーが高いので、上手く抑えると体重の減りも早いでしょう。

β2アドレナリン受容体遺伝子がホモ型で変異している

β2アドレナリン受容体遺伝子がホモ型で変異している場合には、筋肉が落ちやすいのでたんぱく質をしっかり食べる食生活が必要です。太ったからと言って脂肪を避けるためにお肉や魚を減らすと、余計に肥満します。

そして、同時に複数の遺伝子変異があることもあり得ます。そうした場合には、慎重に食べ物の組み合わせを考えることが重要になりますね。

でも、少し考えてみると、糖質と脂質を減らす方向で、同時にたんぱく質を減らさないと言うのはダイエットの基本ですね。そして、これは、3つの遺伝子に全部変異があった場合にも有効なのです。

遺伝子の変異を知る上で重要なのは、どれか1つか2つの変異があった場合に、誤った方向でダイエットすると失敗すると言うことなのです。

例えば最近流行だからと言って、一所懸命糖質制限を頑張ったとしても、UCP-1遺伝子に変異があった場合、糖質を抑えるために脂質を摂ったのではかえって太ってしまいます。

ですので、そうしたすれ違いをなくすために、自分の遺伝子タイプを知っておくことは有効なのです。

さらに、これが一番問題なのですが、検査してみたら、全く遺伝子に変異が見つからなかった場合です。それにもかかわらずBMIは25.0kg/m2を超えているし、体脂肪率も30%を超えていたなんてケースもあるでしょう。

これは、それまでの生活習慣・食習慣にかなりの問題があったか、全く別の疾患が隠れているなどの可能性があります。しっかり自分の生活を見直すきっかけにしてください。

見た目の肥満が起こる病気もありますので、生活習慣にも遺伝子にも問題がなければ、一度病院で相談してみることが良いと思います。

痩せられないのを遺伝子のせいだけにしてはいけない

さて、ここまでは遺伝子の変異によって痩せにくいと言う現象が起こるお話をしてきましたが、実は遺伝子に変異があっても、ダイエットにはあまり影響しないと言う研究もあるのです。

特に若いうちには遺伝子よりも生活習慣の方が重要になるかも知れません。

適切なダイエットに遺伝子変異は影響しないかもしれない

遺伝子に変異があると太りやすいのは確かですが、ではダイエットしても痩せにくいと言うことはあるのでしょうか。もちろん変異があった場合に、それに合わせたダイエットは大変有効であると思われます。

でも、遺伝子変異の有無を知らずに、一般的に正しいとされるダイエットを行った場合にはどうなるでしょう。大規模研究ではありませんが、東北大学大学院が行った研究がありましたので紹介しましょう。

β-3アドレナリン受容体遺伝子変異の有無と介入前後の各因子の変化との関連を評価した結果、

体重、内臓脂肪面積、空腹時血糖値、糖負荷後2時間血糖値、ヘモグロビンA1c値、アディポネクチン値、8-イソプロスタン値

のいずれの変化量も、遺伝子多型とは関連していませんでした。

例えば、介入前後の体重の変化は、変異あり群で平均-2.5 kg(95%信頼区間;-3.6, -1.3)、変異なし群で平均-1.9 kg(95%信頼区間;-2.7, -1.1)で、統計学的に有意な差はみられませんでした。

体重の減少は、むしろβ-3アドレナリン受容体遺伝子変異があるグループの方で大きくなっていました

このように、遺伝子変異とダイエット効果の間には関係が見られなかったと報告されています。変異があった方がむしろ体重が減っていたと書かれていますが、統計的に有意ではないと言うことなので、差はなかったと見るべきでしょう。

大切なのは正しいダイエットの方法

この研究ですが、実は対象となったのは糖尿病型ではなく、がん、心筋梗塞、脳血管疾患、腎疾患の既往もない健康な成人で、糖尿病予防教室に参加された人たちだったのです。

但しBMIは23.0kg/m2以上と、普通体重であっても標準体重よりは4.5%以上重く、場合によっては肥満度1くらいの人もおられたかもしれません。

言い換えれば、自分の体形がややぽっちゃり系から肥満体形であることを意識していて、健康に対する意識が高く、糖尿病教室で指導された内容を実践できた可能性が高い人たちと言うことになります。

この教室では参加者に対して個別教育を行ったとありますから、体重や生活習慣の聞き取りなどから、改めるべき点を指導されたのでしょう。

つまり、適切な指導の下に、それにしっかり従ったダイエットを行った場合、遺伝子変異があろうとなかろうとダイエット効果に差は出ないと言うことが示されたと言うことなのです。

このことはつまり、痩せないのを遺伝子のせいにできなくなったと言うことですね。正しくダイエットすれば誰でも痩せられると言うことです。

どこの自治体や医療機関でも、こうした教室は随時開かれていますから、ダイエットしたい人は参加してみるのも良いのではないかと思います。

こうした教室に参加して勉強し、それに基づいてダイエットしようと言う意識を持てた段階で、ダイエットは半分成功したような物なんですね。

肥満は遺伝子的にも他の病気と関わっている可能性がある

さて、これまでお話しした「肥満遺伝子」はβ3アドレナリン受容体遺伝子を中心に3種類だけでした。しかし、最初に「大きく肥満に関わっているのは10種類」と書きました。

残りの7種類についても見てみましょう。ただ、安価な遺伝子検査では対象になっていない物ですので、大まかな説明にとどめておきます。

変異があったら太るとは限らない

β2アドレナリン受容体遺伝子がそうであったように、遺伝子に変異があった方が消費カロリーが増えるものも結構存在していて、実はβ2アドレナリン受容体遺伝子を含んで5種類は変異がある方が痩せるのです。

残りの5種類は変異があると太りますので、半々なんですね。でも、β2アドレナリン受容体遺伝子のように筋肉が痩せてしまうものもありますから、必ずしも遺伝子変異は良いこととは言えないのです。

まずは全体像を見て頂きましょう。

略号
英名
日本語名 変異があると 主な働き 主な関連疾患
FABP2 脂肪酸結合
タンパク質2
太りやすく
なる
細胞内の
脂肪酸恒常性
の維持
脂質酸化
糖尿病
RAGE 糖化最終産物
受容体
太りやすく
なる
炎症反応に関係 糖尿病性腎症
TNF-β リンフォトキシン 太りやすく
なる
脂質代謝
炎症
神経伝達
PPARγ2 ペルオキシソーム
増殖因子活性化
受容体γ2
痩せやすく
なる
脂肪細胞の分化 糖尿病
動脈硬化
SUR スルホニル尿素
受容体
痩せやすく
なる
インスリンの
分泌促進
糖尿病
Kir6.2 ATP感受性
カリウムチャネル
Kir6.2
サブユニット
痩せやすく
なる
インスリン
分泌促進
新生児糖尿病
アンジオ
テンシノーゲン
痩せやすく
なる
血圧上昇作用 高血圧

画面幅の関係で改行が見にくくなっていると思いますがご容赦ください。

太りやすさや太りにくさは病気と連動しているかもしれない

このように、肥満に関連する遺伝子は、糖尿病や高血圧など、肥満に関連する病気の原因遺伝子である場合も存在しています。

つまり、こうした遺伝子に変異があると、太ったから病気になるのではなくて、太ることと病気になることが同時に起こっている可能性があるのです。

もちろん、痩せやすいとか太りにくいと言う体質の人にも同じことが言えます。基本的にやせ体質でBMIが18.5kg/m2に届かないと言う人も、様々な生活習慣病には警戒しておいた方が良いですね。

一方、遺伝子が原因なら生活習慣を改めても効果がないと考えてはいけません。なぜなら、単純に遺伝子とは関係なく、悪い生活習慣から生活習慣病が起こっている要因の方がずっと多いと言って問題ないと考えられるからです。

ですので、もし遺伝子検査を受けて変異が認められた場合には、それぞれに合った生活パターンが紹介されると思いますので、それを参考に健康的な食生活を送って下さい。

一方、全く変異がないのに肥満気味、やせ気味の人は食生活を中心にした生活習慣に大きな問題があると思われます。一度ゆっくり生活習慣を見直しましょう。

遺伝子のせいでダイエットが上手く行かないと言うことはあり得ますが、実際のところ遺伝子が悪さをしている分はそれほど多くないんじゃないかと言う気もしています。

遺伝子変異が影響を及ぼしてくるのは中年以降かも知れない

このように遺伝子の変異が太りやすい体質を作るのは間違いありませんが、一方で正しいダイエットをしている人や、しっかりした運動習慣がある人では、遺伝子変異による肥満は見られないと言う研究結果が多く報告されています。

女性のアスリートの場合などは、むしろ無酸素運動の部分で、変異型の人の方が優れたパワーを出せると言う結果も見られています。

一方で、運動習慣が減ってくる40代になると、多くの人がこの遺伝子変異による肥満と言う現象に直面するようです。

ですので、年齢に関係なく適度な運動習慣と正しい栄養を心がけてさえいれば、遺伝子変異による肥満に悩まされることはほぼないと言って良いと考えられます。

気になる人は、通販を利用して簡易検査を受け、自分に合ったダイエット法をつかんでおくことも悪くないでしょう。また、そのデータは何かの病気で受診する際にお医者さんに見せると、役に立つ場合もあるかもしれませんね。

キャラクター紹介
ページ上部に戻る