健康生活TOP 糖尿病 糖尿病の原因となる遺伝的要因と環境的要因、決定打はどっち?

糖尿病の原因となる遺伝的要因と環境的要因、決定打はどっち?

糖尿病とひとくちに言っても、いくつかの類型があります。今回お話しするのは、最も多いタイプとして知られる2型糖尿病です。これは生活習慣病であると同時に、長期的には危険な合併症を伴う病気です。

この糖尿病を発症する要因は、果たして遺伝なのでしょうか、あるいは環境因子によるものなのでしょうか。もちろん双方とも要因には違いないのですがですが、その比重について見てみます。

糖尿病になりやすい体質はほぼ確実に遺伝する

糖尿病自体が遺伝だけで発病するかどうかという点に関しては「遺伝しない」と言ってもいいでしょう。最も遺伝性に近い形の発症様式を持つ、難病指定されているMODYと言う病気ですら「家族性若年糖尿病」と言う名前で、遺伝性ではなく家族性となっています。

MODYは責任遺伝子も多数判明しているので、遺伝性に近いものですが、家族性と命名されている場合、遺伝に依らない部分が残されている可能性もあるのです。

一方、「他の条件が揃った場合、2型糖尿病が発症しやすい体質」については、ほぼ確実に遺伝します。親兄弟や祖父母、おじおばに糖尿病の人がいる場合、生活習慣に注意することが特に重要になります。

2型糖尿病では糖尿病の家族の存在がリスク要因になる

先に紹介したMODYの研究を行っている、とある研究者はその論文で「糖尿病は遺伝素因が濃厚だが、生活環境因子も複雑に関係する」と指摘しています。

つまり、糖尿病にかりやすい体質は遺伝するけれど、発病には生活習慣などが深く関係しているということです。

鈴鹿回生病院の本田まり博士(※)らの研究によると、糖尿病や境界型を含めた耐糖能異常の患者は、半数以上に糖尿病の家族歴があったとしています。

(※:2010年11月の論文発表当時。2011年4月から神戸女子短期大学 食物栄養学科 准教授)

これは、この病院で2年間に栄養指導を受けた人を対象にした統計的研究ですが、栄養指導はさまざまな病気に対して行われます。その中で、やはり耐糖能異常で指導を受けた人が過半数になっています。

第2位は脂質代謝異常だったそうですが、そのボリュームは耐糖能異常の半数以下である24%でした。

耐糖能異常の人の中で、家族に糖尿病の人がいた割合は、およそ61.3%に上っていますので、家族に糖尿病の人がいることは、糖尿病の大きなリスク要因になると見てもいいでしょう。

(参照:糖尿病の家族歴と耐糖能異常,肥満との関連|医療法人斎寿会 鈴鹿回生病院 健康管理センター係長 本田まり博士ほか)

家族歴があっても必ず糖尿病になるわけではない

さて、上で紹介した研究では、家族歴が大きなリスクになることは判りましたが、その数値をそのまま採用しても、38.7%程度の人は、家族歴無しで耐糖能異常を発症しています。

つまり、家族に糖尿病患者がいないからと油断していると、足元をすくわれかねないということが、如実に現れているのです。

では具体的に、家族歴のあるなしでどのくらいリスクが上がるのでしょうか。JPHC Studyで行われた、およそ29,000人に対する10年間にわたる追跡調査の結果、家族歴がない人に比べて、ある人では女性で2.7倍、男性で2.0倍のリスク上昇が見られました。

(JPHC Study:多目的コホートに基づくがん予防など健康の維持・増進に役立つエビデンスの構築に関する研究)

そして、この10年間で糖尿病を発症した人は1,200人弱です。つまり、およそ4.1%の人が新たに糖尿病になったというわけですね。

このことは家族に糖尿病の人がいる場合、糖尿病リスクが高まることを示していると同時に、家族に糖尿病の人がいても必ず糖尿病になるわけではないことを示しています。

やはり、2型糖尿病には遺伝的な要因が関係していました。だからと言って、家族に糖尿病の人がいないから大丈夫と、タカをくくっていると痛い目を見るということですね。

2型糖尿病は生活習慣病であることを忘れてはならない

2型糖尿病は生活習慣病です。つまり悪い生活習慣によって発症する病気だということです。なので、家族歴も念のため注意しておいたほうが良いですが、それ以前に、悪い生活習慣を持たないようにすることが重要です。

生活習慣にも色々ありますが、それぞれについて見てみましょう。

飲酒喫煙は糖尿病の大きなリスク要因

生活習慣の中で、家族歴を凌駕するほどのリスク因子は、女性における喫煙です。男性でも喫煙は糖尿病のリスク因子ですが、女性ほど高くありません。

女性では1日に20本以上吸う人の場合、たばこを吸わない人に比べて、糖尿病リスクは3.0倍に上昇します。ですので、糖尿病が気になる女性は決してたばこを吸ってはいけません。吸っている人はすぐに止めましょう。

男性については、吸わない人に比べてのリスク上昇は1.4倍にとどまっています。しかし、リスクが上昇しないわけではありませんから、やはりたばこは避けておいたほうが良いですね。

一方、飲酒については男性だけがリスク上昇の要因とされています。1日に日本酒1合相当以上のお酒を飲む人は、お酒を飲まない人に比べて1.3倍糖尿病にかかりやすくなっています。

なぜ女性ではお酒がリスク要因にならなかったのかと言うと、対象になった16,000人ほどの女性の中に、日常的な飲酒習慣を持つ人がほとんどいなかったため、統計的に明らかなデータが得られなかったためなのです。

糖尿病リスクから見た場合痩せ型男性の飲酒が最も危険

男性の飲酒習慣を体型別に3分類して、糖尿病リスクを測るという研究も同時に行われています。標準体重であるBMI=22.0kg/m2を基準に、それより低い痩せ型の男性、それよりも多いけれどBMIが25.0kg/m2以下の、普通体型の男性。

そしてそれ以上の肥満体型の男性に分けて、統計的に分析したところ、痩せ型の男性だけが飲酒量にともなって糖尿病リスクが上昇していました。

痩せ型の男性では1日あたり、15度の日本酒換算で約0.85合以下の飲酒量では、ほとんどリスクの上昇が見られなかったのに対し、0.86合~1.70合の飲酒量ではリスクが1.9倍、1.71合以上ではリスクが2.9倍にも跳ね上がっています。

一方、痩せ型ではない体型の男性ではせいぜい1.2倍程度にリスクが上がるだけで、飲酒すればリスクは上がるものの、痩せ型の人のような極端なリスク上昇はありませんでした。

これからの世の中、たばこと酒は時代遅れの産物になるのかも

たばこもお酒も、嗜好品ではありますし個人の楽しみについてまで強く踏み込むことにはためらいもありますが、それでも敢えて「たばことお酒はやめたほうがお得ですよ」と訴えておきます。

ご存知の通り、2020年の東京オリンピックに向けて、飲食店の全面禁煙が取り沙汰されています。厳しすぎるという声も聞かれますが、先進諸国の中で公共の室内で喫煙できる日本は、異常な国という目で見られています。

また、WHOの呼びかけに対応してお酒についても徐々に規制が厳しくなってきます。まだあまり有名とはいえませんが、各都道府県には「アルコール健康障害対策」を担当する部署が次々と新設されています。

厚労省はアルコール健康障害対策推進基本計画の策定から、内閣府よりその担当部署としての責任を引き継ぐようですので、今後はお酒も肩身の狭い嗜好品になるでしょう。

健康のこともさることながら、社会の向いている方向性から考えて、飲まずに済むのであれば、お酒も控えておいたほうが、今後何かと楽なんじゃないでしょうか。

お神酒やキリスト教のワインのように、お酒は宗教と深い関係がありますから、無くなることはないでしょうけれど、ノンアルコールなどに形を変える可能性はありますね。

たばこも元は南北アメリカ大陸の宗教的な存在でしたが、文化の変遷とともに消えかかってますから。

肥満・高血圧・加齢は2型糖尿病の大きなリスク要因

糖尿病と言えば肥満、肥満と言えば糖尿病と言うほど密接な関係が言われていますが、実は肥満が関係するのは2型糖尿病だけで、ほかのタイプの糖尿病では肥満は関係しません。

最初に例で挙げたMODYは、若い痩せ型の人に見られる糖尿病として知られています。一方、最も患者数が多い2型糖尿病は、肥満によって引き起こされることの多い糖尿病です。

肥満は文句なくリスクを上昇させる

肥満が糖尿病リスクになることについて、性差は見られませんでした。肥満は糖尿病のリスク因子であり、肥満の度合いが高くなるほどリスクが上昇する傾向が見られました。

基準値を標準体重(BMI=22.0kg/m2)に取ったのか、普通体重(18.5kg/m2≦BMI<25.0kg/m2)に取ったのかは明示されていませんでしたが、肥満の人の場合BMIが1.0kg/m2増加するごとに17%ずつ糖尿病リスクが増えています。

ですから、糖尿病を予防改善するには肥満の解消が不可欠です。しかし、痩せていれば良いと言うものではありません。

やはりJPHC Studyで行われた、肥満指数と死亡率との関係についての研究によると、男性の場合、40歳~69歳の人の場合、BMIは23.0kg/m2~24.9kg/m2の人で最も10年間死亡率が低くなり、標準体重を含む21.0kg/m2~22.9kg/m2のほうが高かったのです。

肥満度2に当たるBMI≧30.0kg/m2では死亡率は約2倍に増えていますので、やはり太りすぎは良くないのですが、14.0kg/m≦BMI<19.0kg/m2と言う、上限では普通体重に含まれる痩せ型の人は2.2倍と、最も死亡率が高くなっています。

また、女性の場合は肥満度2以上の人と最も痩せ型の人で2倍近い死亡率になっているほかは、統計的に有意な数値が出ていません。

このように、少なくとも普通体重の下限近くより少ない体重では、糖尿病以前に死亡リスクが高まりますから、痩せすぎにも注意しましょう。中年の場合、ベストはBMI=23.0kg/m2なのかも知れませんね。

BMIが23.0kg/m2と言うことは、身長158cmで57.4kg、身長170cmで66.5kgです。太りやすい中年期でも、ちょっと頑張れば維持できそうな体重ですね。

高血圧も糖尿病リスクを高める要因

高血圧というと、糖尿病とは独立したメタボリックシンドロームの要因と言う印象がありますね。あるいは糖尿病になると、動脈硬化が起こって高血圧になるという因果関係が連想されます。

しかし、研究によると男性で1.3倍、女性で1.8倍、糖尿病の発症リスクが高まるのです。これはもしかすると、高血圧を招くような生活習慣が糖尿病を呼び、たまたま高血圧の方が先に症状を表していただけかもしれません。

いずれにせよ、収縮期血圧140mmHg以下、拡張期血圧90mmHg以下を維持するように注意して下さい。糖尿病を発症した場合、降圧目標は130mmHg/80mmHgと少し厳しくなってしまいます。

また、この数値は病院での測定値で、家庭で測る場合には、各々の数値から5を引いたものが基準になります。

加齢は避けられないがそれだけに生活習慣に気をつける

他の様々な病気と同じように、2型糖尿病も加齢が大きなリスク要因になります。1歳年齢が上がるごとに2%ずつ糖尿病リスクが上がることが判っています。これには性差はありません、男女とも同率です。

1歳で2%と言うと「50歳になったらみんな糖尿病になるのか?」と思う人がいるかもしれませんね。でも、それはありません。このデータが得られたのは、40歳から69歳の人を対象にした10年間の追跡です。

そして、10年間の糖尿病発症割合は4.1%で、それには加齢によるリスクが含まれていると見ればいいでしょう。本来の糖尿病リスクは3.4%ぐらいで、毎年その2%ほどが増加したとすれば、10年でおよそ4.1%になります。

ですから、年齢を重ねれば重ねるほど、生活習慣を改善してゆくべきだと考えておくための基礎的な数値だと思って下さい。

1歳で2%と言うのは、元になるリスクの数字に対して2%ということで、人数に対する比率じゃないんです。言葉を取り違えてしまうと、無用な恐怖感に襲われますから、注意してくださいね。

そもそもなぜ2型糖尿病は起こるのか

糖尿病には、主に子供がかかる自己免疫性の病気である1型糖尿病と、生活習慣病である2型糖尿病、そして、妊娠糖尿病やステロイド糖尿病のように、原因が明らかなものもあります。

さらには最初に紹介した難病の家族性若年糖尿病・MODYと言うものもあります。2型糖尿病はその中で最も数が多く、またコントロールはできても完治とは行かない病気でもあるのです。

きっかけになるのはやはり肥満

2型糖尿病は、血糖値を下げる働きを持つホルモンのインスリンは、膵臓にあるランゲルハンス島のβ細胞からちゃんと分泌されているのに、それを受け取る側にトラブルが起こって血糖値が下がらないことから始まります。

これを「インスリン抵抗性」と呼んでいますが、インスリン抵抗性の発現は、脂肪細胞から分泌される生理活性物質が悪さをしているものと考えられています。

脂肪細胞は単なるエネルギーの貯蔵場所ではなく、さまざまな生理活性物質を分泌しています。例えばレプチンというホルモンは、肥大化した脂肪細胞から分泌されます。

このホルモンによって脳の摂食中枢が抑制され食べることを抑えます。また、交感神経が刺激されて、身体のエネルギー産生が増え、蓄積した脂肪を使ってしまおうとする働きも起こります。これは調整機構として上手く働いているパターンです。

一方、肥大化した脂肪細胞からはMCP-1と言うたんぱく質が分泌されます。このMCP-1は毛細血管から単球という最大の白血球を呼び寄せる働きを持っています。

呼び寄せられた単球は、マクロファージに姿を変えて脂肪細胞の周りに集まり、TNF-αと言う物質を放出します。TNF-αは、本来がんを攻撃する抗腫瘍因子なのですが、インスリン受容体に働きかけて感受性を下げる力も持っています。

TNF-αは、血流に乗って全身に運ばれ、全身の細胞でインスリンの働きを弱めてしまうことで、いつも血糖値が高い状態を作り出してしまいます。これが糖尿病の引き金になるのです。

同じように、肥大化した脂肪細胞から分泌されるものに、レジスチンという物質もありますが、これもまた、同じようにインスリン抵抗性を発現させてしまいます。

さらに、肥大した脂肪細胞からは中性脂肪から脂肪酸が遊離して、遊離脂肪酸という形で大量に分泌されます。この遊離脂肪酸も同じようにインスリン抵抗性を生みます。

内臓脂肪のほうが悪い脂肪細胞と言える

皮下脂肪と内臓脂肪を比較した場合、メタボリックシンドロームの基準になるのは内臓脂肪のほうです。これは内臓脂肪のほうが、さまざまな病気の原因になると考えられているからです。

上でお話した、肥大した脂肪細胞が放出する、インスリン抵抗性を生む様々な物質は、ほとんどが内臓脂肪によって分泌され、皮下脂肪からはそれほど分泌されないのです。

ですから、いわゆる男性型肥満と言う、腹囲が大きくなるタイプの肥満は、糖尿病の原因になりやすいといえるのです。

また、お酒をよく飲む人では、脂肪肝の原因にもなる中性脂肪の合成が進みます。こうした中性脂肪は内臓肥満の原因にもなりますから、やはり糖尿病を引き起こすでしょう。

(脂肪肝の脂肪は内臓脂肪ではありません。内臓脂肪とは腸(腸間膜)に付着蓄積した脂肪のことです。)

喫煙は、活性酸素の発生や、ニコチン・タールなどの毒性物質の刺激で、炎症性の物質を生み出します。TNF-αなども炎症性の物質ですし、炎症性の物質はインスリン抵抗性を生みます。

とどのつまり、糖尿病リスクを上昇させる因子は、多くの場合インスリン抵抗性を生み出す物質であると言って良いでしょう。

高血糖は糖尿病を悪化させるのでどこかで断ち切る

インスリン抵抗性によって血糖値が高い状態が続くと、血管が傷んで動脈硬化を起こしたり、腎臓が傷んで腎不全になったり、網膜が傷んで糖尿病性網膜症になったりしますが、インスリンを分泌する膵臓自体も傷んでしまいます。

そうなると、インスリン自体の分泌量が下がってしまって、さらに糖尿病が悪化します。最悪の場合、インスリンの分泌量が確保できず、インスリン自己注射を一生続けざるを得ない状態になることもあります。

それを防ぐには、まず血糖値を下げることです。それには内服薬でも、インスリン自己注射でも、糖質制限でも、カロリー制限でも、なんでも良いので、お医者さんと相談しながら短期的に一定レベルまで下げてしまいましょう。

そうすることで膵臓の機能を回復させ、インスリンの分泌量を確保するわけです。その上で、外せるものから順次お薬などを減らしてゆけば良いのです。

2型糖尿病の入り口はインスリン抵抗性で、そのほとんどが肥満によるものです。注意しなければいけないのは体重は普通体重で体脂肪だけが多すぎる、いわゆる「隠れ肥満」ですね。

2型糖尿病のリスクは環境因子こそが主役

このように、2型糖尿病というのは「インスリン抵抗性に始まる高血糖」が引き金になります。それが持続的な糖尿病になるかどうかには遺伝的な要因が関わることもあります。

それがよく分かるのは、西洋人でたまに話題になる「体重数百kgの巨大な人」です。アジア人ではあのレベルの肥満になる前に糖尿病になって痩せてしまうのは確実です。

遺伝的な因子で「糖尿病にならずに肥満し続ける」と言うと言う可能性を、あのように巨大な肥満体を持っている人は示しています。

言い換えれば、もし日本人で糖尿病に関する遺伝的な因子が、西洋人と同じである人がいたら、野放図な食生活を送っていると、あのように巨大な肥満体になりうるということなのです。

ですから、糖尿病に「遺伝だから仕方がない」はありません。普段から適切な栄養と運動、そして悪い習慣を捨てることを意識しておいて下さい。
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