健康生活TOP 糖尿病 糖尿病の血液検査で使うHbA1cは低いほど良いわけではない!

糖尿病の血液検査で使うHbA1cは低いほど良いわけではない!

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HbA1c、赤血球の色素が糖と結びついてできる物質で、過去1~2ヶ月間の血糖値の傾向を示すことから糖尿病の診断や、コントロールの良否を示す指標として使われています。

人間ドック学会の基準値では5.5%以下が正常、6.5%以上が異常、その間が要注意となっています。糖尿病はそれ自体はそれほど怖くないのですが、合併症が問題なんですよね。

ここで説明するまでもなく、心臓や脳の血管障害、網膜症による失明、腎症による人工透析導入、壊疽などによる下肢の切断など、生命に係りかねない怖い合併症がいっぱいです。

ですので、これまでHbA1cは低い方が良いとされてきたのですが、新たな研究によると、低くても脳や心臓に関する病気が現れてくることが見つかりました。

日本国内での研究によって明らかになった意外すぎる関係

国立がん研究センターの予防研究グループによる、日本人およそ3万人を対象にした研究によって、HbA1cと心血管疾患(ここでは脳卒中と虚血性心疾患を合わせたものとされています)との関係が、統計的に明らかになりました。

HbA1cが高い、つまり糖尿病的な状態であることは心血管疾患の大きなリスクファクターであることは、もはや日本中が知っている事実なんじゃないかと思います。そこで、その傾向を詳細に調べようとしたんですね。

HbA1cが5.0%未満で心血管疾患の確率が5割増に

心血管疾患とは、心臓病と動脈硬化や動脈瘤などの血管疾患を合わせたものです。グラフには脳梗塞や脳出血も示されています。ですので、脳卒中も血管疾患としてカウントしているのでしょう。

その心血管疾患について、HbA1cが正常基準値以下である、5.0%~5.5%の人の持つ心血管疾患リスクを1.0として比較した場合、5.5%~6.0%で1.01、6.0~6.5%で1.04と、要注意範囲であってもほとんどリスクは増えていませんでした。

しかし、異常とされる6.5%以上の人は1.77、糖尿病であると判っていた人で1.81といきなりリスクが高くなっていたのです。しかしながら、ここまでは、従来考えられていた傾向を裏付けしたにすぎません。

実際に意外だったのはHbA1cが5.0%未満の人です。実にこの範囲の人の場合、正常範囲の人を含むにもかかわらず、心血管疾患全体で1.5と言う高いリスクがあることが統計的に得られました。

現在病院の血液検査でよく用いられる高速液体クロマトグラフィ法による測定の場合、4.6%から6.1%を正常範囲としているところも多いようですから、正常範囲の下の方の人もリスク上昇のグループに含まれると言うわけです。

虚血性心疾患はこれまでの常識通りの傾向だった

より詳細に分析したグラフを見てみると、さらに意外なデータが読み取れます。まずは虚血性心疾患、つまり心筋梗塞に代表される心臓病ですが、これには意外性はなく、ほぼ従来の感覚通りの傾向を示しています。

つまり、HbA1cが高いほどリスクが高まっていると言うわけです。実際には5.0%未満で、リスクは1.2くらいとやや高まっているものの、データのばらつきが多いため誤差の範囲と言っていいでしょう。

そして、5.5%~6.0%の人ではほとんどリスクは増えず、6.0%~6.4%で1.4くらいでした。そして6.5%以上、あるいは糖尿病であると判っていた人のリスクで1.9くらいになっていました。

虚血性心疾患より脳卒中の方に意外な関係があった

脳卒中の方は脳梗塞と脳出血に分けて分析されています。脳の血管が詰まることで起こる脳梗塞と、脳の血管が破れて起こる脳出血では、原因や病態、治療などに差があるから分けたのでしょうね。

まず、最近多くなっている脳梗塞です。この場合、HbA1cが5.5%~6.0%、6.0%~6.5%と言う、基準グループよりは高いものの、正常範囲の中にいる人ではほとんどリスクが上昇しませんでした。

しかし、6.5%以上の人や糖尿病であると判っている人になると、いきなり2倍以上、2.2~2.3くらいのハイリスクであることが判ったのです。やはり血糖値が高いことはそれだけで血管を痛めつけ、脳梗塞の原因になることが裏付けられました。

しかし、一方でHbA1cが5.0%未満の人の場合、基準グループより1.5倍も脳梗塞を起こしやすくなっていたと言うデータが集まったのです。しかもデータのばらつきも少なく、リスク上昇は確実に見えます。

脳出血に至ってはHbA1cが低いグループが最も危険

さらに意外なデータは、脳出血にありました。脳出血は日本人の死因の4.7%を占める重病です。脳梗塞や他の脳血管疾患と合わせた脳卒中は、日本人の死因の第3位となっています。

もともと昭和の時代には日本人の死因のトップだったのですが、昭和の終わりから平成にかけて、3位に後退、がんと心臓病が一つずつ順位を上げて現在に至っています。

この脳出血ですが、基準グループと一つ高い値、5.5%~6.0%の間にはほとんどリスクの差はありませんでした。また、ほんのわずかですが、6.0%~6.5%のグループでは0.8~0.9程度とリスクが下がっていると言う結果が出ました。

そして、6.5%以上や既に糖尿病である人においても1.2前後と少しリスクが高まるだけだと言うデータが得られました。

一方、HbA1cが5.0未満のグループでは脳出血のリスクは1.7程度に跳ね上がっていたのです。

低い血糖値が心血管リスクを上昇させることはない

高血糖が血管壁を痛めつけ動脈硬化を起こし、ひいては心血管疾患に繋がると言うことは、このデータでもはっきり表れています。ならばなぜ低い血糖値の人の間で脳卒中が増えたのでしょう。

この研究からはその答えを導くのに十分なデータは得られません。それでも研究グループはいくつかの仮説に基づいた分析を行ったようです。

判ったのは『低HbA1cも心血管疾患のリスク』と言うことだけ

研究グループは、まず随時血糖値を統計的に調整して血糖値の変動の影響を取り除きました。しかし、低HbA1cのリスク上昇はみられたままでした。

肝硬変や慢性腎不全でもHbA1cが実際の血糖値を反映しないことがあるので、そうした人を解析対象から外しましたが、それでも結果は一緒です。

さらに、栄養障害でHbA1cが低くなっている可能性もあったので、摂取カロリーが少ない人やBMIが低い人も除外しましたが結果に変わりはありませんでした。

研究グループが出した結論は、赤血球の寿命が短いとか、若い赤血球が血液中に多くなっているとかの原因で、見掛け上HbA1cが低くなっているのではないかと推定しています。

ですので、原因は解明されないままですが、これまで正常範囲とされていた部分であっても、5.0%未満の低HbA1cは心血管疾患のリスクを示すマーカーになりうると結論付けています。

女性は特に注意?考えられる対策と注意した方が良い事

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ここからは筆者の推定による部分も含まれますが、基本となるデータはきちんと知られた物の組み合わせですので、参考にして頂けると嬉しいです。

特に女性の方には気にかけておいて頂けると良いかもしれません。

血液が減ると回復過程でHbA1cが下がる

HbA1cと言うのは、赤血球の中のヘモグロビンと言う赤色のたんぱく質が、血液中の糖分と結びついてできる物質の一つです。赤血球は人間の細胞の約1/3を占めるほど数の多い細胞ですが、寿命は約4か月です。

ですので、産まれてすぐの赤血球の中にあるヘモグロビンは、血糖値が高くても、まだあまり血糖と結びついていません。一方、寿命間近の物の場合、可能な限り糖と結びついていると言うわけですね。

私たちが血液検査で測っているHbA1cは、その平均値になると言うわけです。ですから、例えば大量に出血した場合、糖と結びついたヘモグロビンも失われるため、そこから回復する過程で若い赤血球がうんと増えると言うことになります。

そうなってくると、血糖値は高いのに見掛け上はHbA1cが低く出てしまうんですね。けがなどは一過性のものですが、女性で生理が原因で貧血を起こすくらいのレベルになると影響は出てくるでしょう。

鉄欠乏性貧血はHbA1cに影響を与えやすいので要注意

また鉄欠乏性貧血でもヘモグロビンの不足が起こりますから回復過程で似たような現象が起こります。ですので、貧血であった方はHbA1cが低く測定されているにもかかわらず、高血糖で血管を痛めている可能性は出てくるのです。

何かの検査で「空腹時血糖は高いのにHbA1cが低い」と言う結果が出たら、貧血がある場合必ずそのことをお医者様に伝えて診断を受けてください。

また、鉄欠乏性貧血が現在進行形の方は、ヘモグロビンの入れ替わりが遅くなりますから、逆にHbA1cが高く測定されがちになります。いずれにせよ貧血の方は糖尿病検査では事前に申告しておきましょう。

ヘモグロビンによって影響が出ると判断された場合、グリコアルブミン(GA)や1,5-アンヒドロ-D-グルシトール(1,5AG)と言う別の検査項目で糖尿病の診断も可能ですので、こうした申告は重要です。

他の病気がある場合はその治療が優先です

先にお話しした通り、肝硬変や慢性腎不全があるとHbA1cは低く測定されます。しかし、もともとその病気の方がよほど治療に急を要するわけですから、そちらの治療に専念なさってください。

もちろんお医者さまにかかっておられるはずですので、HbA1cへの影響はお医者さまの方で考慮に入れてくださると思います。

食生活から見る対応策はお肉を食べること

HbA1cとのデータ的なつながりはありませんが、別の研究で飽和脂肪酸と心血管疾患についての関係を、同じ研究グループが研究したものがあります。

それによると、飽和脂肪酸を多く摂っている人は、心筋梗塞になりやすいと言う結果が出ています。しかし、その一方で飽和脂肪酸の摂り方が少ないほど脳卒中になりやすいと言うデータも得られたのです。

つまり、飽和脂肪酸は多すぎても少なすぎても身体に悪いと言うことですね。

本研究と過去の日本や欧米で実施されたいくつかの研究を総合的にみると、脳卒中並びに心筋梗塞の発症リスクが低いのは、飽和脂肪酸の摂取量が1日に20g前後の集団と考えられます。

そのような人の食事を今回の研究で用いたアンケート調査結果に当てはめてみると、たとえば牛乳を毎日コップ1杯(200g)、肉を2日に1回(1回につき150g程度)の摂取でした。

つまり、「肉は身体い悪い」とか「牛乳はダメ」とかと言って敬遠しているのは、「お肉大好きでそればっかり食べる」と言うのと、大して差がないと言うことなんですね。ほどほどに食べましょう。

食生活の癖と心血管疾患への影響

この飽和脂肪酸のデータは、HbA1cのデータとは何のかかわりもありませんが、実際の生活においてはどうでしょう。お肉が大好きで油ものも大好きと言う人は、糖尿病になりやすい食生活を好むようなイメージがありませんか?

一方、その逆でお肉や乳脂肪を敬遠するような人は、糖分や総カロリーも少なめで、HbA1cが低くなるような生活を送っているような印象を受けます。

これは飽くまでイメージですが、とどのつまり両極端は同じくらいに生命を危うくする病気になりやすいと言えると思います。良い食生活ってどんなものか、もう一度考えてみませんか。

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