健康生活TOP 糖尿病 超微量ミネラルのバナジウムは糖尿病改善に効果があるのか?

超微量ミネラルのバナジウムは糖尿病改善に効果があるのか?

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バナジウム、少し前から健康に良い影響がある超微量要素として、ミネラルウォーターなどに含まれていることが話題になっていますね。

特に糖尿病の予防改善に効果があると期待されているバナジウム、果たして効果のほどはいかがなものでしょうか。

バナジウムとはいったいなにか?金属元素バナジウムのパワーとは

バナジウム、何となく周期律表の後ろの方に並んでそうな、重くて難しく特別な元素のようなイメージがありますよね。でも、実際はチタンの次、クロームの前、原子番号23と言う比較的前列に座っている軽い金属なのです。

あるいは、原子番号20のカルシウムと原子番号26の鉄と言う、私たちが栄養を考える際に最もなじみが深い二つの元素の、ちょうど中間にいると言っても良いかもしれません。

名前のイメージから放射性物質を連想するかもしれませんが、まったく気にする必要はありません。天然に存在するバナジウムのうち0.25%が放射性同位元素ですが、寿命にあたる半減期はなんと14京年。

宇宙が生まれてから今までの長さの100万倍です。つまり非常に安定した核種であると言うことで、事実上放射能はほとんどないと言っていいでしょう。もちろん残りの99.75%は放射能を持っていない安定元素です。

多分必須栄養素ではありません

バナジウムは今のところ必須ミネラルとはされていません。人間の身体の中にも、骨を中心にわずかながら含まれています。しかし、何のために含まれているのかはまだわかっていない物質なのです。

動物実験によると、ヤギにおいて欠乏症が認められたそうです。厳密にバナジウムを除いた餌で育てたヤギは、妊娠した際に流産率が高まり、乳汁分泌が減ったという実験結果があります。

また、哺乳動物ではありませんが、ニワトリにとっても必要な超微量元素らしいと言う研究報告もあるものの、まだ確定には至っていません。

そして仮に必須栄養素であったとしても、その必要量は一日当たり0.002~0.003μg(2~3ng)ではないかと推定されています。

ある有名飲料メーカーのバナジウム天然水は6.2μg/100mLの含有量だそうですので0.05mL(約1滴)で間に合いますね。

糖尿病が改善した!?

アメリカのテンプル大学が行った、2型糖尿病患者への投与実験によると、一定量のバナジウムを4週間摂った被験者たちは、インスリン感受性が高まり血糖値が下ったと言うことです。

さて、どのくらい摂れば血糖値に良い影響が出たのでしょうか。

先に示したデータではナノグラム(10億分の1グラム)と言う単位が出てくるなど、バナジウムに関するデータは非常に量の範囲が広いので、単位を統一しておきますね。統一する単位はμg(マイクログラム:100万分の1グラム)としておきます。

バナジウムの摂取許容量

テンプル大学の実験で使われた一日の投与量は100,000μg(100mg)でした。これを4週間連続で摂ったと言うことです。

一方、アメリカ農務省の食品摂取基準を見ると、バナジウムの毒性や効能は特定できていない物の、体重68.5kgの人において一日当たり1800μg(1.8mg)を摂取量の上限にするべきだと言う勧告が出されています。

血糖値が下がったという実験では、推定必要量の3300万倍、摂取上限量の56倍にもなる量を1か月間摂っていたわけですが、この実験の範囲では副作用などは観測されなかったようです。

しかし、日本においてはずっと少ない量、160μgを毎日摂っていた人の健康被害が報告されています。アメリカ摂取基準上限量の1/10以下です。

ただ、この人は7年間にわたって飲み続けていたそうですので、ある程度は蓄積して悪影響が出るのかもしれませんね。この人の摂取方法はミネラルウォーターだったそうです。

毎日2Lと言うことですから、8μg/100mLですね。いわゆるバナジウム入りの天然水をうたい文句にするミネラルウォーターとしては平均的な線だと言えるでしょう。

出た症状は難病とされている慢性炎症性脱髄性多発神経炎でした。腕がしびれ、筋力が低下して歩けなくなったそうです。治療で回復したものの、ミネラルウォーターをやめなかったため、すぐに再発しました。

その後、ミネラルウォーターをやめたところ寛解状態(症状が治まった状態)にはなったそうです。

このように、摂取期間の影響や個人差も大きそうですので、どの程度なら摂取しても大丈夫と言う明快な数値はありません。

毒があるの!?バナジウムは大気汚染物質

バナジウムは原油や石炭に多く含まれています。このため、その燃焼によって大気中に放出されることが非常に多い物質です。火山性の地層を通った地下水に含まれることが多いのも同じ理由からでしょう。

現在およそ10万トンのバナジウムが一年間に放出されていますが、自然現象による放出はわずか0.01%、実に99.99%は人間の活動が原因です。

吸い込むと毒!

バナジウムは金属ですから粉じんとなったものを吸い込むと毒性があります。主な症状はぜんそくと皮膚炎、舌が緑色に変色する現象でした。

ただし、これは工場従事者などのような高濃度の環境下におけるもので、普通に生活している限り影響のあるものではありません。

硫酸を作るバナジウムには毒がある

硫黄から硫酸を作る時に欠かせないのが五酸化バナジウムと言う触媒です。この五酸化バナジウムは毒性があるので注意が必要です。

普通の生活の範囲でこれに触れる機会があるとしたら、重油ボイラーから出た燃焼灰の掃除で、トラブルがあって漏れ出た時ぐらいでしょうか。燃焼灰の中には高濃度で含まれます。

でも、作業員が作業ミスで吸い込んでしまって事故になったケースはありますが、一般人がわざわざ食べ物から摂る可能性はほとんどないと思いますので、参考程度の知識にどうぞ。

いまだ有効性は認められていない!?バナジウムの必要性とは

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40年余りにわたって研究が続けられてきていますが、バナジウムが人間にとって必要な物質であるのかはまだ結論が出ていません。

糖尿病に関してよい影響を及ぼす可能性は示唆されていますが、効果が出るのに摂取する必要量が、毒性を示す量と非常に近いか重なっているため、安全性の確立された情報とは言えない状態です。

数値の比較

先に日本の男性がミネラルウォーターでバナジウム中毒になったケースを紹介しました。この男性が飲んでいたミネラルウォーターは8μg/100mL程度の含有量でした。

一方、関西大学の研究によると、水道水のバナジウム含有量は0.5μg/100mLくらいだと言う結果が出ていました。また、普通のミネラルウォーターもせいぜい水道水の10倍程度のようです。

そうしてみると、バナジウム含有を謳っているミネラルウォーターの含有量はかなり多いと言えそうですね。

一方、糖尿病に効果が見られたと言うテンプル大学の実験では100,000μgを4週間摂っています。日本人男性が飲んでいたミネラルウォーターに換算すると1250L分です。

とてもじゃないけれど飲める量ではありませんね。また、糖尿病は慢性病ですので、たった4週間では意味のある数字とは言えません。

健康被害を受けた日本人男性はたった2Lを飲み続けただけで難病を発症してしまったわけですから、効果が出る前に副作用が怖そうですね。

摂取総量を見てみても、4週間の実験で糖尿に効果があったとするデータでは100,000μg×28日ですので、4週間合計で2.8gになります。

一方、健康被害を受けた男性は160μg×365日×7年ですので、合計0.4gあまりです。やはり効果と害の数値がオーバーラップしてしまっていますね。

バナジウム入りミネラルウォーターはメーカーの差別化のためか

ミネラルウォーターの中でも、バナジウムを高濃度で含むものは希少ですから、メーカーが差別化のためにアピールするのは当然でしょう。

また、将来有望なミネラルとして研究者が研究を重ねるのもまた必然と言えます。しかし、残念なことに実態はこのようなものでした。

美味しく飲みましょう

バナジウム入りの天然水で、バナジウムの効果効能で特定保健用食品の指定を受けているものはありません。ですから、メーカーはバナジウムが何かに効くと言って売っているわけではありません。

むしろ、無責任な健康情報が独り歩きした結果、先の男性のようにバナジウムで難病になってしまったと言う被害も出るわけです。

ですから、バナジウムに特段の医療的効果がなくても、バナジウム入りの天然水の値打ちが下がるわけではないのですね。

むしろ、レアな天然水を飲んでいると言う、本来の楽しみを中心に美味しく飲むのが本来あるべき姿だと思いますよ。ただ、飲み過ぎに注意しましょうと言う注意書きは必要かもしれませんけれど・・・。

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