健康生活TOP 皮膚炎 漆(うるし)にかぶれないための対策!漆の木や葉を見分けるポイント

漆(うるし)にかぶれないための対策!漆の木や葉を見分けるポイント

森でハイキングする家族

漆かぶれと言うアレルギー性の接触皮膚炎ですが、最近ではあまり話題にあがらなくなっているような印象を持ちます。それだけウルシの生えているような里山に入ることが少なくなったのでしょうか。

ウルシの樹液に含まれるかぶれの原因になる成分は今でも漆器の重要な天然塗料ですので、漆の木自体が減っていることもないでしょうし、昔ほどそうした樹木に対する常識が行き渡らなくなった現在では意外にかぶれてしまう人が多いかもしれませんね。

漆の木とはどんな特徴があってどんな見た目なのか?また漆にかぶれないようにするためにはどんなことに注意すべきなのでしょうか。ご紹介します。

漆かぶれはウルシの木だけが原因じゃない!かぶれ発生のタイミングにも注目

漆器の塗料を採る漆(うるし)は、ウルシとヤマウルシがありますが、よく言われる葉っぱの柄や葉脈に毛が生えていて赤いと言うのはヤマウルシの方の特徴です。

ウルシの木は高木ですがヤマウルシは低木なので、私たちが触れる機会が多いのはヤマウルシでしょうから、この常識は持っておいて損はないと思います。

漆かぶれはアレルギーによるものだから触れないように注意

植物に触ってかぶれるというのは、植物の持つ成分によってアレルギーが引き起こされる場合と、植物の成分に強い刺激性があってかぶれる場合があります。

例えば、お薬としてよく使われるアロエでもかぶれることがありますが、これはシュウ酸カルシウムの針状の結晶によって皮膚が刺激されることで発生します。

かぶれの原因として有名なイラクサはヒスタミンと言う炎症物質を持っているためにかぶれます。こうしたものは刺激によるかぶれですね。

一方、ウルシ科ウルシ属の植物にはウルシオールと言う物質が含まれていて、これがアレルギーの原因となって酷い皮膚炎をもたらします。

園芸植物としておなじみのサクラソウも、短い綿毛がいっぱい生えていますが、ここに含まれるプリミンと言う物質でかぶれることが良くあります。ただし、サクラソウすべてで起こるわけではなく、品種によってプリミンの量が大きく異なります。

警戒した方がいいのは、トキワザクラ(学名:プリムラ・オブコニカ)と言う品種です。これもプリミンと言う物質に対するアレルギー反応です。

漆によるかぶれは、このアレルギー反応の方ですので、基本的には漆に近寄らないようにするのが唯一の予防法です。

漆かぶれは数日おいて発生することがある

アレルギーにはいくつかのタイプがありますが、私たちに最もなじみが深いのは花粉症でしょう。花粉を吸いこんだらすぐにくしゃみや鼻水、目の症状などが現れますね。

また、食物アレルギーも同じように、アレルゲンとなる食べ物を食べたらすぐに体に反応が現れます。こうしたアレルギーはI型アレルギーと言って、アレルゲンが体内に入るとすぐにIgEと言う免疫グロブリンと一緒に肥満細胞や白血球に働きかけて発生するものです。

ですので、反応が非常に早く、即時性と呼ばれる反応を示します。これは食物アレルギーや花粉症、蕁麻疹やアナフィラキシーなどを含むグループです。

一方、IV型アレルギーと言うものもあります。これは感作性T細胞と言う免疫細胞がマクロファージを活性化することで起こります。IV型アレルギーは、症状が出るのに時間がかかるため、遅延型過敏症と呼ばれることもあります。

この反応にはリンパ球が集まって、増殖し、活性化すると言う時間が必要なため、アレルゲンに触れてから反応が出るまでに時間がかかるので、遅延型と呼ばれるのです。

金属アレルギーや接触性皮膚炎などがこのグループで、漆かぶれもこのIV型アレルギーに分類されています。漆かぶれではウルシに触れてから2日~数日後にかぶれの症状が出ることが多いです。

もちろんII型とかIII型のアレルギーもありますが比較的少ないですね。II型には橋本病、III型には関節リウマチやシェーグレン症候群が含まれています。

漆かぶれはアレルゲンを広げないように注意!予防の基本とは

漆かぶれはウルシに触れてから2日~数日後に症状が現れます。そのため、症状が出るまでの間に、ウルシに触れた部分から他の部分に原因物質を広げてしまう危険性があります。

街中ではめったにウルシを見ることはありませんが、たとえ里山で生活圏に近い場所であっても山に入った時にはウルシに十分注意しましょう。

露出している部分を洗うのが予防の基本

一旦ウルシに触れてしまったら、個人差で程度の違いこそあれ、症状が出るのはやむを得ないと言えます。また、反応しやすい人ではウルシの近くに行っただけでかぶれる人もいるぐらいです。

それでも、基本的には肌の露出部分にウルシが触れて起こることがもっとも多いので、木の多いところへ入る時は、長袖長ズボンと帽子、手袋は基本ですね。

充分防備していても、うっかり触れることもあるでしょうし、顔については全部を覆い隠すことは実用的ではありません。ですので、そうしたところから出たらすぐに露出した可能性のあるところを全部洗うか拭うかして下さい。

シャワーはお勧めできません。頭や顔にウルシの成分がついていた場合、全身に広げてしまうことになりかねません。ウルシオールは水に溶けませんので、手から肘までと顔については、せっけんを使って慎重にきれいに洗って下さい。

特に洗い残しやすすぎ残しのないように注意し、複数のタオルでしっかり拭きとって下さい。洗うことが難しい場合はウェットティッシュでも良いので何枚も使って、ぬぐい取るように拭いて下さい。

こうしたことで、少なくとも他の部位にかぶれを広げることは最小限に抑えられるでしょう。特にトイレで用を足す前には、絶対に手を洗ってからにして下さい。

これは誰であっても注意しなければいけないことですが、可能性として素手で直接陰部に触れる可能性が高い男性では特に気をつけて下さい。

ウルシオールには種類があるため「かぶれない人」でもかぶれるかも

ウルシオールと言うのは、共通の化学構造を持ついくつかの物質の総称です。その構造によって90%の人がかぶれるものもあれば、半数程度の人しかかぶれないものもあります。

さらに、漆器・漆塗り用の素材として、たんぱく質加水分解物を加えた漆塗料があり、かぶれにくい塗料として使われています。こうしたことから、経験上「自分はウルシにかぶれない」と思っている人もいらっしゃるようです。

しかし、ウルシの成分は種類ごとに異なりますので、必ずしもすべてのウルシにかぶれないということはありませんので油断しないようにして下さい。また、手はかぶれないが顔はかぶれると言うケースもありますので要注意です。

遅延型のかぶれは、いつ原因に触れたかが判りにくいことと、症状が出るまでの間に原因物質を他の部位に移してしまいやすいことが厄介な点です。気を付けなければいけませんね。

ウルシにはいろいろな種類がある!それぞれの特徴や見た目は?

最初の方で紹介した通り、皮膚にひどいかぶれを起こすウルシと言うのは、ウルシ科ウルシ属ウルシ種だけではありません。同じように樹液が塗料の原料になるウルシ科ウルシ属ヤマウルシ種もかぶれの原因になります。

さらに、同じウルシ科ウルシ属の中にはツタウルシやハゼノキなどもあります。いずれもウルシオールではないもののウルシ塗料の成分のひとつ「ラッコール」も含んでいます。

ラッコールはウルシオールとよく似た構造の化学物質で、同じく漆かぶれの原因物質です。また、ツタウルシにはウルシオールも含まれていて、高木のウルシよりもかぶれやすいとも言われています。

一方、同じウルシ科ウルシ属のヌルデは、まれにかぶれる人があるものの、ほとんどの場合大丈夫です。ヌルデは生薬として使われたり、江戸時代以前にはお歯黒の材料としても用いられていました。

かぶれるウルシの特徴を覚えておくことでかぶれを予防

ウルシと言えば、まずは木の幹に傷をつけて「漆掻き」と言う塗料原料の採取を行う「ウルシ」があります。ウルシの木は、高木で10mくらいに育ちます。

ウルシの高木写真

葉っぱは、先端に一枚葉っぱがあって、後は向かい合わせに葉っぱが付く羽状複葉です。複葉とは、小葉(写真に写っている葉っぱは小葉です)が集まって一枚の葉を構成する構造のものです。

ウルシの葉写真

この羽状複葉が、一か所から放射状に広がって手のような形で生えているのが特徴です。高木ですから見上げた時にこうした特徴に気づいたら、早くその場から離れましょう。もちろん、幼木の時は小さいので、気をつけて下さいね。

ヤマウルシは低木で見た目にも特徴がわかりやすい

ヤマウルシは低木です。葉っぱはウルシと同じように先端に一枚の葉っぱがある羽状複葉です。ただし、葉っぱの葉脈上や葉っぱの軸には粗い毛が密生していますし、葉っぱの柄が赤いのも特徴です。

ヤマウルシの葉の特徴写真

切株や根っこにも注意が必要です。切株で中心部が白く、外周部が暗い紫色に変色しているものはヤマウルシのものですので、絶対に触れてはいけません。

また、何かの拍子に木の根元を蹴飛ばしてしまったり、何かを採取しようとして別の木の根を傷つけたときに、皮が剥がれた部分が白から暗い紫色に変色して来たら、それはヤマウルシの根ですので触れてはいけません。

なお、ヤマウルシは春にかぶれやすいと言われていて、紅葉するシーズンでは比較的ましだと言われています。

赤く色づいたヤマウルシの写真

ハイキングなどに出掛けたときに、ヤマウルシを見かけても、枝を払ったりしないで下さい。もちろん葉っぱに触れてもかぶれますが、枝を払った切り口から出す樹液はさらにかぶれやすいからです。

ツタウルシとツタの見分けが重要!樹液には触れないよう注意

ツタウルシは名前の通り、他の樹木などにくっついて延びる蔓性植物です。葉っぱは次の写真の通り、3枚セットの形になっています。

充分成長すると見分けは簡単ですが、若い植物の場合ツタと見分けるのは困難ですので、ツタのように見えるものには一応警戒しておきましょう。

ツタ状のウルシ写真

実際には、ツタは吸盤が付いたまきひげで、樹木などにくっついて登ってゆくのに対して、ツタウルシは気根を伸ばして対象物に根を下しています。

そのせいで、ツタは常に茎が対象物にくっついているのに対して、ツタウルシではメインの茎から枝を伸ばすように広がっていることがあるのが特徴です。

また、うっかり茎を引っ掛けて折ってしまった時に白い樹液が出て来たら、それはツタウルシです。絶対に樹液に触れないように注意して下さい。また、運悪く樹液に触れてしまったら、まずティッシュなどで広げないようにぬぐい取って下さい。

可能な限りぬぐい取ったら、アルコールティッシュなどでさらにぬぐい取って下さい。樹液を塗り広げないように注意が必要です。その後、石鹸などを使って洗い流しますが、その水が身体の他の部位につかないよう工夫してください。

そして、その植物の写真が撮れれば撮っておきましょう。数日様子を見て、かぶれの症状が出たら皮膚科へ出かけて、その写真を見せて診断を仰いで下さい。的確な治療が受けやすくなります。

ツタウルシ写真

ウルシ属の他の植物と同じように、ツタウルシも美しく紅葉します。紅葉する頃になると樹液も少なくなっているので、春から初夏にかけてよりはかぶれにくいと思いますが、油断はしないで下さいね。

ハゼノキもウルシの仲間だがかぶれ方の様子が異なることもある

ハゼノキやヤマハゼもウルシ属の植物です。一般的な説明ではウルシよりもかぶれにくいが、かぶれることもあるので注意すべきという案内をよく目にします。

これは、ウルシやツタウルシは葉っぱに触れただけでもかぶれることがあるのに対して、ハゼノキは葉っぱをちぎったり、枝を折ったりして出てくる樹液に触れない限りかぶれずに済むことがあるからです。

ハゼノキの実は伝統的な木蝋の原料で、江戸時代に西日本を中心に大量に植えられたため、今でもあちこちで見ることができます。ウルシと同じ羽状複葉ですが、小葉の形がウルシに比べて細長くとがっているのが特徴です。

ハゼノキの葉と実の写真

ハゼノキはかぶれやすさと言う点ではウルシよりもましですが、一旦かぶれると症状はウルシよりも重くなることがあります。

ハゼかぶれは、全身に症状が広がってしまうことがあるので、思い当たる節があったらすぐに皮膚科を受診して適切な治療を受けて下さい。

ハゼノキもウルシも同じウルシオールやラッコールなどの成分によって、遅延性アレルギーによるかぶれや自家感作性皮膚炎が発生しますので全身に症状が広がる可能性があるのですが、これは個人差が大きいです。

しかし、一般的にはかぶれにくいハゼノキの方が、かぶれた場合に症状がひどいと言いますので注意して下さい。

赤く色づいたハゼノキ写真

櫨紅葉(はぜもみじ)は秋の季語にもなっているくらいであり、ウルシ属の植物全般に紅葉が非常に美しいため、つい手折ってしまいたくなりますが紅葉は眺めるだけにしておきましょうね。

山林や藪の中の木々の見分けは非常に難しいです。でも、うっかり触れてしまう可能性のあるのはツタウルシとヤマウルシですね。これだけでも注意しておけば危険性は結構減りますよ。

ウルシオール類は意外な食品にも含まれているので注意が必要

ウルシオールの仲間が含まれている食品とは、マンゴーとカシューナッツです。カシューナッツは殻に含まれているだけですが、マンゴーは皮にも実にも含まれているため、食べることでアレルギー反応が出ることがあります。

カシューナッツの場合は、殻を剥いてあるものではほとんどアレルギー反応の心配はありません。

マンゴー皮膚炎を経験した人は特に注意が必要

なぜマンゴーやカシューナッツにウルシオール類が含まれているのかと言うと、マンゴーやカシューナットノキはウルシ科の植物だからです。属こそ異なりますが、似た要素を持っているのでしょう。

一方、同じくウルシ科の植物でもピスタチオナッツやピンクペッパーはウルシオール類によるアレルギーの報告は見当たりませんでした。

マンゴー皮膚炎は割合高い頻度で見られます。マンゴーに含まれる物質はウルシオールそのものではなく、マンゴールやカルドールと言う似た物質ですが、ウルシオールと同じIV型の遅延性アレルギー皮膚炎を起こします。

食べ物ですから、皮むきを行う手や、果実を食べる口の周りに皮膚炎が起こることが多くなります。マンゴーを食べた翌日から数日後にこうした症状が出た場合は、ウルシオールに似た物質によるアレルギーの疑いが濃くなります。

皮膚科を受診してアレルギーテストでアレルゲンを特定してもらいましょう。そして、ついでにウルシ類のテストも受けておいた方がいいです。

マンゴー皮膚炎を経験した人では、ウルシオールについてアレルギーを起こしやすい体質であることが考えられますので、ウルシに対する反応に注意することが特に重要になるからです。

イチョウにはウルシオールに似た物質が含まれている

イチョウと言っても、もっとも注意が必要なのは「ギンナンの臭い果肉」です。その部分にはギンコール酸やビロボールと言うウルシオールに似た物質が含まれています。

ギンナン皮膚炎とかイチョウ皮膚炎とか呼ばれている接触性皮膚炎はこれらの物質によって引き起こされます。ただ、この物質はギンナンそのものには含まれませんので、ギンナンを食べてもアレルギーは起こりません。

果肉が付いたままの臭いギンナンを拾ってきて、果肉を取り除き水洗いする作業でかぶれた経験のある人は、ウルシやマンゴーにも注意が必要だということになります。

ギンナンの果肉でかぶれたことのある人も、皮膚科でアレルギー検査を受けて、遅延性アレルギーを起こす恐れのある物質を知っておきましょう。

マンゴーやカシューナッツ、ピスタチオナッツがウルシ科だというのは驚きですね。でも、ウルシの新芽も調理方法によっては食べらないこともないそうです。人間の食欲はすごいものがありますね。

ウルシにかぶれたら軽くても専門家である皮膚科で検査と治療を受ける

漆かぶれはアレルギー反応ですので、出ている症状を抑える治療を行います。そして、その際に原因物質を突き止めておければその後の生活の安全につながりますので、軽くても必ず受診しておきましょう。

かゆみを伴う皮膚病に共通することですが、とにかく我慢して、掻かずに皮膚科で処方されたお薬を塗ることです。かゆみを我慢するのは大変ですが、冷やすことやかゆみ止めのお薬をうまく利用することが重要です。

酷いかぶれには対症療法が優先される

検査や原因特定も大事ですが、酷いかゆみを伴うかぶれにはまずその症状を抑えることが第一になります。

まずは患部を冷やすこと、そしてステロイド軟膏を塗ることで炎症を抑え、かゆみを少しでも引かせます。さらに炎症物質を抑える抗ヒスタミン剤を内服する場合も多いでしょう。

掻き破ったりして滲出液がある場合はステロイド軟膏に亜鉛華軟膏を重ねたり、ガーゼなどで患部を保護することが行われることもあります。症状が重い場合にはステロイド薬の内服もあります。

治療が遅れたり、かきむしったことが原因で全身に症状が広がる自家感作性皮膚炎になってしまった場合は、そうした症状の専門の皮膚科での治療が必要になります。

ですので、「掻かずに患部を冷やしながら一刻も早く皮膚科へ」と言うのが、症状が出てしまった漆かぶれに対する最も正しい対処法なのです。

昔のおばあちゃんの知恵は本当なのか

これは個人的な経験談、それも昔話レベルですので真似をしないで欲しいのですが、子供のころに「ウルシにかぶれないように」と言って教えてもらったことがあります。

それはウルシの生えている山に入る前に、ウルシの若い葉っぱをかじっておくと言うものです。今から思えば小学生の身長で簡単に取れるところに判りやすい葉っぱがあったので、ヤマウルシだったのでしょう。

その先っぽのほうの新芽に近いものを少し摘み取ってかじったのです。後日少し口の周りが痒かったのですが、ウルシが生えている山でキャンプをして、漆かぶれの症状が出た人がいなかったので、もしかしたら有効だったのかも知れません。

一方、今に至るまで、他ではそうした予防法を聞いたこともないですから、単に運が良かっただけで偶然だったのかもしれませんね。でも、少なくとも小学生の時にヤマウルシとツタウルシの見分け方を覚えたのは大きな収穫だったと思います。

ウルシは植物としても漆器や蒔絵の塗料としても身近ですが、意外にかぶれに対する知識が少ないのではないでしょうか。山に遊びに行く前には少し覚えておくのも悪くないですよ。
キャラクター紹介
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