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認知症にはタイムトラベルが効果あり!高齢者と楽しむ回想法の方法

アルバムを見る家族

「仰げば尊し」という唱歌をご存知でしょうか。学校の卒業式などでよく歌われる曲ですね。明治時代から昭和を通して歌い継がれてきたものです。「仰げば尊し我が師の恩…教えの庭にもはやいくとせ…」

歌ったことのある方はメロディーだけでも簡単に口ずさむことができ、当時の情景や、様々な感情が自然と思い浮かぶことでしょう。

あるいは、荷物の整理などしていて昔の卒業アルバムなどが出てきた時、ふと時間がたつのを忘れて見入ってしまうことは誰にでも経験があると思います。

そんな時、

  • 感情(気分)の変化
  • 集中
  • 別世界にいるような感じ

など、普段と違う体験をしていることにお気づきでしょうか。これらのような作用は、特に認知症の高齢者の多彩な症状にとても有効とされており”回想法”としてホームや病院などで活用されています。

本記事では、回想法を行う上で注意すべきポイントを挙げながらその効果をご紹介します。

薬物治療だけに頼らずに…いまできることを探って

認知症とは、記憶障害を中心として不安、徘徊など様々な症状が現れる症状の集まりです。ご存知かもしれませんが、今現在は残念ながらまだ認知症の症状を抑えることができる確固たる薬はありません。

ですので、何か困ったことがあったらそれぞれに対応するしか方法がないのが実際のところです。確かに一部の薬は症状の進行を遅らせることができるとされています。

しかし副作用はありますし”病(やまい)”はいずれその人を飲み込んでしまうでしょう。悠長に手をこまねいていても時間は経っていくばかりです。何か自分たちにできることがあれば取り入れたいと思うのは自然のことです。

そこで今回お話しする回想法などの非薬物療法が注目されるのです。次に簡単に非薬物療法にはどのようなものがあるのかをご紹介します。

認知症非薬物療法のいろいろ

先ほどお話ししたように、お薬には副作用があります。特に認知症のように有効なお薬がまだ少ない場合、加えて高齢者のように体力がない場合などには以下のような非薬物療法が有効です。

  • アロマセラピー
  • 芸術療法
  • 認知行動療法
  • 園芸療法
  • 回想法

などなど

この中には実際に介護をされている方でなくてもご存知の療法(セラピー)があるもしれませんね。どれをとっても「幸福感」あるいは「安心感」を得るための手段・方法といえます。

例えば、アロマセラピーなどは特に病気を抱えている患者さんでなくてもストレスを癒す効果、痛みを和らげる効果なども報告されています。しかも自宅で簡単に出来るということが利点です。

アロマセラピーは気分に作用し、不安や抑うつに効果的です。2%のラベンダーオイルを居室に噴霧した際には、焦燥行動(不穏になり徘徊、服を着たり脱いだりするなど)の頻度が低下したという研究報告があります。

別の研究によると、レモンバームを用いて顔や腕をマッサージすることにより、焦燥による行動が減ったという報告もあります。

低コストで導入できることもあり、今後もさらなる効果や方法の研究が期待されるセラピーです。個人から施設での使用に至るまで広く試みられています。

もう一つ、例を取ってみると「園芸療法」も認知症の症状に良い効果をもたらすとされています。植物の成長が喜びとなり生活に張り合いが出ます。また、種まきや開花の時期などは決まっているので、時間の感覚も維持できます。

回想法も様々な効果が期待されており、デイサービスや入所型の施設でレクリエーションなどの一環として取り入れられることが多くなっています。

回想法は、厳密にはカウンセラーやトレーニングされたスタッフがあらかじめ作成したプログラムに沿いつつ段階を踏んで行うものです。

ここでは、日常に行き渡っているアロマセラピーや園芸療法のようにごく自然にどこでも誰でも出来る回想(法)についてお話します。

回想(法)とあえてカッコ付きで表記したのは、先ほど少し触れたように、専門的なものを意識してのことです。ここでは専門家が行うカウンセリングの一環のようなものについては簡単な説明にとどめ、ご紹介を省かせていただきます。
  

回想法の進め方

お話しましたように、回想法は様々な施設で取り入れられています。1対1で行う個人回想法の他に、グループ回想法があります。一回(1セッション)は大体20分から1時間程度です。

施設のスタッフなどが聴き手となった場合のセッションの流れをここに例としてあげます。

  • あいさつ…名乗るなどして不信感のないようにする
  • テーマについて切り出す
  • 思い出の品などの道具を見せる
  • 回想…聴き手は傾聴する
  • セッションを振り返る…話してみての感想をたずねる
  • 今の話題で終える…過去から今に戻る
  • 次回予告…約束
  • あいさつ

以上は一つの例です。次に上記に挙げた流れについて個々のポイントを挙げます。

挨拶で始まり挨拶で終える。安心してもらうために

まず、ここでは認知症の高齢者を語り手、スタッフや援助者、家族を聴き手として説明をしていきます。

認知症の患者さんは次第に自らを取り巻く状況の判断ができなくなっていくものですが、症状の進行の程度やその時の体調などによって異なります。

次第に状況判断は苦手になっていきますが、それゆえに周囲の環境に敏感になり、不安を抱きやすいということがいえます。

回想法がどのような場所で、どのような形で行われるにしても最初と最後は挨拶でくくりましょう。

最初の挨拶は、自分がどこの何者なのかをきちんと分かってもらうためです。語り手の不安を取り除くのに欠かせません。誰でも、誰かわからない人にたやすく心を開きませんよね。

終わりの挨拶は区切りをつけるためにも必ずするようにしましょう。その時の回想(セッション)の名残りを惜しみながら、再開を約束します。そうすると語り手に強く印象が残ります。

挨拶は日常的に礼儀の一環としてのものですが、名乗ることは相手の不信感を取り除く意味でも重要なものです。また、きちんと挨拶をすることによって良い印象を残すことができます。

「また会いたいな」、「また話をしたい」など思ってもらえることが一番なのです。

タイムトラベルの手段はこれ!テーマに沿った道具を用意しよう

テーマに沿って語り手が回想するに任せるのですが「きっかけ」があると効果的です。テーマを切り出した時に語り始める方も中にはいらっしゃいますが、何らかの道具があると、話が外れにくくなります。

テーマの設定に沿った道具を選ぶようにしましょう。小さい頃のことを回想するのには

  • お手玉
  • おはじき
  • 竹とんぼ
  • コマ
  • けん玉
  • 羽子板
  • 学校で使っていた教科書

などがタイムトラベルのきっかけとなります。

お手玉や竹とんぼは作ることもできますし、学校で使っていた教科書なども最近は書店に置いてあることもあります。活用してみると良いでしょう。

実際に触れたり遊ぶことができるものであるとより効果的です。いろいろ用意しすぎて次から次へと道具を取り出してしまうことは良くありません。語り手の注意が散漫になり当惑させてしまいます。一回に二つくらいが適当でしょう。

会話は聴くことで進む!傾聴のポイント

悩み苦しむ人をサポートする意思を持って、その人の話に親身になって耳を傾ける方法を傾聴と言います。

言葉を聞くことは多くなりましたね。悩みや相談を上手に聴くことはカウンセラーなどプロに限ったことではないのです。それだけ誰もが関心のあるところということでしょう。

しかし、今はまだ傾聴とは一体何かはきちんと理解されていない段階です。現状はいわばまだ言葉の一人歩き状態です。ですので、改めてここでポイントを抑えておきたいと思います。

  • 語り手(話し手)に寄り添い、語る内容を親身になって想像しながら聴く
  • 単なるおうむ返しではなく、語った内容を短く言い換える
  • あいづちは少なめに、しかし大きめに
  • キーワードを繰り返す

などが「傾聴」のポイントでありコツです。ただ黙って聴くのではなく、話す人が話し安い空間、雰囲気を作ることが重要です。

傾聴する上で以下のようなことはNGです。

  • あいづちを打つだけ
  • むやみに質問をする
  • 話しているのをさえぎる
  • 話し手に話の続きを強引に促す…「それで?」など
語り手が認知症の高齢者でなくとも、友人関係や職場でのコミュニケーション、家族間の日常的なやりとりにおいても効力を発揮します。上記のことを念頭に置くことによってますます円滑な良い距離感ができるでしょう。

ぜひお試しください。

必ず今に戻ってくるように…タイムトラベルの約束

回想法は意識的に行うタイムトラベルです。回想法は、回想「法」というだけあって、ただ単に思い出に浸るだけの行為ではありません。

回想をし終わったあとは必ず、話題を”いま”に戻しましょう。”いま”があっての”過去”の回想なのです。

いまをより過ごしよくするために回想をするのです。ですから過去から戻ってくる必要があります。

私たちのように若年者は比較的簡単にタイムトラベルをして現在に戻って来れます。しかし高齢になるにつれ、しかも認知症になるとこの切り替えが難しくなってきます。

意識的に始めた時間の旅なのですから、これも意識的に今に戻る必要があるということはもうお分かりでしょう。

切り替えは、何も難しく考えることはないのです。例をあげます。

  • 今日の献立についての話題に切り替える
  • 今日の天気についての話題に切り替える
  • 今日これからの予定について尋ねる、あるいは確認する

などなど

脳を刺激しポジティブな感情を起こさせる回想法の効果

認知症の症状を改善する際の具体的な目標は主に4つあります。

  1. 認知(記憶力や判断力など)
  2. 刺激
  3. 行動
  4. 感情

回想法は、上記4つの中の主に2.刺激と4.感情に焦点を当てたものです。確かに回想中は集中しますが、回想が終わってしまえば元に戻ってしまいます。認知に効果があるという確固としたデータはまだ揃っていません。

認知症は記憶がなくなる病だと思い込まれる傾向がありますが、それは間違いです。新しい事を覚えているのが苦手なだけで、比較的古い記憶は保たれていることが多いのです。

高齢者が昔の話を好んでするように思えるのはそのせいなのです。回想法は聴き手がいて回想を傾聴しますが、相手に話すことで脳に刺激になり活性化することが期待できます。

認知症の高齢者はともするとふさぎ込んでしまったり、孤独を感じることが増えますが、聴き手と時間や話題を共有することでさらに充実を感じることができます。

また、自らの歩んできた人生を振り返ることで過去に対するネガティブな感情を改めることができるかもしれませんし、よりポジティブに感じられることもあります。

辛かった過去を振り返るのは一見危険な印象を持ちますが、困難を乗り越えた自分を発見する良い機会になるでしょう。もっともご本人が辛くなってしまったら回想を中断する必要があります。

ポジティブな感情を抱くことができれば、不安も和らぎます。感情と認知機能(記憶力、判断力)の関係が明らかになれば回想法はより広く用いられる手段となることでしょう。

個人で回想法をする時はここに気をつけて

一人で思い出にふけることは高齢者でなくともよくありますね。そうして昔を懐かしがることの効果はこれまでお話してきましたが、次は回想法をその道のプロでなくても手軽に効果的に行うコツについてお話します。

施設などで、心理士やワーカーなどのいわゆるプロの”面接”による回想でなく家族など、より身近な人が行うことができる回想法にももちろん強みがあります。

人は体験した物事をなんでも全て覚えているわけではないですよね。必ず、無意識の取捨選択をして記憶に残っていることはほんの一部にすぎません。加えて、事実はその人の思い込みなど解釈(認知)が大きく影響します。

家族などより近い人が聴き手になることで得られる効果を以下にあげます。

  • 語りの内容と事実の違いを知ることができる
  • より安心感が持てる
  • よりリラックスできる
  • より鮮明に過去を思い出せる
  • 家族などより近い人と昔を振り返ることで盛り上がることができる
  • 楽しい雰囲気を作り出せる
  • こういう機会(回想法の機会)が楽しみになる

などなど

家族は、その人に「より近い」存在です。一人で思い出す時は解釈というフィルターを通していますが、家族はその人の話に耳を傾けながらも、本当はどうであったかも知っている場合が多いのです。その人のフィルターを感知できます。

施設などでも、生活史と言ってその人の生活史(出身、家族構成や学歴などの背景)を家族などの協力により作成しスタッフが共有しますが、当然ながら家族の方がきめ細やかに知っています。

非薬物療法に位置付けられる回想法は、薬物療法と同じく効果の有無を評価しながら進めますが、高齢者が家に住んでいる場合は特にその小さな変化に気付きやすいでしょう。

認知症高齢者は不安が強い傾向があるので、子どもや孫が聴き手の場合は特に安心が得られリラックスできます。また「そうそう、そんなことあったね」と昔あったことを共感して懐かしがることも高齢者の良い刺激になります。

回想法は他の治療法と同じく、たった一回きりでは効果がわかりません。ですのでご本人のモチベーションが継続のカギとなります。楽しい雰囲気は、次はこんな話をしたいというような具体的な要求にもつながります。

聴き手になることは人生の先輩から学ぶこと

冒頭で挙げた「仰げば尊し」などの音楽や卒業アルバムなどの写真に限らず、人はふとしたきっかけで過去を思い出します。

形のあるものだけではありません。匂いもそんな作用を持ちます。祖父母のタンスから虫予防の”しょうのう”の匂いがしてきて、懐かしく思い出すということがあります。

このように、何らかの匂いを嗅いだ途端に過去の懐かしい記憶が思い出される心理効果・現象を「プルースト効果」と言います。

私たちの五感の中で、先に衰えるのは嗅覚です。料理していて焦げた匂いに気づかないでいるなど危険なことも起こり得ます。周りの人は怒らずにその人の衰えを察知し的確に対処することが求められます。

若年者の私たちができることは何かを探ることは自然のことですし、ゆくゆくは”老いてゆく”者として人生の先輩に教わることが多いのです。

回想法を行うにあたり、聴き手になり一緒に時間の旅をさせていただくことはとても良い学習の機会です。語り手の過去や現在に対する想いやその変化を目の当たりにできるのですから。

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