健康生活TOP 依存症 【薬物依存の恐怖】好奇心で転落人生…危険ドラッグの脳への影響

【薬物依存の恐怖】好奇心で転落人生…危険ドラッグの脳への影響

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危険ドラッグの使用によって逮捕された人を統計的にみると、大半はごく普通の学生や社会人、あるいは主婦であることに驚かされます。これは危険ドラッグの脅威が社会に浸透しつつあることの現われです。

そして危険ドラッグは、薬物などとは全く無関係と思われる常識的な人であっても、そのほんのわずかの心の隙間から忍び寄ってくるのです。自分の家族や大切な人を危険ドラッグの犠牲にしないためにはどうすればよいのでしょうか?

なぜ薬物はやめられないのか?

芸能人などが薬物を使用して逮捕される事件の報道を見ることがあります。逮捕された人は二度と薬物には手を出さないと誓うものの、その多くは再び薬物に手を出してしまいます。これはなぜでしょうか?

危険ドラッグなどの薬物は一度でも使用すると脳の機能が大きく破壊されます。脳の機能が破壊されるということは正常な判断や思考ができなくなるということです。危険ドラッグを含めて薬物が恐ろしいのは、脳が破壊されてしまうことなのです。

脳の仕組みと働き

危険ドラッグが脳に与える影響を考えるには、まずは脳の仕組みをある程度理解しておかなければいけません。

脳にある2つの働き

人の脳は大きく分けると大脳辺縁系と大脳新皮質という2つの部分に分けられます。

大脳辺縁系は脳の一番深いところにあり、食欲や性欲など人間が生きるために必要な本能の部分を司っています。原始的な脳ともいえます。

それに対して大脳新皮質は人間の理性や知性を司っている部分で、人間を人間たらしめる働きをする部分です。人は本能だけでは社会生活を営むことはできません。ですが本能がなくては生きていく原動力がなくなってしまいます。

つまり人の脳はとても簡単にいえば、大脳辺縁系という本能の部分と大脳新皮質という理性や知性の部分が互いにバランスを取りながら機能しているのです。

自動車に例えるならば、大脳辺縁系は生きるためのアクセル、大脳新皮質は大脳辺縁系が暴走することへのブレーキの役割をするということです。このアクセルとブレーキがバランス良く働くことによって、正常で常識ある人間の行動が作られるのです。

別のいい方をすれば、大脳には生きるために必要な原始的な脳と、理性や知性によって動物とは異なる人間を人間らしく行動させるための2つの脳の働きのバランスによって成り立っているともいえます。

脳の中にある快楽物質

実は私たちの脳の中には麻薬と同じような働きをするβ-エンドルフィンという物質がすでに存在しています。このβ-エンドルフィンはモルヒネの6~10倍の作用をするという強力な鎮静物質で脳内麻薬とも呼ばれています。

ちなみにモルヒネはアヘンの一種で麻薬です。医療用モルヒネとして、末期がんの患者の痛みを和らげたり、精神を強く安定させる働きをします。

また最近の研究で脳内麻薬はβ-エンドルフィン以外にも、α-ネオエンドルフィンというさらに作用の強い脳内麻薬があることも明らかになっています。このα-ネオエンドルフィンはβ-エンドルフィンの5倍以上という強い麻薬様作用があります。

体内に脳内麻薬がある理由

ではなぜ人間には脳内麻薬があるのでしょうか?それは2つの理由が考えられます。

その1つは、例えば原始時代に人間が狩りをして獲物をとったときのように、食べ物にありつけたときに快楽を感じるようにすれば生きるための原動力が生まれます。

食べ物を食べておいしいと感じたり、もう一度食べたいと思う気持ちが沸いてくるのも、突き詰めれば自分という人間を生かすために脳内麻薬の働きによって作られた感情や快楽というものにほかなりません。

もう1つは、何らかの理由によって身体的あるいは精神的に追い詰められた時に、その苦痛を紛らわす働きが必要だからです。

これはマラソン選手に起こるランナーズハイと呼ばれる現象が象徴的です。ご存知かもしれませんがマラソン選手は長時間走り続けていると、脳からβーエンドルフィンの分泌がさかんになります。

マラソンで走り続けるということは、体力を消耗し肉体の限界に挑むということですから、本来マラソンは人間にとってとても過酷な行動です。その過酷な状況がピークに達したとき、その肉体の限界に打ち勝つために脳内麻薬が必要なのです。

精神や肉体が限界に達したとき、それでも生きようとする生命の原動力となるのが脳内麻薬の働きなのです。ですからマラソン選手のランナーズハイの現象は肉体や精神が限界を超えようとする極限の状態で起こる現象ともいえるのです。

ではマラソン選手がランナーズハイになることが良いことかというと、選手としては良い結果が生まれるかもしれませんが、マラソン選手の平均寿命は普通の人より10年短いといわれています。

また肉体を酷使した結果、筋肉や細胞の酸化が普通の人よりも早く、内臓疾患や皮膚の老化現象が顕著に起こることも知られています。肉体や精神の限界に挑むということは本来の人間の行動としては異常な状態なのかもしれません。

脳が破壊されるとは?危険ドラッグの脳への影響

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では危険ドラッグが脳に与える影響を考えてみましょう。危険ドラッグに使われている薬物は大麻や覚せい剤などとそれほど変わりません。

危険ドラッグが一度でも脳の中に入ると、本能を司る大脳辺縁系のA10神経系という快楽を生み出す部分に障害をもたらします。A10神経系から無制限に快楽物質である脳内麻薬が分泌され続けるのです。

その一方で理性の脳である大脳新皮質が正常に働かなくなるようにも働きます。さきほどの自動車の例でいえば、危険ドラッグはブレーキを破壊した上、アクセルを思いっきり踏み込んだ状態になるということです。

さらに脳には万が一ブレーキが故障したときのために補助ブレーキのような、いくつかのブレーキシステムを備えているのですが、危険ドラッグはこのブレーキシステムを全て破壊してしまうのです。

こうなれば、人間はブレーキの効かない暴走自動車のようなもので、もはや人間がすることとは思えない異常な行動をする以外には何もできなくなってしまうのです。

危険ドラッグをはじめとする薬物の恐ろしさは、1度でも好奇心で手を出してしまうと、一生人間が制御不能の廃人のようになってしまうところにあるのです。

どのような状態になるか?

危険ドラッグの中毒者を調査すると、薬物によって自分がまるでスーパーマンにでもなったような気持ちがするそうです。怖いものがなくなり自分は何でもできる、空でも飛べるというような気持ちになるそうですが、もちろんこれは幻覚です。

これは薬物によるアッパー作用という現象で、精神を高揚させ極度の興奮状態や身体過敏の状態にする働きが関わっています。

周囲のことが全く気にならなくなり、暴言を吐いたり、暴走して電柱によじ登ったり、屋根から飛び降りたり、包丁を振り回したり、相手が警察官だろうが誰だろうが自分は無敵だと感じあらゆる暴走を始めます。

何も食べなくても平気で24時間目ばっちり目が覚めて、不眠不休でも全然平気というような状態になることもあります。これでは精神だけでなく肉体的にもボロボロになっていくのは当然といえるでしょう。

またアッパー系とは逆の作用に働くダウナー系という状態が起こることもあります。作用は危険ドラッグの種類によって異なりますが、自分の家族や大切な人を守る意味でも、どのような状態になるか頭の片隅に入れておきましょう。

アッパー系の症状

  • 気分がハイになる
  • 幸福感を強く感じる
  • 集中力が高まったと錯覚する
  • 強い高揚感が沸く
  • 極度の興奮状態になる
  • 自分に自信が沸いてくる
ダウナー系の症状

  • 不安感や緊張感がなくなる
  • 胎児になりお母さんのお腹にいるかのような安心感が沸く
  • 無重力状態のように力が抜け、体が軽く感じる
  • 気分が良くなり体の疲れを感じなくなる
  • 突然愉快になり笑いが止まらなくなる
  • 口からよだれをたらすようになる

こうした症状は全て薬物によって脳が破壊されることによって起こる幻覚症状です。脳細胞は一度でもダメージを受けると二度と元に戻らなくなるので、たった1度だけという油断や自己弁護は一切通用しないのです。

恐ろしい禁断症状

薬物は肝臓で少しずつ代謝されるので、幻覚症状はやがてなくなります。しかし脳の快楽中枢の機能が麻痺してしまっているので、再び薬物を欲しがる強い欲求に襲われます。このときに起こるのが幻覚症状や禁断症状、離脱症状と呼ばれる症状です。

  • 強い不安
  • イライラ
  • 手足や体のふるえ
  • 恐怖感
  • 疲労感
  • 幻覚、幻聴
  • 不眠
  • 動悸
  • 苦悶
  • 嘔吐

こうした薬物の反作用としての、とても苦しい状態が続きます。その苦しい状態から開放され、再び気持ちの良い状態に戻りたくなることで依存状態が続くのです。これが乱用が繰り返される理由です。

危険ドラッグの身体的影響

また危険ドラッグの作用は脳だけでなく、体の様々な部分にも悪影響を与えます。例えば、手足のしびれや筋力の低下、頭痛や吐き気、不整脈など、脳だけでなく体全体が薬物の影響を受け、正常な機能を失っていきます。

薬物は脳を破壊するだけでなく身体的にも大きなダメージを与え、ついには廃人のようになってしまうということです。

なぜ薬物に手をだすのか?

危険ドラッグが有害なものと知りつつも、なぜ手を出してしまうのでしょうか?そこには人間のちょとした油断や心の隙間のようなものが関わっています。

危険ドラッグを使用した動機

危険ドラッグを使用した人に、なぜ薬物を使用したかを調査したところ、以下のような答えであったようです。

  • 痩せられる
  • 疲れが取れる
  • ストレス解消のため
  • 世の中の憂さ晴らしのため
  • 勉強や仕事に集中するため
  • 友達や知り合いにすすめられ断れなくて使用した
  • パーティーなどで遊び感覚でやってしまった

これらの動機はいずれも、誰にでもあてはまりそうな動機です。ですから薬物は決して他人事ではなく自分の生活と隣り合わせにあると考えるべきなのです。

きっかけは酒やタバコと同じ

酒やタバコを始めて飲んだり吸ったりしたときに、どんな動機で始めたかと考えると、ほとんどの人は興味や好奇心だと答えます。あるいは友達にすすめられたという人も多いと思います。

同じように危険ドラッグの中毒者に、薬物を最初に使用したときの動機を聞くと最も多いのは、酒やタバコを始めたときと同じような好奇心からだと答え、その次の理由が友達や他人にすすめられたと答えます。

このことからも、誰がいつ、つい手を出してしまうかもしれないということはよくわかります。

そもそもなぜ薬物が生まれた?

薬物がそれほど人間にとって危険な物であるとすれば、なぜこの世に存在するのでしょうか?話は3千年前にさかのぼりますが、エジプト文明やメソポタミア文明が栄えた時代、人が何かの病気にかかると自生する薬草などを治療に使っていました。

その薬草の中に、痛みをとったり気分を元気にしたりする働きがあるものが見つかり、それを薬として使っていたのです。大麻でもアヘンでも元々は植物から作られています。ですから人間が人工的に作ったわけではなく古い医学や薬学から派生したのです。

アルコール依存症との違い

アルコールも理性を司る大脳新皮質を麻痺させるので、酒に酔うと理性や判断力が低下します。皆さんも1度くらいは酒に酔った経験があると思います。アルコールの場合は、アルコールを分解する酵素の働きによって徐々に排泄されます。

医療の現場ではアルコールは殺菌や消毒にも使われていますが、元々は麻酔薬でした。アルコールは大脳新皮質の働きを抑制するので、大脳辺縁系の刺激が表に出やすくなります。

気分がよくなり、いつもは無口な人がよくしゃべったり、笑ったりするようになります。理性のブレーキが緩んだ状態です。

その後、アルコールの作用が大脳辺縁系まで到達し、身体機能や言語を司る部分に影響が及び、ろれつが回らなくなったり千鳥足になるのです。ですからアルコールによる理性の崩壊というのは、あくまでも一時的で回復が可能なものです。

だからといって決して酒とドラッグとは度合いが異なるだけと考えてはいけません。酒とドラッグは似て非なるもので、作用や代謝の仕組みが全く異なります。安易に考えてはいけません。

危険ドラッグから身を守る方法

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では自分自信や家族、大切な人を危険ドラッグから守るにはどうすれば良いのでしょうか?

とにかく手をださない

危険ドラッグから身を守るには、とにかく薬物には手を出さないということしかありません。最近では危険ドラッグだと知らされずに、体調が良くなる薬だといわれたり、元気が出る、あるいは痩せる薬だと聞かされて使用してしまうケースが増えています。

危険ドラッグと聞けば絶対に使用してはいけない!と思い自衛できるものですが、痩せる薬だ、飲むと元気になる、性的な興奮が高まるということで、危険ドラッグだと知らずに使用してしまうのです。

はっきり断る勇気を持つ

危険ドラッグなど薬物をすすめようとする人は、言葉巧みに薬を飲むことをすすめてきます。そのようなときは、「やらない、飲まない」とはっきり断ることです。余計な断り方をすればするほど、売人はその言葉を巧みに使い、逆にすすめようと説得します。

その防衛策は、とにかくはっきり「断る」ことです。曖昧な返事をすることもいけません。しつこくいわれた場合は、その場から立ち去ったり逃げることも覚悟しましょう。

友人や仲間から誘われた場合

やっかいなのは友人や仲間からすすめられた場合です。この場合は断ろうと思ってもなかなか断りきれないのが実情です。ですが、もっとも根本的な考え方は、薬物をすすめる友達は友達ではないということです。

最近では修道会のような宗教団体などを名乗って、危険ドラッグを密売している業者が摘発されたという事件もありました。宗教を語って人の心の隙間を巧みに利用して販売している業者もあるので厳重な注意が必要です。

友人や知人など、どんなに信頼がある人からも、知らない薬をいわれるがままに使用することは絶対に止めなければいけません。そのとき、もし一度だけ、という言葉が脳裏をよぎったら、薬物には一度だけはないということを思い出してください。

大切な人が危険ドラッグを使用してしまったら…

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あまり考えたくはないケースですが、自分の家族や知人、知り合いの誰かが危険ドラッグを使用してしまったケースを考えてみましょう。基本的には1度でも薬物に手を出したらもう逃れられないのですが、早く気づくことで更生の機会も生まれます。

薬物依存者に見られる兆候

まずは危険ドラッグや薬物依存になっている人の行動の特徴をみていきます。

  • 感情の起伏が激しく、その時々でまるで別人のように行動が変わる
  • 薬物を買う金がほしいがために嘘をつく
  • 様子がおかしいことを指摘すると機嫌が悪くなる
  • 大声を出したり暴れたりする
  • 突然仕事を解雇された

こうした様子が多少なりとも現れたときには、もしかすると危険ドラッグを使用しているのかもしれないと、万が一にも疑ってみることも必要です。

薬物依存が分かったきっかけ

次に実際の使用者を調査した結果、どのように薬物依存が発覚したかをみていくと次のようなポイントがあげられます。

  • 借金を作りその督促が頻繁に来る
  • 急に体調が悪くなった
  • 暴力をふるうようになった
  • 補導あるいは逮捕された
  • 薬物を吸うための器具などが出てきた
  • 隠していた薬物が部屋から見つかった

1度でも薬物に手を出してしまったら、依存症状から抜け出すことは容易ではありません。薬物の効果が切れたときに起こる禁断症状を抑えるには薬物しかないと考えてしまうのです。

繰り返しますが、危険ドラッグはたった1度でも体内に入ったら最後、脳の本能と快楽を司るA10神経系を破壊してしまうので、どんなに強い意志をもってしても依存症から逃れることはできません。

依存症を克服する方法

もし家族や大切な人が危険ドラッグの依存症になってしまった場合、薬物依存を克服することは容易ではありません。やめさせることはできないかもしれませんが、やめる手助けをすることはできます。

まずは精神福祉センターへ相談

薬物依存から抜け出したい、あるいは薬物依存の人を助けたいという場合、まず最初に精神福祉センターに相談して下さい。精神福祉センターは各自治体に必ずあり、いきなり警察に逮捕されることも、病院に入院させられることもありません。

精神福祉センターが近くにない場合は、保健所に相談すれば同様の相談を受けてくれます。薬物依存を克服するには1つの機関だけでは解決できないことが多いので、医療機関やボランティア団体、場合によっては警察、学校などへの相談も必要です。

とにかく、一人で考えていても治るものではありませんから、まずは精神保健センターで相談することが第一歩です。基本的に相談は無料で行っています。

薬物依存克服へのプロセス

次に薬物依存を克服する流れを考えて克服へのプロセスを順番に追っていくことが必要です。

1.体の回復
薬物依存者は栄養状態が悪く内臓に障害があることも多いので、体調の回復を最優先に考えます。

2.脳の回復
薬物の作用によって幻覚や妄想、うつ状態などになっていることが多いので脳の回復を図ります。

3.心の回復
薬物には二度と再び手を出さないこと誓い、心を入れ替えることです。人間としての信頼を回復し、社会復帰を目指します。

何を持って回復とみなすか

普通の病気などであれば、回復した状態の基準があるのですが、薬物依存の場合、回復とは治り続けることに他なりません。薬物をやめ、体や脳に障害が少なくなっている状態が継続しているということです。

すでに脳は破壊されているので、この状態を続けることには相当の覚悟と医療機関など周囲の協力が欠かせません。そして、少しでも心に隙があるとまた薬物に頼ろうとする気持ちが沸いてくることが多いので常に自分との戦いが続きます。

一人で克服するのは難しい

薬物依存は決して一人では克服できません。ダルクのようなボランティア団体に参加して、同じ症状を抱える人と励ましあって治療に取り組むことで薬物の誘惑を防ぎます。

その際、人間には人との相性がありますので、できるだけ自分が通いやすい団体を見つけて長期的に参加することが大切です。依存者のほとんどは一生通っています。

心に抱える悩みを解決する

薬物に手を出してしまった人は心に何らかの悩みを抱えていることが多いので、臨床心理士、心理カウンセラーなどあらゆる人の助けを借りて根本的な心の悩みを解決していくことも必要です。

危険ドラッグなど薬物依存は一度でも手を出すと人間らしい生活に戻ることはほとんどできなくなってしまいます。たった一度の好奇心によって一生を棒にふるようなことがなくなる世の中にしたいものです。

キャラクター紹介
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