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毎日の飲酒は認知症の原因に?脳の萎縮を防ぐアルコール適量とは

飲酒する男性

高齢男性において、現在飲酒習慣のある方の一部では、お酒を全く飲まない人より認知症のリスクが半分以下に下がると言うデータがあります。そう聞くと喜んでしまう方もおられるでしょうね。

しかし、過ぎたるは及ばざるがごとしと言う名言が示す通り、量を過ごすと今度は認知症リスクが何倍にも跳ね上がってしまうのです。認知症を予防するにはどんな飲酒習慣を持つのが良いのでしょうか。

認知症予防の適量は「節度ある飲酒量」より少なかった

最初にお話ししておかなければならないのは「現在お酒を飲んでいない人が、お酒を飲み始めても認知症予防になると言うデータはない」と言うことです。

お酒を飲めない人が無理して飲んでも良い結果が出るはずもありません。ですので、これは飽くまでも「お酒を飲む習慣がある人」についてのデータなのです。

少量のお酒は認知症を大幅に減らす

まずは厚生労働省がアナウンスしている内容を見てみましょう。

【図】の飲酒量は350mLのビール1本相当(1.4ドリンク)を1本としています。また認知症の危険性とは、飲酒しない人が認知症になる危険性を1とした場合に、各飲酒量でどの程度認知症の危険性が増減するかということを示します。

一週間あたりの飲酒量と認知症の危険性
図:一週間あたりの飲酒量と認知症の危険性(高齢男性)

このように1-6本程度の飲酒が認知症の危険性が最も低いという結果で、飲酒しないまたは大量飲酒する人より少量飲酒する人のほうが認知症の危険性を下げる、言い換えれば少量飲酒は認知症の予防になる可能性を示唆しています。

(中略)

しかしご注意いただきたいのは、元々飲酒する習慣がない人が飲酒した場合に認知症を予防するという証拠はどこにもないということです。

厚生労働省が一般向けに推奨している飲酒量の上限は、1日当たり2ドリンク、つまりビール500mnL相当です。これを350mL缶に換算して1週間毎日飲んだとすると、10本相当になります。

上の引用のグラフを見ると、認知症リスクが飲まない人の1.5倍弱に上昇する部分に入ってしまいます。つまり、将来の認知症を意識する年齢になれば、ビール500mL缶を毎日飲むのは多すぎると言うことですね。

将来の認知症を意識すると言うことになると、やはり40代くらいからでしょうか。アルコールは徐々に脳を傷めますから、高齢者の入り口である65歳の20年前を1つの目安にしてはいかがでしょう。

自分の飲むお酒の適量を知って飲酒習慣を見直そう

飲酒量を意識すると言うことになると、ビールだけではなく他のお酒も気になりますね。そこで、上のグラフから「毎日飲むならどの程度の量になるのか」と言うことをまとめてみましょう。

お酒の種類と度数 毎日飲む場合の上限量と目安
ビール(5%) 300mL
お冷のグラス1杯半
ワイン(12%) 125mL
シャンパングラス1杯
日本酒(15%) 100mL
0.5合
焼酎甲類(25%) 60mL
チューハイにしてグラス半分
本格焼酎(35%) 42mL
お湯割りで湯呑み1/3
ウイスキー(40%)
ブランデー(40%)
36mL
シングル1杯

結構少なめですね。しかし、引用で示したグラフは1週間の量ですから、飲まない日をはさめば普通の量が飲めます。この認知症のリスクが最も下る飲酒量の上限は、厚生労働省が示している「節度ある飲酒量」の上限のおよそ60%になっています。

ですので、週に4回・月に18回の飲酒であれば、ビールなら500mL・日本酒なら1合と言う普通の量を飲んでも大丈夫と言うことになります。

但し、注意しておいてほしいことは「ちょっとぐらいなら」と量を過ごさないようにすることです。この量を一歩踏み出すと、いきなり認知症リスクが約3倍になり、この量の2倍になると、リスクはおよそ5倍にまで跳ね上がります。

とは言え、こうした数値は覚えるのが大変です。ですので、合言葉を3つ準備しました。

若者であれば厚生労働省が示す「節度ある飲酒」の範囲で問題ありません。これは、40歳を超えて将来の認知症リスクを減らしたい人向けの合言葉です。

  • 毎日飲むなら半合か生中半分
  • 1合か生中1杯飲みたければ1日おき
  • どんな場合でも2杯目は禁止

これを覚えて実践すれば、認知症リスクは最低レベルに抑えられますよ。

お酒によって認知症リスクが下がる理由は判っていない

また、なぜ少量のお酒が認知症を予防するのかと言うメカニズムは良く判っていません。傾向として中年以降の少量飲酒者は認知症にかかりにくいと言うデータが得られているだけなのです。

一応、次のような要素がお酒によって認知症を予防することに貢献しているのではないかと言う仮説は存在しています。

  • 飲酒に伴う人付き合い(知的活動)
  • ストレス解消
  • 経済的余裕
  • お酒に含まれる有用成分が存在する可能性

経済的余裕と言うのは「お酒を買うお金がある余裕」と同時に「大量飲酒で憂さ晴らしをする必要のない余裕」の両方が考えられますね。いずれも仮説ですので、まだ確認されたわけではありません。

さらに、少量の飲酒はいわゆる善玉コレステロールを増やす効果も知られていますので、動脈硬化改善に良い影響を与えることも、認知症予防に一役買っているのかもしれませんね。

また、先進国において、若者の場合は飲酒量に比例して老後の認知症リスクが高まる傾向が見られていますので、若いうちから飲酒習慣を身に付けることは避けた方がよさそうです。

休肝日は本来週に3日が理想的なのですから、そういう意味では「節度ある飲酒」と「理想的な休肝日」を組み合わせるだけでOKってことですね。

飲酒が認知症を引き起こす理由はタイプによってさまざま

認知症と言えばアルツハイマー病によるものが最も多いのですが、いずれのタイプの認知症においても、少量ではないアルコールは脳に悪影響を及ぼすことが示唆されています。

それは動脈硬化が原因の脳血管障害によって脳がダメージを受けるものから、アルコールが直接脳を破壊してしまうもの、酔っぱらって転び頭を打ってしまう外傷性のものまで、様々な病態があります。

これらは、例えば「アルツハイマー型はアルコールがこのように悪影響する」と言った形では、必ずしも一対一で対応しない物でもあるのです。

アルコールが脳血管をダメにして起こる認知症

少量のアルコールはHDLコレステロールの増加を助けて、動脈硬化を抑制する働きがあると同時に、飲む量が多くなると動脈硬化を促進して脳出血や脳梗塞などの脳血管障害をもたらします。

こうした病気は、発症がそのまま命取りになるケースもありますが、脳梗塞では生命は助かったものの、認知症の症状が出てしまうと言うケースが問題になっています。

特にアルコールによって引き起こされる多発性脳梗塞と言う病気は、脳血管性認知症の大きな原因だとされています。

また、アルコールが直接脳の血管に障害を及ぼすものではありませんが、お酒を飲んで足元がおぼつかなくなり、転倒して頭を打つと言うことは珍しいことではありません。中には泥酔していて、頭を打ったことすら記憶していないケースもあります。

強く頭を打った場合は、それ自体が大きな事故と認識されますし、皮膚に傷ができて出血したりこぶができたりもするでしょう。それに対して、意外に軽い頭部打撲でも、脳と脳を覆う硬膜を繋ぐ血管が破れて、ゆっくり出血することがあります。

すると早くて1週間、多くは1か月から2か月後ぐらいに、その血液が硬膜と脳の間に溜まって脳を圧迫し症状が現れます。慢性硬膜下血腫と呼ばれるこの病気は、50歳以上の男性に多く見られるもので、お酒の他にも危険因子は存在します。

症状としては、認知症の症状と前後して次のようなものが1つまたは複数現れます。

  • 頭痛
  • 嘔吐
  • 身体の片側のマヒ
  • 身体のしびれ
  • けいれん
  • 言葉が上手く出てこない(失語症)
  • 意欲の低下
  • 失禁

血腫による脳の圧迫が原因なので、一部の症状は脳卒中と似ているところもあります。こうした症状と共に呆けのような症状が見られたら、すぐに受診して下さい。診療科は脳神経外科です。

慢性硬膜下血腫は中年以降の人にリスクが多い

お酒で足元が危なくなっていたと言うのはもちろん重大な原因ですが、若いころと違って頭の中の血管がもろくなっていることとも無縁ではありません。ですので、次のようなことに当てはまる人は特に注意が必要です。

  • 脳の萎縮を指摘されている人
  • 出血傾向を指摘されている人
  • 抗凝固薬を服用している人
  • 人工透析を受けている人
  • がんが硬膜に転移している人

この中では、高血圧からの脳梗塞予防のために、抗凝固薬を服用している方と言うのが最も一般的でしょうか。

抗凝固薬とは「血液をサラサラにするお薬」と言って処方されることが多いもので、具体的には

  • ワーファリン(一般名:ワルファリンカリウム・ジェネリックあり)
  • プラザキサ(一般名:ダビガトラン・エテキシラート・メタンスルホン酸塩・ジェネリックなし)
  • イグザレルト(一般名:リバーロキサバン・ジェネリックなし)
  • リクシアナ(一般名:エドキサバン・ジェネリックなし)
  • エリキュース(一般名:アピキサバン・ジェネリックなし)

なども抗凝固薬です。

頭痛薬としても有名な

  • バファリン(一般名:アスピリン配合薬・ジェネリックあり)
  • バイアスピリン(一般名:アスピリン腸溶錠・ジェネリックあり)

も抗凝固薬ですので注意して下さいね。

アルコールは直接脳細胞を痛めつけてしまうこともある

例えばアルコール性小脳萎縮症では、アルコールによって小脳が縮んでしまっています。小脳と言うのは大脳のうしろ側にあって、運動や平衡感覚を司っていると同時に、大脳のトラブルの際にバックアップを行うこともある、非常に重要な器官です。

そのため、お酒によってこれが萎縮してしまうと、お酒を飲んでいない時でも酔っぱらったようなふらふらした歩き方になったり、ろれつが回らなくなったりします。

ただ、大脳にトラブルが起こっていない場合で、小脳だけがお酒によって萎縮したと言う限定的な状況では、常に酔ったような状態と言う症状の見た目とは裏腹に、認知症の症状は現れません。

まれな病気ですが、アルコールによって、左右の脳をつなぐ神経線維の束がダメになってしまうマルキャファーヴァ・ビニャミ病と言う物もあります。これを発症すると進行性の認知症や人格の変化、突然怒り出す、錯乱などの症状が現れます。

回復される方もおられますが、そのまま亡くなってしまう方もおられる怖い病気です。最初にこの病気が見出されたのは、20世紀初頭のイタリアで、キアンティワインを大量に飲む習慣のある人の病気として記録されています。

その患者さんでは、左右の脳をつなぐ神経線維の束の2/3が壊死してしまっていたと言うことです。この病気を発見した2人のお医者さんは病理学者でもあったので、おそらく亡くなった患者さんを解剖したのでしょう。

お酒による認知症は栄養障害が大きな原因になる

一方、お酒の飲み過ぎによって脳が栄養不足に陥って発症する病気もあります。ウェルニッケ脳症と言う急性の脳症がその入り口の一つです。

お酒を飲むと、体内からビタミンB1が急速に失われます。その理由は次のようなものです。

  • お酒を飲む時に食事を摂らない
  • お酒によって下痢気味になりビタミンB1の吸収が悪くなる
  • アルコールがビタミンB1の活性化を阻害する
  • アルコールの分解にビタミンB1が消費される
このようにしてビタミンB1が体内から失われると、脳の中でブドウ糖からエネルギーを得ることができなくなり、脳に病変が生じてしまうのです。活性化阻害と言う要因があるので、サプリやビタミン剤、ドリンク剤では対応しきれないかもしれません。

このウェルニッケ脳症では意識障害や酒に酔ったような歩き方、視線が定まらず目が揺れると言った症状が出ます。幻覚を見たりうわごとを言ったりするようにもなりますね。

そして、これが慢性化するとコルサコフ症候群と言う状態になりますが、これは代表的なアルコール性認知症と呼ばれている物です。

マルキャファーヴァ・ビニャミ病って舌を噛みそうな名前ですが、エットーレ・マルキャファーヴァさんとアミーコ・ビニャミさんと言う、イタリア人のお医者さん2人の名前から名付けられたものなのです。

お酒と上手に付き合って健康な身体と精神を維持する

酒は百薬の長などと言う言葉があるように、少量の飲酒習慣は認知症のみならず、一部の病気のリスクを下げることはよく知られています。しかし、ある一線を超えてしまうとお酒は毒物に変貌してしまうということを肝に銘じておかなければなりません。

そして、お酒の持つポジティブな影響力と言うのは、往々にして飲酒の言い訳に使われることがあります。でも、よく飲まれる方に覚えておいて欲しいことがあります。それは「人は言い訳を聞いてくれるが、病魔は聞いてくれない。」と言うことです。

お酒を飲んでもアルツハイマー病の予防はできない

お酒を飲んだ時に、アルコールを無害化するために働く2つの酵素があります。そのうち2段階目で働くアルデヒド・デヒドロゲナーゼ(脱水素酵素)2・ALDH2と言うものには4つの異なる遺伝子タイプがあり、日本人はそのうちの2種類を持っています。

それぞれ、ALDH2*1とALDH2*2と名付けられています。ALDH遺伝子は4量体と言って、4つのサブユニットが集まって働くものですので、この2種類の組み合わせは5パターン考えられます。

全部がALDH2*1のものと全部がALDH2*2のもの、そしてALDH2*2が1個・2個・3個混じったものです。全部が同じものをホモ接合、混じったものをヘテロ接合と言います。

ALDH2*1はアルコールからアセトアルデヒドになったものを、スムーズに酢酸に代謝してしまう力を持っていますので、ALDH2*1のホモ接合でできた遺伝子を持つ人はお酒に強いということになります。

一方、ALDH2*2は機能喪失型ですので、1つでもこれが混じったヘテロ接合型の遺伝子を持つ人でも、かなりお酒に弱くなってしまいますし、ALDH2*2のホモ接合を持つ人では、まったく1適もお酒は飲めなくなってしまいます。

このALDH2*2遺伝子を持つ人は、持たない人より1.6倍程度アルツハイマー病にかかりやすいというデータが少し前に発表されました。

実は、この時のデータでは、男女差がまったく見当たらなかったことから、飲酒習慣とアルツハイマー病の間に関係はないと言うことも発表されていたのですが、世間の人は大きな誤解をしたらしいです。

「お酒に弱い人はアルツハイマー病にかかりやすい」のであれば「お酒を飲んで鍛えればアルツハイマー病にかからない」と思いこんでしまったんですね。

いかにも酔いどれおじさんが使いそうな我田引水っぷりですが、お酒を全く飲めない人までが飲酒の努力をした例もあると言うのですから笑っていられません。

もちろん1.6倍のリスクと言うのは無視できませんが、そのメカニズムを正しく理解せずに、飲めないお酒を飲んだのでは本末転倒もはなはだしいですよね。

ましてやALDH2の活性が低い人がお酒を飲むと、代謝されにくいアセトアルデヒドの影響で、食道がんのリスクが跳ね上がることもわかっているのですから。

アルツハイマー病を予防するならビタミンEを摂る

このALDH2*2によるアルデヒドの代謝活性の低下がアルツハイマー病のリスクを上げるのは、お酒によって作られるアセトアルデヒドだけが原因ではないのです。むしろ、一日中お酒を飲んでいるわけではないので、そちらはメジャーな要素ではありません。

よく話題になる食用油の酸化で発生する、4-ヒドロキシ-2-ノネナールと言う毒性物質があります。これは体内でも活性酸素によって自然に作り出されています。実はこれもアルデヒドの一種で、ALDH2酵素によって無害化されているものなのです。

活性酸素によってこうした毒性のあるアルデヒドが体内で発生するのなら、抗酸化物質を積極的に摂って、毒性アルデヒドの発生を抑え込むのが正しい対策だといえるでしょう。

実際に、ビタミンEをよく摂る人ではアルツハイマー病のリスクが下がっているという研究結果も報告されています。お酒を飲むのではなく、ナッツや魚卵、アユの塩焼きなどを積極的に摂りましょう。

お酒のつまみによさそうなものが多いですが、飲み物はノンアルコールにしておいて下さい。

お酒は「これ以上飲んではいけない」と言う判断力を失わせる

古代ローマの文学者アテナイオスはその著作の中で、「最初の杯は健康をもたらす」と記しています。そして、「2杯目の杯は喜びをもたらす」とも書いていますね。

まさに現代日本における「認知症予防に適切な飲酒量」と「節度ある飲酒量」を、1800年以上昔に言い当てているとも言えるでしょう。そして、3杯目は眠りですが、4杯目以降はもうボロボロです。嬌声、無礼、怒りに喧嘩と酒に飲まれた散々な状態を描いています。

わが国でも14世紀前半に、吉田兼好師が徒然草の中で飲酒について「酒は百薬の長と言うけれど、病気の多くは酒が原因である。」と語っています。さらに続けて「お酒で憂さを晴らすというけれど、酔って嫌なことを思い出して泣いているヤツも多い。」と断じています。

さらには酔っぱらった女性の恥ずかしさを忘れた態度や、飲めない人に無理強いする酔っぱらい、挙句の果てに裸踊りまでやらかさんと言う勢いの年配の法師など、酒呑みの醜態をこれでもかと並べ立てて描いています。

ここまでお酒をこきおろした兼好法師ですが、同じ段の後半では「このように疎ましい酒ではあるが、捨て難いところもある」と手のひらを返しています。酒の楽しいシチュエーションを並べておいて「いとをかし。」ですから困ったものです。

どうやら、お酒と言うのはもっとも大事な判断力を低下させるものであるということは、何百・何千年も昔から続いてきたことのようですね。

でも、現代に生きる私たちには充分な知識の蓄積がありますので、もうそのような飲酒習慣からは卒業するべきでしょう。

徒然草の中では、酔った女性が酒の肴を男性の口にくわえさせ、自分はそれを反対側から食べると言うシーンも描かれています。ポッキーゲームが700年も前に存在したことにびっくりです。
キャラクター紹介
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