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認知症予防に運動がいい、その原理は?脳を活性化させる運動とその量

運動をする高齢の女性

健康長寿は万人に共通の願いではないでしょうか。医療も発達し、健康維持のための情報もサプリもあふれているこの時代、すでに自分なりの取り組みを始めている方も多いことでしょう。

ですが、いくら長生きしたところで、認知症になってしまって家族の顔も見分けられなくなってしまうのでは意味がない、とお考えの方もまたたくさんいらっしゃることでしょう。

現在の段階では、認知症は一度発症してしまうと決定的な治療法はありません。予防することが大切なのです。

でもどうやって?

食事に気をつけるなど、いくつか方法はありますが、最近研究が進み、認知症の予防には運動がたいへんに効果的であることがわかってきました。

ここでは認知症の予防に運動が効果的であるその理由、また具体的にどのような運動をどのくらいやったらいいのかについてお話していきます。

おすすめは「コグニサイズ」という国立長寿医療研究センターが認知症予防のために開発したエクササイズです。是非挑戦してみてくださいね。

認知症は脳の中で何が起きているの?種類別の原因

認知症とは、皆さまもご存知の通り、日常生活を送るのに支障が出るほどに著しく認知能力を低下させてしまう症状全般のことをいいますが、いくつか種類があります。原因・タイプ別に以下にあげていきます。

認知症の種類:アルツハイマー型認知症

認知症で最も多く見られるのがこのアルツハイマー型認知症で、患者の内、約60%を占めています。

脳にアミロイドβというタンパク質が蓄積し、正常な神経細胞が破壊されることによって起こるとされています。このアミロイドβは老人斑とも呼ばれるもので、老化によって脳内にできるシミのようなもの、と考えていただければわかりやすいと思います。

ですが、アミロイドβが蓄積してしまう原因自体についてはまだ完全には究明されていません。

また最近ではアミロイドβのかなりの量の蓄積が見られても、認知症を発症しないケースがあることもわかってきています。

アルツハイマー型認知症の発症には加齢だけでなく、遺伝的要因も関係していると言われています。

近年では高血圧や糖尿病などの生活習慣病も発症の要因になっているらしいという研究報告もあります。

アルツハイマー型認知症については多くのことがいまだ研究段階にあり、よくわかってはいないのです。

認知症の種類:脳血管性認知症

アルツハイマー型の次に多いのが脳血管に原因のあるこの脳血管性認知症です。全認知症患者の内約20%を占めています。

脳梗塞や脳出血などの脳内の血管障害によって脳が正常に機能しなくなって起こります。

その脳内の血管障害は、動脈硬化、高血圧、高脂血症、糖尿病などの生活習慣病がそもそもの原因となっているものです。生活習慣病はそれ自体病気であるというだけでなく、アルツハイマー型、脳血管性、両方の認知症の発症に関わってくるものです。

生活習慣病の予防や治療には、認知症予防のためにも真剣に取り組む必要があるということです。

その他の認知症の種類

ここでは今上にあげた、合わせて認知症患者のおよそ8割ほどを占める、この二つのタイプの認知症に焦点をしぼってお話ししていきますが、他に認知症としては以下のようなものがあります。

  • レビー小体型認知症
  • 前頭側頭型認知症
  • 皮質基底核変性症
  • クロイツフエルド・ヤコブ病
  • その他

(※これらを合わせた患者数が、全認知症患者からアルツハイマー型認知症、脳血管性認知症を除いた残りの2割ほどになっています。)

認知症は予防が大事!運動がなぜ必要なのか、その理由

認知症には治療法といったようなものがなく、いったん症状が出てからでは、進行を遅らせる程度のことができるくらいで、それも上手くいった場合に限られています。

日頃から予防を心がける以外に認知症を避ける方法はないのです。

さて、健康の話と言えば、どうしても出てくる「運動」のこの二文字。健康と運動は切っても切り離せない関係にありますが、認知症の予防すなわち脳の健康にも、運動は欠かせません。

なぜ認知症の予防に運動が大切なのでしょうか。

認知症予防に運動が必要な理由その1

まずは運動によって脳内で神経新生が促されるから、という理由があります。

運動すると筋肉が刺激され、その刺激が血液中の成長ホルモンを増やします。成長ホルモンは脳の海馬で神経系液性たんぱく質を増加させる役割を担っています。この神経系液性たんぱく質は、脳由来神経栄養因子(BDNF)と呼ばれるもので、脳を活性化してくれます。

このBDNFが多い人は、アミロイドβ(老人斑)がかなりあっても認知症を発症しないでいられるらしい、ということも最近ではわかってきています。

アミロイドβの蓄積に関するメカニズムはまだ解明されておらず、従ってその蓄積を防ぐ方法もわからないのですから、わたしたちにできることとしては、BDNFを増やすように心がけていく、ということになります。

いわばアミロイドβの解毒剤としてのBDNFであり、運動ということです。

認知症予防に運動が必要な理由その2

運動によって体内に取り込まれた新鮮な酸素は、活発になっている血流によって脳にたっぷりと送り込まれていきます。

脳神経細胞であるニューロン、そしてそのニューロン同士を結びつける働きをもつシナプスは、脳機能にたいへん重要なものですが、それらは十分な酸素が与えられることで活性化します。

脳の健康には脳内に酸素がたっぷり満ちていることが必要です。運動すなわち新鮮な酸素は、認知症以外の脳や神経作用の疾患、たとえばうつ病なども予防・改善してくれます。

認知症予防に運動が必要な理由その3

もっと単純な理由もあります。動脈硬化、高血圧、高脂血症、糖尿病などの生活習慣病を患っている人は、そうでない人に比べて認知症発症率が高いことがわかっています。

特に脳血管性認知症について言えば、その直接の原因になる脳梗塞や脳内出血は、生活習慣病が関わって起こるものです。

脳内血管の異常は、いわば生活習慣病の一症状であるわけですから、この脳血管性認知症を避けるためには、血管の若さを保ち、生活習慣病の予防あるいは治療をしておくことが大切になります。

さらにアルツハイマー型の認知症についても、そのメカニズムの詳細はいまだ不明ではあるものの、生活習慣病の影響を受けるものであるらしい、とのデータが発表されています。

生活習慣病の予防、治療と言えば食生活も大事ですが、運動が必須です。生活習慣病を意識しての生活、そして運動は、同時に認知症を予防してくれるのです。

どんな運動をどのくらいすればいいの?具体的な運動方法とその量

よく「適度な運動」という言葉を耳にしますが、それはどんなものなのだろう、と思ってしまうことってありますよね。

ここでは認知症予防にはどんな運動がよいのか、それをどのくらいの量、頻度で行ったら効果があるのかを具体的にご紹介していきます。

認知症予防に効果が期待できる運動:有酸素運動

まず第一にあげられるのは有酸素運動です。

その予防効果についてのメカニズムの詳細はまだ完全には明らかになっていませんが、認知症予防には有酸素運動が有効であることはすでに実証済みで、近年、日本を含む世界中の大学や研究機関から科学的根拠のあるデータや論文が相次いで発表されています。

少なくとも有酸素運動が血液や血管の若さを保ち、脳内出血を防いでくれるのは確かなことですので、脳血管性認知症の予防には確実に有効であると言えます。

また、有酸素運動が海馬や前頭葉の血流をよくすることや、アルツハイマー病の脳内に多く見られるアミロイドβを少なくすることもわかっています。

運動は無酸素運動と有酸素運動の二つに大別されますが、認知症予防に有効なのは、血液中の酸素を一気に使うような短時間の運動ではなく、歩行などの、どちらかというとおだやかな日常的な動作を、体内に酸素を取り入れながら継続する有酸素運動の方です。

「有酸素運動とは、ウォーキングなどの軽い運動を20分以上継続して行うこと」ととらえておいていただければよいかと思います。

主な有酸素運動には以下のようなものがあります。

  • ウォーキング
  • ジョギング
  • 踏み台昇降
  • 自転車
  • 水泳

最後にあげた水泳だけはプールに出向く必要がありますが、それ以外はいずれも、今日からでも手軽に始められそうなものばかりですね。ウォーキングや自転車などは通勤や買い物などですでに多少はなさっていることでしょう。

時間や頻度としては、上記のような運動を一回30分~1時間程度、週に2~3日行うのが効果的とされています。

また、週に合計が150分以上になりさえすれば、まとまった時間をとって運動したのでなくともそれと同等の効果が得られる、としている研究報告もあります。

ご自身の体力やライフスタイルに合わせて、無理なく続けられる運動を生活の中に組み入れていきましょう。

認知症予防に効果が期待できる運動:ストレッチ・ヨガ

ストレッチもおすすめです。筋肉の動きは脳からの指令によって行われますが、その逆もまた真なりで、筋肉の動きはフィードバックして脳に刺激を与えます。両腕を大きく伸ばしながら頭上に上げる、といった簡単な動作だけでも血流はアップしますし、脳への刺激になります。

最近では特にヨガが、高齢者の認知機能の改善に対し、単なるストレッチ以上の効果をあげているとの研究報告がなされています。(米イリノイ大学運動コミュニティヘルス研究室)

認知機能はストレスや不安感に影響を受けて低下するものであるので、精神にも働きかけていく、リラックス効果の高いヨガが認知機能の改善という結果をもたらしたのだろうということです。

イリノイ大学研究チームでは、この研究は参加者が限定されていて、期間も短いものであったため、今後より広範囲の研究が必要であり、どのようなメカニズムで認知機能が改善されたかについては精査が必要であるとしています。

その上で一方では、ヨガは誰にでも取り組みやすい運動であるという長所にも触れ、ヨガを肯定的に評価しています。

また、イスラエルのベス・イスラエル・ディアコネス医療センターからもヨガと瞑想が脳によい影響を及ぼすとの報告を発表されています。

ヨガと瞑想を組み合わせて8週間行う実験調査で、実験対象者(軽度の認知症患者を含む)の脳内では、実験前に比べて海馬が活性化するなどの変化が見られたということです。

海馬は脳内で記憶に関わる部位で、アルツハイマー型認知症患者の脳では海馬が委縮していることが知られています。

こちらの研究でもヨガと瞑想の脳に対する影響のメカニズムが完全に解明されたわけではありませんが、ヨガの実際の効果は実証済みと言ってよいでしょう。

時間や頻度については、イリノイ大学の研究では1時間のハタヨガを週に3回を2ヶ月、イスラエルの研究では週に2時間程度の瞑想とヨガのレッスンの他、自宅で毎日15~30分の瞑想を8週間続けたということですので、効果の出る目安としてはそのくらいということでしょう。

すでにヨガを始めている方や習慣になっている方には、ヨガには認知症予防効果もあるとは、うれしい知らせですね。ぜひお続けください。

まだ始めていない方は、認知症に不安を感じているのなら、思い切って始めてみてはいかがでしょうか。

スタジオでのレッスンに通うことが出来れば言うことはありませんが、ヨガには初心者でも簡単にできるポーズがたくさんあり、本やウエブ上で多数紹介されてます。

そのいくつかはストレッチ以上に簡単ではないかというくらいに簡単なものです。しかも認知症の予防策としては、ストレッチよりずっと効果が高いと実証済みなのです。

ヨガのポーズや呼吸法には何やら難しそうな名前がついているので、とっつきにくいと(時にはあやしいとさえ)感じる方もいらっしゃるかもしれませんが、実際にやってみると簡単なものもある上、自宅でもできますし、すぐに気に入って習慣にしていけるのではないかと思います。

認知症予防に効果が期待できる運動「コグニサイズ」

コグニサイズというエクササイズをご存知でしょうか。

国立長寿医療研究センターが認知症予防のために開発したもので、認知(cognition)と運動(exercise)を組み合わせて「コグニサイズ」です。

その名のとおり簡単な計算ややしりとりなどの何らかの認知活動を行いながら軽い運動をするもので、二つの作業を同時に行うことで、それぞれを別々に行っている時よりも脳を活性化させることができるとされています。

コグニサイズをしたことで、軽度認知症患者の記憶テストの成績が向上した、脳の萎縮の進行が抑えられた、などの報告があります(国立長寿医療研究センターの愛知県大府市在住の65歳以上の高齢者を対象にした調査結果)。

実際にやってみると、確かに頭がすっきりした感じになります(筆者体験)。コグニサイズ参加者からは他に以下のような感想が出ているということです。

コグニサイズ参加者の感想

  • 頭がすっきりした。
  • もの忘れが少し改善したようだ。
  • 集中力が以前より持続するようになった。
  • 以前よりよく出歩くようになった。
  • ひどい肩こりがたいぶよくなった。

ではここで、代表的なコグニサイズをご紹介しておきましょう。

①コグニステップ
右足を右へ、左足を左へ出しては戻すステップを踏みながら、声に出して1から順に数を数えていく。 数が3の倍数の時には声を出さずに手をたたく。
②コグニウォーク
いつもより大また、少し速足で歩きながら、しりとりや川柳づくりなどをする。
③コグニ踏み台昇降
3人一組で踏み台昇降をしながら、しりとりをする。このしりとりでは、前の2人が言った単語を記憶しておき、声に出して繰り返してから自分の単語を言う。

家族や友人と会話を楽しみながらウォーキングする、などというのも軽めのコグニサイズになりそうですね。

実際、認知症予防という見地から「同じウォーキングするなら、一人でするのでなく誰かと一緒に」と推奨している医師もいます。コミュニケーションというのは脳へのよい刺激になるから、ということです。

コグニサイズをする時の注意点

  • 無理はしないで徐々に行う。
  • 準備体操を十分に行ってから始める。
  • 実施中の転倒など、ケガに注意する。
  • 実施中の水分補給に気をつける。
  • 身体のどこかに痛みや異常を感じたら中止する。
  • 一度に長時間やるよりも、少しの時間でよいので毎日やる方が効果的。

最近では地域保健事業の一環としてコグニサイズへの取り組みを始めている自治体もあるようです。興味を持たれた方はお住まいの地域の自治体や保健センターなどに問い合わせてみるとよいでしょう。

運動が身体にいいのは間違いない!少しずつ始めてみましょう

最初にお話ししましたとおり、認知症には今のところ決定的な治療法はありません。いったん発症してしまうと、元に戻すことはできず、進行を遅らせるくらいのことしかできないのです。

そうである以上、予防に運動が効果的であるとの数々の報告は見逃せません。

運動は認知症だけでなく生活習慣病を予防してくれるものでもあるのですから、なおさらです。 

末永くイキイキとした生活を送るためです。現在運動習慣をお持ちの方はそれを続けましょう。そうでない方は一日10分程度から、自分に取り組みやすそうなものを始めてみましょう。

もちろん、今現在何らかの疾患をお持ちの方、健康に不安のある方は、まずは医師に相談なさることを、どうぞお忘れなく。

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