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その認知症は治療できるかも!”治る認知症”水頭症の症状と見分け方

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日本では認知症患者は、2012年の時点で約462万人と推計されていて、2025年には700万人を超えると推計されています。これは65歳以上の高齢者の5人に1人にあたります。

ただでさえ高齢化が進む中で、認知症という病気はこれから、ほとんどの方が何かしらの形で直面する問題なのではないでしょうか。

認知症には様々な症状、また原因があります。残念ながらほとんどの認知症は有効な治療方法がありません。進行を遅らせるという程度のことは出来ても、治す、ということは難しいのです。

でも中には治療することで、症状が改善する見込みのある認知症もあるんです。もしそうだったら、治療しないなんてこと程もったいないことはありません。

今日はその”治る認知症”、水頭症についてのお話をしたいと思います。

認知症のような症状が出る特発性正常圧水頭症(iNPH)という病気

正常圧水頭症とは、分かりやすく言うと正常な脳圧(頭蓋内圧)で頭に水が溜まってしまっている状態のことです。それによって認知症のような症状が起こります。

頭の中に溜まる水というのは脳脊髄液(99%は水で、無菌)のことで、毎日頭の中で約450ml作られ、脳や脊髄を保護しています。通常は頭の中を巡りながら吸収されるので、頭に溜まってしまうことはありません。

でもこの脳脊髄液が何らかの原因で異常に頭に溜まってしまい、様々な障害を起こす病気を水頭症と言います。

この水頭症の原因としては、

  • 脳脊髄液の産生が多すぎる(産生過剰)
  • 吸収されにくい(吸収障害)
  • 脳脊髄液の流れが滞る(循環障害)

の3つがあります。

水頭症の種類別:高齢者に多い水頭症が見過ごされやすい理由

水頭症には2つのタイプがあり、非交通性水頭症と交通性水頭症があります。

水頭症の種類

非交通性水頭症は小児に多く、脳脊髄液の流れがブロックされることで、頭蓋内圧が高くなります。

頭蓋内圧が高くなると、頭痛や吐き気、嘔吐や意識障害がしばしば起こり、命にかかわることもありますが、治療可能です。

非交通性水頭症は成人に多く、脳脊髄液の循環・吸収が悪くなります。この水頭症には頭蓋内圧が上がるタイプと、頭蓋内圧が上がりにくいタイプがあり、後者のタイプが正常圧水頭症と呼ばれます。

正常圧水頭症には、くも膜下出血や髄膜炎、脳腫瘍や頭部外傷など、原因となる病気や怪我があってそれに付随して起こる続発性正常圧水頭症と呼ばれるものと、原因が分かりにくい、特発性正常圧水頭症と呼ばれるものがあります。

高齢者の水頭症の多くはこの特発性正常圧水頭症(iNPH)です。(iNPH:idiopathic Normal Pressure Hydrocephalus)

続発性正常圧水頭症はそれに先行して原因となる病気や怪我があるため、診断される治療することが出来ますが、特発性正常圧水頭症は原因となる病気がないため、認知症のような症状が出た時に水頭症が見過ごされる事があります。

認知症と診断される高齢者の5%〜10%に、この特発性正常圧水頭症(iNPH)があるのではないかと考えられています。

意外と多いですよね!

この特発性正常圧水頭症であった場合、溜まってしまった水(脳脊髄液)を抜く治療をする事により、認知症の症状が改善する可能性があります。そのために、この正常圧水頭症なのかどうかを見分けるポイントについて見てみましょう。

正常圧水頭症によって表れる主な症状3つ:歩行障害・認知症・尿失禁

まず正常圧水頭症によって表れやすい症状の1つは歩行障害です。

また、2つ目に、集中力の低下や注意力の低下、意欲の低下などが起こり、認知症のような症状が見られたりします。

そして3つ目の症状として、トイレが間に合わず尿失禁が見られたり、尿の回数が多くなる事もあります。

これら3つの症状について詳しく見てみましょう。

チャップリンみたい?正常圧水頭症か見分ける歩き方チェック!

正常圧水頭症によって起こる歩行障害には特徴があります。その特徴を知っておき、認知症だと思って諦めていた人の、歩き方を観察してみましょう。

チャップリンのコメディ映画での歩き方を見た事がありますか?見た事がある人なら、足を開いたガニ股歩きで、歩幅は狭く、すり足で歩く様子が目に浮かぶ事でしょう。

正常圧水頭症になると、この歩き方と似ている、と言われる特徴的な歩き方になることがよく見られます。

歩き方の特徴

また、方向を変えるときにバランスを崩しやすくなり、転倒が多くなる事もあります。

症状が進むと第一歩がなかなか踏み出せなくなったり、止まれなくなったり、立っている事が難しくなったりします。これらの症状はパーキンソン病とも似ているので、間違われることもあるようです。

このような兆候が見られたら、症状が進行する前になるべく早めに受診しましょう。

水頭症(iNPH)による歩行障害のまとめ

  • 小刻みに歩く
  • ガニ股気味に歩く
  • すり足になる
  • 方向転換が不安定
  • 転倒しやすい
  • 第一歩が踏み出しにくい
  • 止まれずに突進する

正常圧水頭症によって見られやすい認知症のような症状の特徴は?

一般に認知症では、記憶障害や見当識障害(時間や場所、人、状況が分からなくなる)などが見られます。でも正常圧水頭症によって起こる認知症は、そういったものよりも集中力や注意力が低下する事が多いようです。

反応が鈍くなったり、ボーとして何もしなくなったりするなど、意欲の低下などが見られ、うつ病のように見える事もあります。

日課にしていたことや趣味をやらなくなったり、集中力が減り物忘れがひどくなっていると感じたら、病院の受診を考えましょう。

水頭症(iNPH)による認知症のまとめ

  • 意欲・自発性が低下する
  • 集中力が低下する
  • 思考が緩慢になる
  • 物忘れがひどくなる

正常圧水頭症によって起こる事が多い尿失禁

正常圧水頭症によって起こる尿失禁は、どこですれば良いかわからないとか、尿意を感じなくなるというよりも、トイレに行きたい、と思ってからトイレに行くまでの時間を我慢する事が出来ない、切迫性である事が多いようです。

また尿の回数が増え、トイレに何度も行く、という事もあります。

水頭症(iNPH)による尿失禁のまとめ

  • 切迫性尿失禁(トイレを我慢できる時間が短くなる)
  • 頻尿(トイレの回数が多くなる)

これらの主な3つの症状のうち、一つでも見られたなら、早めに病院へ行きましょう。

治療が早ければ早いほど、症状が改善する可能性が高いと言えます。逆に遅くなるほど、治療しても改善する度合いが少なくなってしまいます。なるべく早期診断、早期治療をすることが大切です。

正常圧水頭症かもしれないと思ったら何科へ行けば良いの?

まず何科を受診すれば良いでしょうか?

一番良いのは脳神経外科です。でも、いきなり大きな病院へかかるのは気がひける、という場合は、かかりつけ医に相談されて、病院の情報を頂いたり、紹介してもらうのも良いでしょう。

神経内科や物忘れ外来(認知症の診療を専門的に行なう外来)などで診察してもらうことも出来ます。正常圧水頭症が疑われるようなら、脳神経外科に紹介してもらえるでしょう。

受診の際には、今見てきたような症状のうち、気になるものがあることを伝えてください。「もしかしたら水頭症という事はないでしょうか?」と聞いてみるのも良いと思いますよ。

実際に正常圧水頭症かどうか判断するたに病院で受ける検査

CT(コンピューター断層撮影装置)やMRI(磁気共鳴画像装置)で検査し、脳室が大きくなっているかが確認されます。でもこれだけでは水頭症かどうかを判断する事は出来ません。アルツハイマー型認知症などでも脳室が大きくなるためです。

そのため、脳室の拡大が認められるなら、次に髄液循環障害の有無を検査します。

いくつかの方法がありますが、基本的には、髄液排除試験(髄液タップテスト)と言われる簡便で安全な検査が行なわれます。こういった検査のために2、3日、場合によっては1週間ほどの入院が必要になるかもしれません。

髄液タップテストというのは、実際に髄液を腰椎から少し抜いてみて、症状が一時的に改善されるかどうかを試すというものです。改善されるなら、手術が有効であると期待できます。

正常圧水頭症の検査で行われる髄液排除試験髄液タップテスト

他にも髄液排除試験として、持続髄液ドレナージ検査といった、髄液タップテストで症状の改善が見られなかった患者を精査するために、さらに検査を行なう場合もあります。

腹部髄液圧測定、髄液流出抵抗測定検査(インフュージョンテスト)といった検査もあります。

正常圧水頭症だと分かったら治療にはどんなことをするの?

正常圧水頭症の治療をするには、手術を行ないます。頭の中に溜まってしまった余分な髄液を他の場所に流れるようにするため、シリコン製の管を通すシャント術と言われる手術です。

また、髄液の流れる量を調節する役目をする装置も、一緒に埋め込まれます。

管をどのように流すかは、3タイプあります。

  • 頭からお腹の中へ
  • 頭から心臓へ
  • 腰椎からお腹へ

余分な髄液を他の場所に流すVPシャントVAシャントLPシャントの図解

これらのうち、様々なことを考慮して、人によって最善と思われる方法が選ばれます。

正常圧水頭症の治療をすれば必ず認知症は良くなるの?

このような治療を受けた場合、人によっては1時間くらいで劇的改善することもあると言われています。治療が早いほど認知症のような症状が改善される可能性が高いですが、必ず改善するとは限りません。

症状がだいぶ進行してしまった場合は改善の度合いも低下しますし、また水頭症以外にもアルツハイマー型認知症など他の要因も複数持っていた、という場合もあります。

でも治療をしないよりは、改善される症状は多くなるはずです。

正常圧水頭症による歩行障害は、手術によって90%ほどの確率で改善されるようです。歩行障害が改善されれば、転倒の危険も低下し、それによって起こる寝たきりなども防ぎやすくなります。

またトイレを我慢できる時間も長くなる事が多いので、トイレが間に合わない、ということも減り、尿失禁についても改善が期待できます。

(トイレについては、部屋をトイレの近くにするとか、近くにポータブルトイレを用意するなど、環境を整えることでも改善が見られやすくなるでしょう。)

また認知症の症状については、時間をかけて徐々に良くなった、というケースもありますので、すぐに改善しなかったとしても諦めないでください。1年位かけて徐々に回復する、ということもあるようです。

すぐに認知症のような症状が改善しなかったとしても、諦めずに、出来るだけ話しかけたり、人と会う機会を作ったり、音楽を聴かせたりなど、様々な刺激を、無理のない程度で与え続けるようにしましょう。

認知症だからといって諦めないできちんと診断を受けよう

この特発性正常圧水頭症の患者さんは国内に推定で30万人もいるとされています。しかも、そのほとんどの人が治療を受けてないそうです。これはほんとうに残念なことですよね。

みすみす治る病気をそのまま放置しているわけですから、患者さん本人にとっても介護する人にとっても大きな損失です。

放置してしまう原因として、もともと歳だからしかたがないとか、認知症は治らないとしてきちんと診断を受けていないことが上げられます。また、もう一つの原因として歩行障害があるために、別の診療科に行ってしまうケースも多くあります。

患者さんはもちろん、介護に携わる人も一般の健康な人も治る認知症があることをきちんと認識することが重要です。

この病気は注射針で脳脊髄液を抜くだけで劇的に回復することもありますが、脳脊髄液が余分に貯まりやすい病態事態は治るわけではないので、根本的には手術が必要になります。

手術は余分な脳脊髄液をチューブを通して、腹腔に吸収させるようにする手術で1時間程度で終わります。認知症は治らないと思われがちですが、特発性正常圧水頭症は劇的に治せる認知症なのです。

この特発性正常圧水頭症の治療をすれば日本でおよそ30万人にも及ぶ認知症患者さんを助けることが期待できるのです。

認知症の患者さんやその家族の方は、認知症だからといって諦めないで、まずはきちんと専門医の診断を受けましょう。特発性正常圧水頭症は、症状として認知障害以外に歩行障害が特徴ですので心当たりがある方は必ず医師に相談してみましょう。

認知症は誰しもなりたくないものですね。でも、もし身近な人が認知症になってしまった、と思ったとしても、「歳だからしょうがないか」と諦めず、もしかしたら治る認知症ではないだろうか?と、一度観察してみるようにしましょう。

もしかしたら…と感じたなら、少々手間がかかるかもしれませんが、病院へ行く時間を作りましょう。思い切って専門医に診てもらうなら、思わぬ良い結果へつながるかもしれません。

周囲の人が何かおかしいと思ったら、とにかく早めに病院へお連れして治療する事が大切なのです。私もこの歳ですから他人事じゃありませんねぇ。ヘレンさん、頼みましたよ!
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