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認知症予防につながる、老いや認知症を認めない高齢者への接し方

高齢者とその家族の手

人は必ず老いるものです。だんだんと体が弱り、今までできたことが徐々にできなくなっていきます。それは、ごく自然で当たり前な、加齢による変化です。

そうは言っても、自分が弱ったことを自覚し認めることは、容易なことではありません。誰だっていつまでも若々しく、他人に誇れる強い自分でありたいと思うものです。

たくさんの方が、自身の老いや衰えを受け入れられず、さまざまな葛藤を抱えていることでしょう。

けれど、老いた現状を受け入れることで、新たな道が開ける場合もあります。

老いを受け入れられない方にも現状を自覚させて受け入れてもらい、その状態に適した活動をしてもらえたら、その生活はきっとより良いものにすることができるでしょう。

本人が自分で老いを受け入れられないならば、周囲の手助けが必要です。

老いを自覚することは、認知症の予防にもつなげられる

老いを自覚することは、本人にとってもつらいことです。周囲としても、そのようにつらいことをあえてさせる必要があるのかどうか、悩んでしまうこともあるでしょう。

けれど、老いを本人に自覚してもらうことには、本人にとっても大きなメリットがあります。自分自身の今の状態を知ることで、日々の過ごし方を改善し、認知症の予防につなげることができるのです。

老いを自覚することで、どういったことができるようになるのか、具体的な内容について考えてみましょう。きっとその重要性がご理解いただけるはずです。

老いを自覚することで、自分にとっての危険を知ることができる

高齢になると、目や耳が悪くなり、筋力や体力も落ちていきます。さまざまな危険が増えていきますが、自分の状態を把握していないと、自分にとって何が危険なことなのか、わからないままになってしまいます。

このような状態では、転倒したり、うっかりケガをしてしまったりするリスクが、非常に高いです。骨折したり寝込んだりしてしまえば、それをきっかけに認知症を発症してしまうかもしれません。

まずは、高齢者によく見られる身体機能の低下について、知っておきましょう。

目が悪くなってしまった場合
目で見て危険を察知することが難しくなり、ちいさな段差に気づきにくくなってつまずいたり、危険を勧告する文章などを見落としたりしがちになります。
耳が遠くなってしまった場合
クラクションや人の声など、耳で聞いて注意をすることが難しくなります。声をかけられても気づきにくくなり、周囲の状況を把握する能力にも欠けてしまいます。
筋力や体力が落ちてしまった場合
多少の運動でも体に過剰な負担になりやすく、思いがけない疲労から寝込んでしまったり衰弱したりするおそれがあります。転倒しやすくなる危険もあります。
集中力や注意力に欠けている場合
高齢になると、ひとつのことに集中し続けることが難しくなり、注意力が散漫になります。広い視野を持つことも難しくなり、足元がおろそかになったり、自分の周囲にある物事に意識を払えなくなったりします。認知症の方は、それが一層顕著です。

「普段はじっとしていてあまり活動していなかったのに、ふと気が向いて動いたら、危険なことになった」などという事態は、決して珍しいことではありません。危険な目にあってから、体の弱りを自覚して後悔しても、後の祭りです。

普段から自分の体の変化を自覚し、自分にとってどういう行動にどのような危険が起こり得るのかを把握しておくことが、事故の予防には大切なのです。それを自覚していればこそ、身体機能の低下予防に努めることもできます。

活動しなくなると起こる、老化による体への悪影響

歳をとると体が弱り、今までできていたことができなくなったり、病気にかかりやすくなったりします。親しい人が他界してしまう別離などの喪失感から、精神的な落ち込みを感じることも多いでしょう。

それを直視させることは、周囲の人間から見ても、とても辛いことのように思えます。

ですが、老いが受け入れられていない方は、その衰えを直視しないで済むように、行動や活動を控えてしまいがちです。それは、本人にとって、本当に良い状態でしょうか。

「やりたくないから」「動くのは億劫だから」と活動を控えてばかりいると、心身に望ましくない影響が現れてきます。何の働きかけもなくすごせば、老化による体への悪影響は、どんどんと進行していくばかりなのです。

運動器不安定症
歳をとれば骨がもろくなり、骨格を支えている筋肉も痩せていきます。免疫系の機能に支障をおこし、リウマチなどの疾患も発症しやすくなります。これらのことから、歩行などの運動に支障を生じやすくなります。

高齢化にともなって運動機能低下をきたす運動器疾患により、バランス能力 および移動歩行能力の低下が生じ、閉じこもり、転倒リスクが高まった状態。

廃用症候群
体調を崩したり、体を痛めたりしたときに、「いつまでも体が重くつらいような感じが残って、安静が必要なくなったのに寝てばかりで過ごしてしまう」ということも多いかもしれません。ですが、過度の安静はかえって体のためによくありません。

ベッドで長期に安静にした場合には、疾患の経過の裏で生理的な変化として以下の「廃用症候群の症状の種類」に示すような症状が起こり得ます。

病気になれば、安静にして、寝ていることがごく自然な行動ですが、このことを長く続けると、廃用症候群を引き起こしてしまいます。

ここに挙げたのは、ほんの一例です。特別な疾患にかからなくとも、活動を嫌がりただじっと過ごしていれば、体はどんどん衰えていきます。その時点ではできていたはずのことも、塞ぎ込んで過ごすうちに、できなくなっていってしまいます。

今の状態を知ることで、もっている能力を生かすことができる

加齢にともなって落ちていく機能低下を防止するためには、適切に活動を取り入れることが大切です。そのためには、今の自分の状態を適切に把握する必要があります。

今の自分の状態をありのままに認めることができれば、今ある機能がなんなのかを把握して、それを活用することができるようになります。できることとできないことを理解できれば、できることに積極的に取り組むように勧めることもできます。

「これはできなくなったけれど、こういうことはできる」と割り切ったり、「以前と同じようには動けないけれど、まだまだ動ける」と頑張ったりすることは、今のその人に残されている能力を把握していなければ、できないことなのです。

生活のなかに活動を取り入れることは、認知症の予防にも繋がります。こういったことから、老いを自覚することや、今の自分の状態を把握することは、本人の老後をより良いものにするために必要なことなのです。

老いを受け入れてもらうために、どういった支援をするべきか

自身で老いを受け入れるというのは、なかなかに困難なものです。

ですが、周囲が手を貸してあげれば、その困難さは大幅に軽減することができます。できることなら本人の性格やそれまでの生活スタイルを理解して、尊重してあげたいものです。

自分の変化を受け入れられない、その気持ちを知る

老いを認めなくてはいけないけれど、それを受け入れることができずにいるとき、本人はひどく悩んだりストレスを感じたりしていることでしょう。時に、考えることを放棄したり、攻撃的になったりしてしまうかもしれません。

自身の状態が自分で受け入れられず、起こっている事態が認められないとき、認知症の方には特に特徴的な反応を見ることができます。

そのタイプを、いくつかご紹介します。

葛藤型
目の前に起きている状況を正しく理解できず、自分のなかで葛藤がおきてしまいます。その葛藤を表現する手段として、さまざまな問題行動をおこしてしまうタイプです。暴力や暴言、介護への拒否などが見られます。
遊離型
現在の状態に問題があるにも関わらず、その状態を直視せず、考えないように逃避してしまうタイプの方です。なにごとにも無関心になって、感情や表情も動きにくくなります。
回帰型
自分にとって「あの頃は良かった」と思う時代に、本人だけがタイムスリップしてしまう状態です。仕事にやりがいを持っていたころだったり、父親・母親として意欲や役割を持っていた頃だったりと、戻ってしまう時代は人によってさまざまです。

これらは認知症の周辺症状の一部ですが、自分が認められない状態になってしまったときには、認知症でなくてもこのような状態に陥ることがあります。

実際はこのとおりの反応があらわれるとは限らず、それまでの生活や性格によって、千差万別です。ですが、これらの例を知ることが、本人が感じている不安を理解してあげるための手段のひとつとなります。

相手の気持ちを尊重し、共感しながら支援していく

老いるということは、さまざまな喪失を自覚することです。いろいろなものを失って落ち込んでいる方に、強く当たったり、言い分を押し付けたりすることはよくありません。受け入れてもらうどころか、反感を招いてしまいます。

まずは、その喪失感に寄り添い、その人の不安や寂しさを受け入れてあげましょう。

本人の不安に共感してあげる
老いを自覚するということは、自分の弱みを自覚することです。それは、多くの方にとって難しいことだということを、理解してあげましょう。受け入れることを急がせたり、強制したりすることは、本人の不安を煽ってしまいます。
本人の、それまでの暮らしを尊重する
身近な方であれば、もともとの性格や、それまでの暮らしぶり、家族構成などを知っているでしょう。そういった情報を活用できることは、本人への支援を考える上で、大きな利点となります。
本人の個性を大切にする
内向的な性格の方や、社交的な方、プライドの高い方や、威厳を保ちたくて虚勢を張る方など、人の人格は実にさまざまです。その方の個性や状態に合わせた支援をおこなっていきましょう。
時間がかかっても、受け入れてもらえなくても、焦らない
焦りはいらだちを生みます。老いを受け入れてもらう目的は、本人に活動を促し、安全に生活してもらうためだということを、忘れてはいけません。老いを受け入れさせることに懸命になるあまりに、生活の安寧や安心をおざなりにしてしまっては本末転倒です。

生活の安全を確保しながら、じっくりと時間をかけて向き合ってあげましょう。そして、相手のことを大切に思うからこそのことだと、しっかり伝えてあげましょう。

自分のことを大切に思ってくれる人がいるというのは、とても心強くありがたく思えるものです。真心が伝われば、時間はかかっても、きっと受け入れてもらえるでしょう。

ありのまま、穏やかに楽しく過ごせるように支援していこう

忘れてはいけないことは、本人に老いを直視させることが目的なのではない点です。

老いを受け入れてもらうことは、本人が自分のありのままを認識し受け入れて、生き生きと過ごせるようになるための手段です。体の衰えを直視せず危険な目にあうことを、回避したい目的もあります。

老いを現実のものと認めさせたいあまりに、本人を追い詰めてしまったり、本人との関係が壊れてしまっては、元も子もありません。

もしかしたら、老いを受け入れることはできず、受け入れられない気持ちを抱えながら過ごしていくことになるかもしれません。一旦は受け入れたとしても、疾患やケガなどで状態が変わり、また変化を受け入れられない状態に戻ってしまうこともあるかもしれません。

支援する側も気持ちを穏やかに保ち、焦らず、急がず、本人の気持ちに向き合い寄り添いながら向き合っていくことが大切です。

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