健康生活TOP 肝硬変 なぜお腹に水がたまるのか?肝硬変による腹水の原因と治療法

なぜお腹に水がたまるのか?肝硬変による腹水の原因と治療法

ベッドに寝転がり悲しい表情をする男性

「腹水が溜まる」と言う言葉はよく耳にします。どちらかと言うと重病の症状の一つだととらえられることが多いですね。実際に腹水が溜まる病気には重病が多いのでこのイメージは間違いではありません。

ただ、腹水にはどこからできてくる物かによって5種類、メジャーなものでは2種類の腹水があります。今回は主に肝臓病の最終段階、肝硬変が原因で溜まるものについて見てゆきましょう。

がんによる腹水と肝硬変による腹水はでき方が違う

腹水が溜まるというと、がんが進んだ時に見られることもあります。ですので余計に重病イメージが付きまとうんですね。腹水は大きく5種類に分類されます。この中で最も多いのが肝硬変による腹水です。

腹水は腸の運動の摩擦を減らす役目などを持つ、生理的なものが100mL以下の量で誰にでも存在しています。これが100mLを超えて溜まることを「腹水症」つまり腹水が溜まると呼ばれる状態と言っているのです。

腹水は大きく分けて5種類のものが存在する

一般に腹水と言うと、肝硬変などによる漏出性腹水と呼ばれるものが有名です。その他、がんによる滲出性腹水も少なくない症例があります。また、怪我や膵炎などによる乳び性腹水、レアケースと言える尿腹水や粘液性腹水と言うものも存在しています。

メジャーな腹水は、さらに細分化されて分類されていますが、今回そうしたことについては措きましょう。漏出性と言うのは血管から水分が漏れ出た、滲出性と言うのは病変から水分がにじみ出たと言う意味です。

これらの原因は一つだけで起こるわけではなく、複合して起こることがほとんどです。

肝硬変による腹水は血管やリンパ管から水分が押し出されて溜まる

健康な状態の時にも存在している100mL以下の腹水は、常に同じものがあるわけではなく、1時間に40%~80%が新しいものと置き換わっています。

つまり、常に血管などからは新鮮な水分が補給され、古くなったものは血管などに再吸収されて腎臓などに送られるということになります。この出入りのバランスが崩れると溜まってしまうということになりますね。

こうした腹腔・間質と血管内の水分の移動は物理的圧力と浸透圧によってバランスしています。浸透圧と言うのは何かが水に溶けているときの濃度の差によって発生する圧力のことです。

肝硬変ではこの圧力に不均衡が起こってしまうので、水分が血管から漏出して腹水を増やしてしまうという訳なのです。

血管からの水分の漏出と言うと浮腫(むくみ)も同じ原因で起こりますね。そして、腹水が見られる患者さんでは浮腫が見られる場合も少なくないのです。

肝硬変は肝臓病の進んだ姿

肝硬変と言うことばはよく耳にします。肝臓病の重いものだということもよく知られています。名前からして肝臓が固くなるんだろうということも想像できますね。でも、そもそも肝硬変とはどんな状態なのでしょう。

これは肝臓の細胞が壊されることによって、その後をコラーゲンでできた組織が埋めてゆくことで本来の肝臓の細胞がどんどん減ってしまった結果の病気なのです。

肝硬変は肝臓にできた増殖する傷跡

例えばお酒の飲みすぎやウイルス感染によって、肝臓の細胞の一部が壊れてしまったとします。これは言ってみれば小さな傷ですので、皮膚の傷と同じようにコラーゲンでできた傷跡の組織がそれを埋めてくれます。

私たちの目で見た判りやすい例で言えば、ちょっと酷いやけどを想像してください。治ってすぐには、元の皮膚とは見た目の異なる皮膚ができていますね。なんとなくつるっとしていて、産毛や汗腺もありません。つまり機能のない皮膚なのです。

小さな傷でも同じようになっていますが、目立たないので気づかないだけです。こうした傷跡は、時間を経て徐々に体に吸収され、本来の皮膚に置き換わってゆきます。

しかし、傷ややけどのレベルが悪すぎたり大きすぎたりすると、時間を経ても、傷跡は小さくなりこそすれ消えることはないですね。

これと同じことが肝臓でも起こっているのです。毎日お酒を飲んで肝臓に負担をかけたり、ウイルスが暴れて炎症を起こしたりして、肝臓には小さな傷ができては治りを繰り返すうちに、肝機能を持たない細胞がいっぱい溜まってしまうのです。

こうした内臓の傷跡はその原因物質が血管からやってくるために、血管の近くほど溜まりやすくなっています。そうすると、その傷跡が大きくなって血液の流れを邪魔してしまい、健康な肝臓の細胞にも栄養が行かなくなって病気が広がります。

日夜肝硬変を完治させるための研究は続けられていますし、その方向性も見えていないわけではありませんが、現段階で肝硬変は完治するとは到底言えない病気です。

仮に運よくある程度肝臓の機能を取り戻せたとしても、肝がんに進むリスクは残ったままになる、非常に危険な状態なのです。

肝臓病は症状が出る前に治さなくてはいけない

肝臓は臓器の中で一番大きなものです。重さも1kgを超えるサイズの重量級内臓なのです。ですから、少々壊れたぐらいでは機能が落ちることはありません。ですから症状が現れてこないのです。

そしてかなりの部分が壊れてしまって初めて、本来果たすべき仕事がこなせなくなり、病気としての症状が出るんです。

健康診断などの血液検査で、AST・ALT・γ-GTPと言う数値をご覧になる機会も多いでしょう。これはそれぞれが肝臓の細胞に含まれている酵素で、それぞれがアミノ酸の代謝にかかわっています。

略号 物質名 数値異常の原因
AST アスパラギン酸アミノ基転移酵素 肝細胞・心筋・骨格筋・赤血球の破壊
ALT アラニンアミノ基転移酵素 肝細胞の破壊
γ-GPT γ-グルタミル転移酵素 肝がん・アルコール性肝障害

これらの酵素は、普段細胞の中で働いていますので、血液中にはそれほど多く出てきません。しかし、肝臓の細胞が破壊されると出てきて血液中の数値が上昇します。

ですので、まったく症状が出ていなくても、この数値が上昇するということは、肝臓の細胞が間違いなく破壊され続けているということですので、すぐに治療を行う必要があるのです。

肝臓の細胞にも、皮膚の傷跡と同じようにそれを吸収して正常な肝臓の細胞に置き替えるという働きがあります。ですから、血液検査の数値に異常が出ていて自覚症状はまだないと言うレベルで治療を始めると、健康な肝臓に戻れる可能性が高いのです。

これが身体がだるいとか食欲不振、体重減少などが起こってくると、すでに肝炎の域を超えて初期の肝硬変になっている可能性もあります。

肝硬変になると、もちろん上の数値が全部異常を示しますが、その際にASTの方がALTより高い数値を示すようになるのが一般的です。その差が大きいほど肝硬変が進んでいる傾向もあるようです。

ただし、ASTだけが異常に高くALTに異常が見られない場合、心臓病など肝臓以外の病気の可能性が考えられます。

有名な言葉ですが、肝臓は沈黙の臓器です。つまり、自覚症状が出ないまま重症化する病気が肝臓病だということを忘れずに置きましょう。

血液検査で異常が出ても、治療に取り組まない人が多いのが糖尿病と肝臓病です。

いずれも自覚症状がないのが原因ですが、症状が出たときには進んでしまっているというところも共通しているので気をつけましょうね。

腹水は肝臓の機能が大きく損なわれる非代償期になって発生する

よく代償期と非代償期と言う言葉が使われます。お聞きになったことがある人も多いでしょう。これは文字通り「別の部分が本来の部分になり替わって仕事をこなせる時期」と「なり替われるだけの健康な肝臓が残っていない時期」と言う意味です。

つまり、肝硬変であっても肝臓全体で見た場合、何とか機能を維持できている初期の状態が代償期で、大きな症状はほとんど現れない時期のことです。

一方、肝臓の大半がダメになってしまったために、機能を維持できていないため、様々な症状が現れてくるのが非代償期で、腹水もこの時期になって表れることが多いのです。

腹水は線維化細胞が血流を妨害して発生する

門脈と言う血管構造があります。普通は動脈から毛細血管に入った血液は再び集まって静脈に入りますが、毛細血管から一度集まって合流し、再び毛細血管に分岐する構造のものを門脈と言います。

身体の中では肝臓・脾臓・下垂体などに見られますが、普通に門脈といった場合、肝門脈を指します。

肝硬変になると、線維組織が肝臓内の毛細血管の血流を妨害するため、肝臓の中をうまく血液が流れなくなります。そうした場合、血液は門脈を通らず、普段あまり血液が流れていない門脈の側副路へと流れて心臓に戻ろうとします。

もちろん正常な経路ではないので充分な血流が確保できないため、門脈の圧力が上がってしまいますね。すると門脈から水分が漏出して、本来必要な量より多くの水分が腹腔内に送り込まれて腹水が溜まることになるのです。

肝臓がアルブミンを作れなくなると腹水を吸収できなくなる

アルブミンと言うたんぱく質群があります。血液の上澄みである血清の中に含まれるたんぱく質の過半数を占める重要なものです。

このアルブミンは水に溶けるものですので、血液の中で一定の濃度を保っています。これには腹水から浸透圧によって水分を血管内に取り込み、腎臓に送って排泄するという働きがあります。

ところが、このアルブミンは肝臓で作られているため、肝硬変になるとアルブミンが血液の中で不足してしまいます。これを低アルブミン血症と言います。

そうなってくると血清アルブミン濃度に依存する浸透圧が下がってしまうため、腹水から水分を回収できなくなるのです。

先にお話ししたように、生理的に存在する腹水は需給バランスが取れて一定の量を保っています。しかし、肝硬変になると水分の供給が過剰になると同時に回収が滞ってしまうので、腹水がどんどん増えてしまうということになるのです。

腹水が溜まるのはこのような働きが原因だったんですね。そうなってくると対策も見えてきますが、実際にはなかなか難しい部分もあるんですよ。

腹水を減らすのは完全に治療行為なので医師の指導が必須

腹水が見られる肝硬変はかなり症状が進行してきていますので、治療も慎重に行われることになります。もちろんお薬の投与から始まるでしょうが、お薬自体も肝臓に負担をかける異物ですから、慎重さが求められます。

また、外科的に抜く方法ももちろんあるわけですが、それにもリスクが伴います。しかし、まずは患者さんの治療と生活の品質の維持を最優先にして下さるでしょう。

まず第一に行うのは肝硬変自体の原因を取り除くこと

いくら腹水を減らすような治療を行っても、肝硬変自体が進行しているようでは腹水は減りません。肝硬変自体もその原因を取り除かないとどんどん進行してしまいます。

ですので腹水症の治療と言うことになると、まずは肝硬変の原因を取り除く治療から始まるのです。

その上で並行して余分な水分摂取を減らしたり、塩分摂取を制限したり、さらにはお薬を使ったり、穿刺ドレナージ(針を刺すして腹水を抜くこと)で対応したりと言う手順になるのです。

肝硬変の一番の原因はC型肝炎

肝硬変になる一番の原因はC型肝炎ウイルスによる慢性肝炎です。実に肝硬変の60.9%がC型肝炎が原因で起こっているという統計があります。

次に多いのがアルコール性のものですね。全体の13.3%になります。そしてB型肝炎。これは12.0%を占めています。この3つで実に肝硬変の86.2%の原因になっているのです。

B型肝炎は慢性化した場合完全にウイルスを抑え込むことはできませんので、長期間にわたっての投薬治療が必須になります。一方C型肝炎は適切な治療でウイルスの完全排除も可能な病気です。

また、アルコール性の肝硬変は、完全断酒である程度症状の進行を抑えられることもあります。

腹水が表れる非代償期には安静が必要

身体活動は老廃物を産みだし、それを代謝するために肝臓に負担がかかります。腹水が表れるぐらい肝硬変が進んでしまった場合は安静にして、肝臓への負担を減らすことになります。

ただ、安静と言ってもその方法やレベルには個人差がありますので、入院していろいろな検査を行い、どの程度までの身体活動が可能なのかをお医者さんに見極めてもらいましょう。

自宅療養でもその指導に従って、安静にするようになります。

非代償期に入ってしまい、腹水が溜まるようになると、余命と言う言葉がちらつくようになります。黄疸が出たり、肝性脳症と言うアンモニアによって脳の機能が壊れてくる症状が出るとなおさらです。

しかし、余命は一般化してお話しできるものではありません。肝硬変と言っても肝がんを併発しているかどうかでも変わります。どうしても気になる場合は、主治医の先生と腹を割って話すのがベストだと思います。

水分制限・塩分制限は必須

もちろん余分な水分を身体に持たないようにするため、水分量の制限は必須です。これも入院した時の状況によって、お医者さんが適正量を決めて下さいますが、目安としてすべての水分を合わせて1日1000mL程度とされています。

汁物や嗜好品飲料はもちろん、普通の食品にも水分は含まれています。例えば白いごはんの60%は水分です。ゆで卵の場合75%が水分ですね。こうしたものも計算に入れる必要が出てきます。

塩分は水分量に影響を与えますので、これも1日5g~7g程度に制限する必要が出てきます。かなり厳しい数値が並びますが、腹水と言う生活の品質を下げてしまう症状に対応するためには必要な処置なのです。

このように、かなり厳しい内容の治療を受けなければなりません。特に水分や塩分制限はつらいものがあると思いますが、体調をよく保つにはやむを得ないのです。

お薬や穿刺ドレナージのような積極的治療も存在する

肝炎自体の治療とは別に、腹水症としての治療は生活の品質を保つために必要なことです。

それにはお薬を使って水分を血液に戻し、さらにそれを排泄するということが重要になります。それでもだめなら針を刺して物理的に抜いてしまう治療法ももちろん存在します。

肝臓がエネルギーを作れなくなると筋肉が代行する

まずは肝臓がアルブミンを作れなくなることで浸透圧が下がり、腹水から水分の回収ができなくなっているので、アルブミン製剤を投与して少しでも水分回収ができるようにします。

また、肝臓ではアミノ酸からのたんぱく質合成自体が難しくなっています。そうなった場合、筋肉がこれを代行するんですね。ただ、肝臓は全部のアミノ酸を利用できるのに対して、筋肉では分岐鎖アミノ酸(BCAA)しか利用できません。

そうなってくると、血液中のBCAAが減り、相対的に芳香族アミノ酸(AAA)が残ってくるようになります。そこで低たんぱく食を行うことでAAAの量を減らします。そしてBCAAを補給してやることで、筋肉の働きが効率的になり、肝硬変の進展も抑えられるのです。

BCAAは体内のアンモニアを解毒してくれます。肝硬変でアンモニアが血液中に増えると、肝性脳症と言う重篤な症状を起こすこともあるのです。

BCAAは筋肉で使われることから、アスリート用のプロテインなどに強化配合されていることで有名ですね。しかし、そうしたものに含まれる量では到底肝硬変に対応できませんから、お医者さんにBCAA製剤を処方してもらうことになります。

薬物療法は利尿薬が中心になる

水分が体に残りすぎている症状ですから、利尿薬を使って水分の排泄を促す治療が行われます。ただ、従来の利尿薬ではナトリウムなどの電解質を一緒に排泄してしまうという欠点もあり、腹水が改善しないことも珍しくありません。

最近ではサムスカ錠と言う新しいタイプの利尿薬が旧来のものに並行して使われるようになってきました。このお薬の魅力は水分制限を行わなくても良いことです。

一方、そのことが副作用にもつながりますので、水分摂取が難しい人には処方できません。このお薬は「水だけを排泄するお薬」で、水利尿薬とも言われます。

つまり、充分な水分摂取が行われないと、逆に電解質が濃くなりすぎるという欠点があるのです。もちろん、身体全体の様子を見てお医者さんが判断して下さいますから、このお薬の使い初めには入院が必須です。

すぐに腹水が減るけれどリスクもある穿刺ドレナージ

他の方法ではどうやっても腹水が減らず、例えば息苦しいとか、食事が摂れないとか、横になれないなど問題が大きくなってきた場合、腹水に直接針を刺して抜いてしまう穿刺ドレナージという方法があります。

感覚的にも、水が溜まったのなら抜けばいいじゃないかという気持ちにもなりますよね。

確かに技術的にはそう難しいものではないそうです。大きな血管や内臓を避けるため、超音波エコーでできるだけ水の多いところに針を刺すという方法で穿刺ドレナージは行われるようですね。。

しかし、問題はいくつかあります。例えば、あまりに急激に水を抜いてしまうと、血管に異常が起こって後から体内で出血してしまうことがあります。こうなると状況は非常に厳しくなります。

さらに、腹水の中にはアルブミンが含まれています。腹水は抜いてもまた溜まることは確実です。ですので、腹水を抜いて捨ててしまうと、ただでさえ足りなくなっているアルブミンがどんどん減ってしまいます。

そこで、抜いた腹水をフィルターにかけて、アルブミンなど必要なたんぱく質だけを点滴や静脈注射で体に戻してやると言う治療も行われますので、これも入院が必要になります。

そして、どんな方法であっても体に針を入れる以上感染症や出血のリスクは避けられません。さらに穿刺ドレナージは身体に負荷をかけますので、場合によっては余命を短くしてしまう可能性が否定できません。

こうしたリスクについては、事前に充分な説明が行われると思いますので、それを理解してから穿刺ドレナージに臨んでください。

聞けば聞くほどつらい治療だと感じられるかもしれません。でも、そうして少しでも現状を維持してゆけば、新しい治療方法ができてくるというチャンスが増えるのです。
キャラクター紹介
ページ上部に戻る