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ヒートショック対策!温度差をつくらせない高齢者のため暖房活用法

エアコン

冬は寒くて当たり前。四季がある日本では、夏と冬とでは平均気温がガラリと変わります。寒さをしのぐためには、ストーブやエアコンなどの暖房器具を使い、部屋をあたためるのが一般的ですね。

けれど、ちょっと待ってください。一部屋だけをあたたかくして、他の部屋は冷え冷えしているなんてことに、なってはいませんか?

家族で団欒をしたり、のんびりテレビを見たりするリビングはポカポカで、スウェットでも過ごせるくらい。でも、廊下へ続くドアをあけたら、思わず「ひっ!」と声を上げてしまうほど冷え込んでいる…。

もしこういった事態になっているのならば、今すぐ見直しが必要です。そこには、目には見えない大きな危険が潜んでいるかもしれません。

家の中の温度差が命にかかわる危険になる

壁で囲われている家の中は、寒風吹きすさぶ屋外に比べれば、寒さはましです。けれど、冬の冷気は確実に屋内にも侵入し、家の中をひんやりと冷やしています。

自宅内の温度差がどれほどのものになっているのか、数字で見てみましょう。そしてそのことがどういった危険を生むのかを知っておきましょう。

屋外の気温と暖房の効いた部屋、温度差はどれくらい?

南北に長い形をしている日本列島では、最北にある北海道と、最南にある沖縄とでは、季節ごとの平均気温が異なります。日本列島の真ん中あたりに位置する東京の、2015年12月から2016年2月の冬の最低気温についてみてみましょう。

12月 5.8℃
1月 1.8℃
2月 3.1℃

外気がこれだけ冷えている中でも、暖房をつければ、家の中はあたたかく過ごすことができます。「厚着をすると動きにくいし窮屈だから」と、ついつい設定温度を上げて、薄着でも快適に動けるくらいにしてしまいそうです。

省エネルギーの観点からだと、夏場は高めに、冬場は低めに設定することを推奨されています。そうはいっても低すぎると、家の中なのに寒くてくつろぐこともできません。とすると、暖房の設定温度は、23℃から27℃くらいにするのが一般的でしょうか。

この時点で、外気温との差は、20℃以上あることになります。

もちろん、暖房をつけていても、設定温度どおりの室温が維持されるわけではありません。実際は、設定温度よりも気温が低かったり、逆に高かったりするでしょう。設定温度は、あくまで目安としてとらえてください。

暖房の効いていない室内が、どれくらいの温度になっているかは、家の構造や立地にもよるので、一概には言えません。が、窓からの冷気や隙間風が入ることを考えると、「屋外よりはいくらかマシ」程度の室温になっている場合がほとんどでしょう。

数字で見てみると、驚くほどの温度差があることがわかります。

自宅内に温度差があることがどうして危険なのか

人体の構造として、あたたかいところにいたりリラックスしていたりすると、血管が広がって血の流れが良くなります。逆に、寒いところに行ったり緊張していたりすると、血管が縮まって血行が悪くなります。

あたたかい部屋でリラックスして過ごしていたのが、急に寒い場所へ移動して血管が縮まったら、どうなるかわかりますね。

つい先ほどまで、広い血管をゆったりと流れていた血液が、寒い部屋へ移動した瞬間に、急に縮んで狭くなった血管に流れ込むことになります。血管に過剰な負担がかかることはもちろんですが、血液を送り込むポンプ役である心臓にとっても大きなストレスです。

あたたかい場所から寒い場所へ移動した時や、冷たいプールにいきなり飛び込んだ時に、胸がキュッと締め付けられるように苦しくなるのを感じたことがある人もいるでしょう。

急激な温度変化は、血圧や脈拍に変動をおこします。時には脳梗塞や心筋梗塞などの命にかかわる疾患を招きかねないこの現象を、ヒートショックといいます。

高齢者にありがちな疾患が、重篤な事故を招く原因になる

若くて健康な方は、血管に弾力があり、心臓も丈夫なので、これらのストレスに命の危険まではなく耐えられるかもしれません。ですが、血管や内臓が弱くもろくなっている高齢者や、血圧異常・心疾患をお持ちの方は、温度差によるストレスは命の危険にかかわります。

高齢者に多く見られる疾患について、特徴を見てみましょう。

高血圧
日本には、血圧を理由として加療を受けている方がたくさんいます。厚生労働省による平成26年の患者調査の概況調べでは、実に1,010万800人にも及ぶと報告されています。

血圧とは、血を送り出すときにかかる、血管の壁への圧力の強さのことです。血圧が高いということは、血管の壁に過剰な負荷がかかっているということになります。負荷がかかり続ければ、血管の壁は傷み、詰まりや破れなどのさまざまな異常が現れやすくなります。

血管が多いところほど、その異常が起こりやすい場所です。心臓や脳にかかわる重要な部分に異常をきたせば、重篤な症状をひきおこすことになります。高血圧は、自覚しにくく、症状だけがじわじわと進行していくことが多いです。

動脈硬化
血液を運ぶ血管、特に動脈は、本来は、太くて柔軟性が高く弾力があり、丈夫なものです。が、その血管の柔軟性が失われ、狭くなったり硬くなったりしてしまう状態が、動脈硬化です。高血圧とも、関連が深い疾患です。

動脈硬化の進行は緩やかですが、だからこそ自覚しにくく気づきにくい疾患でもあります。動脈硬化により、血液の流れが滞ってしまえば、心筋梗塞や脳梗塞などの大変な疾患を引き起こすことになります

脂質異常症(高脂血症)
血液中の脂っぽさが濃くなった状態のことをいいます。血がどろどろになり、血管の壁が脂で汚れ、動脈硬化などを引き起こしていきます。

普通、脂質異常症だけでは、自覚症状は現れません。ただし、症状はどんどんと進行していき、進行するほどに血管が痛んでいく状態となります。

心筋梗塞
なんらかの理由により、心臓に必要な血液が送られず、心臓が動くことができなくなった時に、心筋梗塞の発作はおこります。全身に血液を送るために動いている心臓自身も、血液がなければ動くことができないのです。

心筋梗塞の発作は、脈拍が早くなった時や、心臓に血液を送る血管が詰まって血液が送られなくなった時などにおこります。急激な温度差は、脈拍が早くなる一因になります。

脳梗塞
脳の血管に詰まりがおきて、脳に必要な血液がおくられなくなる疾患です。必要な量の血液が送られなかった場所の脳細胞は死んでしまい、それは手足のマヒや発語能力、生命の維持などに影響をきたすことになります。

動脈硬化などで血管が変質して血の流れが悪くなっていたり、高脂血症などで血管の詰まりの原因になるものがあったりすると、血圧の変化などを原因として、梗塞を起こしやすくしてしまいます。

血圧に異常をきたすことは、高齢者にはよくあることです。長く使ってきた体は加齢によって痛み、代謝も弱くなります。また、若い頃におこなってきた生活習慣が、集大成となって現れるということもあります。

高齢になるということは、加齢によって体がもろくなっているということです。若く健康な人には致命的にならない程度のことでも、高齢者にとっては重大な影響を及ぼす危険性があることを、肝に銘じておきましょう。

自宅内で危険な場所は?意識しておきたいシチュエーション

寒い季節の家の中で、特に事故に結びつきやすい場所があります。事故が起こりやすい場所とその原因を知り、事故を未然に防ぐための対策を立てましょう。今からでも、きっと遅くはないはずです。

ヒートショックという言葉自体は医学用語ではなく、これを原因として死亡者数の統計をとった資料はありません。ですが、「特定の場所で、血圧の変化や心臓への負担が原因となる疾患を起こし、逝去した」という統計資料はあります。

自宅内で、事故が起きやすい場所はどこでしょうか。温度差が激しく、血圧の変動がおこりやすいと思われる場所について、挙げてみましょう。

自宅内で事故が起こりやすい場所:脱衣所・浴室

脱衣所や浴室は、自宅内で最も危険の高い場所といえるでしょう。寒い脱衣所で裸になり、冷たい床の洗い場を裸足で歩き、あたたかいお湯を体にかけて、お湯が満ちた浴槽に浸かる。この一連の流れを見ただけでも、体に感じる温度差は大きなものです。

私どもの研究によれば、2011 年の1 年間で約17,000 人もの人々がヒートショックに関連した入浴中急死をしたと推計され、その死亡者数は交通事故による死亡者数(4611 人)をはるかに上回ります。

浴室は、転倒や滑落などの事故も起きやすい場所です。あたたかいお湯に浸かって血管が広がることで、脳虚血を起こす危険もあります。

ただでさえ危険の多い浴室ですが、冬場はヒートショックの危険が加わります。自宅内で最も危険な場所であると認識すべきでしょう。

自宅内で事故が起こりやすい場所:トイレ

排尿や排便を我慢しているときは、体中に力が入っていて、血圧が上がります。立ち座りのために動いたり、排せつのためにいきんだりすれば、これも血圧が上がりがちです。また、排せつ量が多ければ、出したあとに血圧が下がる懸念があります。

長くそこで過ごすことは少ない場所ですから、トイレに暖房を備え付けることはあまりしないでしょう。

「用を足すときだけ我慢すればよいのだから」と思ってしまいがちですが、上記の血圧変化に温度差によるストレスが加われば、体に良い結果にはならないことがわかります。

自宅内で事故が起こりやすい場所:ちょっとそこまで…

納戸や物置などに、ちょっとした用事で移動するときも注意が必要です。「ストーブの灯油がなくなったから、納戸にあるポリタンクから給油しにいく」なんて時、短時間で済むからとつい薄着のまま寒い場所で出てしまうこともあるでしょう。

自宅内で事故が起こりやすい場所:夜中に起きるとき

また、就寝中などは、あたたかい布団のなかから出るときにも温度差が生じます。「トイレに行きたい」などで夜中に目覚め、あたたかい布団を出て、冷たい床に裸足で降りる。

冷え冷えとした廊下を歩き、トイレで排せつすれば、血圧の変動が生じるのは目に見えています。

ヒートショックによる事故を防止するためにどうしたらいいか

あらゆる場所で、温度差による血圧変動、つまりヒートショックが起きやすいことを、おわかりいただけたでしょうか。

起こりやすい場所やその原因が理解できたら、次は、その予防と対策をたてましょう。

ヒートショック予防:自宅内の部屋ごとの温度差を少なくする

まずこれが、最も必要なことです。家電量販店では、小型で手軽な暖房器具も増えました。コンセントがひとつ確保できれば即使えるものや、タイマー機能が充実したものもあります。

ひとつの部屋だけをあたためるのではなく、家自体をあたためることを意識しましょう。

また、部屋をあたためることだけでなく、外から冷気を入れない工夫も大切です。窓に断熱材を貼ったり、カーテンを厚手のものにしたりするだけで、大分室温が変わります。廊下などは、床が冷たくないよう、床材や敷物を工夫しても良いでしょう。

断熱や蓄熱に使える資材は、ホームセンターなどで手軽に見つけることができます。

ヒートショック予防:上着を羽織る

温度差を少なくするためには、ひとつの部屋を重点的にあたためてしまってはいけません。薄着で過ごせるような高めの温度に設定するのではなく、設定温度を低めにして、あたたかい上着を羽織りましょう。

また、冷えた部屋へと移動する際には、さらに上に一枚羽織ったり、厚手の靴下や履物を履いたりする工夫も必要です。

ヒートショック予防:自宅で入浴しない

自宅での入浴が、温度差や他の理由で安全にできないと思った場合は、他の手段を考えてみましょう。自治体によっては、一人暮らしの高齢者に対して、銭湯やコミュニティセンターなど公共の場での入浴ができるよう支援しているところもあります。

また、要介護認定を受けているのであれば、デイサービスで入浴する手段が使えます。どうしても安全確保ができない場合は、一時的にでも宿泊利用できる施設がないか検討してみるのも、ひとつの手段です。

ヒートショック予防:模様替えをして使う部屋をまとめる

自宅の中で移動しなくてはいけない部屋が増えると、対策をしなくてはいけない場所も増えていきます。であれば、いっそ使う部屋をまとめ、対策をしなくてはいけない場所をすくなくしてみましょう。

廊下とトイレを近い部屋にしたり、部屋に電気ポットなどを用意して台所に行く頻度を減らしたり、生活スタイルに合わせて工夫することができるはずです。

また、夜間のトイレについて、ポータブルトイレの使用なども検討してみてはいかがでしょうか。ヒートショックの危険以外にも、眠気でふらふらしながら移動するリスクや、目の利かない夜間に移動するリスクを、減らすことができます。

自分では暖房器具の操作がうまくできなかったり、危険について認識していなかったりする高齢者も多くいます。周囲の人間が気づき、対応を促すことが大切です。

離れて暮らす家族がいるのであれば、訪れた時に、少し気にしてみてあげましょう。暖房器具のタイマー設定や、カーテンや敷物などの断熱材は、訪れた時に少し手を加えてあげるだけで簡単にできることです。

少しだけでも手を加えることで、危険は大きく減らすことができます。そして、相手に「気にかけてもらえているんだ」と思ってもらえれば、危険への注意を促すことにもつなげることができるでしょう。

大切な人のために、身近なことからこつこつ取り組もう

去年はなにごともなく過ごせたとしても、今年もなにも事故が起こらないという保証はありません。今年もなにも起こらなかったとしても、来年にはまた、危険が盛りだくさんの冬がやってきます。

取り返しのつかない事故が起こってから、「ああしておけばよかった」と思っても、どうすることもできません。思い立った時、気が付いた時に、やれることから手を付けておきましょう。そうすることで、大切な人を思いやる気持ちも伝えることができます。

四季の変化が豊かな日本では、季節に応じた相応の対策が必要です。穏やかな春を円満に迎えるために、厳しい寒さに応じた備えを整えて過ごしましょう。

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