健康生活TOP がん 前立腺がんは初期の症状がわかりづらい!検査や治療を知っておこう

前立腺がんは初期の症状がわかりづらい!検査や治療を知っておこう

がんという病気の大きな原因の1つが「加齢」ですが、特に高齢男性にとって脅威となるのが「前立腺がん」です。実際、高齢者の男性の前立腺がんの罹患率は高く、お父さまが、ご主人が・・・という話も比較的よく耳にします。

逆にそれだけ罹患率が高いだけに、前立腺がんへの意識を高く持つことによって早期発見、早期治療のチャンスも大きく、リスクを最小限にとどめることができることがあるのも前立腺がんの特徴といえるのかもしれません。

多くの男性がかかる前立腺がんですが、男性のがん全体の死者数のうち、前立腺がんによる死者は5%にとどまります。この数字だけ見れば、イメージほど大きくない印象は確かにあるかもしれません。

しかし現状前立腺がん検診の受診者は多くありません。男性なら誰もが発病するリスクがある病気ですから、検査の重要性についても知っていただきたいものです。今回はそんな願いも込めつつ、前立腺がんについてお話します。

前立腺という器官と前立腺がんの概要を知る

まずは予備知識をある程度蓄えておく必要があります。前立腺がんを知るためには、前立腺というパーツがどういったパーツであるのかを知らなければなりません。はじめに「前立腺」について簡単に説明しておきましょう。

前立腺ってどんな器官?

前立腺は、男性機能の重要な役割を果たす男性特有の器官の1つで、男性の精液の一部をつくる役割が前立腺にあります。まずは前立腺の位置関係からご紹介します。以下の図をご覧ください。

前立腺付近の構造
(出典…前立腺の構造-国立がん研究センターがん対策情報センターがん情報サービス)

前立腺というと、その響きからもっと細いもののように感じられるかもしれませんが、上の画像のとおり、前立腺は木の実のような形状の器官です。よく「栗の実のような形」などと説明されます。

位置的には、膀胱の直下であり、骨盤の一部を形成する恥骨と呼ばれる骨のちょうど裏側に位置しています。また、直腸や肛門なども近くにあり、このあたりはがんやポリープ(直腸がんや痔など)が発生しやすい印象もあります。

こうしたデリケートなエリアの中でも代表的な疾患の1つが、前立腺がんです。それでは、前立腺がんの概要についてもお話を進めます。

前立腺がんってどんながん?

前立腺がんも「がん」ですから、他のがんと同様、がん細胞の増殖に歯止めがかからなくなるという病理現象が前立腺に起こります。がん細胞は、元々正常だった細胞が突然がん化することで異常増殖をはじめます。

前立腺がんについてもこのあたりのメカニズムは他のがんと同様ですが、ただ、その明確な原因についても、他のがんと同様わかっていません。現状はおそらく遺伝子レベルの問題であると推測されるにとどまります。

がん細胞は、リンパ液や血液によって遠隔部位に運ばれ、そこに新たながん病巣をつくる特徴があります。これを「転移」と呼びます。前立腺がんの場合、上の画像に示した位置関係からもわかるようにリンパ節転移、骨細胞転移が起こりやすいです。

もちろん「がん」ですから、やがて肺転移や肝臓転移など、臓器への遠隔転移も起こることが知られています。ただ、発病年齢差や多少個人差がありますが、前立腺がんは他のがんにくらべて進行スピードが遅い傾向があります。

ですから、冒頭でお話したとおり「早期発見」はもちろん、多少発見が遅れた状態であっても、手術療法や放射線治療によって完治する可能性も十分あります。ただし、やはり発見が遅れるほど死亡率が上昇し、生存率は低下することも事実です。

前立腺がんに見られる症状は?

前立腺がんの症状は、病期や進行度によって多少異なります。その症状の概要についても簡単にまとめておくことにしましょう。

進行度 症状
最初期 自覚症状がほとんどない場合が多い
初期 尿が出にくい、尿の切れが悪い、残尿感、夜間の頻尿、尿漏れなど、前立腺肥大症に酷似した症状
進行期 上記症状に加え血尿、腰痛・背中痛(骨細胞転移による痛み)

最初期の段階では「自覚症状がほとんどない」というところが大きなポイントになります。つまり、前立腺がんの早期発見のためには、検診が非常に重要な意味を持つことになるのです。

特に人間ドックなどの精密検査は有効で、精密な血液検査でPSA値(前立腺特異抗原と呼ばれる腫瘍マーカーの1つ)が高値を示すことで、最初期の段階でも前立腺がんの発病を発見することが可能になります。

前立腺がんは寿命に影響しない!?

前立腺がんのすべてではありませんが、がんのタイプによっては、前立腺がんが寿命に影響しないと考えられるものもあります。これはどういうことかというと、とにかくその進行が遅く、がんの進行よりも一般的な寿命のほうが早いからです。

しかもこの傾向は前立腺がんのごく初期の段階から見られます。その結果、排尿障害、尿出血、痛みなどの自覚症状がまったくない男性が、たまたま前立腺がんの検診をした結果、ずいぶん古い病歴のがんが見つかったというケースもあります。

しかしだからといって、前立腺がんが危険ながんではないというわけでは無論ありません。これはあくまでも「極めて進行が遅い前立腺がん」の場合だけであって、深刻な症状を伴い、寿命にも大きくかかわる前立腺がんも多いです。

この点だけは誤解がないよう、十分に理解し、警戒していただきたいと思います。

前立腺がんの原因やリスク因子などは?

実際のところ、前立腺がんについてはまだまだわかっていない部分が多く、明確に断言できるファクターはそう多くありません。ただ、現在鋭意研究中であり、その過程において考えられる原因や警戒すべきファクターなどは指摘されています。

主な原因は、冒頭でも触れた通り、また、他のがんの多くと同じく「加齢」です。他にも「人種(特に黒人に多いとされる)」や「家系(遺伝というほどではないが、家族や親類に前立腺がんの患者がいる場合は要注意)」などが、いちおうの原因とされます。

同様に、「アンドロゲン」と呼ばれる男性ホルモンの一種が、前立腺がんの発病と大きくかかわっているとする説も唱えられています。しかし事実関係はまだ明らかになっていないのが現状です。

ですから男性に特有のがんであるとは言っても、より重要な原因となるのは、他のがんと同じく加齢や家系のほうであると、現段階ではいえます。前立腺がんのリスク因子は、以下にまとめます。

リスク因子の種類 リスクを高めるとする因子
食習慣(リスクを高めるとする栄養素) 乳製品、カルシウム、肉、脂肪、予防要因として大豆、リコピン、セレン、ビタミンE、魚、コーヒー、野菜
食習慣以外の生活習慣 慢性的な運動不足や喫煙習慣

そんなことを言い出したら何も食べるものがなくなってしまうではないか・・・という声も聞こえてきそうな気がします。まさにそのとおり。そんなことを言い出したら食べるものは確実になくなります。

実際、がん予防に効果があるのではないかと考えられる「野菜」や「ビタミン」まで入っているのですから、このデータを鵜呑みにしてはお話になりません。ですから上記のデータは、「該当する栄養素を摂取してはいけない」と解釈しないでください。

上記のデータは、あくまでも「偏った栄養素の摂取は前立腺がんのリスクになりうる」という程度に解釈するようにしていただきたいと思います。月並みな表現を用いれば、「バランスのとれた食生活」がリスクを遠ざけるのです。

まあこれに関しては、前立腺がんに限ったことではないとも言えるのですが・・・それだけこの前立腺がんという病気の原因やリスクの特定が難しく、まだ研究がそこまで進んでいないということを暗に示しているんですね。

(この章の参考:前立腺がん-国立がん研究センターがん対策情報センターがん情報サービス)

▼関連記事
前立腺がんを予防するセレンに毒性が!サプリを避けるべき理由
肉食系の元気なおじいちゃんほど危険!前立腺がんの予防は食事で
コーヒー・紅茶の摂取量が死亡率・日本人前立腺がんと関係している?

前立腺がんの診断以降の流れは少し特殊!?

ふつう「がん」が見つかったら、その時点で全力治療がスタートするわけですが、しかし前立腺がんの場合、同じがん診療であっても、少々毛色が異なる部分もあります。「前立腺がんの診断以降の流れ」についても簡単に触れておきます。

前立腺がんが発見されるまでには人それぞれのプロセスを経るわけですが、まずは、「体調不良」からはじまるケースが最も多いです。「診断以降」と書きましたが、体調不良の段階から流れをつかんでいきましょう。

前立腺がん診断・治療の経過、流れ1.体調不良など自覚症状

まずはこの段階で、病院に行って検査、問診などを行います。このタイミングをスルーすると、前立腺がんの早期発見のチャンスが断たれてしまう可能性が高まります。必要に応じて、メモなどに自覚症状を整理し、もれなく担当医に伝えましょう。

前立腺がん診断・治療の経過、流れ2.受診・検査・診断

担当医の所見で、検査をする、別の原因などを模索する、その他に分かれます。1の段階で前立腺がんの可能性が高いと判断されれば、検査が行われます。

上記でも触れたとおり、仮に前立腺がんがあったとしても経過観察に移行する可能性もありますが、基本的には治療の方向で話が進みます。

前立腺がん診断・治療の経過、流れ3.治療法の選択

前立腺がんを治療することが正式に決まれば、この段階でその治療法を決定することになります。前立腺がんの治療法はいろいろな方法が考えられますが、担当医はもちろん、ご家族や経験者などと綿密に話合い、最終的に患者さん本人が方針を決定します。

前立腺がん診断・治療の経過、流れ4.治療

この段階では、実際の治療に際して問題・不都合などが生じた場合の対処だけが重要になります。心身の不調が起こりやすいのががん治療ですから、どんな小さなことでもお医者さんや看護師さんなどに相談するスタンスが重要です。

前立腺がん診断・治療の経過、流れ5.経過観察

手術療法を実施する場合には、入院治療が必要になりますが、前立腺がんの場合、通院治療も可能な場合があります。入院患者さんの場合、退院してもその後の経過観察のために通院して再発がないかどうかを確認する必要があります。

以上が前立腺がんの大まかな診断・治療の経過、流れになります。もちろん各病院によって、あるいは担当医の裁量によって多少異なる流れも生じるかもしれませんが、前立腺がんの場合、大まかには上記の感じになります。

その他の部位のがん治療にくらべると、がんの診断直後に経過観察という流れが考えられる点が、前立腺がんの特徴的なところであるといえます。

(この章の参考:診療の流れ-国立がん研究センターがん対策情報センターがん情報サービス)

前立腺がんの精密な検査方法、ステージや生存率は?

ここまでは同じ「がん」でも少々特殊なところがある病気だけに、まずは前立腺について、および前立腺がんについて、ごく浅い部分をお話してきました。ここからは、もう少し踏み込んでお話を進めていくことにします。

前立腺がんの精密な検査の方法は?

概要のところでも少しお話しましたが、前立腺がんの検査では、「PSA検査」と呼ばれる検査方法が現在では最も有効であると考えられています。PSAは「前立腺特異抗原」という腫瘍マーカーの一種です。

PSA検査
PSA検査は、血中のPSAの数値を調べることで、前立腺がんの早期発見の手がかりにするための手法です。前立腺がんになると、最初期であっても血中のPSAの数値が高くなるという特性を生かした検査です。
直腸診・経直腸的前立腺超音波検査
PSAが基準値を上回る高値を記録した場合は、前立腺がんの可能性が極めて高まります。ここからは医師による「直腸診」、さらには「経直腸的前立腺超音波検査」と呼ばれるより厳密な検査が行われます。

直腸診は、前立腺の腫れの大きさを調べることで、前立腺がんの進行度の見当をつけるための検査です。担当医が患者さんの肛門から指を挿入して、直接前立腺に触れて確かめる、一種の触診になります。

経直腸的前立腺超音波検査は、こちらも肛門から直接「プローブ」と呼ばれる検査器具を挿入し、前立腺の詳細な状態を把握するための検査になります。

針生検
上記の直腸診、経直腸的前立腺超音波検査で前立腺がんの可能性がさらに高まった場合、細い針状の専用具で前立腺の組織を採取して生体検査(「針生検」と呼ぶことが多い)を行います。

前立腺全体の、かなり広いエリアから組織を採取して行う生検なので、この段階でいよいよ前立腺がんの診断の最終的根拠となる情報が得られることになります。針生検は、前立腺がん以外のがん(乳がんなど)でも行われる検査方法です。

画像による病巣エリア・進行度の特定
3の生検により、残念ながら最終的に前立腺がんと診断されたケースでは、その病巣エリアや進行度を知るために画像(CT、MRI、骨シンチグラフィなど)を参考にする検査が行われることになります。

3の生体検査までは、前立腺がんの診断を確定するための検査であり、ここからは「前立腺がんであること」を前提とした検査になります。

ちなみに骨シンチグラフィティ(一般には「骨シンチ検査」と呼ぶ)とは、特殊な薬剤を静脈注射により投与して、以下の画像のようなかなり大掛かりな装置を用いて行う画像検査です。

骨シンチ検査の機械写真
(出典…骨シンチ-慶應義塾大学病院医療・健康情報サイト)

前立腺がんの詳しい検査でわかること~前立腺がんのステージ(病期)

上記の触診、生検、画像による検査が終わると、前立腺がんがどの程度まで進行しているのかおおむねの判断が下されます。

検査からわかる前立腺がんの進行度を、がん特有の指標で示し、治療の指針とします。がん進行度の尺度となる指標を「ステージ(病期)」と呼びます。がんのステージ分類のための方法がいくつかあります。

そのうちの1つが「TNM分類」と呼ばれる分類方法です。ここでは前立腺がんのTNM分類について説明します。前立腺がんのTNM分類は、以下のようにまとめられます。

前立腺がんのTNM分類

  • T(病巣の広がり):がんが前立腺内にとどまるか周辺臓器に転移しているか
  • N(リンパ節転移):がんが前立腺部所属リンパ節および周辺リンパ節に転移しているか
  • M(遠隔転移):前立腺から離れた部位や臓器に転移しているか

T、N、Mはそれぞれtumor、nodes、metastasisの頭文字を採用

前立腺がんの場合、TNM分類にさらなる詳細な分類を加えるのが一般的です。というのも、前立腺がんの場合、前立腺肥大症などの治療の過程でがんが発見されることがあり、分類が複雑化しているからです。

「前立腺部所属リンパ節」とは、前立腺における腫瘍の周辺から排出されるリンパ液を排出するリンパ節のことです。要は、がん転移の要因となるリンパ節のことです。

では、TNM分類にさらなるな分類を加えた分類についても、画像とともにまとめます。以下の表とその下の画像をご覧ください。

前立腺がんのTNM分類 進行レベルの説明
T1 偶発的ながんの発見(触診、生検、画像などでもがんが発見されなかった)
T1a 前立腺肥大症などの手術で切り取った組織の5%以下にがんが発見される
T1b 前立腺肥大症などの手術で切り取った組織の5%を超えた部分にがんが発見される
T1c PSA数値上昇による針生検でがんの存在が確認される
T2 がんが前立腺内にとどまっている
T2a がんが前立腺の左右どちらかの半分以下のエリアにとどまっている
T2b がんが前立腺の左右どちらかの半分を超えるエリアに存在している
T2c がんが前立腺の左右両側に存在している
T3 がんが前立腺をおおう被膜を越えるエリアまで広がっている
T3a 被膜の外にがんが広がっている(片方または左右両方、顕微鏡的な膀胱への浸潤)
T3b 精のう(最上位画像を参照)にまでがんが及んでいる
T4 前立腺に隣接する組織(膀胱、直腸、骨盤壁など)にがんが及んでいる
N0 前立腺部所属リンパ節への転移なし
N1 前立腺部所属リンパ節への転移あり
M0 遠隔転移なし
M1 遠隔転移あり

(上表の参考:前立腺がんの病期分類-国立がん研究センターがん対策情報センターがん情報サービス)

上記の分類を実際の症状と照らし合わせてイメージしていただきます。以下のイラストのチョコレート色のような濃い色で示された部分が、前立腺がんのがん細胞の存在領域です。

前立腺がんのがん細胞の存在領域
(出典…TNM分類の例-国立がん研究センターがん対策情報センターがん情報サービス)

上記の分類は、たとえば「がんが精のうまで及んでおり、所属リンパ節に転移があるが別の臓器への遠隔転移はない」という進行度に対し、「T3bN1M0」と表記します。

前立腺がんのステージごとの生存率は?

上記のTNM分類をベースとして、前立腺がんもⅠ~Ⅳのステージに分類されます。以下にその分類を示し、各ステージごとの5年相対生存率もまとめます。なお、ステージⅣのTNM分類は、同じ番号どうしが対応しています。

 

  

進行度 T N M 5年相対生存率
ステージⅠ T1a N0 M0 100%
ステージⅡ T1a、T1b、T1c、T2 N0 M0 100%
ステージⅢ T3 N0 M0 100%
ステージⅣ
  1. T4
  2. Tに無関係
  3. Tに無関係
  1. NO
  2. N1
  3. Nに無関係
  1. MO
  2. MO
  3. M1
54%

(上表の参考:進行度別、前立腺がんの生存率-メンズヘルスクリニック東京)

ということで、一般的には「末期的ながん」と目されるステージⅣであっても、50%を超える生存率となるのが前立腺がんです。とはいえ、できるだけ早期に発見をし、早期に治療を進めるべきであることは間違いありません。

前立腺がんの治療法選択と実際の治療はどう行われる?

ここまでは前立腺がんの検査と診断、ステージの確定までお話してきました。他のがん同様、それぞれのステージごとに指針となる治療方法がガイドラインに定められています。これを参考に、治療方法を選択することになります。

ステージごとの治療方法の指針をご紹介します。前立腺がんの場合、リスクの度合いや悪性度によって、選択すべき治療方法が変わってくることがあります。ですから「リスクの度合い」、「悪性度」の概念が重要になってきます。

それではまず、「リスクの度合い」と「悪性度」について簡単にご紹介しておきましょう。その後、ガイドラインによる指針をご紹介します。

前立腺がんの「リスクの度合い」とは?

前立腺がんの場合、治療とステージの危険性に対して5つのレベルでリスクを評価します。前立腺がん治療におけるリスクの度合いは、「超低リスク」、「低リスク」、「中間リスク」、「高リスク」、「超高リスク」の5段階に分かれます。

以下は、転移のない前立腺がんのリスク分類になります。

リスクレベル 各レベルの対象範囲
超低リスク T1c、グリーソンスコア(※)が6以下、PSA値が10ng/mL未満、前立腺生検の陽性コア数が3未満、全コアでのがんの占拠率が50%以下、PSA密度が0.15ng/mL/g未満
低リスク T1〜T2a、グリーソンスコアが6以下、PSA値が10ng/mL未満
中間リスク T2b〜T2cまたはグリーソンスコアが7またはPSA値が10〜20ng/mL
高リスク T3aまたはグリーソンスコアが8〜10またはPSA値が20ng/mLを超える
超高リスク T3b〜T4

※グリーソンスコア・・・顕微鏡検査などから定めるがんの悪性度の指標

(上表の引用:転移のない前立腺がんに対するNCCNリスク分類-国立がん研究センターがん対策情報センターがん情報サービス)

上記のリスクレベルを参考に、治療の指針を説明していきます。

前立腺がんの「リスクの度合い」に応じた治療の指針は?

転移のない前立腺がんのリスクレベルは5段階に分かれますが、転移のある前立腺がんとともに、その治療指針を以下にまとめます。以下の図をご覧ください。

前立腺がんのリスク分類と治療
(出典…前立腺がんのリスク分類と治療-国立がん研究センターがん対策情報センターがん情報サービス)

ただし上記はあくまでも「ガイドライン」に基づいた指針であって、実際には担当医の見解や、治療や病状について理解した上でのご自身の判断が尊重されることになります。

それでは、上記にある治療の方法について、次のところでいよいよお話していくことにしましょう。

前立腺がんの治療はどのように行われる?

上の画像内にいくつかの治療方法を示しましたが、少々耳慣れない治療法も含まれていたかと思います。ここではそれぞれの治療法について、簡単に説明を加えることにします。

PSA監視療法とはどんな治療法?

用語の響きのイメージどおり、「経過観察」がメインとなる治療法です。同じがんの中でも非常に特徴的な治療法で、このあたりは前立腺がん独特の手法といえます。それゆえ、画像にあるとおり「低リスク」の前立腺がんに対してのみ採用されます。

特に高齢者の場合、中間リスクの前立腺がんであっても、がん治療による身体への負担を考慮し、あえてできる限り経過観察のみを採用するケースも考えられます。しかしがん治療が「ただ経過観察するだけ」であることにストレスを感じる患者さんもいます。

PSA監視療法は、PSAの数値変動に大きな変化が見られない間継続される治療方法になります。

前立腺がんはどんな手術療法が行われる?

上の画像にあるとおり、あらゆるリスクレベルに対して採用されることがあるのが、手術療法(外科治療)です。特に前立腺内にとどまるがんに対しては非常に高い有効性を発揮します。前立腺がんの手術療法は、大きく分けると4種類になります。

  1. 恥骨後式前立腺全摘除術(下腹部切開による前立腺摘出手術)
  2. 腹腔鏡手術(以下の模式図を参照)
  3. ロボットによる手術(以下の写真を参照)
  4. 会陰式前立腺全摘除術(会陰(えいん=肛門と精巣の間)切開による前立腺摘出手術。ごくまれに採用される方法)

腹腔鏡手術の模式図
(出典…腹腔鏡手術の模式図-KOMPAS・慶應義塾大学病院医療・健康情報サイト)

前立腺がんのロボット支援手術写真
(出典…前立腺がんのロボット支援手術-九州大学病院)

前立腺がんの放射線治療の種類と方法は?

骨へのがん転移が認められたケースをはじめ、比較的高いリスクがある前立腺がんに放射線治療が採用されることが多いです。前立腺がんの放射線治療は、大きく分けて2つの方法があります。

1.外照射療法
対外から前立腺に向けて放射線を照射する放射線治療です。前立腺に直接照射するので、転移がない前立腺がんに適用されます。
2.組織内照射療法(密封小線源療法)
組織内照射療法は、主に以下の2つの条件を満たす前立腺がんに対して採用される放射線療法です。

  • がんが前立腺内にとどまっている
  • 悪性度が低いがん

悪性度が低いがんというのは、PSA値が10ng/mL以下かつグリーソンスコアが6以下の低リスク群のことを指します。

上記以外の病態の前立腺がんに対して放射線治療を行う場合は、外照射療法と組織内照射療法を組み合わせて行うことがあります。

内分泌療法(ホルモン療法)とは?

前立腺がんのリスク因子であるアンドロゲン(男性ホルモンの一種)を分泌、作用の面でコントロールする目的で行われるのが、内分泌療法(ホルモン療法)です。リスクレベルが高く、すでに転移が見られる前立腺がんに適用されることが多いです。

内分泌療法では、主に「LH-RH(性腺刺激ホルモン放出ホルモン)アゴニスト」とよばれる薬の注射による投与が行われます。

遠隔転移が起こっている前立腺がんに対しては、上記の方法は採用されず、化学療法(抗がん剤治療)がメインで行われます。また、内分泌療法の効果が現れにくくなってきた段階で化学療法を採用することもあります。

(この章のここまでの参考:転移のない前立腺がんに対するNCCNリスク分類-国立がん研究センターがん対策情報センターがん情報サービス)

前立腺がんは民間療法(代替療法)も可能!?

アメリカ・ハーバード大学では、前立腺がんの民間療法に関する研究を行っており、民間療法に一定の成果・可能性が考えられるとの見解を示しています。前立腺がんの民間療法に対して有効とされる栄養素は、「大豆イソフラボン」です。

もともとがんの分野では、西洋医学では十分な成果が得られない時代が長く続いてきており、西洋医学のテリトリーにも、漢方やハーブなどの代替療法選択の余地が大きいという背景があります。

一部漢方には「がん進行を遅らせる、止める」という効果が認められ、ハーブはがん細胞に対抗する手段のみならず、緩和ケアの一環としても用いられてきました。そういった意味では、前立腺がんの代替療法も十分検討の余地があります。

大豆イソフラボンという栄養素に着目したサプリメントや健康食品の導入についても、担当医とよく相談してみると、気持ちの面でもよい方向に進んで行く可能性は十分あるのかもしれませんね。

(この節の参考:がんの代替療法-国立がん研究センターがん対策情報センターがん情報サービス)

いろいろな意味で「特殊ながん」である前立腺がん

ここまでお読みいただき、前立腺がんの特徴や治療法について大まかにイメージしていただいたかと思います。おそらく、多くの人が、同じがんの中でも少々変わった特徴があるがんであるということを感じられたかと思います。

一説によると、40代以上の男性であれば、だれでも前立腺にがん細胞が見つかるものだという話を聞いたことがあります。その真偽はともかく、男性も女性も毎日一定量のがん細胞がつくられては、抗体によって駆除されていることは間違いありません。

そういった意味では、前立腺という部位は「がんがつくられやすい部位」であることもどうやら確からしい印象があります。しかし逆に、それだけ前立腺が「がんに強い部位」でもあるといえるのかもしれません。

ですから万一前立腺がんになったとわかっても、慌てず、しっかりと治療をしていただきたいと思います。もちろん早期発見が望ましいですが、万一発見が遅れたとしても、絶望する必要がないのが前立腺がんなのです。

キャラクター紹介
ページ上部に戻る