健康生活TOP がん 腰痛や貧血は重病が原因かも!?血液のがん多発性骨髄腫とは

腰痛や貧血は重病が原因かも!?血液のがん多発性骨髄腫とは

血液検査

突然の腰の痛み。ぎっくり腰かなあ、と思って整体や整形外科に行ってもなかなか良くならない。体全体もだるくてなんだか調子が悪い。

そんな場合は「多発性骨髄腫」という重病が隠れている場合があります。

多発性骨髄腫は放っておいても良くなりません。すぐにでも専門の医師に診ていただく必要のある疾患なのです。

ここでは多発性骨髄腫とはどのような疾患なのかをご紹介いたします。

がんはがんでも、血液のがんと固形のがんとは?

多発性骨髄腫とは、血液のがんの一種です。がんというと「胃癌」「乳癌」「大腸癌」「肺癌」などがよく知られていると思います。

これらの癌は固形癌とも呼ばれていて、「胃癌」「乳癌」という「腫れ物」が出来てしまう病気です。言い換えますと、ある種の「こぶ」という固形物が出来てしまう病気なのです。

では、「血液のがん」とはどういう意味でしょうか。「液体である血液がこぶになる?」なんだかイメージしにくくはないでしょうか。このことが血液がんを分かりにくくしています。

ちなみに、「がん」と「癌」は使い分けがされています。「癌」は胃癌、乳癌などの固形癌を表現するときに使います。血液がんに「血液癌」という表現は致しません。血液がんの場合はひらがなの「がん」を使います。

ひらがなの「がん」は「血液のがん」でも「固形癌」の「がん」でもつかいます。「がん」は「血液」「固形」両方に使える文字なのです。

がんには「血液」「固形」両方あるがありますが、そもそも「がん」とは何なのでしょうか。

がんとはなんなのか

人間の体は細胞で作られています。がんも細胞です。普通の細胞と違って、次の特徴をもつ細胞を「がん」といいます。

  • 無秩序に増えていく(増殖)
  • まわりの組織にも割り込んでいく(浸潤)
  • 遠くまで移動する(転移)

ある種の細胞が集まったものが組織です。組織が集まったものを器官と言います。

例えば、「神経細胞」が集まると交感神経や副交感神経になります。神経は「組織」です。その「組織」である神経が集まると「脳」や「脊髄」と言った「器官」になります。

普通の細胞は「細胞分裂」をして新しい細胞に置き換わっていきます。新陳代謝です。

でも古い細胞がなくならないで新しい細胞が誕生していくと細胞の数がどんどん増えていきます。細胞の数がどんどん増えた結果「こぶ」が出来ます。

こぶが出来てもそれが即がんにはなるということはありません。「良性腫瘍」と「悪性腫瘍」があり、がんは悪性腫瘍と呼ばれるものなのです。

がんがなぜ「悪性」と呼ばれるかと言いますと、周りの組織に入り込んで行ったり(浸潤)、遠くまで移動(転移)したりするからです。

がんがこぶになってそれが大きくなれば他の器官を圧迫して問題を起こします。がんは栄養をどんどん吸収するので他の正常組織に栄養が行かず体全体が弱って行ってしまいます。

増殖、浸潤、転移…このような能力をもつ細胞ががんなのです。

がんはなぜどんどん増えていくことが出来るのでしょうか

細胞の中にはテロメアというものがあります。一本の紐のようなものを想像してください。

普通の細胞は分裂をするとこのテロメアが少しずつ短くなっていきます。細胞分裂を繰り返しテロメアがどんどん短くなっていくと最後にはテロメアは無くなってしまいます。

そうすると細胞は分裂することが出来なくなってしまいます。分裂できなくなった細胞は死を迎えます。

ところががん細胞は分裂しても分裂してもテロメアが短くならず、がん細胞は死なないのです。だからどんどん増え続けることが出来るのです。

血液のがんとは?血液の成り立ちを見てみよう

では「血液のがん」とはどういうことなのでしょうか。それにはまず血液とは何かを確認したいと思います。

血液とは液体の部分「血漿成分」と細胞の部分「血球成分」から成っています。血球は赤血球、白血球、血小板のことを言います。この3つを血液細胞と言います。

血液細胞は元々は一つの細胞から生まれます。その大元の細胞を造血幹細胞と言います。

その造血幹細胞が変化をして赤血球、白血球、血小板になります。

ただ、いきなりこの3つにはなりません。造血幹細胞から少しずつ変化をして行って赤血球、白血球、血小板になります。

この過程の間のいずれかの細胞ががんになることを「血液がん」と言います。血液がんには

  • 白血病
  • リンパ腫
  • 多発性骨髄腫
  • 骨髄異形成症候群

などがあります。このように多発性骨髄腫は血液がんの1つなのです。

がんがどんどん増え血液細胞が減少してしまう!多発性骨髄腫とは

では多発性骨髄腫はどの細胞ががんになってしまうのでしょうか。それは「形質細胞」と呼ばれる細胞です。

この形質細胞ががんになってしまう病気を多発性骨髄腫と呼びます。では形質細胞とは何でしょうか。

形質細胞とは

形質細胞は白血球の一種です。白血球は大きく分けて3つに分類されます。

  • 顆粒球
  • リンパ球
  • 単球

の3つです。顆粒球はさらに3つに分類されます。好中球、好酸球、好塩基球の3つです。

リンパ球にもいくつか種類があります。

  • B細胞
  • T細胞
  • NK(ナチュラルキラー)細胞

の3つです。

NKT(ナチュラルキラーT)細胞というものもありますが、これはT細胞の一種です。1986年に千葉大学の谷口先生が発見した新しい細胞です。

T細胞には他にキラーT細胞、ヘルパーT細胞、サプレッサーT細胞があります。

ご覧のように白血球には色々な種類があります。

そして形質細胞ですが、これは白血球の中のリンパ球、リンパ球の中のB細胞、このB細胞が変化した最終的な細胞のことです。

形質細胞の働き

白血球は体を守ってくれる細胞です。白血球の一種である形質細胞も体を守ってくれる細胞です。

形質細胞は普段、敵(異物)がいない時は骨髄やリンパ節にいて待機しています。それが、敵があらわれると出動して行って攻撃を始めるのです。

ではどのようにして敵を攻撃するのでしょうか。なんと形質細胞は飛び道具を使って敵を攻撃するのです。

形質細胞は矢のようなものを飛ばして敵を攻撃します。この矢のようなものを「抗体」と呼びます。

免疫の世界では、矢のような抗体に対して、敵(異物)を「抗原」と呼びます。

形質細胞ががんになるとどううなるか

形質細胞は異物が体の中に入ってくると出動をして矢のような抗体を発射して攻撃する細胞です。

その形質細胞ががんになってしまうとどのようなことが起きるでしょうか。

形質細胞は骨髄の中にいます。骨髄腫とは骨の中にある組織です。骨髄は赤血球などの血液細胞を作り出す工場のような組織なのです。

スープを作る時に骨を良く煮込むと出汁が出るのは骨の中に骨髄があるからです。この骨髄の中にいる形質細胞ががんになってしまう病気が多発性骨髄腫です。がんになった形質細胞は「骨髄腫細胞」と呼ばれます。

骨は全身にあります。その全身にある骨の中に骨髄がありますので、骨髄腫細胞は全身の色々なところで発生します。ですので「多発性」骨髄腫と呼ばれています。

骨髄腫細胞はがんなのでどんどん増えていきます。硬い骨の中で骨髄腫細胞がどんどん増えていくと正常な細胞の居場所が無くなってしまいます。

そうなると赤血球、白血球、血小板という大切な血液細胞の数が徐々に少なくなっていってしまいます。

骨髄腫によって血液細胞が減ってしまうとどうなるのか

赤血球が減ってしまうと貧血になってしまいます。赤血球は体中に酸素を運んでいるため、体中の細胞が酸素不足になると疲れやすくなったりだるくなったりしてしまいます。

白血球は体を守ってくれる細胞です。その白血球が減ってしまうと感染しやすくなってしまう、易感染状態になってしまいます。

血小板は出血した時に血を止めてくれます。血小板が減ると出血が止まりにくくなるためアザが出来たり鼻血や歯ぐきから血が出やすくなったりしてしまいます。これを出血傾向と言います。

多発性骨髄腫になると血液細胞が減ってしまいこのように困ったことになりますが、問題はそれだけではありません。

多発性骨髄腫になると骨がもろくなる

多発性骨髄腫は、骨髄の中にある形質細胞ががんになってしまう病気です。

骨髄は骨の中にあるので、骨の中にがん細胞である骨髄腫細胞がいることになります。そしてこの骨髄腫細胞は骨に悪さをするのです。

骨髄腫細胞によって骨が徐々に溶けていき、その結果骨がもろくなって骨折を起こしやすい状態になってしまいます。このように骨がもろくなった状態を「骨病変」と言います。

背骨がもろくなるとつぶれてしまうことがあり、これを「脊椎圧迫骨折」と言います。

ですので骨髄腫の患者さんは背が縮んでしまったり、ぎっくり腰のような痛みが起きてしまったりすることがあるのです。

多発性骨髄腫は発見が遅れがち?

ぎっくり腰かなあ、と思うと普通は整体や整形外科に行くと思います。多発性骨髄腫は稀な病気なので見落とされてしまうことがあるのです。

整体や整形外科でも骨髄腫は見落とされることがあります。ですので、腰痛で何週間も医院に通っても良くならず、実は骨髄腫だったということが起こります。

骨髄腫が稀な疾患なので見落とされてしまうことがあるのですが、それでも主症状が貧血の場合は早く見つかる可能性があります。

なぜかと言うと貧血は血液検査によって見つかるからです。

そして多発性骨髄腫の患者の血液検査をした場合、普通ではない結果になりますので内科の先生でしたら異常を感じて専門の先生に相談するということをすることが多いと思います。

それが整体や整形外科では普通はあまり血液検査をしません。このことが多発性骨髄腫の発見を遅らせてしまうことにつながっているのではないでしょうか。

世の中には数えきれない数の病気があります。技術の進歩で病気に関する情報はどんどん増えていて、1人の先生が全ての病気に精通することを期待するのは難しいと思います。

特に専門外の疾患に関して情報が不足するのは止むを得ないようにも思えます。多くの整形外科の先生にとって骨のがんは専門内でも血液のがんは専門外です。

今の時代はインターネットの発達で調べようと思えばかなり専門的な情報でも入手することが出来る時代ですから、自分自身や家族の健康、命を守るため健康に関する情報の収集には積極的になっていきたいものだと思います。

骨髄腫になると役に立たない抗体が作られる

多発性骨髄腫になると血液細胞が減ってしまったり、骨が折れやすくなってしまったりします。

でも問題はまだあるのです!

ふつうがんになってしまうと元々もっていた機能は失われてしまうのですが骨髄腫細胞は形質細胞の能力を受け継いでいます。

ですので矢のような物質抗体を骨髄腫細胞は作り出すことが出来るのです。

ところがこの骨髄腫細胞が作り出す抗体はできそこないの抗体で、役に立たないどころか問題を起こしてしまう抗体なのです。

骨髄腫細胞が作り出す抗体を「M(エム)蛋白」と言います。

多発性骨髄腫には色々な種類がありまして、M蛋白を作らないタイプの骨髄腫もあります。

でもM蛋白を作るタイプの骨髄腫の方が多数派です。

多発性骨髄腫になると正常な細胞が減って骨髄腫細胞がどんどん増えてしまいます。その結果、役に立たない抗体「M蛋白」ばかりが増えるので免疫力が落ちてしまいます。

そうすると風邪をひきやすくなったり肺炎などの重篤な感染症にかかるリスクも高くなったりしてしまいます。

M蛋白が増えて困るのは免疫低下だけではありません

M蛋白はベタベタしているため臓器にこびりついてしまいます。腎臓にM蛋白が付着してしまうと腎臓の働きが悪くなって腎機能障害になります。

M蛋白はベタベタしているため血液中のM蛋白の量が増えると血液のベタベタ度合が上がってしまいます。これを過粘調度症候群と言い、

  • 頭痛
  • 視覚障害
  • 出血

の原因となります。

多発性骨髄腫になると現れやすい4つの症状

いままでご覧いただいたように多発性骨髄腫になると色々な症状があらわれてくる可能性があります。でもすべてが同時に起こるわけではありません。

多発性骨髄腫の患者さんに現れやすい症状はCRAB(クラブ)と呼ばれています。

C(calcium) 高カルシウム血症
R(renal) 腎障害
A(anemia) 貧血
B(bone) 骨病変

これらのうち一つでもあれば症候性の多発性骨髄腫と診断されて治療の対象となります。

海外では最近治療開始基準に変更がありました。SLiM CRABと呼ばれています。ただ日本ではまだ一般的にはなっていません。

多発性骨髄腫と診断されたら予後はどなる?

ご覧いただいたように多発性骨髄腫は重大な合併症を引き起こします。多発性骨髄腫と診断されたらどのような結果が待っているのでしょうか。

残念ながら現代の医療ではまだ多発性骨髄腫を治癒させることは出来ません。治癒とは病気が治って元の体に戻ることです。

骨髄腫の治療を行うことで病気の進行を遅らせたり症状を和らげたりすることは出来ます。

化学療法(抗がん剤)による治療を行って骨髄腫細胞を減少し症状を緩和させることが出来ます。しかしいずれはほとんどの場合再発をしてしまいます。

それでも再発した多発性骨髄腫に効果が証明されているお薬が複数あります。

再発しても再々しても治療薬を変えて出来るだけ予後を改善する努力が多発性骨髄腫では行われています。

患者さんの予後は診断時の状況である程度予測されます。これは今までの多発性骨髄腫の患者さんのデータを集めて検討した結果算出された余命です。

がんは個体差の大きい病気だと言われています。

例えば仮にインフルエンザはだいたいの人が1週間で治るとします。でもがんは人によって様々なのです。

余命3年です、と言われた方が10年以上生存したり、逆に1年でお亡くなりになってしまうこともあります。

この後紹介する生存期間はあくまでも統計学的な中央値(平均値のようなもの)であることをご理解の上お読みいただければ幸いです。

多発性骨髄腫の病期分類

多発性骨髄腫ではISS(International Staging System)という病期分類が使われています。

ここでは3つのステージに分けられます。Ⅰ、Ⅱ、Ⅲです。それぞれのステージの生存期間中央値は、

  • ISS-Ⅰ 62か月
  • ISS-Ⅱ 44か月
  • ISS-Ⅲ 29か月

です。

ただし多発性骨髄腫は医療の中でも最も進歩の著しい分野の一つです。

ISSは古い治療を受けていた患者さんのデータをまとめたものであるため、現状には合わなくなっている可能性があります。

そのため、International Myeloma Working Groupという国際的な多発性骨髄腫の研究チームが新たな診断基準を提唱しました。2015年8月にJCOと呼ばれる権威ある文献にそれが掲載されました。R-ISS(リバイスドISS)です。

4,445名の多発性骨髄腫の患者さんのデータを解析した結果がこちらです。

  • ISS-Ⅰ 未到達
  • ISS-Ⅱ 83か月
  • ISS-Ⅲ 43か月

「未到達」というのは約6年のデータの解析の結果、半数以上の方がご存命であったことを意味しています。(生存期間中央値とは半数の方がお亡くなりになるまでの期間です)

このR-ISSは海外でも発表されてから間もない病期分類です。

まだ全世界に普及しているとは言えない状況です。そのような中でもいち早くアメリカのNCCNというグループがR-ISSを採用したと発表しました。NCCN Guideline Multiple Myeloma 2016 ver.3でのことです。

このことによってR-ISSへの信頼性が増したとも考えられます。権威ある団体から認定されたからです。

でもそれはこの分類方法が認められたということです。この解析対象の4,445名多発性骨髄腫患者さんたちがこれだけの期間生存されていたという情報は事実です。

(デューリー・サーモン分類という分類法もありますが、より古くなっておりNCCN Guideline Multiple Myeloma 2016 ver.3では削除となりました。a ,b が使われている場合はデューリー・サーモン分類です)

多発性骨髄腫かもと思ったらどうしたらよいのか

ご覧いただきましたようにISSの時代からR-ISSの時代で生存期間が延長しています。

多発性骨髄腫は治療の改善が著しい分野です。今後(2016年4月現在)も複数の新薬の登場が予定されています。

多発性骨髄腫は血液検査の結果に異常が出ます。確定診断は血液内科で行われます。

腰が痛くて血液の検査を受けるのは普通ではないと思います。でも普通の腰痛ではない、なにかおかしいと思われた場合は血液検査を受けてください。

大切なのは「総蛋白」と「アルブミン」です。一般的な血液検査に含まれている項目です。

総蛋白(TP)が異常に上昇してアルブミンが低下している場合は血液内科への紹介を相談してください。

病期が進行してしまえば予後が悪くなります。血液内科で行われる多発性骨髄腫の化学療法は日進月歩です。より早期に治療を開始し、予後が伸びればより良い治療が登場してくる可能性があります。

骨髄腫に対する知識が広く普及し、一人でも多くの患者さんの予後が改善することを祈っています。

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