健康生活TOP がん ホスピスでの緩和ケア選択!延命治療と終末期の幸福を考える

ホスピスでの緩和ケア選択!延命治療と終末期の幸福を考える

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生きている限り、誰もがいつかは死を迎えなければなりません。超高齢社会と言われる日本でも健康で長生きできる人が増えることは、いずれは亡くなる人の数も増えていくことになります。

高齢になるほど病気に罹るリスクは高くなり、末期がんや重度の認知症、治る見込みがない神経筋疾患や慢性呼吸器疾患など、現在の医学をもってしても治療が困難な病気を抱える高齢者が増えていくのは現実問題です。

自分の最期を幸せに送るためには、終末期医療の現実について理解を深め、自分で自分の最期を選択できるようにしておくことが大切です。

幸せな人生を締めくくるために、人生の最期をどのように生きるべきか?

日本人の死因第一位はがんで毎年37万人以上の人が亡くなっています。がんは、ある日突然発症し比較的短い期間のうちに亡くなる病気とは異なります。

がんが発見され治療を開始してから少なくとも数ヶ月、場合によっては十数年という長い闘病生活を送らなければいけません。もちろん、その間に治療が功を奏して完治することも大いに期待できます。

一方で、長きに渡る闘病生活を続けてもがんの進行が止まらず病状が徐々に悪化し、ついには亡くなってしまう人が年間37万人いるということも紛れもない事実です。

もし仮に、自分が将来がんを患い残された命に限りがあると知った時、自分に残された最期の時間をどう生きるか、を考えることは本当の意味で命のありがたみを実感し自分らしく生きることを心底から悟ることができる時間になるはずです。

終末期を迎えることは自分の人生を振り返る最後の時間でもあり、天から与えられた残りの命を充実して過ごし、満足のいく人生を締めくくる最後の機会でもあります。

ニ度とない人生の最期の時間をどう過ごすか、ということは幸せな人生を締めくくる上で最も大切であり貴重な時間であるはずです。

医学の使命は人間を死から遠ざけること…医師の倫理観

どんな病気であれ、医師や医療従事者は病気を治療し元の健康な状態に戻すことが最優先事項であることは間違いありません。どんなに重い病気であっても、少しでも状態を良くすることに全力をあげるのが医師の努めです。

救急搬送されてきた患者がすでに心肺停止の状態だとしても、開胸し手で直接心臓マッサージをして蘇生させようとするくらい死力を尽くします。

医師が最善を尽くすのは、生存へのあらゆる可能性を排除せず決してあきらめることなく病気や障害の治療を行い、1分1秒でも長く生きさせることが医師の使命だと考えるからです。

風邪を引いて受診に来た人でもがんが見つかり大手術が必要な患者でも、最終目標である病気を完治させるという点ではやるべきことは同じです。医師がまず第一に考えることは「治療のための治療」であり、治療は医学の目標でもあります。

ところが、病気の中には現代の医療をもってしても完治が困難な病気もあります。がんや認知症、エイズなどです。

こうした病気は将来、医療の進歩とともに完治できる日が来るのでしょうが、完治への過渡期である現在では、1日でも長く生きさせることが医学の最善だと信じられています。

医学の世界では「死」というものが悪であり、できるだけ死から遠ざけることが善だという絶対的な倫理観があるのです。

「人を生かす」ということが、医学が人間に貢献できる最大の価値でもあるのですね。

終末期医療の現実!選択肢がない延命治療

どのような病気であれ、最終的には病気を完治させることが医師や医療従事者の最大の目標です。

極端に言えば、医師は1%でも治る可能性があれば治療を途中で投げ出すことは許されません。そして1分1秒でも長く生きさせることが医師の使命だと信じて治療を行います。

一方、治療を受ける本人や家族は医学という専門知識に乏しい上、医師は常に正しい判断を行い最善を尽くしてくれるものという固定観念のようなものがあります。

もし医師の判断に異論を唱えようものなら、患者本人に何らかの不利益があるかもしれないという強迫観念を持つ人すらいます。医療という権威主義の世界において、患者本人や家族は全く無力な存在と言って良いでしょう。

医師は1分1秒でも患者を長く生かす延命こそが最善の医療と考え、患者や家族はその医師の判断を受け入れる他に選択肢はなく、医師に言われるがままに延命治療を受け入れざるを得ないのです。

幸福な人生を締めくくるためにも、最も充実すべき時間である終末期がこうした医療の矛盾によって図らずも軽薄に扱われてしまうことが、現在の日本における終末期医療の最も大きな誤りであり克服すべき課題なのです。

終末期における医療の矛盾

医師の立場としての価値観、倫理観というものは決して間違っているわけではありません。病気を克服して寿命を長くする目標があってこそ、医学の進歩につながってきたからです。

しかし、近年の医療現場では必ずしも長く生きさせることだけが絶対的な価値ではないという疑問の声も上がっています。

もはや治癒の見込みが極めて低い病状の場合に延命だけを治療の指針にしていると、患者が終末期を幸福に過ごす権利までを奪ってしまうという矛盾が生じてしまうのです。

これでは人を生かすための医療が、人から生きることを奪う医療に逆転してしまうのです。

有無を言わさず…それは本当の幸福なのでしょうか…

あなたはどう感じますか?

終末期に延命を行なうことの問題点とは?

病気や障害の程度が重くなり、自分の力だけでは生きることが難しい状態になった時、医療技術の助けを借りて生き長らえることを延命治療(延命措置)と言います。延命治療の方法は大きく分けると次の3つがあります。

1.呼吸における延命措置

終末期に自分の力だけで呼吸ができなくなった時、人工呼吸器を使うことによって心肺機能を維持し延命する方法です。

人工呼吸器を使うことで生きる時間を長くすることはできますが、人工呼吸器をはずせば患者は亡くなります。

1分でも長く生かすことが医療の目的と考えれば、人工呼吸器を使うことで命の時間を長くすることは、医療の目的としては適っていると言えるかもしれません。

しかし、もし自分や自分の家族が人工呼吸器をつけなければ生きることができなくなった時、どこまでの延命を望むのか、人工呼吸器をつけてまで生きる意味があるのか、という問題に直面します。

人工呼吸器をつけて生きながらえることは、尊厳のある生き方と言えるのか、生きるということは、どこまでを指して言うのか、その判断は医師ではく自分自身や家族が下さなければいけないのです。

また、心肺蘇生についても同様の問題が起こります。終末期の患者は、いつかは心肺が停止します。しかし、人工呼吸や心臓マッサージなどを行なえば、その時間は生きることができるかもしれません。

心肺蘇生による延命をどこまで行なうのか、という問題も最終的には本人や家族が決断することです。本人の意思を尊重するのであれば、事前に意識のあるうちに、どこまでの延命を望むのか、意思を確認しておく必要があります。

2.人工栄養法による延命措置

人工栄養法は、嚥下機能が低下することによって自分で食べたり飲んだりすることができない場合に、点滴や胃ろうなどによって人工的に水分や栄養を患者に与える延命方法です。

この場合も患者の意識の有無に関わらず、人工的に栄養を送らなければ患者は亡くなってしまいます。

人工栄養法による延命に関しても、本人や家族がどこまでの延命を望むのか、あるいは、どのタイミングで人工栄養法を中止するのか、を判断することが必要です。

3.人口透析による延命治療

腎臓の働きが低下した患者の場合、人工透析を行なう場合があります。人工透析も延命治療の1つです。終末期でも必要があれば人口透析が行なわれます。

人工透析による延命も、医師や介護士が勝手に中止することはできません。これもまた、本人の意思や家族の判断が必要になるのです。

このように延命治療といっても、呼吸、栄養、透析など患者の状態によって延命の方法も異なります。

延命治療が本当に必要かどうか、患者本人や家族はどこまでの延命治療を望むのか、あらかじめ準備をして意思表示をしなければ医療技術によって人工的に生かされることになります。

それがはたして尊厳のある生き方と言えるのでしょうか?

患者は延命治療を望んでいない!?延命より天寿を受け入れるべきか?

内閣府がまとめた調査によると、高齢者を対象とした「延命治療に対する考え方」の調査では次のような結果が得られています。

way of thinking about life-sustaining treatment of the elderly

考え方
延命のみを目的とした治療は行なわず、自然にまかせてほしい 91.1%
少しでも延命できるよう、あらゆる医療をしてほしい 4.7%
分からない 4.2%

高齢者の9割以上の人が、延命治療は受けず自然に任せた最期を送りたいと回答しています。それにも関わらず、多くの場合1分1秒でも長く生かすことを目的とした延命治療が行なわれているのが現状です。

患者の意思と医師の治療の方向性に矛盾が生じているとすれば、本人の希望に沿った幸福な最期が送れるように、延命治療のあり方を見直す必要があるのです。

本当は自宅の畳の上で死にたい!嫌々ながら病院で死んでゆく現実

終末期を幸せに送るためには、自分の最期をどこで送りたいのか、が大きな要因になります。

同様に、高齢者が「治る見込みがない病気の場合、どこで最後を迎えたいか」という質問に対し次のような回答がまとめられています。

where we want to celebrate their last moment of the elderly

高齢者の希望として自分の最期を迎えたい場所
自宅
(子供や兄弟の家を含めると)
54.6%
(55.7%)
病院などの医療施設 27.7%
特別擁護老人ホームなど医療施設 4.5%
高齢者向けのケアつき住宅 4.1%

半数以上の人が自宅で最期を迎えたいと希望しています。さらに病院などの医療施設と答えている人の中でも、その理由を聞くと家族に負担をかけたくないから病院での最期を迎えたいと回答したという人が大半という分析もあります。

この統計には数字に現れない日本的犠牲の精神が含まれているような気がします。これらを単純に計算しても少なくとも77%以上の高齢者は、住み慣れた自分の自宅で最期を迎えたいという気持ちが本心なのです。

これに対し、実際に高齢者がどこで最期を迎えているかについて、次のような統計がまとめられています。

where we want to celebrate their last moment of the elderly

高齢者が実際に亡くなっている場所
病院(診療所含む) 77.8%
自宅 12.9%
老人ホームなど介護施設 7.2%

この統計からも分かるように、現在の日本では、病気や老衰などで亡くなる人のおよそ8割が病院で亡くなっています。また死因別の統計では、がん患者に限っていえば9割の人が病院で亡くなっています。

高齢者の8割以上の人が自宅で最期を迎えたいという希望がある中で、現実にはおよそ8割の人が病院で亡くなっているのです。

希望通り自宅で最期を迎えられる人は、せいぜい1割程度というのが現実です…。

がん治療における4つの痛みと緩和ケアの選択

終末期医療において、延命治療や最期を迎える場所の選択と同じく、緩和ケアを行なうかどうか、ということも本人や家族が行なうべき重要な選択です。特に激しい痛みを伴う末期がんの患者の選択は重要です。

がんは急性の病気に比べ治療期間が長く、少しずつ患者の体力や精神力を奪っていきます。その間、がん患者は次の4つの痛みを抱えながら治療に耐えなければなりません。

1.肉体的な痛み

現在でもがんの治療は、手術や抗がん剤の影響などで激しい苦痛を伴う場合があります。抗がん剤の副作用によっては髪や全ての体毛が抜け落ちるというような人間としての尊厳を傷つけられることも往々にしてあります。

さらに、治療が困難で回復が見込みがないとされる末期がんの患者においては、がんの病巣から激しい痛みが起こる「がん性疼痛」の症状に苦しみます。

がん性疼痛とは、がん細胞によって病巣の細胞が壊れたり圧迫されたりすることで神経を刺激し起こる痛みのことです。がんの転移が広がるほど、骨や筋肉、内臓など広範囲の細胞や組織にも痛みが広がっていきます。

特に末期がんにおけるがん性疼痛の痛みは、体の広い範囲にほぼ慢性的に激しい痛みが続き、患者は耐え難い苦しみにさらされます。

2.心理的な痛み

がんを患う患者は、肉体的な痛みだけでなく、なぜ自分ががんにならなければいけないのかという憤り、病気の進行や死に対する恐怖、自分の存在に対して否定的になるなど、心理的にも様々な苦痛や葛藤、恐怖に苛まれます。

3.社会的な痛み

さらに、家族へ負担をかけることや、収入の減少、治療のための経済的な問題、会社の職責や、やり残した仕事のことなど、社会的な痛みも背負うことになります。

4.スピリチュアルな痛み

スピリチュアルな痛みは精神的苦痛と若干似似ていますが、緩和ケアにおいては分けて考えられています。

「死んだらどうなるの」「なぜ人は生まれて死ぬのか」といった生死の概念や生きる意味、死への受容へ向けた痛みです。

がん患者は、こうした4つの苦痛を抱えながら闘病生活を送らなければなりません。まして、末期がんの患者ほど苦痛の度合いが強くなり、闘病生活が想像を絶する過酷なものになることは明らかです。

そのため、これ以上治療しても回復する見込みがない末期がんの場合、無理に治療を続け延命を図るよりも、痛みを軽減し残された人生をできるだけ快適に生きることを選択するほうが、患者本人の人生にとっては有意義といえる場合もあります。

延命治療をするのか、緩和ケアをするのか、の判断は医師が強制するものではなく、本来患者や家族が選択すべき権利なのです。う~ん考えさせられますね。

がん患者の苦しみを支えるホスピス・緩和ケアとは?

がん患者、特に末期がんの患者には、先ほどあげた3つの痛みを含め次のような痛みや苦痛を伴う症状が起こる場合が多いといえます。

  • 3つの痛み(肉体的・心理的・社会的な痛み)
  • 呼吸困難
  • 全身の倦怠感
  • 黄疸
  • 胸水や腹水がたまる
  • 吐き気や嘔吐
  • 発熱
  • 食欲不振
  • 嚥下障害
  • 便秘 
  • じょく創(床ずれ)など

末期のがん患者にはこうした痛みや苦痛など、つらく不快な症状が日常的に起こります。延命を優先する治療方針であれば命の時間を多少長くすることはできますが、それが本当に自分らしい日常生活の送り方、生き方なのかとは別の話です。

耐え難い苦しみによる延命を望まず、天命を自然に委ね、残された人生を自分らしく安らかに送るための方法に、ホスピスと緩和ケアがあります。ホスピスや緩和ケアとは次のような治療といえます。

緩和ケアとは?

2002年にWHOは緩和ケアを次のように定義しています。

緩和ケアとは、生命を脅かす疾患による問題に直面している患者とその家族に対して、痛みやその他の身体的問題、心理社会的問題、スピリチュアルな問題を早期に発見し、的確なアセスメントと対処を行うことによって、苦しみを予防し、和らげることで、QOLを改善するアプローチである。

これは要するに、治療を続けても回復の見込みがない患者には、延命治療ではなく肉体的・精神的な苦痛を和らげ、安寧の気持ちや人間としての尊厳を保ち、残された人生の時間を有意義に過ごしてもらうという選択です。

厚生労働省緩和ケア推進検討会では、分かりやすく「緩和ケアとは病気に伴う心と体の痛みを和らげること」と定義づけています。

具体的には、

  • 症状の緩和
  • 不安などの精神的ケア
  • 社会的対応

を必要に応じて行われます。

例えば「症状の緩和」は、痛みを感じている場合には痛み止めを処方したり、睡眠不足であったら睡眠導入剤を処方したりします。モルヒネは、この「痛みの緩和」として使用されるのです。

モルヒネは医療用麻薬と呼ばれていましたが、最近ではオピオイド鎮静薬と呼ばれます。麻薬という言葉が入っていると少し怖い気がしますが、このオピオイド鎮静薬は処方されても中毒性や危険性は無いそうです。

また、「精神的ケア」や「社会的ケア」では、医学的な治療が行われるわけではありません。

「精神的ケア」では治療に対する不安の相談にのってくれたり、必要に応じてカウンセリングや心理検査をしてくれたりします。医師や看護師も精神的ケアとして話を聞いてくれたりしますが、専門の心理士や専門スタッフが対応してくれるケースもあるそうです。

また、「社会的対応」としては療養にかかる治療費の助成制度の紹介や経済問題についての相談にのってくれたりします。

これらの緩和ケアは、末期のがん患者だけでなく、がんと診断された段階から必要に応じて行われるものなのです。つまり、初期のがん患者に対しても「緩和ケア」が勧められ、「緩和ケア」を受ける場合もあるのです。

この初期のがん患者も緩和ケアを受けられることは、一般の方にアンケートをとったところ約38%ほどしか知らなかったという調査結果も出ています。それほど、知られていないことなのです。

また、よく緩和ケアのイメージとして「末期がん患者が入院して受けるもの」と思われている方も多いかと思います。

たしかに「緩和ケア」を入院して受けられる施設を「ホスピス」と呼び、この「ホスピス」が、一般的な緩和ケアのイメージとして強いのではないでしょうか。

しかし、「緩和ケア」は、入院して受けるだけでなく、通院でも自宅療養でも受けることが可能です。

もっと知っておきたい、緩和ケアの意外なこと

緩和ケアは、医者や看護師だけが行うものだと思っていませんか?実は、緩和ケアには医師や看護師だけではなく数多くの専門スタッフが関わります。

緩和ケアに関わる人たち

  • 医師
  • 看護師
  • 薬剤師
  • 心理士
  • ソーシャルワーカー
  • 栄養士
  • リハビリテーション

これらの専門のスタッフが緩和ケアチームとして緩和ケアを行います。

病院の医師や看護師はもちろんですが、自宅療養などになった場合は訪問診療医(かかりつけ医)や訪問看護師が自宅で病院と同じような治療をしてくれるケースもあります。

ソーシャルワーカーは聞きなじみがないかもしれませんが、社会福祉士や精神保健福祉士の資格を持った方が多いようです。

ソーシャルワーカーは、入院や治療に高額な医療費がかかってしまうなどの不安に対し、高額療養費制度など紹介してくれたり、長期療養の場所の紹介をしてくれたりします。

また、栄養士などは抗がん剤などで食欲が無い時など、食事の内容や食材の調理方法など相談にのってくれます。

リハビリテーションでは、日常生活を維持するための治療を行ったりアドバイスをしてくれたりするのです。これらの緩和ケアは、がん患者だけでなく、その家族にも行われます。

経済的な負担や療養の場所、食事のお世話などは、家族が行うことが多いので、このようなケアが受けられれば安心してがん治療のサポートができますね。

また、意外に知られていないのが、緩和ケアには料金が発生することもあるということです。

厚生労働省から認可を受けた緩和ケアチームによる診療を受けると「緩和ケア診療加算」という医療費がかかってきます。その費用は1日あたり4000円です。

入院するのも「緩和ケア病棟」という厚生労働省から承認を受けた施設に入院する場合は、入院料金がかかります。料金は入院する期間によって異なるようですが「緩和ケア病棟入院料」として1日あたり3万円程度から5万円程度となっています。

「緩和ケア診療加算」も「緩和ケア病棟入院料」も医療保険が適用され、一定額を超えると高額療養費制度を利用できるそうなので、ソーシャルワーカーに相談すると良いですね。

また、民間の保険会社によるがん保険は、緩和ケアで入院する場合、痛み止めなどの治療がされていれば入院給付金が支払われる対象になるそうです。

ただ、療養のみであったり心のケアが目的の入院であると保険の対象外となることがあるそうなので、加入している保険会社に確認をしてみてください。

ホスピスとは?

ホスピスは緩和ケアを行なう施設のことです。専門施設だけでなく、一般病院の一部をホスピスとして使用する緩和ケア病棟や、自宅で緩和ケアを行なう在宅ホスピスなどがあります。患者が最適なケアを選択できるように裾野が広がっています。

ホスピス・緩和ケア病棟のメリット

ホスピスや緩和ケア病棟では、終末期となり自分の命の期限を受け容れた人が、最期の時間を自分らしく人間らしく生きる場です。

厳しい言葉で言えば、病院が人間の尊厳を無視した「死にゆく場所」であるのに対し、ホスピスは人生を幸福に締めくくる最後の「生きる場所」と言えます。

命を全うすることは同じかもしれませんが、単に死にゆく場所で過ごすことと、最期に生きることを実感できる場所で過ごすことには、全く逆の価値があると考えられます。

実際に、病院とホスピスを比べると次のような違いがあることが分かります。

①病院では医師の判断や権限が絶対的ですが、ホスピスでは医師と患者は対等な関係です。全てのスタッフも患者と同じ目線で接してくれます。ホスピスでは患者が無理に何かを強制されることはありません。

②ホスピスは患者がその人らしい人生を有意義に全うすることを援助する場なので、患者が望めば可能な限りすべての要望に対応してくれます。

③ホスピスに入所する患者は、終末期を迎えた人で比較的余命の短い人が集まる場所です。病院で長期入院する人を看護する人に比べ、ホスピスのスタッフには情熱があり、まるで家族の一員のように親身になってサポートしてくれます。

④患者だけでなく患者の家族をサポートするのもホスピスの役割です。患者の家族は看病による心身の疲労や、患者との別れへの葛藤、経済な問題など様々な悩みを抱えることになります。ホスピスではこうした家族の苦悩にも良きアドバイスを行います。

このようにホスピスでは患者中心のサポートを行なってくれるだけでなく、患者の家族に対するケアも合わせて行ってくれます。

そのためホスピスでの最期を選択した家族の満足度は90%以上と高い評価がでています。

延命治療の選択や自分の最期を迎える場所は自分で選択するべき

前述した、終末期の延命治療の選択や、自分の最期をどこで過ごすか、ホスピス等での緩和ケアを受けるかどうか、の選択は、医師や家族とも相談し自分自身の考えなども含めて、最終的には患者が選択するべきものです。

しかし「医療の矛盾」によって、自分の最期を自分が望む形で終えられない人が大半であるのが日本の医療現場の現実です。入院したら死ぬまで病院で過ごさなければいけない状態は、尊厳ある生き方とはあまりにも懸け離れています。

死の受容プロセス

自分が死ぬべき運命だと悟った時、スイスの精神科医キュブラー・ロスは次のような心理プロセスが現れると分析しています。

5つの段階 その心理
否認 自分ががん(不治の病)になるはずがない。
怒り なぜ他の人ではなく、自分ががんにならなければいけないのか?
取引 もしこの病気が治ったら、毎日○○をしますと神様と取引をする。
抑うつ 気持ちが落ち込み抑うつ状態になる。(80%はうつ状態)
受容 自分の死を受け入れる、もしくはあきらめる。

多くの人はこれら5段階のプロセスを踏み、最終的には死を受容する人がほとんどです。しかし、受容には2つのタイプがあり、「死を受け入れる人」と「死をあきらめる人」のどちからに分かれます。

人が亡くなる時の気持ちを、他人がどうこう言うことはできませんが、死を受け入れ残された最期の時間を友人や家族などとともに、分かち合う人でいられることのほうが幸せなように感じます。

満足死を迎えるために必要な準備

自分の最期を自分らしく尊厳を持って送るためには、それなりの準備が必要です。満足できる最期「満足死」を迎えるためには次のような覚悟や準備が必要です。

自分の最期を決めるのは、あくまでも自分!強い決意を持つこと

日本人は諸外国と比べて、宗教観や死生観が少ないと言われます。人は何のために生きるのか、なぜ死のか、など生や死に対する信念や覚悟というものが比較的乏しいのです。

自分の最期を医師の権限に委ねるのではなく、自分が自分らしく尊厳をもって全うするにはどうすれば良いか、自分で考え意思表示をする覚悟と行動力が必要です。

リビングウィル(生前遺言)を作成する方法

自分がどのような最期を送りたいかを意思表示する方法で世界で最も普及している方法が、リビングウィルという方法です。リビングウィルは生きている間だけ効力を有するので生前遺言とも言われます。

延命治療や緩和ケアの際、どのような治療を選択するのか、どこまでの医療を求めるのか、その意思をリビングウィルという文書にして意思表示をするのです。リビングウィルを作成するには本人の希望だけでなく、家族の同意や医師の協力も必要です。

医療に関する医療委任状を作成する方法

リビングウィルより簡易的な方法として、自分の終末期医療で行なわれる治療の判断を家族やパートナーに一任するのが医療委任状を作成する方法です。

医療委任状は、難しい専門知識を理解しなくとも、家族など信頼できる人に自分の最期の迎え方を伝えておき、自分の代わりに一切の指示を任せる方法です。この場合、自分の意思を十分理解してもらうことや委任する人との信頼関係が重要です。

自分の生き方を振り返り、最期の送り方を決める方法

自分の最期をどう迎えれば良いのか、何が最善なのか、ということを決めることは簡単なことではありません。考えがまとまらない場合は、自分の人生を振り返った「人生の回顧録」を作成し、自分の生き方を振り返ると良いのです。

そして自分の人生の最期をどのように送りたいかを「エンディングノート」としてまとめるのです。これは回顧録の最後に記しても良いでしょう。

つまり、自分の最期をどこでどのように送りたいのか、をあらかじめ文書化したり親族に委任したりして過剰な延命措置を拒否し、自分らしく尊厳のある満足な死を迎えるように準備することが大切なのです。

専門家に相談することも大切

延命治療や緩和ケアなど終末期医療の選択は、専門性が高く素人ではなかなか判断できないことも多いので、次のような専門機関に相談しアドバイスを受けることをお奨めします。

日本尊厳死協会
尊厳死、緩和ケアなど終末期医療全般の相談
サイト:http://www.songenshi-kyokai.com/
所在地:東京都文京区本郷2-27-8 太陽館ビル501
電話番号:03-3818-6563
 9:30~17:00(土日祝休)
FAX:03-3818-6562

日本ホスピス緩和ケア協会
緩和ケアについての専門的な相談

サイト:http://www.hpcj.org/
所在地:神奈川県足柄上郡中井町井ノ口1000-1 ピースハウスホスピス教育研究所内
電話番号:0465-80-1381
FAX:0465-80-1382

国立がん研究センター(がん対策情報センター)
がんの緩和ケア全般

国立がん研究センター 築地キャンパス
中央病院(がん相談対話外来)

サイト:http://www.ncc.go.jp/jp/ncch/index.html
所在地:東京都中央区築地5-1-1
電話番号:03-3547-5130
 10:00~16:00(土日祝、年末年始 休)
FAX:0120-489-512

国立がん研究センター 柏キャンパス
東病院(初診診療予約および医療相談の予約)

サイト:http://www.ncc.go.jp/jp/ncce/index.html
所在地:千葉県柏市柏の葉6-5-1
電話番号:04-7134-6991(予約専用ダイヤル)
 8:30~17:15(土日祝日、年末年始 休)

地域の在宅看護支援センター
在宅医療・在宅ホスピスなどの相談
お住まいの地域ごとに存在する在宅看護支援センターへ
全国地域包括・在宅介護支援センター協議会のHPに各地域の情報が記載されていますので参考になさってください。
http://www.zaikaikyo.gr.jp/link2/index.html
最寄の保健所や自治体の高齢福祉課
相談先の問い合わせ、相談全般

こうした専門機関と相談の上、焦らずじっくりと判断することが大切です。そのためにも60歳を越えたら準備を始めることが奨められています。

日本人は死を受け入れることに迷いが強いといわれています。尊厳を持ち満足した最期を迎えるためには、生きるとは何か?という根源的な問に自分なりの答えを見出すことが必要なのかもしれません。

緩和ケアは、初期のがん患者さんもその家族の方も受けることができます。

一つのデータとして初期のがん患者が緩和ケアを積極的に受けることによって、生存率も上がるという例もあるそうです。その理由は、緩和ケアが痛みや不安を緩和し十分に睡眠や栄養がとれ、がんと闘う免疫力が上がったためとも言われています。

また、家族が緩和ケアを受けることにより、がん患者と共にがんと闘う気持ちや準備ができるのではないでしょうか。がん患者は長期療養することもあるので、それをサポートする家族の心理状態や経済状況は良いに越したことはありませんね。

緩和ケアの主役は、医師や病院ではなく、がん患者さんやその家族の方です。

医師や病院に失礼だからと思ったり、がんなのだから辛かったり痛いのは当たり前だと思わず、何を不安に思っているのか、どうしたいのかという意思を医療者に伝えることが大切です。

そして、がん患者さんもそれを支える家族の方も納得して治療に取り組むことが大切なのではないでしょうか。

キャラクター紹介
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