健康生活TOP 乳がん 初産年齢が若く出産人数が多いほど乳がん発症リスクは下がる

初産年齢が若く出産人数が多いほど乳がん発症リスクは下がる

pregnant women and breast cancer

出産経験の有無によって乳がんの罹患リスクが変化するのかどうかという問題について、これまでは出産経験がないと、閉経前後の平均で2倍近くリスクが高まると言う情報がありました。

一方で出産経験の有無だけでは乳がんリスクが変化しないと言うデータもありました。いずれも日本人に対する日本での研究で、国立大学や国立の研究機関によるデータですので、信頼性の高いものです。

また、こうした相違点だけではなく、共通する傾向も見られましたので、それを含めて見て行きましょう。

今回中心に見て行くのは文部科学省の研究

さまざまな病気に関してこれまでにもデータを紹介してきた日本の研究にJPHC-Studyと言う物があります。これは国立がん研究センターや国立循環器病研究所が中心になって、大学や医療機関と連携して行うコホート研究です。

今回はそれとは異なり、文部科学省科学研究費大規模コホート研究(JACC-Study)からデータを紹介します。これは主に国立大学医学部が中心となって進めているコホート研究です。

コホート研究と言うのは、何かの外部要因に晒された人とそうでない人を比較して、どのような影響が出るのかを見る研究だと思って下さい。例えば、たばこを吸う人と吸わない人の肺がん罹患率を見比べると言った具合ですね。

こうした研究はその性質上、多くの人数を長期間追跡するので、実態に即した良いデータが取れるのです。

JACC研究では出産経験の有無は乳がん罹患率に影響しなかった

これまでは2007年くらいに発表されたJPHC-Studyの結果から、出産経験のない女性は乳がんにかかりやすいと考えられてきました。しかし、その数年後に発表されたJACC-Studyのデータでは、出産経験は乳がんの罹患リスクに影響しなかったのです。

統計的に意味にある数値ではありませんでしたが、むしろ出産経験のない女性の方が数%程度リスクが下がっていたのです。今回紹介するデータはこのデータが取れた時のものです。

また、出産経験がある人の場合では、たくさん産んだ人ほど乳がんリスクが下がると言う傾向が見られました。

graph showing the risk of birth number of times and breast cancer

このように比較的大きな差となって表れていますが、JPHC-Studyにおいても数値の違いはあれど同じ傾向を示しています。ですので、出産経験のある人は多く産むほど乳がんリスクを回避できると言っても良いでしょう。

ちょっと気になる出産経験のない人との差

上のグラフは出産経験が1回の人を基準に採っています。そうなってくると、出産経験のある人全体の平均は、基準値の1よりかなり低いところに来そうですね。そして、この平均値が出産経験のない人のリスクとほぼ同じであったわけです。

つまり、少なくとも1回だけの出産経験の人は出産経験のない人よりリスクが高くなることになります。では2回以上の出産経験を持つ女性のリスクはどうなっているのでしょう。

これを考えるには出産回数ごとの人数の比率が必要になります。そこで、日本全体の出生子供数分布のデータ(2010年度)を利用して、筆者が加重平均を求めて数値化してみました。

graph showing the risk of birth number of times and breast cancer2

これは皆さんの参考になるようにと割り出した、筆者による机上の計算ですから、あくまで参考程度に見ておいて下さいね。

計算によるとこのような結果になりました。つまり、出産回数が0回と2回でリスクはほぼ同じになり、1回の人が最も高くなったと言うことです。

つまり、出産するなら複数回の方がリスクが下がると言うことです。

しかしリスク要因はこれだけではありませんから、回数だけで一喜一憂するのは早計ですよ。

初産年齢や初潮・閉経年齢も乳がんリスクには大きな影響を与える

出産回数だけでなく、初産の年齢も乳がんリスクには大きな影響を与えています。

また、初潮や閉経と言う、女性ホルモンの変動に影響する現象がいつあったかと言う物も、乳がんリスクには大きな影響があります。

初産を20代で経験しておくと乳がんリスクは半分になる

初産がいつであったかと言うことは、意外に大きな影響を持っていました。

graph showing the age at first birth and breast cancer risk

このように、初産が20代であった人たちに比べると、30代であった人の乳がん罹患リスクは、ほぼ2倍以上になっています。

このことは、先にお話しした出産回数とも関係するでしょう。初産が20代であった人は2回以上の出産回数を持つ可能性が高まりますが、30代であった場合、特に35歳以上であった場合は1回にとどまるケースが増えると言うことも想定されます。

そして、乳がんの発生リスクを閉経後に絞った場合、さらにリスク上昇の度合いは大きくなっていますね。ですので、初産が遅かった人は特に閉経後の乳がん検診をお忘れなく。

生理のある期間が延びるほど乳がんリスクが高まる

JACCの研究では数値が示されていませんでしたので、2007年のJPHCの研究から、閉経前の女性の乳がん罹患リスクを初潮年齢別で見てみましょう。

graph showing the age at menarche and breast cancer risk

このように、初潮年齢が早いほど乳がんリスクは高くなっています。しかし。この傾向は閉経後に消えてしまい、初潮年齢と乳がん罹患リスクに関係は見られなくなります。

一方、閉経年齢と乳がん罹患リスクは、閉経後の女性において関係が見られるようになります。

graph showing the age of menopause and breast cancer risk

以上のことから、閉経前においては早い初潮年齢が、閉経後においては遅い閉経年齢が、それぞれ乳がんのリスク要因になると言う結果が出ています。

この生理のある期間の長さが影響するのは卵巣がんでも同じですが、生理という肉体的な活動が直接影響する卵巣に対して、乳がんではホルモンの影響と言うことなのでしょう。

出産を繰り返すと乳房の内部でがん化しにくい細胞が増える

早い初潮年齢や遅い閉経年齢はホルモンが乳がんリスクを増大させていると考えられます。ただ、このメカニズムは思ったより複雑で、主に黄体ホルモンの方が影響を及ぼしている可能性が示唆されているにとどまっています。

一方、出産と乳がんリスクについても、もちろんホルモンの影響があるとはいえ、むしろ乳腺の発達と縮退を繰り返すことが乳がん抑制にプラスに働いていると研究グループは考えています。

出産後の授乳期に乳がんリスクが高まる時期が存在している

女性の乳房は妊娠と共に、出産後の授乳に向けて乳腺の発達が始まります。そして乳腺細胞が急激に増殖・分化し、出産を迎えるころには母乳の合成と分泌が始まります。

その後離乳期を迎えると、母乳の合成や分泌は止まり、乳腺細胞の数は減って妊娠前の状態へと戻ります。この一連の出産後の期間の間に、がん細胞ができやすい時期があるのです。

一方、次の妊娠出産の時期が来ると、再びこの一連の流れに乗ります。そう考えると出産回数が多いほど乳がんにかかりやすくなりそうにも思えるのですが、ここで細胞の分化と言うメカニズムが働いてきます。

出産のたびに乳房はがん細胞を生み出しにくくなる

妊娠前の乳腺細胞が妊娠に伴って母乳を作れるように変化するのも細胞の分化と言う働きによるものです。長期的に見た場合、出産を繰り返すと乳腺細胞はより安定した形に分化し、外部からの刺激を受けにくくがん化しにくい細胞に変化します。

先のデータと照らし合わせると、1回の出産では乳がんのがん細胞ができやすい状態があってリスクが上がる一方で、まだ安定した細胞への分化がそれほど起こるわけではないので、トータルでリスクが上昇すると言うことです。

出産後の乳がんにかかりやすい期間と言うのは一時期だけですが、がん化しにくい安定した細胞への分化は一度起こると元に戻りません。その結果、出産数が多いほど乳がんにかかりにくい乳房になると言うわけなのです。
乳がんが比較的若い人にも起こりやすいのはこうした理由からかも知れませんね。

でも、乳がんのリスクファクターは妊娠出産やホルモンによるものばかりではありません。

現代の女性はこの研究にあるリスクを全部抱えてしまっている

この研究から見えてくる乳がんのリスクを見てもらうと、若い女性ほどリスクが高いんじゃないかと、読んで下さっているみなさんもお感じになると思います。

実際その通りなのですが、がん自体が加齢を最も大きなリスクファクターとして持っているので、寿命が延びれば延びるほど加齢によるリスクも無視できなくなってくるのです。

現代女性は乳がんリスクを大きく持っている

  • 早い初潮年齢
  • 少ない出産数
  • 遅い初産年齢
  • 遅い閉経年齢

この4つが今回紹介した乳がんのリスクファクターです。現代の女性に見事に当てはまりますよね。例えば、初潮の年齢は昭和20年代では平均で14歳~14.5歳だったものが、現在では12歳~12.5歳と2年くらい早くなっています。

一人の女性が一生の間に産む子供の数を表す合計特殊出生率は昭和35年に2.0だったものが、平成25年では1.43にまで下がってしまっています。

出産時の年齢の推移を見ると産める年齢の上限が感じられる

厚生労働省の発表している出産に関する統計の概況を見ると、初産年齢の高齢化は一目瞭然です。

昭和50年の初産年齢は25.7歳です。それに対して平成21年では29.7歳と、4歳も高くなっているんですね。その後平成23年にはついに30.4歳と大台突破です。先のデータと見比べれば、乳がんリスクが2倍になるラインを超えたと言うことですね。

一方、第3子の出産年齢は、昭和50年時には30.3歳であったものが平成21年には33.1歳と、2.8歳しか高くなっていません。やはり年齢が高くなると出産にリスクが伴ってくるからでしょう。

さらに、昭和のデータでは3人の子供の生まれた間隔は均等に2.3年でしたが、平成の子供は2人目までが2年ちょうど、2人目から3人目まではなんと1.4年しかかかっていません。いろんな意味でお母さんに負担がかかりそうな数字ですよね。

閉経に関しては正確なデータが見つからなかったのですが、おそらく昔よりは遅くなっているのではないかと思われます。

このように現代の女性は生理に関連する部分でリスクが高くなっているので、他の部分で注意する必要があるのです。

せめて他の要因で乳がんにかかるリスクは減らしておこう

women to the food and drink

先に挙げた4つのリスク要因のうち、初潮や閉経の年齢は自分で決められるものではありません。ですから、リスクが上がりそうな状態であったら乳がんを警戒するしか方法がないわけです。

一方、初産年齢や出産数は自分で決められるものの、自分一人でどうにかなるものでもありません。社会的な要因に影響されるものですね。ですから、やはりリスクが高いのであれば自分で警戒しておきましょう。

飲酒と肥満は自分で減らすことのできる乳がんリスク

お酒は他の病気の原因になるだけでなく、乳がんのリスクも高めてしまいます。しかも、深酒が悪いのではなく、少し多め(ビールで1日に420mL以上程度)を飲むだけで乳がんリスクは1.75倍にもなるのです。

詳しくは別の記事でご覧ください。
【女性の飲酒】1日1~2合で脳卒中と乳がんのリスクがアップ!

また、肥満も乳がんを招きます。世界保健機関WHOは、肥満がもたらす危険の一つとして「乳がん・子宮がん・大腸がん」をリストアップしています。

ですので、自分の体重をBMI=18.5kg/m2以上・25.0kg/m2未満と言う普通体重の範囲に収めるように注意しておきましょう。

抗酸化物質や食物繊維などを常に食べるようにしよう

常に抗酸化物質を摂っておくことで、身体全体を酸化ストレスから守り、がんの発生を抑えると言う効果は期待できます。酸化ストレスはDNAに異常をもたらしますから、がんのリスク要因になり得るんですね。

食物繊維も大事です。脂肪やコレステロールを処理してくれることで肥満を防いでくれます。また、いわゆる大腸に棲みつく善玉菌のエサになってくれるので、免疫力が上がります。

免疫力が上がると、たまたま発生したがん細胞も、一人前のがんに育つ前に処理してくれるのでがんの予防効果として期待できます。

具体的には緑黄色野菜のβカロテンやフルーツのビタミンC、ナッツなどのビタミンE、そしてそれらと同時に摂れる食物繊維が有効です。

かと言って肉や魚、卵、牛乳などのたんぱく質もお忘れなく。乳がんとは直接関係しなくても、たんぱく質不足は様々な病気を呼びますからね。

結局、乳がんも健康的な食生活でかなり予防できると言えるでしょう。

ポイントは多めのたんぱく質とビタミン・ミネラル。少なめの脂質。そして炭水化物については食物繊維を中心にして糖質は控えめにと言うことになります。

そして、初潮が早かった人(おおむね13歳以下)や初産が遅かった人(おおむね30歳以上)は、遅くとも30歳からは乳がん検診の受診をお忘れなく。

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