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大動脈瘤の最新治療と手術がすごい!開発がすすむ人工血管のヒミツ

“動脈瘤という言葉を聞いただけでは、その危険性がピンとこない人も多いでしょう。これは、静脈瘤のように、身体にとってトラブルではあるものの生命の危険に直結しない病気との、イメージの混同によるものです。

動脈瘤は、特に大動脈と脳動脈で破裂してしまうと非常に高い死亡率を持つ危険極まりない病気です。ですので、破裂前に見つかったら、手術を中心にした治療をすぐに開始すべきなのです。

最も危険なのは大動脈瘤と脳動脈瘤!検査で判明してから手術まで

動脈瘤というのは、心臓から血液を送り出している動脈にできる、血管の膨らみです。血管の一部が風船のように膨らんでいるため、何かのきっかけがあれば破裂してしまいます。

それが心臓から出て間もない太い血管である大動脈で起こると、一気に血圧が下がって意識を失い、死に直結します。一方、脳動脈でこれが起こるとほとんどがクモ膜下出血の形をとり、やはり生命に危険が及びます。

脳動脈瘤は脳卒中の範疇に入りますので、今回は大動脈瘤について、その治療を中心にお話します。

大動脈瘤発見には定期的な検査

大動脈瘤は基本的に無症状で進行しますから、破裂前の発見は、たまたま他の病気の検査や、会社の健康診断、人間ドックなどで見つかることがほとんどです。

肺など呼吸器の病気を検査する胸部レントゲン検査は、ちょっとした健康診断というレベルでも必ず行われますね。この時に、大動脈瘤の可能性がある異常な影が映ることがあります。

運良くこれに引っかかったら、すぐに病院で詳しい検査を受けて、できるだけ早く手術による治療を行いましょう。

また、心臓の検査で超音波エコーを使うケースもありますが、これで見つかることもあります。さらに肝臓や胆石の検査で使う、腹部超音波検査では腹部大動脈瘤が見つかることもあります。

いずれにせよ定期的な健康診断や、慢性病の定期通院検査などが行われていると発見しやすくなります。

大動脈瘤が見つかったら基本は手術

大動脈瘤は破裂していないと、症状が現れにくい病気ですので、何の症状もない段階で「手術しましょう」と言われるとためらってしまうのが人情です。

しかし、大動脈瘤は破裂してしまうと、最終救命率は10%~20%と、生き残れる可能性のほうが低いものですので破裂前に手術することが必要です。

発見されたらすぐに内服薬による治療が行われますが、これは手術までの時間稼ぎに過ぎず、内服薬や生活習慣の改善で大動脈瘤を治すことはできません。

ですから、具体的な手術方法や手術の日程などについて、病院とよく話し合って理解の上、手術に望んで下さい。

手術にともなう費用のお話

手術までには数日かかるかもしれませんので、その間に限度額適用認定証を入手しましょう。国保の方は市区町村役場の国民健康保険課、協会けんぽの方は全国健康保険協会支部の窓口へ申し込んで下さい。

大企業にお努めの場合は健康保険組合に申し込むことになりますが、会社の総務部などに窓口があるでしょう。公務員や私学の教職員の共済組合の場合も、勤務先に窓口があると思います。

船員保険に関しては、窓口が東京だけですので、郵送で申し込むことになります。保険証表面下部に記載の住所へ申し込んで下さい。

大きな手術になりますから、前後の入院期間を含めて、医療費は健康保険の自己負担額の上限を超えてきます。大掛かりな手術を前提の入院は、治療そのものへの不安も大きいですが、仕事や家庭の問題、経済的な負担など、心に引っかかることが大変大きくなります。

ですので、限度額適用認定制度を利用することで、せめて自己負担額の上限を超えた分を自費で立て替えなくても良いように、限度額適用認定証を準備して病院に提出しておくと安心です。

大動脈瘤は充分小さければ経過観察になる

動脈瘤の形にもよりますが、おおまかにラグビーボール型に近似して、短径の最も大きいところが胸部大動脈瘤で55mm~60mm、腹部大動脈瘤で45mm~50mmを超えると手術対応です。

また、拡張の速度が速かったり、ラグビーボール型ではなく、袋状の形であったりした場合はもっと小さくても手術対応です。

しかしそれより充分小さく、形がラグビーボールで、拡張する様子がほとんど見られない場合は、当面直ちに破裂する危険性が低いということで、経過観察になることもあります。

もちろん不安であれば、早期手術の適応にならないか相談することはOKですよ。

開胸手術になることが多いので不安かもしれませんが、破裂したら結局手術になりますし、その場合助からないほうがずっと多いということを理解して、手術に臨んで下さい。

基本の治療方法は人工血管への置き換え手術

大動脈瘤は、大動脈の一部が弱ってふくらんでいるので、その部分を切り開いて、人工血管で置き換えると言う手術が行われます。

もちろん、動脈瘤がない部分も動脈硬化などで弱っていることが予想されますので、手術を受けた後もしっかり生活習慣を改善する努力は不可欠です。

人工血管には適材適所で選ばれる

大きな動脈瘤ができてしまうと、その血管を修復することは困難です。そこで人工血管と交換してしまうことで、大動脈瘤破裂による死亡という最悪の事態を事前に回避するのです。

現在人工血管には様々な素材が開発されています。これは置き換える血管の性格に応じたものにしなければならないからです。もちろん、自然な血管に近ければ近いほどトラブルは少ないかもしれませんが、まだそこまでのものはありません。

細い血管では中で血が固まって血栓ができたり、それが詰まってしまって血行を阻害したりすることがないように注意する必要があります。

一方、大動脈のように高い血圧がかかる部位では、何と言っても人工血管自体の頑丈さと、つなぎ合わせる相手である、健康な大動脈との接合性の良さが重要になりますね。

動脈には高い血圧がかかっている

私たちは普段、上腕部にカフを巻いて血圧を測っています。大動脈は上腕部より心臓に近いので、普段測っている血圧より高い圧力が大動脈にかかっているということになります。

これがよく分かるのは、点滴です。点滴というのは静脈に針を指して、ゆっくり落とすことで徐々にお薬などを身体の中に送り込んでいるのです。

しかし、血管には血圧がかかっていますから、血圧より高い圧力で点滴を落とさないと、血液が点滴の方に出ていってしまって、肝心のお薬が入りません。そのために、点滴袋は高い位置にぶら下げるのです。

血圧はよくご存知の通り、mmHgと言う単位で表します。これは水銀(Hg)柱にしてどれだけの高さに相当するかと言う意味です。そして、静脈圧は20mmHg程度と、動脈に比べてずいぶん低い圧力しかかかっていません。

この圧力を水銀柱ではなく水の柱で測定すると、およそ260mmH2Oくらいに相当します。つまり、点滴は針を指した位置より26cm以上高い位置から落とさないと、入っていかないということになります。

一方、動脈の血圧は収縮期血圧で見た場合、健康な人でも130mmHgくらいあることは珍しくありません。と言うことは、もし点滴を動脈に入れようと思うと最低でも170cm以上高いところからでないと入りません。

高血圧の人だと、身長を楽に超える高さからということになりますね。もちろんそれだけが理由ではありませんが、これも点滴を静脈に打つ理由の一つと言えるでしょう。それだけ動脈の中には高い圧力がかかっているのです。

人工血管の素材は意外に身近なもの

その高い圧力のせいもあって動脈瘤は発生したり、破裂したりします。ですので、人工血管もその圧力に長期間耐えるものでないといけないのです。

大動脈で用いられる人工血管はダクロンと言うポリエステル繊維を編んで作ったタイプのものや、ゴアテックスと言う、テフロン樹脂を引っ張り伸ばした材質とポリウレタンの複合素材で作られたものがあります。

ダクロンはアメリカの商標で、日本ではテトロンという商標で知られる線維です。またゴアテックスは水を通さないのに水蒸気だけを通す服地として、アウトドア用品などで有名ですね。

どちらも医療用としても優れた素材ですので、人工血管の材料になっています。

人工血管には、まれに副作用的な症状が現れることもありますから、そうした要素ができるだけ減るように、様々な工夫がされています。

例えば、コラーゲンやアルブミンなどで樹脂製の人工血管をコーティングしたものや、更に進んだものでは自分の細胞を培養して人工血管と組み合わせるという技術もあります。

どれが最適なのかは、交換する血管によっても変わりますから、お医者さんの説明をよく聞いておいて下さい。

20世紀半ばに初めて使われた人工血管は、お医者さんが奥さんのミシンで作った「手縫い」だったそうです。そこから70年弱、技術はどんどん進歩しています。

胸部大動脈瘤では人工心肺を使った手術になる

胸部大動脈というのは、心臓から全身に向けて血液を送り出すためのルートの最初の部分ですから、ここの手術を行おうと思うと、一旦心臓を止めて行う必要があります。

そのため、人工心肺装置を接続して血流などを確保しながら行う大手術になります。

大動脈は最初上に向けて伸びる

心臓の左下に当たる左心室から全身に向けて送り出される血液は、最初上向けに伸びる上行大動脈に送られます。そして、上行大動脈は心臓の上でUターンします。そのUターンする部分を弓部と言いますが、ここからは頭や腕に行く大きな動脈が分岐します。

そして大動脈は下行大動脈となって伸びてゆくのですが、上行大動脈・弓部大動脈・下行大動脈の横隔膜より上をを合わせて胸部大動脈と言います。

この部分に大動脈瘤ができると、だめになった血管を切り取って交換するには、一度心臓を止めないと血液が全部逃げてしまいます。ですから、動脈瘤を中心とした病変部から先の血管を人工心肺装置に繋ぎ変えて手術が行われます。

2006年段階の統計ですが、動脈瘤が破裂してから交換手術を開始する緊急手術では、死亡率は32%です。先に最終救命率は10%~20%とお話しましたが、緊急手術で命をとりとめても、最終的に合併症で亡くなる方が少なくないのです。

一方、破裂前に発見されて、スケジュールを組んで行われる待機手術では、胸部大動脈瘤で死亡率7.4%と、緊急手術に比べて大幅に死亡率が抑えられた成績が出ています。

腹部大動脈瘤では人工心肺は必要ない

腹部大動脈というのは、横隔膜から下の大動脈で、内臓各部への動脈を分岐しながら下へ伸び、最終的に総腸骨動脈という2本の動脈に別れて終わります。

ここに動脈瘤ができた場合も、人工血管への置き換え手術が行われますが、人工心肺装置による体外循環は必要ありません。

その影響があるのでしょうか、腹部大動脈瘤の手術では、緊急手術の場合やはり死亡率が高いものの、待機手術の死亡率は1%以下になっています。つまり、100人中99人以上は助かると言うことですね。

また、腹部大動脈は内臓がたくさんあるところを通っていますので、癒着を防ぐ目的でも、人工血管に置き換えた後、切り取った大動脈の組織で人工血管を覆うという措置が取られます。

このように、厳然として死亡率という数字が示されるような手術ではあるものの、緊急手術になってしまうとほとんど助からないものが、待機手術で治療すると、ほとんどが助かるということです。

恐怖感は常に付きまとうと思いますが、気持ちをしっかり持って病気と向き合い、治療に臨んで下さい。

大動脈というのはほとんど心臓の延長です。ですから、そんな場所で破裂が起こると生命にかかわるのは当然ですね。大動脈瘤が見つかったら、破裂前に見つかった幸運に感謝して下さい。

内側から血管を修理するステントグラフト法

高齢者や他の病気の関係などで、開胸・開腹手術に耐えられない場合などのために、カテーテルを使って血管の中に折りたたんだ人工血管を送り込み、患部でそれを展開することで治療するという方法が開発されています。

場合によっては局所麻酔で行えるほど、身体に対する負担の少ないものですが、一方でトラブルが起きやすいという欠点も残っています。

ステントグラフト治療は年々向上している

ステントグラフトと言うのは、化学繊維を編んで作った人工血管の外側に金属製のリングを何段にも入れたものです。これを足の付根の動脈から、大動脈瘤のある場所へカテーテルを使って送り込みます。

胸部大動脈用ステントグラフトの写真
(出典:胸部大動脈用ステントグラフト RELAY PLUS|日本ライフライン株式会社)

そして、手元にある操作用のグリップを操作して、最も心臓に近いところで先端を固定、そのまま末梢側へ向かってステントグラフトを引き伸ばします。

これで、大動脈を内側から補強できますので、大動脈瘤は自然に小さくなってゆきます。ただ、最初の頃には大動脈とステントグラフトの間に血液が漏れ出すことがあるなど、不安定性は否めませんでした。

しかし、そうした弱点も年々解消されつつあるようで、適用範囲が広がっています。

形状や機能の向上は治療を受ける人の安全を守る

例えば、ステントグラフトの送り込みに使われるカテーテルの性能の向上や、ステントグラフトを覆うシースに、血管の中でスムーズに動くようなコーティングを施すなどの工夫がされています。

位置決めをサポートするための工夫があって、正確な位置にステントグラフトを留置できるようになっています。こうした工夫のお陰で、大きな手術に耐えられない人であっても、大動脈瘤に対する人工血管治療が行えるようになってきています。

また、人工心肺装置を使った開胸手術で人工血管への置き換えの際にも、このステントグラフトの応用版である人工血管を使うことで、手術時間の短縮が測られると言ったことも行われています。

さらに、こうした重病を抱える人ではMRI検査を受ける機会が多くなりますが、ステントグラフトには金属のリングが入っています。しかし、その材質などの工夫のおかげで、一定の条件下でステントグラフトを入れていてもMRI検査が受けられるのです。

昔には到底考えられなかったような高度な技術が、どんどん治療の現場に投入されて救命率が上がっているのは、本当に嬉しいことですね。

大動脈解離は似て非なる病気

昔は「解離性大動脈瘤」と言う扱いでしたが、手術の部分を除けば必ずしも共通の要素が多い病気とはいえないため、最近では大動脈解離と言う、別の病気として扱われるようです。

大動脈解離や仮性大動脈瘤というのは、動脈瘤が破裂した状態と同じようなものですので、見つかった時には緊急だと考えなければいけないのです。

血管の一部が敗れることでできる動脈瘤

上でお話してきたものは、真性大動脈瘤と言って、三層構造になっている血管壁はそのままで、単純に膨らんだものです。ですから、破れない限り直ちに生命に危険は及びません。

一方、仮性大動脈瘤というのは、すでに大動脈に穴があき、漏れ出た血液が周辺の組織に包まれて瘤になっている状態のものです。ですから、早急に処置をしないといけません。

また、大動脈解離は、動脈壁の一番内側の内膜が裂け、中膜を引き剥がしてゆく状態です。これによってできた瘤が、大動脈から分岐した重要な動脈を圧迫して血液の流れが止まってしまいます。

このため、適切な治療をしないと、1時間に1%ずつ死亡すると言われています。つまり、2日後には約半数が亡くなるということですね。

ただ、この解離がどこで起こるかによって危険度は大きく変わります。頭や腕に行く動脈を含めた位置で起こっているA型では、直ちに手術が必要になりますが、その先で起こっているB型では治療方針を検討する余地が生まれるのです。

大動脈解離でも人工血管が活躍する

A型の緊急手術では、やはり人工血管への交換手術が行われます。A型かどうかはCT検査で判別できます。A型の大動脈解離は、治療の点においては大動脈瘤破裂とほとんど同じと言って良いでしょう。

一方、緊急性の低いB型であった場合にも、解離だけではなく破裂していたり、臓器出血がある場合には緊急手術の対応になります。下行大動脈の人工血管への交換ですね。

その他、臓器に血液が充分流れなくなっている場合には、それに対応するための手術が行われます。

また、一部の症例については、ステントグラフト留置による治療が良好な成績を残しているという報告もあります。

大動脈解離は起こったら緊急と考えるべき病気です。それと同時に、真性大動脈瘤とは違って、事前の検査で見つけるのは難しいのが怖いところなのです。

60歳以上の男性が大動脈瘤の高リスク群

動脈硬化を原因とする大動脈瘤は、60歳以上の男性に最も多く見られる病気です。ですので、60歳以上の男性は、定期的に胸部レントゲン撮影と腹部超音波検査を受けて下さい。1~2年に1度くらいは受けたほうが良いでしょう。

また、それより若い年代の中年男性や、60歳以上の女性でも、脂質異常症や糖尿病、高血圧などがある場合には、やはり定期的な検査をおすすめします。

胸部レントゲン検査は呼吸器の病気、腹部超音波検査は胆嚢などの病気の検査を兼ねていますから、健康診断として受けるのが良いでしょう。胸部レントゲン検査は健康診断の基礎項目です。

腹部超音波検査は付加項目ですので、オプションとして自分で選択して下さい。

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