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気管支喘息の方は要注意!アルコールで咳の悪化と喘息発作の危険性

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喘息を患っている方の約半数が、お酒を飲むと喘息発作が起こるということを経験しておられます。もちろんそれを経験したら、お酒をやめればいいのですが、どうしても踏ん切りがつかない人もいるでしょう。

お酒が好きという人もいるでしょうし、お付き合いで酒席から遠ざかるのが難しいという人も少なくないと思われます。たばこならともかく、なぜお酒を飲んだら喘息発作が起こり、しかも起こらない人も半数いるというのはどうしてでしょうか。

お酒による喘息発作は体質で決まる部分がある

この健康生活でも飲酒関連の記事で「お酒に強い人と弱い人は遺伝で決められている」といった内容の記事がいくつかあります。このお酒に弱い人と言うのは、アルコール分解の2段階目が上手く働かない人です。

この働きは生まれる前から遺伝子に書きこまれていますので、治すことはできませんし、お酒をたくさん飲んで鍛えようなどとすると、生命を落としかねませんのでけっして行わないで下さい。

この働きが弱いかゼロの人の場合、飲酒によって喘息発作が起こりやすいですし、正常に働く人でも飲酒量によっては喘息発作がもたらされます。

喘息発作はアセトアルデヒドによってもたらされる

お酒を飲むと顔が赤くなります。これはアルコールの働きによるものではなくて、アルコールが1段階分解されたアセトアルデヒドと言う物質によって起こる現象です。アセトアルデヒドは毛細血管を拡張させるため、顔が赤くなるのです。

この現象が気管支の血管でも起こり、血管が拡張すると同時に血管透過性が亢進して、血液中から成分が気管支に滲み出してきます。この滲出液は粘性が高いため、なかなかうまく排出できず気道を狭くしてしまいます。

一方、アセトアルデヒドは免疫細胞の一つであるマスト(顆粒)細胞に働きかけて、ヒスタミンなどの化学伝達物質を放出させます。ヒスタミンはアレルギーや炎症の関係でよく目にする物質ですね。

炎症を抑えるためのお薬、抗ヒスタミン薬は非常に有名でしょう。このヒスタミンがアセトアルデヒドによってマスト細胞から放出され、それがヒスタミンH1受容体に取り込まれることで、気管支に炎症が発生して喘息発作がもたらされます。

この血管透過性の亢進と言う現象ですが、血管の内側は内皮細胞でおおわれていて、普段は水分や塩分程度しか出入りできません。しかし、炎症が起こるような状況になると内皮細胞の間隔が開いて、たんぱく質や血球成分が出入りできるようになります。

炎症が起こるような状況では、白血球などの免疫細胞の動員が必要だから起こると考えられています。また、この現象は血管内皮細胞増殖因子の濃度が上がることで発生しますが、まだ詳しい原理は解明されていません。

アセトアルデヒドは半数の人が上手く分解できない

アルコールは体内に吸収されると、肝臓でアルコール脱水素酵素によって酸化されてアセトアルデヒドと言う毒性物質に変化します。そしてアセトアルデヒドは2型アルデヒド脱水素酵素によって酸化されて酢酸になり無害化されます。

この2型アルデヒド脱水素酵素をを作り出す遺伝子は、その塩基配列によって酵素を構成するアミノ酸が1つ違うものになってしまうのです。

通常の塩基配列では、グアニンと言う塩基が2個並んでいてGGタイプと呼ばれています。一方、別のタイプではこれがアデニンと言う塩基に変化したAAタイプになります。

GGタイプの2型アルデヒド脱水素酵素は活性型で、肝臓で生まれたアセトアルデヒドをすぐに分解します。一方、AAタイプのものは不活性型で、アセトアルデヒドを分解することができません。

また、この2つが半々になったAGタイプと言う人もおられます。このタイプの人は半分だけ分解できるのかと言うとそうではありません。この酵素は4量体と言って、4つのユニットが1つになって働きます。

ですので全体として見た場合、半分の半分の半分の、そのまた半分しか能力がないのでAGタイプの人はGGタイプの人の1/16しかアセトアルデヒドを分解できないのです。

日本人ではこのGGタイプの人が半分弱、AGタイプの人が45%前後、AAタイプの人が5%あまりと言われていますので、実際上半数以上の人がお酒が飲めない人と言うことになるのです。

そして、この半数の人はアルコールを口にすると喘息発作が引き起こされる可能性が非常に高いのです。

飲める人でも量には注意が必要

実際にお酒で喘息発作が出たという人が半数で、お酒を飲めない人が半数なら、ちょうどあっているんじゃないかと思われるかもしれませんね。でも、それはちょっと違う可能性があります。

AGタイプの人は、ビールコップ一杯ぐらいなら顔が真っ赤になって、酷く苦しんでしまいますが、全く飲めないわけではないので喘息発作につながる可能性はあります。

しかし、AGタイプの人の一部やAAタイプの人では、奈良漬やドリンク剤で顔が赤くなって呼吸が苦しくなりますので、最初からお酒は口にしないでしょう。

そうなってくると、飲酒によって喘息発作を経験した人の一部には、アセトアルデヒドの分解がちゃんとできる人が含まれていた可能性が出てきます。

これは飲んだお酒の量によります。どんなにお酒に強くても量を過ごせば顔が赤くなってきます。この段階で気管支も充血して真っ赤になっている可能性が高いです。もちろん、マスト細胞からはヒスタミンが出始めているでしょう。

つまり、顔が赤くなるまでお酒を飲めば、喘息を持っている人は誰でも発作を起こす可能性があるのです。

健康な人でも咳が出る場合がある

さて、もう一度お酒で喘息発作が出るメカニズムを整理してみましょう。

  • アルコールが分解されてアセトアルデヒドになる
  • アセトアルデヒドによって血管が拡張する
  • 拡張した血管の透過性が亢進して粘性の高い浸出液で気道が狭まる…【A】
  • アセトアルデヒドによってマスト細胞が刺激されヒスタミンが放出される
  • ヒスタミンが受容体に入って気管支に炎症が起こる…【B】
  • 【A】と【B】によって、気管支が刺激され喘息発作が起こる

これをよく読んでみると、喘息の人でなくても気管支が刺激されて咳が出る要素はそろっていますね。つまり、健康な人でもお酒を飲めば咳が出る可能性は少なくないのです。

ただ、一つの可能性ですが、喘息ではないけれどお酒で咳が出ると言う人は、先に挙げた2型アルデヒド脱水素酵素の働きが弱いAGタイプであるか、不活性型であるAAタイプである可能性が出てきます。

そうした人の場合、お酒の害が強く現れやすいので、できればお酒を飲む機会を減らすようにした方がいいですね。

血管透過性の更新やマスト細胞からのヒスタミン放出は、まさにアレルギー反応です。一方で、アルコールはたんぱく質ではありませんからアレルギーとは言えません。

しかし他人に説明する時には「アルコールアレルギーで喘息発作が出るので飲めません」と説明してお酒を断るのが、判りやすくて良いかもしれませんね。

アルコールによる喘息発作は対処できるので常用薬は忘れずに

喘息を持っている方は常にリリーバーを持っていると思います。短時間作用性β2アドレナリン受容体刺激剤、通称β2刺激薬ですね。

サルブタモール硫酸塩(商品名:ベネトリンなど・ジェネリックなし)やプロカテロール塩酸塩(商品名:メプチン・ジェネリックなし)などの吸入薬は即効性がありますし、アルコールによる喘息発作にも有効です。

コントローラーとしての抗ヒスタミン薬も有効

これはお医者さんの判断を仰がなければならないので、具体的な薬剤名は紹介しませんが、普段コントローラーとして使用されている抗ヒスタミン薬が、飲酒による喘息発作を抑える効果があるかもしれません。

例えば忘年会シーズンなど、普段はお酒を控えていても、どうしても断り切れないかもしれないことがあるやも知れません。そうした場合に備えて、普段から使っているコントローラーが有効かどうかをお医者さんに尋ねてみましょう。

先にお話しした通り、マスト細胞から放出されるヒスタミンが喘息発作の一因になります。抗ヒスタミン薬は、このヒスタミンが受容体に取り込まれるのをブロックするお薬ですので、炎症性の部分では有効になるでしょう。

お医者さんに相談して、飲酒時の発作を抑えられるお薬について尋ねてみましょう。

とは言え、アセトアルデヒドによる血管の拡張と痰の増加は、抗ヒスタミン薬では抑えられませんから注意して下さい。お医者さんに相談して、痰の排出を容易にするお薬についても、聞いてみた方が良いかもしれませんね。

アルコールによる喘息発作より能動受動を問わず喫煙が問題

内科学会の学会誌に特集された、専門医の先生の治療に関する記事に、面白い方向性が見えたので紹介しましょう。

喫煙、アルコール、入浴

発作が悪化するため喫煙できない症例があるが、発作で喫煙出来ない状態を反復しても執拗に喫煙を続けている症例がある。後者の例には十分説明して禁煙~減煙を説得するのが好ましい。

周囲の喫煙により悪化する症例もあり、身近な人の協力を得ることも大切である。

アルコールで悪化する例は患者自らの経験から習得することで、とくに積極的に生活指導をする必要はないと考えられる。しかし、発作時のアルコール飲用は避けさせた方がよい。

発作時の入浴は呼吸器の閉塞性障害が強いため中止した方がよい。入浴そのものが発作の原因になるのは非常にまれと考えられる。

このように、お酒で喘息発作を経験した人は、それに懲りて、生活指導を行わなくてもお酒を飲まなくなる人が多いようですね。それに対して、喫煙者では「執拗に」という形容動詞をもって説明されるほど、たばこがやめられないようです。

また、受動喫煙によって発作が起こることもあるようですので、喘息の人は受動喫煙の可能性をできるだけ避けましょう。仕事の関係など、どうしても席を外せない場所で喫煙を始める人がいたら、喫煙をやめるよう強くお願いしましょう。

それを言い出しやすくするため、普段から受動喫煙で喘息発作が起きるということを、周囲の関係者に伝えて配慮してもらえるようお願いしておくのが得策です。

特に仕事の取引先などとの関係ではそれが重要になります。顧客に遠慮してたばこの煙を我慢していがたために、重要な席で喘息発作が出て救急車で運ばれたりしたら、それこそその後の取引にさまざまな悪影響が出ます。

幸い、2020年の東京オリンピックに向けて、ほぼすべての公共の場で分煙化が進むようですから、喫煙室に近づかないようにするだけでOKです。喫煙室への入室を強要されたら、地元の弁護士会の法律相談をお勧めします。適切な対処を安価に指示してくれます。

一方、プライベートなシーンでは喫煙者のいる場所を避ける努力が必要です。お店に入って、先にいた人のたばこの煙が臭いとか言って文句をつけるのはただのクレーマーです。

自分にとって不快な環境であるお店であれば、その場で退店して別のお店を選ぶべきです。お店が完全分煙を実施していて、喫煙者が喫煙室にのみいる状況であれば、たまたま匂いが多少漏れ出てきていても、喫煙者を責める権利は誰にもありません。

お酒による喘息でひどい目に遭ってもやめられない人は、アルコール依存症のテストを受けた方が良いかもしれませんね。たばこについては、難しい部分があるのは否定できませんが、うまくかわす工夫をして下さい。

薬で発作は抑えられるが発作を繰り返すと喘息は重症化する

お酒を飲んで体内で発生したアセトアルデヒドが悪影響を及ぼして起こった喘息発作は、吸入薬で対処することができます。しかし、お酒からアセトアルデヒドが作られて、発作を起こしては薬で抑えるということを繰り返してゆくと、喘息の病状そのものが重症化してゆきます。

ですので、お酒を飲んで喘息発作が出てしまった経験のある人は、それを機会に禁酒されることを強くお勧めします。

アルコールによる発作はお薬で抑えられる

吸入薬のリリーバーとして使われるβ2刺激薬の中心的な働きは、気管支の筋肉を弛緩させて気道を広くすることです。それによって喘息発作は、比較的短時間で改善します。

β2刺激薬の本名が、短時間作用性β2アドレナリン受容体刺激剤であることから判るように、体内にあるホルモンのアドレナリンの効きをよくするお薬です。気管支の筋肉を弛緩させるのはアドレナリンの効果の1つです。

また、アセトアルデヒドによって血管が拡張し、血管透過性が亢進したことによって滲出液が増え気道が狭くなるという現象も、β2刺激薬で改善します。これはアドレナリンが粘膜の血管を収縮させる作用を持っているからです。

さらに、アセトアルデヒドによってマスト細胞が刺激され、ヒスタミンが放出され炎症が起こるという現象がありましたね。抗ヒスタミン薬が受容体をブロックするのに対して、β2刺激薬はマスト細胞からヒスタミンが放出されるのを抑えます。

このように、β2刺激薬は、喘息発作の多くの要素を一気に抑え込んでくれますので非常によく効きます。しかし、それに安心してしまって飲酒習慣を改めないと喘息が悪化します。

発作を繰り返すと気管支の形が喘息の形に変化する

喘息の発作が起こると、気管支の上皮細胞が傷つきます。するとそこから炎症を起こす因子や化学伝達物質、たんぱく質の分解酵素などが出てきて、傷を埋めるための筋繊維芽細胞の増殖が始まります。

その結果、傷ついた細胞の場所でコラーゲン線維が作られて傷が塞がってゆきますが、それを追いかけるように線維が取り除かれ、もとの平滑筋細胞と置き換わってゆきます。

その結果、形の上では元に戻るのですが、気管支自体の機能や構造が徐々に「発作に適した形」に変化してゆくのです。もちろん非常に複雑なステップを踏んだ変化ですので、これは比喩的な言い回しだと理解してください。

喘息の発作は可逆的、つまり適切な治療で元に戻る病変ですが、こうした変化が繰り返されてゆくと、気道が狭まり元のようには呼吸できなくなるだけではなく、刺激に対しても非常に敏感になってしまう変化が起き、これは元に戻りません。

こうした現象を気道リモデリングと言います。

気管支喘息リモデリングまでの気管支の状態

近の動物実験の成績によると、吸入ステロイドはリモデリングの進行を予防するが、一旦成立したリモデリングに対する改善効果はないと報告されており、喘息患者に見られる成立したリモデリングに対する治療効果についてはなお今後の慎重な検討が必要と思われる.

現在のところ,リモデリングは予防が大切であり、これには吸入ステロイドが最も有効である。吸入ステロイドによる治療は喘息患者の経年的な肺機能の低下と気道過敏性の亢進を抑制することが知られている。

しかしながら、その早期介入の是非については未だ見解が分かれている。

このように、まだ全部の病態や治療法が解明されたわけではありませんが、とにかく喘息の発作を繰り返さないようにして、気管支の形や性質が変わってしまわないように予防するのが大切なのです。

お酒で1度でも喘息発作が出た人は、禁酒されることを強くお勧めします。幸いなことに近年では酒類に似せたノンアルコール飲料も豊富に出回っています。そうした飲み物をうまく活用してください。

さらに、都道府県単位になりますが、喘息患者カードを医師会が発行している場合がありますので、かかりつけのお医者さんに相談して下さい。それを常に携帯しておいて、非常用だけでなく酒避けに使ってみるのも悪くないですよ。

喘息患者カード(岐阜県医師会・岐阜県喘息死予防・アレルギー系疾患対策事業連絡協議会の公式サイトより)
気管支ぜんそく患者カード画像

さらに、喘息と診断されたことはないけれど、お酒を飲んで咳が出ることが繰り返されたり、一度咳が出だして3週間以上継続する場合は喘息の疑いがありますので、必ず一度受診して下さい。

キャラクター紹介
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