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小児麻痺と小児喘息発症の共通原因!エンテロウイルスに注意して

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2015年夏に皆さんにご紹介した病気があります。それはポリオウイルスではなく、エンテロウイルスEV-D68と言う病原体によって引き起こされる小児まひのような症状でした。

重大な後遺症が残る小児麻痺がポリオウイルス以外の原因で発生!

そして2015年9月、東京都立小児総合医療センターへ気管支喘息のような症状で入院した4人の子供から、このエンテロウイルスEV-D68が検出されたのです。この子たちの発症や治療、後遺症はどうだったのでしょう。

「謎に包まれたウイルス」と呼ばれるエンテロウイルスEV-D68

このEV-D68と言うウイルスは、エンテロウイルス属の中でも比較的新しく見つかったウイルスで、見つかってからまだ50年余りしか経っていません。

人の腸の中で増殖し、便とともに排泄されたのち、良く洗えていない手を介して口に入り感染する経口感染と言うルートを辿ります。呼吸器症状が出ている場合は、風邪と同じように咳やくしゃみを介した感染もあります。

多くの場合、軽い風邪程度の症状ですので、特に大きな問題を引き起こすこともなかったのですが、最近になっていくつかの重症例が報告されるようになってきました。

特に大きかったのは2014年、アメリカで起こったアウトブレイク(地域的大流行)です。ウイルスが検出された確定診断例は1,100人余りで、そのうち死者は14名です。

しかし、軽症であることが多い事などから、発病していても病院に行かない人が圧倒的多数なので、アメリカ疾病予防管理センター(CDC)は、実質感染者数は数百万人に上っていたと推定しています。

当時のアメリカのテレビニュースなどでは、エンテロウイルス68と言う名前を出しながらも「ライノウイルスの分派である謎のウイルスが子供を襲う」と言ったような表現を使って紹介していました。

この時、アメリカでは14人の子供たちに、このウイルスによる小児まひのような後遺症が出てしまいました。

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日本でも2010年と2013年に100名以上の感染者が報告されているほか、2014年には広島県でこのウイルスによる小児まひのような症状の発生が確認されています。

なお、ここで引き合いに出されたライノウイルスとは、エンテロウイルスと同じピコルナウイルス科に属しているもので、冬を中心に流行する、いわゆる「普通の風邪」の原因病原体として最も多く見られるものです。

また、ポリオウイルスもエンテロウイルス属ですが、他のエンテロウイルス属とは性質が違う上、唯一ワクチンが存在する種と言う点でも他のエンテロウイルス属のものとは異なります。

一方EV-D68は、いわゆる「普通の」エンテロウイルスですので、手足口病やヘルパンギーナと同じように、最初は風邪の症状が現れる病原体です。

(抜粋)

エンテロウイルスに感染しても、不顕性感染と言って何の症状もない人が多いです。症状が出る場合「かぜ」のような上気道炎症状、発熱と筋肉痛を伴ったインフルエンザのような症状、あるいは発疹が出る場合があります。

エンテロウイルスは、感染した人の唾液、痰、鼻の粘液などの中に出てきます。この分泌物が付着したものや触れた手をなめたりして、ウイルスを自分の口やのどの粘膜に運ぶことによって、周囲の人が感染することがあります。

便の中にも存在するので、患児のおしめを替えるときなどに、手に便が付着しよく手を洗わないで食事などでウイルスを自分の口に運ぶことによって、周囲の人が感染することがあります。

この引用はエンテロウイルス全体について示したものですが、EV-D68についてもあてはまるものです。

にもかかわらず、EV-D68感染症は時として重症化し、後遺症として小児まひのような症状を残すこともある謎に満ちたウイルスなのです。

もしかすると日本でもアウトブレイクの可能性がある

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最初にお話ししたように東京都立小児総合医療センターで、2015年9月だけで4人の子供がEV-D68の感染による重い呼吸器症状で入院しました。

最初は重い呼吸器症状を起こす次のようなものについて検査が行われたとあります。

  • A型RSウイルス
  • B型RSウイルス
  • ヒトメタニューモウイルス
  • アデノウイルス
  • コロナウイルス
  • ボカウイルス
  • パラインフルエンザウイルス3型
  • A型インフルエンザウイルス
  • B型インフルエンザウイルス

しかし、いずれもが検出感度未満で見つかりませんでした。そこで検体を東京都健康安全研究センターに送って調べてもらったところEV-D68が検出されたと言うことでした。

このうち、最も症状の重かった小学校5年生で11歳の女の子の場合、夜に咳が出始めて、翌未明には呼吸困難で救急搬送されています。症状の進みがとても早いです。

この子に対しては、小児集中治療室にて気管挿管を行った上で、気管支喘息のお薬を点滴して治療に当たったとあります。気管挿管の期間は8日間、入院は18日間に及んだとありますからかなりの重症ですね。

それでも、特に後遺症もなく18日で退院できたのですからよかったと言えるでしょう。

他の3人は男の子で、入院期間は1日~13日と幅があり、気管挿管を行った例は1例だけでした。気管挿管が行われた男の子には気管支喘息の既往症がありましたが、最初の女の子には喘息の既往はありません。

ですので、喘息の既往症がある子供の病気を悪化させるのではなく、それまでにあったかなかったかに関わらず、EV-D68は気管支喘息を引き起こす可能性があるのです。

日本全体で見た場合、2005年から2014年9月までの約10年間でEV-D68感染による気管支喘息の発症例は31例です。

2015年9月の場合、東京都だけで9月1日から7日までの間の、たった1週間に4名の気管支喘息による入院治療が行われたわけですから、かなり多くなっていると言えるでしょう。

もちろんエンテロウイルス属の特徴として夏から秋にかけての感染・発症が多く、特に9月が最多だと言うことですので、単純に1年の数に換算するのに4人×52週間と言うわけにはいきません。

しかし、仮に1年間でこの4人だけであったとしても、東京都だけなのですから全国・年間で見たら平年のおよそ13倍と言うことになります。

エンテロウイルスは夏秋に多いとは言え、他の季節でもゼロではありません。ですので、今後も一年を通して充分な注意が必要だと言えるでしょう。

一方、おそらくEV-D68も他のエンテロウイルスと同じで、発病した場合だけでなく、不顕性感染となった場合に免疫を獲得する可能性は充分にあります。

しかし、エンテロウイルスには数十種類の型があるので、一つに対しての免疫ができても他の型のウイルスには無効です。それにその免疫の有効期間も不明です。

ですから、エンテロウイルス対策について、どの型であっても、基本は感染しないことにあると考えておいてください。

予防薬・治療薬のない病気対策に大切なのは感染しない生活習慣

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幸いなことに、先に紹介した4人の子供については、その後小児まひのような後遺症が残ることはなかったと言うことです。しかし、今後発生するであろう感染者・発病者についてはその危険はもちろん存在します。

EV-D68のワクチンはまだ存在しません。それどころか治療薬すらまだないのです。ですから発病したら症状を抑える治療しかできないんですね。

ですので、エンテロウイルスから身を守る基本は、すべての感染症予防に共通する生活習慣を守ることです。

  • 石鹸と流水でしっかり手洗い
  • こまめにうがい
  • 目・鼻・口などの粘膜に触れない
  • 外出時にはマスクを着用
  • 感染者の世話の時には特に二次感染に注意
  • 体力の維持に努める

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この対策は様々な感染症の予防に有効ですから、とにかく習慣づけることが重要でしょう。なお、マスクは病気を拾わないためではなく、自分が不顕性感染者であった時に、まき散らさないための措置です。

エンテロウイルスにはアルコール消毒は効きません。ですので様々な設備においてあるスプレー式のアルコール消毒液を手に吹き付けても無意味です。

しかし、ティッシュにたっぷり含ませて、それで手をきれいにぬぐうことは、手を洗う水がない時の代替手段として使えます。ですので、ティッシュは多めに持っていた方が便利ですよ。

なぜアルコール消毒が効かないのかと言う理由ですが、それはエンテロウイルスにはアルコールによって破壊されるエンベロープと言う構造物がないからなのです。

壊されるものがなければ壊れないのは物の道理ですね。一方、塩素消毒は有効です。ですので、いわゆるハイターはエンテロウイルス対策に使えます。

しかし、くれぐれもハイターを手などに付けないで下さいね。大抵の場合強いアルカリ性ですので手の皮膚がぼろぼろになっちゃいます。飽くまでハイターは物の消毒に使う液体です。

ここでもう一度アメリカの標語を紹介します

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小児まひの時にも紹介しましたが、アメリカの至言ともいえる標語を、ここでもう一度ご紹介しましょう。

「手洗いは あなたが作る ワクチンだ」
( Handwashing is like a “do-it-yourself” vaccine. )

是非忘れないで実践して下さいね。

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