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誤嚥性肺炎の症状と治療法は?予防のために注意すべきこと

高齢者の病気はいろいろありますが、意外と多いのが、「肺炎」です。もちろん肺炎は直接的な原因であって、突然肺炎になりましたというケースはほとんどありません。ただ、高齢者にとって、何らかの疾患が肺炎を引き起こしやすいことは事実です。

健康な若い人であれば、ちょっと風邪をこじらせてしまっただけで肺炎になるなどということはありえないでしょう。何しろこれだけ栄養が行き届いた時代ですから、基本的には免疫力も高く、病院に行けばなんとかなるはずです。

ところが高齢者になると、何か疾患があったわけではないのに肺炎を発症してしまうリスクも高まるのです。肺炎については、現在日本人の死因で第3位という不本意なデータがあります。肺炎のリスクは死のリスクをはらむのです。

今回は、特に高齢者に多いやや特殊な肺炎のリスクに関するお話をしていきます。

高齢者に多い誤嚥性肺炎に要注意!老人性肺炎の特徴とは

いくら免疫力が低下しているお年寄りであったとしても、何の理由もなく突然肺炎を発症するわけではありません。ただ、風邪をはじめとする疾患が原因で発症する肺炎だけにとどまらないという意味で、「老人性肺炎」と呼ばれる肺炎には要注意です。

一般に、ふつうに食べる食べ物や水などの飲み物を誤って嚥下(※)して肺に入ることで発症する肺炎を、誤嚥性肺炎(※)と呼びます。誤嚥性肺炎は、老人性肺炎とも呼ばれるのです。まずは用語を説明しておきます。

嚥下 「えんげ」、「えんか」と呼びます。食べ物や飲み物、唾液などを飲み下すことです。
誤嚥(ごえん) 誤って嚥下し、食べ物や飲み物、唾液が気管に入り込んでしまうことです。多くは、気管からさらに奧の肺(もしくは肺胞)に到達します。
嚥下障害 正しく嚥下できなくなってしまう障害で、誤嚥が起こりやすくなります。

上記の用語を踏まえ、誤嚥性肺炎を明確に定義すると、次のようになります。

誤嚥性肺炎(ごえんせいはいえん)
細菌が唾液や胃液と共に肺に流れ込んで生じる肺炎です。高齢者の肺炎の70%以上が誤嚥に関係していると言われています。再発を繰り返す特徴があり、それにより耐性菌が発生し、抗菌薬治療に抵抗性をもつことがあります。そのため優れた抗菌薬治療が開発されている現在でも治療困難なことが多く、高齢者の死亡原因となっています。

誤嚥性肺炎の厳密な定義は、上記の赤網かけの部分です。加えて、誤嚥性肺炎の概要についても一緒に記しましたので、参考にしていただきたいと思います。上記について1か所説明を加えておきます。

「再発を繰り返す特徴があり、それにより耐性菌が発生し、抗菌薬治療に抵抗性をもつことがあります」とありますが、これは、抗菌薬に対する抗体ができてしまうという意味です。要は、治療薬が効かなくなってしまうんです。

なるほどと合点がいった人もいると思いますが、正直ピンとこないというか、むしろ「なんのこっちゃ?」と首をひねってしまった人もいると思います。そもそも肺炎がどんな疾患なのかをイメージできないと、イマイチ理解できないかもしれませんね。

誤嚥性肺炎も当然肺炎の一種なので、まずは肺炎について簡単に説明しておきましょうか。

そもそも「肺炎」ってどんな病気なの?

肺炎を厳密に定義するならば、「細菌やウイルスなどの病原微生物の肺感染による炎症性肺疾患の総称」となります。つまり、外部から何かしらの経路で肺の内部に細菌やウイルスが入り込むことが原因で発症する肺の炎症が肺炎です。

肺炎の直接の原因となる病原微生物にはたとえば、肺炎球菌、インフルエンザ菌、黄色ブドウ球菌など(以上「細菌性肺炎」の病原微生物)、インフルエンザウイルス、麻疹ウイルス、水痘ウイルスなど(以上「ウイルス性肺炎」)があります。

他にもマイコプラズマ、クラミジアなどの感染による「非定型肺炎」が知られますが、いずれにしてもその経路や細菌、ウイルスの種類によって肺炎はさらに細かく分類されます。誤嚥性肺炎は細菌性肺炎の一種に分類されます。

また、感染経路による分類にも触れておきますと、病院などの医療機関内で観戦する肺炎を、「院内肺炎」と呼びます。院内肺炎は、気管内挿入による人工呼吸器を装着している免疫力が低下した入院患者さんに特に多いです。

また、基本的には医療機関とは無関係に、ふつうに生活していて感染することで発症する肺炎を、「市中肺炎」と呼びます。肺炎として最もよく知られる「風邪をこじらせた肺炎」などがその典型です。

誤嚥性肺炎は、経路の分類としては市中肺炎にも院内肺炎にも属さない、特殊な感染経路の肺炎と解釈されることが多いです。
(この節の参考:肺炎-アステラス製薬株式会社より)

誤嚥性肺炎はなぜ起こる?誤嚥性肺炎の原因を考える

誤嚥性肺炎の間接的な原因は、「誤嚥」にあります。誤嚥がなければ誤嚥性肺炎にかかることはありません。ところが、仮に誤嚥があったとしても、そのすべてが誤嚥性肺炎につながるわけではありません。

誤嚥性肺炎は上記でお話したとおり「肺炎」の一種ですから、当然「細菌の感染」が直接の原因になります。つまり、誤嚥によって誤嚥性肺炎のリスクが高まるのです。細菌感染のリスクは、免疫力の低下です。

これが、誤嚥性肺炎が高齢者に多い理由の1つであることは明らかでしょう。ただし、誤嚥にもいくつかの種類がありますので、誤嚥性肺炎が起こる原因は誤嚥の種類によって異なると、厳密には言えてしまいます。

話がややこしくなる前に、誤嚥のタイプも加味した誤嚥性肺炎の原因を以下にまとめてみましょう。

誤嚥性肺炎の原因
  1. 口腔や咽頭内容物による誤嚥
  2. 胃逆流物による誤嚥

私たちが一般的に認識する誤嚥は、上記の1にあたるかと思います。年齢に関係なく、嚥下しようとした食べ物や飲み物が気管に入ってしまってむせかえるようなちょっとしたトラブルは誰にでも起こります。

ただ、2のタイプの誤嚥は、よほどしたたかに酔っぱらったときでもなければ、特に若い人はほとんど経験しないタイプの誤嚥になるといえるでしょう。しかし問題の本質は、誤嚥のタイプでもありません。

誤嚥性肺炎の最大の問題は、上記の誤嚥の頻度が増えてしまうことにあるといえるでしょう。では、なぜそうした誤嚥の頻度の増加が起こるのかというと、ここで「年齢」がかかわってくるのです。つまり、「老化」です。

誤嚥性肺炎(老人性肺炎)が起こるメカニズムは?

なんでも「老化」と言ってしまえば片付いてしまうようで、個人的にはあまり「老化」を理由にしたくはないのですが、嚥下障害や誤嚥性肺炎ばかりは老化と無関係にお話することは難しいといわなければなりません。

老化が起こると、脳血管障害のリスクが高まり、これに比例するように嚥下障害のリスクも高まります。また、「サブスタンスP」と呼ばれる神経伝達物質の減少が老化によって起こることも、嚥下障害の大きな原因になります。

この物質が減少することで、咳反射(異物が気管に入ってきたときに咳をして異物を追い出そうとする反射)、嚥下反射(気管ではなく、食道に食べ物・飲み物を送り込もうとする反射)が鈍るというデメリットが生じます。

少し難しい話かもしれませんね。理解の助けとして、上記を図に示した画像を以下に掲載しておきます。なお、図中の「sp」という丸囲みが上記でお話した神経伝達物質の「サブスタンスP」です。

反射の求心路からみた誤嚥性肺炎のメカニズム

図中の「↓」は、加齢により数が減少する、あるいは機能低下が起こることを示しています。ですからひと言で説明するなら、「サブスタンスPの減少が、嚥下反射、咳反射の機能を低下させ、嚥下障害が起こりやすくなる」となります。

ちなみに、誤嚥性肺炎で肺感染する細菌はどこからくるのかというと、上記の「原因」の1であれば口腔内の細菌、2であれば胃や食道の細菌ということになります。細菌が唾液や胃液に混じって肺に入り込み、これが感染するのです。

健常な若者であれば、1にしても2にしても、そう簡単に誤嚥性肺炎が起こることはありませんが、加齢によって免疫力が低下すると、どうしても肺炎のリスクが高まります。だからこそ誤嚥性肺炎は「老人性肺炎」の異名をとるのです。

ほんとうに怖いのは「知らないうちに起こる誤嚥」

誤嚥してむせかえったり戻したりといったトラブルは、年齢にかかわらず多くの人が経験していると思います。特に高齢者は、誤嚥性肺炎に関する知識も有している人が多く、誤嚥の苦しさの経験から「警戒心」が芽生えます。

ですから、できるだけ誤嚥しないように注意し、予防する意識が芽生えるのです。加齢が原因ですから、いくら予防しようとしても限界があります。とはいえ、まったく予防は不可能ですよ、というわけでもありません。

ただし、誤嚥の中には、残念ながら予防できない種類の誤嚥もあるのです。予防できないというよりは、予防しようという意識を持つことができないというべきでしょう。つまり、誤嚥したと認識できない誤嚥がある、ということです。

私たちの認識からすれば、誤嚥すれば多少なりとも苦しい思いをしなければならないわけですから、誤嚥に気づかないことなどないと考えるかもしれません。しかし実は、気づかずに起こる誤嚥もあるのです。

気づかずに起こる誤嚥のことを、不顕性誤嚥(ふけんせいごえん)と呼びます。さすがに胃食道逆流物による誤嚥に気づかないケースはほとんどありません。ただ、たとえば睡眠中に少量の唾液を無自覚に誤嚥することはけっこう起こるのです。

何しろ肺炎の直接の原因は細菌・ウイルスですから、予防しようとしても相手が小さすぎて、意図通りの予防ができないことも多いのです。ですから、不顕性誤嚥により少量の唾液に混じって細菌が肺に入り込んでしまうことは珍しくはありません。

不顕性誤嚥は予防の意識が働きにくい種類の誤嚥ですから、ある意味、誤嚥性肺炎のリスクが最も高く、怖いタイプの誤嚥であるといえるのかもしれません。

誤嚥性肺炎にかかるとどんな症状が出る?その治療法とは

たまに勘違いされる人もいますが、誤嚥によってむせたり咳が出たりした時点では、基本的にはまだ肺炎にはなっていません。肺炎を発症するのは、嚥下障害などにより誤嚥を繰り返し起こしたあとです。

ここでは誤嚥性肺炎の症状を知り、その治療方法についても知ることをテーマとしてお話していきます。

誤嚥性肺炎でよく見られる症状は?

特に誤嚥性肺炎の初期的な段階では、発熱も見られず、咳や痰もなく、しかしなんとなくだるさ(倦怠感)を覚えるといった症状に見舞われることが多いです。そのため、意外と発見が遅れやすい疾患です。

しかしやがて、食事中にむせやすくなる、のどに継続的な違和感(ゴロゴロした感じ)がある、唾液をうまく飲み込むことができない、食事の嚥下がうまくいかないといった症状が徐々に表面化してきます。

重症化が進むと、痰の色が汚らしくなり、酸素低下が起こり、場合によってはかなり重度な呼吸不全に至ることもあるため、誤嚥性肺炎は非常に怖い病気であるといわなければなりません。

誤嚥性肺炎の治療方法は?

基本的には抗菌薬の注射・投与による治療が有効とされます。抗菌薬に関しては、市販されいるわけではありませんので、主治医の判断に任せるのがベターでしょう。抗菌薬の種類はかなりたくさんありますが、ここでは割愛します。

特に介護が必要なお年寄りの場合、手術による治療が行われることがあります。これは「声門閉鎖術」と呼ばれる手術で、術後は痰吸引の手間も省略できるため、介護者・介助者にとってもメリットが大きいとされます。

ただし、手術となるとやはりそれなりの体力が必要になりますので、すべての要介護高齢者が採用できる治療方法とはいえません。

誤嚥性肺炎の最も重要な対策は予防の意識!

誤嚥性肺炎は、高齢者に多い肺炎です。ご高齢の方の肺炎は非常に危険です。本来であれば、何らかの疾患にかかっても早期対処・治療で改善をはかるという流れになるところですが、誤嚥性肺炎の場合そうもいきません。

肺炎による日本人の死亡率が高いというお話をすでにしてきていますが、実は、高齢者の肺炎による死亡率が顕著になっている理由は、誤嚥性肺炎と無関係ではないのです。以下のデータをご覧ください。

肺炎の75%以上が筋力の低下した高齢者であり、その内の70%が誤嚥(細菌が唾液や胃液とともに胃ではなく気管に入ってしまう)により肺炎を発症する、誤嚥性肺炎と言われています。

実は年齢に関するさらに詳細なデータがあって、これも踏まえると、年齢の上昇とともに誤嚥性肺炎の危険性は飛躍的に大きくなることがわかります。以下のグラフをご覧ください。

肺炎の年齢別死亡率

上記のデータを見てもなお、「早期発見なら助かる見込みが大きい」と判断する人はいないと思います。ですからそのイメージ以上に、誤嚥性肺炎(老人性肺炎)は緊急性が高い疾患であると考える必要があるのです。

そもそもすでにお話してきたとおり、誤嚥性肺炎は初期的な段階ではそこまで顕著な症状が現れません。したがって、誤嚥性肺炎は必然的に重症化しやすい疾患であると考えなければなりません。

となると、もちろん治療や対処が重要ではないわけではありませんが、誤嚥性肺炎に関してはやはり「予防」の意識をより強く持つことが重要であると考えなければなりません。予防方法についてお話ししましょう。

誤嚥性肺炎の一般的な予防方法は?

実は、誤嚥性肺炎の予防方法にはいくつかの種類があります。在宅で一般的に行われるタイプの予防と、投薬、外科療法などによる治療的な予防方法です。まずは一般的な予防方法について触れます。

飲食時の意識づけ

どんな病気やケガなどのトラブルに対しても同様ですが、やはり予防の際に最も重要になるのが、意識の問題です。飲食時にできるだけ正しく飲食を行うという意識が欠如しないよう注意することが有効なのです。

たとえば、よく噛む、食べ物を少しずつ口に運ぶ、水分をこまめに摂りながら食べるといった注意が、予防の意識として必要になります。次に、食後のケアも重要な予防のポイントになります。

誤嚥予防の体位保持
まずは、食後すぐに横にならないで、食事中の体位をしばらく保持しておくという予防方法も有効です。おそらく食事は座ったまま食べると思いますので、そのままの姿勢を2時間ほど保持することが推奨されます。
口腔ケアによる予防
口の中の雑菌が誤嚥の際に肺まで届いてしまうことが誤嚥性肺炎の最大のリスクとなるわけですから、普段から口の中で雑菌を増殖させないケアが重要になります。基本的な歯みがきはもちろんですが、口腔ケア向けの除菌剤なども利用するとよいでしょう。

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次は、上でも予告した「治療的予防法」の説明です。

誤嚥性肺炎の治療的予防方法とは?

誤嚥性肺炎の予防であることに違いはないのですが、一般的な病気でいえば、予防というよりは治療のイメージを伴うタイプの予防を、「治療的予防」と呼びます。誤嚥性肺炎の治療的予防法には、以下のような方法があります。

ACE阻害薬の投与による予防
成分などの詳細に関しては割愛しますが、ACE阻害薬と呼ばれる血圧コントロール薬(降圧剤)を投与することで、誤嚥性肺炎の予防の効果が見込まれます。ACE阻害薬を服用すると、咳反射機能が活性化する効果が期待されます。
外科的手法による予防
誤嚥性肺炎の外科的手法とは、手術療法を指します。上記の「治療」のところでお話した手術に近い手法も含まれます。大きく分けると、手術による治療的予防法は2つ(以下)あります。
外科的手法による誤嚥性肺炎の予防
  1. 胃ろうの増設
  2. 気管食道剥離術

1の胃ろうは、食道を経由せず、胃に直接栄養を注入するための穴です。内視鏡検査の要領で簡単に胃ろうを増設することができます。胃ろうカテーテルと呼ばれるチューブで栄養補給を行います(下図)。

胃ろうとは

もちろん、口からの飲食による誤嚥性肺炎のリスクを軽減することが胃ろう増設の最大の目的ですが、これは口からの飲食をあきらめたことを必ずしも意味しません。嚥下訓練の期間中だけ行われる応急処置としても、胃ろうが採用されます。

2の気管食道剥離術は、食道がんの際に採用されることが多い手術です。簡単に言えば、食道を広くして誤嚥を予防するための手術ですが、内視鏡でできるレベルのものもあれば、かなり大掛かりな手術もあります。

高齢化社会が招いた誤嚥性肺炎の思わぬ脅威

高齢化社会による弊害はいろいろ考えられ、予見されてきましたが、上で記載した平成11年のグラフ(肺炎の年齢別死亡率)からもわかるように、肺炎によるリスクを急激に高めていることもそのひとつであるといわなければなりません。

しかもその肺炎の原因も、単純誤嚥や嚥下障害などによる誤嚥性肺炎の割合が圧倒的に高いわけですから、今若い人から見ても、いずれそういったリスクを背負うことが考えられるのです。

有効な治療方法が確立されているわけではないので、とにかく予防の意識を高めることが重要であることを、今回はご理解いただきたいと思います。”

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