健康生活TOP 動脈硬化 ストレッチで動脈硬化を予防・改善!血管を柔らかくする運動とは?

ストレッチで動脈硬化を予防・改善!血管を柔らかくする運動とは?

動脈硬化というのは、動脈壁にコレステロールとマクロファージから作り上げられた泡沫細胞が蓄積して、アテロームとなり、血管を狭めることで発生します。

ですので、体が硬いということとは直接関係なさそうなのですが、実際のところストレッチで身体を柔らかくしてやることで、動脈硬化の改善が見られることがあるのです。

動脈硬化の改善にはまず身体を動かすべき!厚労省もすすめる理由とは

厚生労働省は、ストレッチによって動脈硬化を含む生活習慣病や、メタボリックシンドロームが予防できると言うエビデンス(医学的証拠)はないとしています。

しかし同時に、いろいろな報告がそれに役立つ部分の存在を示唆しているということも示していて、ストレッチを生活に取り込むことを推奨しているのです。

ストレッチは最初運動には数えてもらえなかった

厚生労働省は、日本国民の運動不足による健康の悪化を防止するために、2006年に「健康づくりのための運動基準 2006」(エクササイズガイド2006)と言うものをリリースし、広く国民に運動を勧めるということを行いました。

この内容を見ると、ストレッチも一応運動として紹介されていますが、「エクササイズに相当する身体活動」にはカウントされていなかったため、ストレッチには運動としての効果がないような印象をあたえるものでした。

これは、当時の厚生労働省が、エクササイズとは3METs(※)以上の運動強度があるものというしきい値を作って、それ以上のものだけを拾い上げたからだとされています。

(※METs(メッツ):Metabolic Equivalents(代謝等量)・厚生労働省による運動強度の目安。安静時の何倍の代謝(エネルギー消費)があるかの目安の数値。)

もちろんストレッチであっても、激しく行えば3METsを超えてくるのでしょうが、通常は1.5~2.5METsしかありません。なので、エクササイズガイド2006の中では推奨されなかったのです。

しかし、厚生労働省のサイトによると、エクササイズガイド2006の中では、有酸素運動や筋トレのように3METsを超える運動強度がないから推奨されていないけれど、生活習慣病の予防効果がないという意味ではないと明言しています。

エビデンスが充分得られていないから3METs未満の運動強度しかないストレッチングは推奨されていないけれど、例えば座位体前屈で身体が柔らかいと評価された人は、動脈硬化の度合いが低いというデータがあると紹介しています。

また、ヨガの習慣がある人では血圧を低下させることも紹介して、ストレッチでもいいので、まず身体を動かすべきだとしています。

(参照:ストレッチングの効果|厚生労働省・e-ヘルスネット)

ガイドの見直しでストレッチが推奨される運動になった

エクササイズガイド2006も、制定から5年以上を過ぎて、やや古くなったということで見直しが図られました。そうして完成したのが「健康づくりのための身体活動基準2013」(アクティブガイド2013)です。

エクササイズガイドでは、1METs×1時間を1Exと定義して、週23Ex以上の運動を行うようにと言う、運動量の絶対値を基準に日常の活動を推奨していました。

それを見直したアクティブガイド2013では18歳以上65歳未満は1日60分、65歳以上は1日40分を目標に身体を動かし、その中にスポーツや筋トレなどを含むようにすることを推奨しています。

そのために、現状より10分余分に身体を動かすという「プラス10」という呼びかけも行っていて、その中にはストレッチも含まれています。

つまり、運動強度にこだわりすぎて、結局運動習慣が身につかないということが多かったのでしょう。それよりもストレッチのように気軽に行えるものも含めて、運動習慣とカウントするようにしたようです。

ここでは、ストレッチも運動習慣の一つとして動脈硬化の予防改善に寄与することが期待されているのです。

次の見直しは、おそらく東京オリンピックの頃になるでしょう。1964年の東京オリンピックでは「体育の日」が制定されましたが、2020年にはどんなものができるか、楽しみですね。

ストレッチは末梢血管の動脈硬化を改善する可能性がある

ストレッチについては、動脈硬化を改善するという研究と、改善させないという研究があり、詳細な追試が求められている状況にありました。

数十人を対象にした小規模研究ではありますが、2014年から2015年にかけて立命館大学大学院の研究グループによって、ストレッチは末梢血管の動脈硬化が改善され得るという報告が出されました。

実験によると中心血管には効果が見られなかった

立命館大学大学院の大和洋輔氏ほか3名の研究グループによると、全身のストレッチ運動は動脈硬化改善に効果があったということです。全身の筋肉について、痛みが出ない程度のストレッチを合計40分程度行って、その後血管の状態を測定しています。

測定は全身状態を見るために上腕と足首の間で脈波の伝播速度を測定すると同時に、中心動脈を見るために頸動脈と太腿動脈の間を、そして末梢血管を見るために太腿動脈と足首の間で測定しています。

その結果、ストレッチ後15分と30分の時点では動脈硬化度が低下しており、60分の時点ではもとに戻っています。また、中心動脈を測定したデータは有意ではありませんでした。

(参照:ストレッチ運動による動脈機能の改善効果|立命館大学大学院スポーツ健康科学研究科・大和洋輔氏ほか)

これは、筋肉が引き伸ばされることによって起こる、その部分の筋肉や動脈の血管に対する引っ張り刺激によって、その部分の動脈機能を改善させるのではないかと推定されています。

ですので、ストレッチを行ってもあまり引っ張られることのない、中心血管には影響が少なかったのではないかとも考えられています。

なお、脈波伝送速度と言うのは、心臓が血液を押し出したことによって起こる波が、血管の中を伝わる速さのことです。この数値は動脈に柔軟性があると、そこに波が吸収されるために伝送速度が遅くなります。

一方、動脈硬化があると血管壁が硬いため、早く伝わるのです。だいだい、秒速1400m以下が正常値とされています。この数値は空気中だったらマッハ4くらいに相当しますが、液体の中では音速はずっと早くなるので、こうした数値が出てきます。

ストレッチによって血流量が増える

同じ研究グループによって、翌年確かめられたのは、ストレッチによって引っ張られた部分だけが改善されているのか、運動効果として左右片方の運動であっても、左右両方が改善されるのかということでした。

その結果として得られた答えは、ストレッチした部分だけが改善されるということでした。ですので、できるだけ全身くまなくストレッチすることが重要になります。

また同時に、ストレッチした部位ではしばらくの間、血流が改善することもわかっていますので、この血流改善によっても動脈硬化が改善されているようです。

これらのことから、主に四肢の末梢血管部位においては、ストレッチによって動脈硬化が改善されるということがわかりました。

このストレッチの行い方は、実験を参考にすると、身体を動かせる方向全部に、痛みを感じない範囲で動かしています。つまり無理をする必要はまったくないということです。是非実践してみて下さい。

ストレッチの実際は関連記事に詳しいのでそちらをご覧ください。

▼関連記事
高血圧ならやれ!硬化した血管を柔らかくするストレッチ方法

末梢血管がストレッチによって引っ張られる刺激で、動脈硬化の改善の可能性があるのです。では肝心の中心動脈はどうなのでしょう。次の章で見てみます。

中心動脈の動脈硬化も身体の柔軟性で予防改善できる可能性

先に紹介した研究に先立つこと5年、2009年には国立健康・栄養研究所や早稲田大学などの研究者を中心としたグループが、全身の動脈硬化と身体の硬さについての研究を行っています。

アメリカ生理学会会誌である「心臓および循環器生理学」に掲載されたその論文を見てみましょう。

(本章で参照した論文:Poor trunk flexibility is associated with arterial stiffening/American Journal of Physiology – Heart and Circulatory Physiology Published 1 October 2009 Vol. 297 no. 4, H1314-H1318 DOI: 10.1152/ajpheart.00061.2009)

身体が硬い中年以降の人は動脈硬化のハイリスク群

この研究で検証されたのは「身体が硬いと動脈硬化を起こす」と言う仮説です。研究に参加した成人を40歳未満の若年層、60歳未満の中年層とそれ以上の高齢者層に分けて分析しています。

そして座位体前屈で身体が柔らかい人と硬い人に二分しています。その結果、若年層では身体の硬さと動脈硬化の間に、有意な相関は見られませんでした。

一方、中年層と高齢者層では、身体が硬い人は動脈硬化が進んでいるというデータが取れたのです。

このデータについても、先に紹介したストレッチによる血流や動脈硬化の改善によるデータと同じように、末梢血管の部分、中心動脈の部分、全身動脈の状態を測っています。

ここでは末梢血管では差が現れなかったのに、全身と中心動脈では身体の硬さと動脈硬化の間に相関が見られるという結果になっています。

ストレッチによって中心動脈の改善もできる可能性

この論文では「身体が硬いと動脈硬化になりやすい」ということが示されています。一方で、「身体を柔らかくしたら動脈硬化が改善される」というデータは取れていません。

しかし、身体が硬いと言うことをもたらしている原因が、動脈硬化を進めているのであれば、それを改善することで、動脈硬化が改善できるのではないかという仮説のもと、他の研究の文献を調べています。

それによると、海外での研究で中高年齢層の人の中心動脈の改善に、筋トレが役立つのではないかという仮説を検証するために、筋トレを行わせた人と、同じ時間ストレッチを行わせた人のデータを集めた介入対照実験が行われました。

その結果は予想に反して、ストレッチを行った人も頸動脈での測定で、動脈硬化が改善したというものだったのです。この論文では、ストレッチによって改善された身体の柔軟性が、加齢による動脈硬化を改善する因子になりうる可能性を指摘しています。

この論文のまとめでは、今後さらにストレッチを行わせる介入実験によって、動脈硬化の改善の可能性を測るべきだとしていますが、先に紹介した実験はその介入実験によって動脈硬化を改善したということですね。

このように、中心動脈についても改善の可能性は示されていますが、現段階では充分なエビデンスとは言い難いようです。しかしストレッチを行って改善に取り組むことは良いことだと言えるでしょう。

ストレッチは運動強度以上に運動の効果がある

ここまで見てきたデータをまとめると、ストレッチは軽い運動強度であるにも関わらず、運動によって末梢動脈に直接刺激を与えるため、それによって末梢動脈の動脈硬化を改善できる可能性があるということになります。

また、ストレッチの直接的な効果ではありませんが、運動習慣を持つ人はウォーミングアップやクーリングダウンの際にストレッチを行うことが多いですね。

ですので、運動習慣の一つとしてストレッチを行うことによって、身体が柔らかい人は動脈硬化が少ないということになるのでしょう。

ストレッチは身体を動かす一つの方法

最初の方で紹介したアクティブガイド2013では、現在の体を動かす習慣に対して、1日に10分のストレッチを付け加えてみるということを推奨しています。

例えば、10分のジョギングやウォーキング、筋トレを付け加えることに比べれば、ストレッチは家事や仕事の合間にも行いやすい身体活動ですね。

もちろんウォーキングなどは有酸素運動としてぜひ行ってもらいたいのですが、何より気軽に取り組めて、天候などに左右されず毎日行いやすいという意味で、ストレッチは大変優れた運動だと言えるでしょう。

具体的な運動方法は先に紹介したリンク先の記事を見てもらうとして、ストレッチしている時は、筋肉と一緒に血管も引っ張っているという感覚を持ちながら行ってみて下さい。

動脈硬化とは関係のない病気ですが、同じ血管のトラブルとして起こる「下肢静脈瘤」にもストレッチは効果があるということですので、一石二鳥ですね。

とにかく身体を動かしてみよう

ストレッチによる動脈硬化改善は、例えば病院で理学療法士の先生が行ってくれて、健康保険の適用で3割負担の医療費で受けられると言うレベルに達するには、まだエビデンスが充分ではありません。

しかし、自分で健康に役立つ柔軟体操として行うには、充分効果が期待できそうなレベルにまで、様々な実験報告が集まっています。

ですので、まず身体を動かす習慣の第一歩として、1日10分のストレッチには大きな効果が期待できるでしょう。

まだまだ運動というと「きつくないと効果がない」と感じてしまう人が多いようですね。でも、「まず動かすこと」がいちばん大切なんですよ。
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