健康生活TOP 老化 高齢者の歩行速度は「寿命延長」と「病気予測」の両方に関係する

高齢者の歩行速度は「寿命延長」と「病気予測」の両方に関係する

歩く高齢者夫婦

最近導入された、高齢者の状態を表す単語に「フレイル」と言うものがあります。これについては後ほど詳しくお話ししますが、今回はその中でも特に「高齢者の歩行速度」に注目してみましょう。

もちろん誰でも歳をとれば歩く速度が遅くなります。しかしその遅くなり方が大きいと、心不全や動脈硬化など心臓や血管の病気、つまり心血管疾患のリスクが上がることがイタリアでの研究で発表されたのです。

高齢者の衰えを表すフレイルとは?あなたの歩行速度は大丈夫?

フレイルとは、健康と身体障害状態の中間に位置して虚弱状態と翻訳されることもある、高齢者の身体の状態のことです。まだ日本では正確な定義が行われておらず、アメリカでの定義を流用している状況です。

  • 体重が減った
  • 疲れやすくなった
  • 筋力が落ちた
  • 歩くのが遅くなった
  • 活動的でなくなった

この5つの条件のうち、3つ以上に当てはまればフレイル、1~2個当てはまれば初期フレイルと診断されます。フレイルは誰にでも起こる身体の加齢変化をとらえるため指標として設けられました。

例えば健康なお年寄りが脳梗塞を患って、要介護1~2くらいになったとします。さらにその後骨折して要介護4~5。さらに肺炎を患って亡くなった・・・割合よくあるパターンでしょう。

この場合、病気やけがなどをきっかけにして階段を下りるように身体の状態が悪くなっているのです。

一方まったく大病やけががなくても、身体の状態がだんだん坂道を下りるようにゆっくり衰弱して行って最期は大往生と言う方もいます。

大往生は大いに歓迎なのですが、坂道を駆け下りるように衰弱ししかも途中で転ぶように状態が悪化して一気に死を迎えたり、それをきっかけに要介護状態が長く続くと言うのは誰しも願い下げですよね。

この坂道を駆け下りるような急速な身体機能の衰弱こそがフレイルがなのです。

病気や衰弱は年齢を重ねれば誰にでも起こってくる現象です。しかしいずれも普段の生活の見直しで衰えのスピードを落とし、大往生に向けて改善することは可能であると、誰もが認めるところではないでしょうか。

さてそこでこのフレイルについて少し見てみましょう。アメリカ人の基準ですから、日本流へのアレンジは必要かもしれませんので注意して下さい。

体重が減った

これはもちろんダイエットで体重を減らしたと言うことは除きます。何も意識せず普通に生活していて、1年間で10lb.(約4.5kg)以上体重が減った場合、フレイルの条件のひとつに当てはまります。

ただアメリカ人の体重は日本人の1.36~1.39倍ですので、日本人なら1年で3.3kgくらいに相当しますね。年配者の場合もう少し日米の差が大きいので、体重が自然に3kg以上減った場合要注意です

疲れやすくなった

これは主観的なものなので基準が難しいところではあります。一つの目安として先月くらいからいつもより疲れやすくなったと感じ始めたたかどうか、と言うことが挙げられます。

あるいは、ここ一か月くらい身体が弱くなったと感じているかどうか、と言うのも判断基準にして良いようですね。

筋力が落ちた

これもアメリカの基準で、しかも肥満度ごとに分類されていますので日本人には適用しにくい部分もあります。

おおまか平均的な数値をご紹介すると、男性で握力30.0kg以下、女性で握力17.5kg以下くらいがアメリカにおける低筋力の基準になっています。

握力についてはあまり民族間の差はなさそうですので、そのまま日本でも使えるかもしれませんね。…誰ですか、30代だけどその数値に届かないなんて言ってるのは。老後に備えて鍛えましょうね。

活動的でなくなった

アメリカ基準ではどのような日常生活活動を行っているかの質問で判断していますが、これは生活習慣の差があるのでそのまま基準にはしにくいものです。日本でもある程度使えそうなものを選んでみましょう。

ウォーキングや適度の努力を要する雑用などを普段行っているかどうかで判断してみて下さい。アメリカ基準では庭いじりや掃き掃除も活動の中に入っていますが、アメリカの一戸建てでの庭いじりや掃き掃除は規模が違いますからね。

歩くのが遅くなった

今回のメインはこの条件です。アメリカは多民族国家ですので歩く速度も身長によって差が出やすい要素なので、男性で173cm、女性で159cmを境目に2パターンに分けています。

日本の高齢者のほとんどが当てはまるであろう、背の低い方のグループは、男女とも秒速約0.653mより遅かった場合、フレイルの要因に当てはまるとしています。

これを日本で見分けるには、歩行者用信号のある横断歩道で測ってみるのが良いですね。例えば20m幅の車道に設けられた横断歩道の歩行者用信号は、青が20秒、青点滅が10秒です。

つまり、歩行者用信号が青になってから渡り始めて、ちょうど青点滅が終る時に渡り終えたとすると20m/(20s+10s)=0.667m/sですので、だいたいフレイルの基準に近くなります。

歩行者用信号の時間は道路幅に比例して決められていますので、どこの横断歩道でも良いですから、青と青点滅の間に渡り切れるかどうかで判断してみて下さい。ただ、あまりに細い道では誤差が出るかもしれません。

歩行者用信号が設置してある横断歩道を渡ってみましょう。青信号が点滅するまでに渡り切れますか?

くれぐれも無理をして車両と事故を起こさないようにしてくださいね!右、左、右!

フレイルと心血管疾患の関係とは?イタリアの研究結果から注意すべき事

以前から、フレイルの高齢者には心血管疾患にかかる可能性やそれによって亡くなるリスクが高い事は判っていました。

そして、それを改善することで長生きしてもらったり、要介護状態にならないようにしたり、あるいは要介護状態になったとしても適切な治療や介護が行えるようにしたりと言う方針が設定されていたのです。

しかし、初期フレイル状態の高齢者が心血管疾患にかかるリスクについては研究があまりなく、また得られた結果も一致していないと言うことから、改めてイタリアで大規模な研究が行われたのです。

今回のデータは、2つの地域に住む65歳以上の人たちから、

  • 心血管疾患を持っている人
  • 既にフレイルである人
  • 日常動作に支障のある人

などを除外したおよそ1600人について4年半ほど追跡調査した結果です。

これらの人々の中で初期フレイルに分類された人や途中から初期フレイルになった人々は、フレイルにならなかった人に比べて、心血管疾患にかかった人の割合が高くなったと言うデータが取れました。

さらに、それぞれの要因について分析が行われました。ただ、最初にお話しした5つの要因のうち「疲れやすくなった」と「活動的でなくなった」は基準が主観的なので採用が見送られました。

その結果、体重の減少や筋力の低下は心血管疾患に関係がありませんでしたが、「歩くのが遅くなった」と言う人は、そうでない人に比べて心血管疾患にかかりやすいと言う結果が得られたのです。

あるいは発病こそしていないものの、心臓への負荷が辛いという状態になるから、自然に歩行速度が落ちているのかも知れないと言う仮説もあります。これは今後の検証が待たれますが、心臓病の予兆であることに変わりはありません。

高齢者歩くイラスト

このことから普段健康であった高齢者であっても、最近横断歩道を渡り切れなくなったなどの歩行速度のトラブルが見えた時に病院で検査を受けたり、予防的な治療をしてもらう事で心筋梗塞などを防止できる可能性が高くなります。

心血管疾患は重大な病気ですので、その段階では生命が助かっても、要介護状態になることも十分考えられます。本人だけでなくご家族のためにも、高齢者の状態は普段からよく観察しておきましょう。

また、健康なうちから「歩くのが遅くなったら心臓の検査を受けよう」などのような共通意識を高齢者を含めたご家族の中で持っておくことで、いざという時に高齢者が受診しやすい精神状態を準備することができるでしょう。

病気になった高齢者は意固地になって受診を嫌がることも珍しくありませんが、健康な時の高齢者は他人の事として病人が受診することは義務であると言う感覚を持っている人が多いので、健康なうちから意識付けを行っておくのが得策です。

ご自身、またはご家族の歩行速度の変化を意識し、また遅くなったな~と感じたら病院を受診する!という心もちでいることが大切なのですね。

早く歩くと長生きできる!歩くという動作を鍛えよう

さて、ここまでは病気を予知する方法として歩く速さに注目してきましたが、逆に、歩く速度を上げることによって病気を防ぐことができないのでしょうか。

これはできると言う答えが出ています。心血管疾患のみならず、高齢者が持っているさまざまな健康に対する危険性を下げてくれるのが「速く歩くこと」と言う運動なのです。

さてここで懐かしい算数を思い出してみましょう。歩く速さと言うのは移動した距離を移動した時間で割ったものですね。そして移動した距離と言うのは、歩幅に歩数を掛けたものになります。

歩幅×歩数÷時間

ですので歩く速さを早くしようと思えば、

  • 歩幅を広くする
  • 歩数を多くする
  • あるいは両方をアップする

ことになりますね。

歩幅を広げて歩く

歩幅

これから歩く速度を維持するか早くしようとしている人が、現在足腰にトラブルがなく、転倒の恐れがほとんどない人の場合は、歩幅を広げるところから始めてみましょう。

まず、普通に歩く時に「つま先の長さの半分」だけ余分に前に出すことを意識してみましょう。これでふらついたりしないようであれば、この状態でウォーキングなどを続けられることをお勧めします。

これは若い人でも言えることなのですが、歩幅を広げて歩こうとすると前後への足の開きが大きくなります。足の振り出しも大きくする必要があるので足の上がり方も大きくなりますね。

さらに遠くに足をつこうとするわけですから、腰のひねりが加わります。当然そのバランスを取るため腕も振りますし、首も前向きを維持するため自然とひねることになります。

このようにわずかに歩幅を広げるだけでも、全身の筋肉の強度や関節の柔軟性を鍛えることになりますから、高齢者の場合転倒による骨折などの事故から身を守れることにもなりますね。

もともと50cmの歩幅の人が2.5cmだけ歩幅を広げると、同じ歩数なら5%歩く速度が速くなります。

5%速くなると言うことは、中央分離帯付片側2車線の道路を横断するのに青点滅ギリギリだったのが渡り切ってさらに2歩進んだ時に、青点滅から赤になるくらいまで向上すると言うことです。

歩数を増やす

歩数

歩くときに少し足元が危なくなることがあるような人が歩幅を広くしようとすると、ふらついて転倒しやすくなるので危険です。ですのでこうした人は歩幅はそのままで歩数を増やすことで足腰を鍛えましょう。

それでふらつきなどがなくなったら歩幅のアップに挑戦するのが良いです。公園など車やほかの交通機関がいない場所でのウォーキングなら、音楽を聴きながらでも良いですよ。

この時、自分の足腰の調子に応じてだんだん速い曲に変えて行くのも一つの方法ですね。あるいは「くるみ割り人形」のようなクラシックも、弾むような調子の曲があったりして気分が明るくなるかもしれません。

一方、公道を散歩するときは外の音が聞こえないと危険を察知できないので、音楽を聴きながらと言うのはやめましょう。

歩けない時は

まずは歩行のためのリハビリを行ってください。自分の足で歩こうとすることがたとえ歩けなくても身体全体に良い刺激を与えます。

ただし、他の病気で身体にトラブルを抱えている場合はお医者様や療法士の先生方のご指導に従って下さいね。

毎日の歩くという行動を意識して鍛えようとすることが必要なのです。

歩く動作を鍛える事はメリットだらけですので頑張りましょう!

フレイルとサルコペニアは関係があった!運動と栄養でしっかり予防

魚を料理する高齢者

高齢者のフレイルについては、サルコペニアとの関連が大きいと言う事が判っています。もともとサルコペニアは加齢に伴う筋肉量の減少を示すものでしたので、フレイルとの強い関係は当然かもしれません。

このことについて、運動と栄養の面から見て行きましょう。

ポイントは太もも

胴体と頭を除いて、両手両足のうち一生を通じて一番筋肉量の変化が小さいのは、膝の下から足首までの部分にあたる下腿部です。

一方加齢に伴ってもっとも筋肉が失われるのは大腿部、つまり太ももの部分なんですね。太ももの筋肉量をキープすることでサルコペニア、ひいてはフレイルを予防することも可能なのです。

筋肉量の維持向上と言えば子供も老人も変わらず運動と栄養です。運動については上でお話しした通り、自分の身体の状態に応じた歩き方を行う事で目的は果たせるでしょう。

そこで今度は栄養です。年齢を重ねるごとにどうしてもあっさりしたものを好むようになってしまい、たんぱく質を食べる量が足りなくなってくるのです。

肉魚をしっかりと

たんぱく質が足りないと、筋肉をはじめとする身体が修復構築できなくなります。ですので、年齢を重ねたからと言ってたんぱく質の必要量に変化はありません。

厚生労働省によると18歳でも70歳以上でも、一日に必要なたんぱく質の推奨量は女性で50g、男性で60gです。そこで、たんぱく質50gを含む食品の量を見てみましょう。

食品 たんぱく質50gを含む量
するめ 73g
くさや 100g
さきイカ 110g
いわし・みりん干し 113g
イクラ 154g
焼鮭 176g
焼たらこ 177g(約3本)
茹でた海老 178g
まぐろ赤身刺身 190g
焼鯖 200g
チェダーチーズ 195g
牛乳 1.5L
ヨーグルト 1400g
油揚げ 269g
納豆 304g
大豆水煮 388g
バターピーナッツ 197g
枝豆(さやを除く) 428g
ビーフジャーキー 92g
生ハム 195g
クジラ赤身生 208g
豚ロース赤身 219g
牛モモ赤身 223g
鶏胸肉赤身 223g
たまご(からを除く) 246g

例えば、朝食に卵1個、牛乳200mL、昼食に納豆1パック、夕食に鶏の胸肉80gを食べて、たんぱく質が50gくらいになります。男性の場合は2割増しですね。

若い人なら足りないでしょうが、高齢者の人はなかなか摂れていないかも知れません。たんぱく質が足りないと痛んだり古くなったりした身体の修復ができなくなります。

腎臓に病気がない限りたんぱく質を食べ過ぎても、問題はカロリーだけですので、意識してたんぱく質を摂るように心がけて下さいね。

太ももの筋肉を衰えさせないぞ!という気持ちと

魚肉をしっかり食べてたんぱく質でモリモリだ~!という気持ちがフレイルとサルコペニアを予防するのです。

私も負けないようにがんばりますよ~っ!ふんふんっ!

キャラクター紹介
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