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採血や献血で失神…貧血とは違う血管迷走神経反射性失神の症状と原因

採血を受ける女性

眠っている時以外に意識を失ったことはありますか。失神と呼ばれるこの現象は健康診断時の採血や献血の際に注射で血を抜くことでも起こることがあります。

そんなに頻度は多くないにしても、注射で血を抜くことは多くの方が経験することではないでしょうか。

注射で血を抜くことが原因で意識を失ってしまうとしたらとても怖いことです。この現象を専門用語で「血管迷走神経反射性失神」と言います。

「血管迷走神経反射性失神」とは何なのか。なぜ、どのようなことが起こりどれくらい続くのか。予防法や後遺症は残ってしまうのでしょうか。それをご紹介します。

気絶、気を失う、は失神!その特徴と原因は?

失神とは「気絶」、「気を失う」、「脳貧血」と同じ現象です。意識を失うこと(意識消失)を失神と言います。

失神は血圧が低下するなどの理由で大脳皮質全体あるいは脳幹の血流が一時的に低下または遮断されることによって起こります。

通常、意識を失っている時間は数秒から数分であり一過性のものです。

人口1000人に対し年間約6人の人が失神を経験しているとされています。日本の人口は平成28年1月1日現在で1億2704万3千人です。1000:6=127,043,000:X。X=762,258人もの方が失神を経験されています。意外と多い人数ですね。

失神の原因は

失神の原因は大きく分けて次の4つがあります。

  1. 起立性低血圧
  2. 自律神経性の失神
  3. 心臓病による失神
  4. その他

注射で血を抜くことが原因で起こる失神は2番の自立神経性の失神に分類されます。

自律神経性の失神

注射で血を抜くことが原因で起こる失神は自立神経性の失神に分類されますが、自立神経性の失神は更に3つに分類されます。

  1. 反射性失神
  2. 神経調整性失神
  3. 血管迷走神経反射性失神

採血、献血で起こる失神は3番の血管迷走神経反射性失神と呼ばれます。

血管迷走神経反射性失神、この長い名前の失神とは一体どのようなものなのでしょうか。

採血や献血の時にふら~っとなる血管迷走神経反射性失神

健康診断の時の採血や献血で血を抜かれる時に失神してしまう方がいます。 この時の失神を血管迷走神経反射性失神と言います。

この耳慣れない失神はどのような失神なのでしょうか。恐ろしい失神なのでしょうか。

まずはどのようなメカニズムで起きる失神なのかをご説明いたしましょう。

沢山ある神経について

神経は大きく分けて中枢神経と末梢神経に分かれます。脳と脊髄を合わせて中枢神経と呼びます。末梢神経には脳から直接出ている脳神経と脊髄から出ている脊髄神経があります。

脳神経は以下の12対の神経で構成されています。

第1脳神経 – 嗅神経
第2脳神経 – 視神経
第3脳神経 – 動眼神経
第4脳神経 – 滑車神経
第5脳神経 – 三叉神経
第6脳神経 – 外転神経
第7脳神経 – 顔面神経
第8脳神経 – 内耳神経
第9脳神経 – 舌咽神経
第10脳神経 – 迷走神経
第11脳神経 – 副神経
第12脳神経 – 舌下神経

血管迷走神経反射性失神の「迷走神経」とは脳から出ている12対の末梢神経の10番目の脳神経のことです。

第10脳神経、迷走神経の役割

迷走神経は脳神経の中で唯一腹部まで到達している神経です。首から腹部のほぼ全ての内臓の運動神経と知覚神経を支配しています。

具体的には次の機能を司っています。

  1. 心拍数の調整
  2. 消化管の蠕動運動
  3. 発汗
  4. 発話
  5. 血中ガス分圧の感知
  6. 体性感覚

自律神経が乱れると…心拍数の低下(徐脈)と血圧の低下で起こる「迷走神経反射」

血管迷走神経反射性失神の説明の為に失神、神経、迷走神経の説明を致しましたが、この病名は更に「迷走神経反射」という言葉にも分けることができます。

迷走神経反射とは、自律神経の失調により心拍数が減少(徐脈)し、血圧の低下が起こり脳へ十分な量の血液が行かなくなることによって起こる様々な症状の総称です。

具体的には次のような症状が現れます。

  • めまい
  • ふらつき
  • おちつきがなくなる
  • あくび
  • 顔が青くなる
  • 熱感
  • 寒気
  • 頭痛
  • 発汗
  • 吐き気
  • 瞳孔拡大
  • 視界不良
  • 失神

迷走神経反射の原因

以下のように迷走神経反射の原因には様々なものがあります。強いストレスを受けることが原因とも考えられています。

  • 長時間の立ち続けていること
  • 激しい痛み
  • 激しい運動
  • 怒り
  • 驚き
  • 脱水
  • 飲酒
  • 排尿
  • 排便
  • 睡眠薬の服用
  • 採血
学生の頃に朝礼で校長先生の話が長くてめまいを起こす人がいたと思いますが、あれが迷走神経反射なのです。

つまり、血管迷走神経反射性失神とは

血管迷走神経反射とは、採血が原因で起こる迷走神経反射のことです。

血管迷走神経反射性失神は、血管迷走神経反射で起こる様々な症状の中で、失神が起こる場合を指します。

つまり採血が原因で迷走神経反射が起こって失神してしまうことを血管迷走神経反射性失神と言うのです。

採血によって貧血を起こし、それが原因で失神しているのではないのです。

血管迷走神経反射性失神の前兆を知っておけば対策ができる

採血の途中で失神してしまうとしたら大変です。血管迷走神経反射性失神に前兆はあるのでしょうか。あるとしたらどのようなことが起きるのでしょうか。

3分の2の人が失神の前兆を経験すると言われています。つまり3分の1の人は前触れもなく失神してしまう、と言うことです。

失神の前兆は前駆症状や前失神とも呼ばれ以下のような症状が現れます。

  • めまい
  • ふらつき
  • ものが二重に見える
  • ものぼやけて見える
  • 急に目の前が暗くなる
  • 顔が青ざめる
  • 寒気
  • 熱感
  • 発汗
  • 頭痛
  • 腹痛
  • 腹部の違和感
  • 吐き気
  • 嘔吐

血管迷走神経反射性失神の前兆が現れた時の対応

血管迷走神経反射性失神の前兆が現れた場合、どのような対応を取ればよいでしょうか。

まず迷走神経反射の誘因と考えられることを即中止します。血管迷走神経反射性失神の場合は、当然、「採血の中止」となります。

次に失神をして転倒してしまうことを予防します。具体的には横になることです。足を頭より高く上げて置くことが有効です。

失神を予防する方法としては

  • 手を強く握る
  • 腕と脚に力を入れる

これで失神を避けることが出来る場合があります。

より具体的には右手と左手を上下に組んで、強く握って左右に引っ張ること、そして、両足を組んで力を入れることが、現場の医療関係者の方から指示されることがあります。

採血の場合は必ず周りに医療関係者の方がいるはずです。

気分が悪くなり、血管迷走神経反射性失神を起こしそうだと感じた時は、直ぐに症状を訴えて、看護師さんなどのスタッフの指示に従うようにしましょう。

採血を受ける際は事前の準備が大切です。

医療スタッフの方たちは血管迷走神経反射性失神を起こす人がいることを心得ています。いざという時はスタッフの方たちに「血管迷走神経反射性失神が起こりそうです」と淀みなく言えるように練習しておきましょう。

舌を噛みそうでとてもではないが言えそうにないと感じたら「気分が悪いです」と素直に訴えましょう。失神を起こして倒れて怪我でもしたら大変ですから。

血管迷走神経反射性失神は基本的には心配のいらない失神

血管迷走神経反射性失神が起きた場合、意識を失ってしまいます。その時間はだいたい30秒から5分程度です。

脳血流低下の程度が強い方の場合、失神時に痙攣のような動きが起こる場合もありますがそれは稀です。

失神を起こしても多くの場合は痙攣様の症状を起こすこともなく意識が戻ります。通常、回復は早く、意識障害などの後遺症も残ることはありません。

失神時に症状が深刻なケースでは、低血圧状態を回復するために点滴が行われることもあります。

血管迷走神経反射性失神の病院での治療

血管迷走神経反射性失神に対する病院での診療はどのようになっているでしょうか。

失神はヨーロッパ、特にイタリアでは失神を専門に診療する部門があります。失神診療部門の多くは循環器内科の医師によって診療されています。

一方、日本では失神を専門としている医師の数が非常に少なく、失神を専門にしている診療部門も全国的に見ても非常に稀です。

失神は一時的な現象で、その後後遺症も残らないこと、一般的に失神の原因が沢山あることから、ある患者さんが失神をして受診したとしても、原因を特定することがとても難しくなっています。

このため失神を診療するのは何科なのかはっきりしなていないのが日本の現状です。

そのような状況のなかで聖マリアンナ医科大学の循環器内科は2012年4月から失神外来を開設しています。

心臓の病気が原因の失神はその後の健康にとても大きな影響を与えます。

心臓疾患が原因で失神を起こす方、また、繰り返し失神を経験されている方や失神が不安で生活に支障のある方は治療が必要となりますので、お調べになってはいかがでしょうか。

血管迷走神経反射性失神など自律神経が原因で失神を起こされる方に対して聖マリアンナ医科大学の失神外来では、生活指導や失神の前兆が現れた時の失神を起こさない方法を指導しています。

症状の重い方の場合、ペースメーカーを使用することもあります。薬物治療はほとんど行われません。

心配いらない失神でもきちんと対応するべし

ご紹介してきましたように献血や健診の採血で血を抜かれる際に失神してしまう方がいます。これはどなたでも起こりうることです。

失神することがあること、前兆にはどのような症状が起こるのかを理解しておくと、その時になって適切な対応を取ることが出来るかもしれません。

医師やスタッフへ「気分が悪い」「失神しそう!」と伝えることと、指示に従って行動することをまずは徹底してほしいと思います。

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