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【呼吸器疾患の種類】呼吸器系の病気はどんなもの?

元気なお年寄りの方のインタビューで、「私は病院に行ったことなど一度もない」と誇らしげに語るシーンを目にすることがあります。特に最近では、食べ物から満足に栄養を補給することができるようになり、それが平均寿命の延長につながっています。

もちろん病院に行かないということは素晴らしいですが、しかしそれは、「体調を崩したことが一度もない」ということと必ずしも同義ではありません。たとえば、ちょっとした風邪をひくといった小さなアクシデントは、誰にでも起こることです。

呼吸器疾患にかかったことがありますか?ときいても、いや、私は喘息(ぜんそく)持ちではないですとか、喫煙者ではないのでといった感じでやんわりと否定される方が多いですが、実は呼吸器疾患にかかっている人は意外とたくさんいます。

上で挙げた風邪の症状として多くの人が経験する「のどの痛み」をはじめ、胸や気管の不快感のほとんどすべてが、呼吸器疾患であると考えられます。喘息の有無や喫煙による慢性閉塞性肺疾患(COPD)だけが呼吸器疾患ではありません。

今回は、そんな呼吸器疾患について、どんな病気があってどんな症状が起こるのかというところに重点を置きつつ、お話していきたいと思います。

呼吸器疾患にはこんな病気がある1.感染性呼吸器疾患

もちろん、上でも挙げたCOPDや気管支喘息といったかなり重度な病気も呼吸器疾患に分類される疾患です。広義には、肺ガンなども呼吸器疾患に含まれるでしょう。また、風邪による呼吸器の不具合も呼吸器疾患の一種です。

風邪の場合は細菌類が原因になっていますし、喘息の場合アレルギー疾患が多いです。また、COPDや肺ガンの場合はたばこや大気汚染などが原因として挙げられることになります。ですから、呼吸器系疾患の原因は非常に多様なのです。

原因が異なれば当然治療方法も異なりますので、呼吸器疾患の場合こうするとかかりますよとか、こうすれば治りますよということが一概に言えないのです。ですから今回は、まずは呼吸器疾患に分類される病気を知っていただこうと思います。

それでは、一般的に知られる呼吸器疾患を列挙し、簡単に説明することにしましょう。まずは感染性の呼吸器疾患からです。画像を参考にしつつ、それぞれ概要をお話ししていくことにします。

かぜ症候群

上記の例に挙げた風邪のことです。風邪にはいろいろな種類があるため、明確な「疾患」ではなく、「症候群」を用います。かぜ症候群は、主に鼻やのど(咽頭、喉頭など)に炎症が見られる呼吸器疾患です。

インフルエンザ

A、B、Cの3つの型を持つインフルエンザウイルスに感染することで発症する感染症の一種で、主に発熱と呼吸器疾患を発症します。飛沫感染で感染力が強いウイルスで、特に乾燥する冬場は要注意です。

細菌性肺炎

肺炎というと、風邪が悪化して発症するタイプが一般的です。しかし細菌性肺炎の場合、文字通り細菌感染により発症します。問題はその感染経路ですが、口や鼻の奥に常駐している細菌が感染することにより発症するため、なかなか厄介な肺炎です。

以下は細菌性肺炎の画像です。画像で見て向かって左側(右肺)の下が病巣です。

肺炎の胸部エックス線画像

急性気管支炎

かぜ症候群とのかかわりが非常に密接な疾患です。よく「風邪をこじらせる」という表現を用いますが、これが急性気管支を指すことも少なくありません。

風邪が長引くことで上気道の炎症が継続し、さらにその炎症が気管、気管支へと及んだ状態を、急性気管支炎と呼びます。

肺膿瘍

肺膿瘍(はいのうよう)は、いくつかのパターンが当てはまると発症しやすい呼吸器疾患です。そのパターンとは、以下に挙げられるケースです。

  • 肺炎の重症化、長期化
  • 誤嚥(ごえん)により食べ物などが肺に入り込む
  • 肺ガンの手術後
  • 歯科治療後、歯肉の炎症発症時(後)

以下は、肺炎が重症化、慢性化したことによってできた肺膿瘍のイメージです。画像は、肺炎によって肺組織の破壊が起こり、その部分に膿がたまってできた肺膿瘍のイメージ図です。

肺膿瘍の様子

肺結核

ひと昔前にくらべると確かに肺結核の発症件数自体は激減しています。しかし結核菌(肺結核の原因菌)の潜伏期間は非常に長く、近年ふたたび肺結核の報告が届くようになっていきています。

平成23年のデータでは、国内における肺結核患者数は実に2万2000人を上回りました。

非結核性肺抗酸菌症

結核菌以外の菌・細菌の肺への感染が認められた場合、その感染症が非結核性肺抗酸菌症(ひけっかくせいはいこうさんきんしょう)と呼ばれます。では、感染経路はどうかというと、実は土や水などの生活環境の中に当たり前に存在している菌が感染します。

以下の円グラフは、非結核性肺抗酸菌症に感染する菌の種類ごとの割合です。

非結核性肺抗酸菌症の種類

肺真菌症

カンジダ、アスペルギルス、クリプトコッカス、ムコールといった「真菌」と呼ばれる菌を呼吸により吸い込むことで発症する感染症が、肺真菌症(はいしんきんしょう)です。脳感染のリスクも考えられる感染性呼吸器疾患です。

肺寄生虫症

耳慣れない呼吸器疾患ですが、

  • サワガニ(ザリガニ、モズクガニ)肉
  • イノシシ(シカ)肉

などを十分に加熱せずに食べることで、寄生虫(幼虫)が寄生することがあります。これらの寄生虫は特に肺を好む性質があることから、肺寄生虫症にかかると考えられています。

以下は、肺寄生虫症を発症するメカニズムを模式的に表した図です。

肺寄生虫症を発症するメカニズム

日和見感染症

日和見(ひよりみ)感染症は、病気や過度のストレスなどにより、著しく免疫力が低下している人に起こる感染症です。ふつうに生活している分にはそこまで不安感を募らせる必要はない感染症です。

日和見感染と同系列の疾患に、ニューモシスチス肺炎、サイトメガロウイルス肺炎と呼ばれる呼吸器疾患があります。

誤嚥性肺炎

食べ物や飲み物を飲み込んで食道から胃へと移動させることを嚥下(えんげ・えんか)と呼びます。正しく嚥下できず、食道ではなく気管に食べ物、飲み物が入り込んでしまうことを、誤嚥と呼びます。

誤嚥によって発症する肺炎が誤嚥性肺炎(ごえんせいはいえん)で、肺炎の中でも特に高齢者に多い呼吸器疾患です。

呼吸器疾患にはこんな病気がある2.気道閉塞性疾患

次に、炎症などが原因で気道が閉塞(へいそく:部分的にふさがって狭くなる)するタイプの呼吸器疾患をピックアップします。

慢性閉塞性肺疾患(COPD)

慢性閉塞性肺疾患(まんせいへいそくせいはいしっかん=COPD)は、かつて「慢性気管支炎」と呼ばれていた時期がありました。また、「肺気腫(はいきしゅ)」と呼ばれていたこともありました。

喫煙や大気汚染など、有害物質の吸引が主な原因でCOPDを発症します。

喫煙習慣がある中高年の発症率が高い疾患で、COPDはいわゆる生活習慣病に分類されることが多いです。

下の写真2枚はいずれもCOPDを発症した肺の画像です。左は閉塞によって肺膨張が起こっているヘビースモーカーの肺のX線画像です。

右は、同じく喫煙による肺組織の破壊(気腫・黒っぽい腫瘍様の部分)が起こっている肺のCT画像です。

胸部X線写真(左)と高分解能CT(右)

びまん性汎細気管支炎

気管は枝分かれして肺につながっています。気管が枝分かれした部分を「気管支」と呼びます。それぞれの気管支は先が細くなっており、最終的には先端が袋状になっており、その上を毛細血管が走っています。

この袋状の部分を肺胞(はいほう)と呼び、肺胞の手前の細い気管支を「呼吸細気管支」と呼びます。この部分に炎症・閉塞が起こるのが、びまん性びまん性汎細(はんさい)気管支炎です。40~50代の男女の発症率が高い疾患です。

以下は肺胞のイメージ図です。中学の理科の教科書にも掲載されることが多い、重要な器官です。

肺胞の拡大図

呼吸器疾患にはこんな病気がある3.アレルギー性肺疾患

呼吸器系疾患にはアレルギー性の疾患が多いです。以下はその典型的な疾患になります。

気管支喘息

気管支喘息は、まずは下の画像をご覧いただくとわかりやすいと思います。

気管支喘息の気管支

気管支が炎症を起こすことによって、気道が閉塞した状態が気管支喘息です。この状態では、ハウスダストや花粉、ペット、ダニなどといったアレルゲン(アレルギーの原因物質)のターゲットになりやすく、咳や痰などの症状が現れます。

もちろん上記のアレルゲンは、アレルギー発症だけでなく、気管支喘息の罹患原因にもなります。

過敏性肺炎

一般的な肺炎自体がアレルギー性の肺炎が多いです。風邪の菌はもちろんですが、上記で挙げたアレルゲンの吸引によって、アレルギー症状が現れるのが肺炎です。ところが過敏性肺炎は、アレルゲンの吸引が原因とは限りません。

ただ、たとえば花粉など、特定の非アレルゲンの物質を繰り返して吸引することによって、肺が過剰に反応するようになり、あたかもアレルギーのような症状が現れることがあります。その症状が肺炎に至ると、過敏性肺炎という疾患になります。

好酸球性肺炎

白血球の一種である好酸球(こうさんきゅう)は、アレルギーとかかわりが深い血球です。一般的な肺炎は、肺胞にアレルゲンが付着するタイプの肺炎が多いです。これに対し、好酸球性肺炎の場合、好酸球が過敏に反応して起こる肺炎です。

白血球の一種であるということは、好酸球性肺炎は一種の自己免疫疾患(はじめから自らの体内にある正常な物質や細胞まで攻撃してしまう免疫疾患)であるといえます。

アレルギー性気管支肺アスペルギルス症

ずいぶんものものしい病名ですが、「アスペルギルス」とは真菌(カビ)の一種で、これがアレルゲンとなって発症する肺炎のことです。気管支喘息患者に多く見られるタイプの肺炎です。

薬剤性肺炎

薬剤自体がアレルゲンとなってしまう薬剤性肺炎は意外と多いアレルギー性肺疾患です。しかもその種類が非常に多く、中には抗生物質がアレルゲンになってしまうこともあるということですから、本末転倒とでも言いたくなる肺炎です。

好酸球性多発血管炎性肉芽腫症

喘息やアレルギー性鼻炎にかかっている患者さんに多い疾患です。こちらも白血球の一種である好酸球が過度な反応を示すことで発症します。ちなみに肉芽腫(にくげしゅ・にくがしゅ)とは、慢性的炎症により組織がただれるような状態になる症状です。

発症件数としてはそこまで多くはありませんが、症状が悪化すると全身性疾患に至る可能性もある疾患なので、注意が必要です。全身性疾患の症状については以下に図示しておきます。

好酸球性多発血管炎性肉芽腫症で現れる全身の症状

呼吸器疾患にはこんな病気がある4.間質性肺疾患

40歳以上に多い肺疾患で、呼吸不全など、非常に死亡率が高いタイプの肺疾患が「間質(かんしつ)性肺疾患」です。呼吸器疾患は全体的に死亡リスクがある疾患であることは間違いありませんが、間質性肺疾患はその中でも特に怖い病気です。

特発性間質性肺炎

非常に難しい疾患なのですが、この肺炎は、肺胞の壁に異常が起こるタイプの肺炎です。肺胞の異常とは、肺胞組織の線維化です。線維化というのは、簡単に言えば、組織の柔軟性を失う病変を指します。

この病態を特に、「特発性肺線維症(とくはつせいはいせんいしょう)」と呼びます。以下の画像は、特発性間質性肺炎によって肺組織が蜂の巣状に病変(蜂巣肺)した状況をCTによりスキャンしたものです。病変が特に大きいのが、肺の下のほうです。

特発性間質性肺炎

放射線肺炎

  • 肺がん
  • 食道がん
  • 乳がん
  • 悪性リンパ腫

などの放射線治療によって起こる肺炎を、放射線肺炎と呼びます。

サルコイドーシス

肉芽腫が全身に現れる、とても恐ろしい疾患で、残念ながらそのメカニズムなど、原因は一切わかっていません。全身疾患なので、特に呼吸器疾患ではないのですが、のどをはじめとする呼吸器に肉芽腫が現れることが多いとされる疾患です。

下の画像は、左がリンパ節腫大、右が肺組織中の肉芽腫です。

リンパ節腫大(左)と肺組織中の肉芽腫(右)

特発性器質化肺炎

膠原(こうげん)病、病原体、放射線照射、薬剤、悪性腫瘍といったさまざまな疾患に併発するケースが多い肺炎ですが、明確な発症のメカニズムはわかっていません。肺胞やその手前の気管支組織に異常をきたす怖い病気です。

膠原病肺

膠原病は、自己免疫疾患の代表的な疾患で、そのメカニズムは未だ解明されていません。有名なところでは、リウマチが膠原病の一種です。膠原病の症状が肺におよぶことがありますが、この症状を「膠原病肺」と呼びます。

呼吸器疾患にはこんな病気がある5.腫瘍性肺疾患

呼吸器疾患というと、やっぱり一番怖いのが、悪性腫瘍の「ガン」でしょう。ここでは、悪性、良性を含めた「腫瘍性肺疾患」と呼ばれる呼吸器疾患の病気について説明します。

肺がん

肺に悪性腫瘍(しゅよう)ができる疾患を総じて「肺がん」と呼びます。喫煙などにより、肺そのものがガンに侵されるタイプの肺がんを「原発性肺がん」、別の部位にできたがんが肺に転移したものを「転移性肺がん」と呼びます。

一般的には「原発性肺がん」を肺がんと呼ぶケースが圧倒的に多いですね。

がんの中でも最も死者数が多いとされるのが肺がんであり、やはり禁煙などの予防の意識が最も重要となる呼吸器疾患といえるでしょう。

以下の画像は、肺がんの疑いがある肺のCT画像です。

肺がんの疑いがある肺のCT画像

転移性肺腫瘍

転移性肺腫瘍は、上記で説明した「転移性肺がん」もそうですが、それ以上に、あちこちに転移して、最終的に肺に転移したがんのケースで用いられる医学用語です。全身の血液が肺を通過する構造から、転移性肺腫瘍が起こりやすいと考えられます。

肺の良性腫瘍

悪性腫瘍とは「がん」のことを指しますが、たとえば皮膚にできるほくろなども、種類によっては良性腫瘍に分類されます。

ほくろとは異なりますが、ほくろのような良性の「できもの」が肺の細胞にできたケースは、肺の良性腫瘍と診断されます。

皮膚に関しても肺に関しても、良性だからといって油断はできません。種類によっては近い将来がん化(悪性化)する可能性がある場合もあります。

以下に良性と悪性の違いを比較しまとめておきます。ただし、症状には個人差があります。

良性腫瘍 悪性腫瘍
腫瘍の進行 遅い 速い
転移の有無
主な症状 初期は無症状が多く、放置・看過により咳・痰・喘鳴(ぜんめい=ゼイゼイ、ヒューヒューなどの呼吸音)が見られる場合がある 初期は無症状が多く、進行により咳・血痰・痛みなどの不快感を伴う
レントゲンによる診断 腫瘍が明瞭で均一に発生 腫瘍が不明瞭で不均一に発生・進行
医師の所見 奇形や構造異常など 肺がん、胸膜悪性中皮腫(胸膜腫瘍のところで後述します)
  • 縦隔腫瘍

縦隔(じゅうかく)腫瘍は、以下のように定義されます。縦隔のイメージとともにご覧になってください。

縦隔は特定の臓器の名称ではなく、胸膜によって左右の肺の間に隔てられた部分を指し、心臓、大血管、気管、食道、胸腺、リンパ節、神経節などの臓器が存在する場所をさします(図1)。縦隔腫瘍とはこれらの縦隔内の臓器に発生する腫瘍(できもの)の総称です。発生年齢も多様で小児から高齢者まで発症し、悪性から良性まで多様です。

縦隔

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呼吸器疾患にはこんな病気がある6.肺血管性病変

中学の理科で、肺を通過する血管には動脈、静脈とも非常に重要な役割があると学習しましたが、その肺の血管のトラブルが原因で発症する呼吸器疾患についてここからお話していきます。

肺血栓塞栓症

肺動脈(心臓から肺に向かう動脈)に血栓(けっせん=血液凝固などにより血管が狭まるなどの理由から、血管がふさがり血流が阻害される)ができ、凝固した血液が肺に入り込む呼吸器疾患を、肺血栓塞栓症(はいけっせんそくせんしょう)と呼びます。

血栓が大きくなると、声が出なくなる、突然死を招くといった非常に怖い病気です。以下は、肺血栓塞栓症のCT画像です。青い矢印の部分が患部になります。

肺血栓塞栓症のCT画像

肺動脈性肺高血圧症

一般的な高血圧症と異なり、肺動脈の血圧だけが特に上昇するという特殊な呼吸器疾患(肺血管疾患)です。肺動脈性肺高血圧症が原因で、その影響が全身におよぶリスクがあり、要注意の疾患です。

肺水腫

肺胞は、気管支の最先端部に位置する袋状の器官です。袋状になっているのは、肺胞の外側に毛細血管が巻き付くことで、酸素と二酸化炭素の交換効率を上げるためとされます。この肺胞の袋の中に水がたまる疾患が、肺水腫(はいすいしゅ)です。

肺水腫の原因は多様ですが、どんな原因にしても、肺胞内に水がたまるということは、気管支の中に水が入り込むわけですから、呼吸困難など非常に苦しい症状を呈するという意味で、とても怖い呼吸器疾患です。

肺水腫イメージ

呼吸器疾患にはこんな病気がある7.胸膜疾患

胸膜(きょうまく)とは、肺を覆っている2枚の薄膜のことです。

そのうち、肺そのものを覆う膜を「臓側(ぞうそく)胸膜」、肋骨や胸骨によって形成される胸壁の内側を覆う膜を「壁側(へきそく)胸膜」とそれぞれ呼びます。

胸膜疾患は、この2枚の胸膜および、これら2枚によって仕切られるスペース・胸腔(きょうくう)のトラブルになります。

胸膜炎

文字通り、胸膜が炎症を起こすことで生じる疾患を胸膜炎と呼びます。胸膜炎は、血液成分が胸腔内に浸みだすことで起こりやすい呼吸器疾患です。胸膜炎が悪化すると、下の写真(右肺)のように大量の水が胸腔にたまることもあります。

胸膜炎の胸部エックス線画像

膿胸

細菌感染によって上の胸膜炎を発症することで起こりやすい疾患です。特に、その細菌が胸水(きょうすい=胸膜炎などが原因で胸腔内に不正にたまる水、もしくははじめからたまっている正当な水)で増殖することで発症するのが膿胸(のうきょう)です。

胸膜腫瘍

大きく分けると、胸膜部に腫瘍が見つかるケースと、別の部位にできた悪性腫瘍が胸膜部に転移したケースが考えられます。ただ、胸膜腫瘍のほとんどが、後者の「転移性胸膜腫瘍」になります。

細胞にもいろいろな種類があって、胸膜の大部分を構成する細胞を中皮(ちゅうひ)細胞と呼びます。転移性ではなく、ごくまれに見られる原発性の胸膜腫瘍を特に、「悪性胸膜中皮腫」と呼びます。

慣例的に、中皮細胞に悪性腫瘍ができても「がん」とは呼ばず、多くは「悪性中皮腫」と呼びます。ですから悪性胸膜中皮腫は、悪性腫瘍であってもがんには含まれません。悪性胸膜中皮腫は、主にアスベストの吸引などが原因でできる悪性腫瘍です。

以下は、解剖によって摘出した肺における悪性胸膜中皮腫の画像です。

悪性胸膜中皮腫

気胸

肺を包む臓側胸膜に穴があき、胸壁の内側に張り付くように位置している胸壁胸膜との間のスペース(胸腔)に空気が漏れてしまう疾患を、気胸(ききょう)と呼びます。気胸にはいろいろな種類があって、病態が異なることがあります。

原因によって、主に空気自然気胸、外傷性気胸、医原性気胸と呼ばれる3種類の気胸を発症します。気胸の中で最も多い空気自然気胸は、COPDの合併症のような形で見られる呼吸器疾患です。

呼吸器疾患にはこんな病気がある8.呼吸不全

心不全をはじめとして、肝不全、腎不全など、いろいろな「不全」と呼ばれる種類の疾患がありますが、呼吸器疾患にも「呼吸不全」と呼ばれる重篤な疾患があります。今回は呼吸不全についてお話します。

急性呼吸不全・ARDS

呼吸不全には、大きく分けると以下の3とおりの病態があります。

  1. 酸素(空気)を口や鼻腔から肺胞にまで届ける「気道」または呼吸のための骨格・筋肉の異常
  2. 肺胞内の酸素を血中に送り、血中の二酸化炭素を肺胞に戻す機能の低下・障害
  3. 肺および肺胞における血流の異常・障害

呼吸というと、ふつうは上記1をイメージすることになると思います。しかし呼吸の役割となると、やはり2の目的を果たすことが最大の役割です。そのためには、3がおろそかになってはいけません。

以上の理由から、私たちが生命維持活動の中で無意識的に行っている口や鼻からの呼吸ばかりでなく、ガス交換や血流の異常まで含め、「呼吸不全」と呼ばれます。特に、何らかの原因で上記の症状が現れると、「急性呼吸不全」になります。

たとえば、肺炎や高熱などの症状により「息苦しい」と感じるのも、急性呼吸不全の一種です。

慢性呼吸不全

慢性呼吸不全という病名だけに、少々誤解されやすいところがある呼吸器疾患です。というのも、慢性的に呼吸不全が起こっているわけですから、それでは生命維持活動ができないではないか、と考えてしまうからです。

しかし上記の急性呼吸不全のところでもお話したように、呼吸不全は「息が吸えなくなる、吐き出せなくなる」ことを必ずしも意味しません。急性呼吸不全のところで挙げた1~3の症状が慢性的に起こる呼吸器疾患が慢性呼吸不全です。

特にCOPD、肺がん、肺結核後遺症、間質性肺炎など、慢性呼吸器疾患や、長期的なスパンの呼吸器疾患の患者さんに見られやすいのが、慢性呼吸不全の特徴です。

他にもまだ呼吸器疾患はある

ここまでいくつかのカテゴリに分けて呼吸器疾患の簡単な説明をしてきましたが、これまでのどのカテゴリにも属さない呼吸器疾患は他にもあります。そういった疾患についても簡単に触れておくことにします。

気管支拡張症

この病気も誤解されやすいところがある呼吸器疾患です。一般的には、気管支が閉塞することで呼吸が困難になることが多い呼吸器疾患ですが、気管支拡張症の場合、逆に気管支が広がってしまう特徴があります。

なぜ気管支が広がることがいけないのかというと、閉塞していた気管支が広がるのではなく、気管支の組織に破壊が起こるなどして、異常な形に広がってしまうからです。これにより、さまざまな問題が生じます。

中でも、広がった部分が細菌の温床になるという点で、大きな問題になります。気管支拡張症は比較的女性に多く、先天性、後天性のどちらの症状もありえます。以下に気管支拡張症のイメージを示します。

気管支拡張症

塵肺

いわゆる「職業病」として紹介されるケースが非常に多いのが、塵肺(じんぱい)の特徴です。「塵(ちり)」の文字からもわかるように、鉱物などによる無機粉塵を長期的に吸引することで発症します。

ケイ酸粉塵による珪肺(けいはい)、アスベスト粉塵による石綿肺が代表的な塵肺ですが、他にもアルミニウム肺、炭肺、ケイ酸化合物粉塵による滑石肺、酸化鉄粉塵によるアーク溶接工肺などの症例があります。

原発性肺胞低換気症候群

日本ではまだほんのわずかしか症例が報告されていませんが、血中の酸素濃度が低く、二酸化炭素濃度が高くなってしまう原因不明の呼吸器疾患を、原発性肺胞低換気症候群と呼びます。

脳や脊髄などの主要な器官に異常があると同様の症状が現れます(つまり、非原発性の疾患は十分ありうる)が、そういった異常が認められずに上記症状を発症すると、その疾患は原発性肺胞低換気症候群に分類されます。

過換気症候群

過換気症候群は、思春期の患者さんが圧倒的に多い疾患です。緊張やストレスなどから過呼吸が起こり、血中の二酸化炭素濃度が極端に低くなる呼吸器疾患です。同様の疾患に「パニック障害」があります。

睡眠時無呼吸症候群(Sleep Apnea Syndrome:SAS)

肥満体型の、特に中高年に多い疾患です。また、声のお仕事など、のどのつかいすぎでも発症しやすいとされる呼吸器疾患です。仰向けに寝ることで、睡眠時に気道がふさがれ、無呼吸になる怖い疾患です。

気道の閉塞は以下イメージのように起こります。

睡眠時無呼吸症候群

リンパ脈管筋腫症

リンパ脈管筋腫(かんきんしゅ)症は、閉経前の女性に比較的多い呼吸器疾患です。肺、リンパ節、腎臓などでLAM細胞と呼ばれる細胞が増えすぎてしまう病気で、悪化により気胸や酸欠を発症することがあります。

肺ランゲルハンス細胞ヒスチオサイトーシス

ランゲルハンスというと、「すい臓」や「インスリン」のことを思いだすかもしれませんが、実は免疫に関係する細胞の一種に、「ランゲルハンス細胞」と呼ばれる細胞があります。この疾患は、ランゲルハンス細胞と関係があります。

特に過度の喫煙によって、肺やその他至るところでランゲルハンス細胞が増え、正常な細胞組織にダメージを与える疾患です。症例としてはごくまれです。

肺移植

肺は生命維持のための極めて重要な器官です。したがって、肺が重篤な疾患に侵され、十分に機能できないときには、肺移植が必要になります。ですから肺移植は、疾患ではなく、生命維持のための対処方法です。

(以上9つのカテゴリは呼吸器の病気-一般財団法人日本呼吸器学会を参考にしています)

他にも、プールに入ったあとの急性的な呼吸器疾患の「乾性溺水(かんせいできすい)」と呼ばれるかなり特殊で怖い呼吸器疾患もあります。

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異常を自覚したらすぐに検査を!呼吸器系の病気は危険

ここまでいささか冗長になってしまったかもしれませんが、数ある呼吸器疾患の多くが、重篤化しやすく、非常に恐ろしい疾患であることは十分ご理解いただけたかと思います。

そうならないためには、呼吸器系に何らかの異常を自覚したら、できるだけ早く病院で検査してもらうことが重要です。とはいえ、風邪のたびに検査するというのもちょっと不効率ではありますよね。

そこで、一定期間の経過観察を経ても改善が見られない場合や、いつものちょっとした風邪とは明らかに異なる症状のときには、必ず早目の検査をぜひ心がけていただきたいと思います。

呼吸器疾患の有無を検査する方法はいろいろあります。血液検査、肺機能検査、肺音検査、X線撮影などが呼吸器疾患の検査のベースになります。これらの検査で異常があった場合や治療後の改善が見られない際は、CTやMRIなどの精密検査を行うこともあります。

また、入院患者さんの場合、特に呼吸器疾患以外の入院患者さんが呼吸器系に異常を感じたときは注意が必要です。何らかの病変の可能性が考えられます。まれですが、院内感染の可能性もなくはありません。

ですから、入院患者さんがそうした異常を感じたときには、すぐに担当医、あるいは看護師さんに相談することをおすすめします。

また、赤ちゃんの呼吸器の異常は、保護者がケアしてあげる以外にそのリスクを回避するすべがありません。赤ちゃんを呼吸器疾患からしっかりと守ってあげていただきたいと思います。

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