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葬式などシリアスな場面で笑ってしまう…失笑恐怖症の原因と治療法

シリアス笑い

失笑恐怖症、または笑い恐怖症と呼ばれる現象があります。正式に定義された病気や症状ではありませんので少々説明に困る部分もあるのですが、現象としては意外に経験したことのある人も多いのではないかと思います。実は私自身、何度かそういった経験があったからそう感じるのです。

これは「笑ってはいけないシチュエーションで笑いがこみ上げて我慢できなくなる」と言うもので、そうした状況に陥ることに恐怖感を覚えると言うものでもあります。恐怖症と呼ぶからには、笑ってしまう可能性に対する恐怖感を指すのかもしれません。

笑い自体は大いに結構なもので、決して病気でも何でもありませんが、時と場合をわきまえず笑ってしまうと、社会的には困った立場になってしまうかも知れません。さて、どのように対応したら良いのでしょうか。

典型的なケースはお葬式に参列して笑ってしまうという失敗

良く話題に挙げられるのは、「お葬式に参列している時に、特におかしいことがあったわけでもないのに笑いがこみあげてきて、どうしても抑えることができなかった。」と言う物です。

それが一度ならず二度目があったりすると、お葬式に参列することそのものが怖くなってしまうこともあります。これが失笑恐怖症の典型的な症例とされています。

またシーン…とした会議中であったり、演劇の鑑賞中であったりと一人の時には特に異常はないのに、人前では起こってしまうのが失笑恐怖症です。

失笑恐怖症は対人恐怖症、社会不安障害の一種と考えられている

最初にお話しした通り、失笑恐怖症は医学的に充分定義づけが行われたものではないようです。しかしながら、とある有名な漫画家さんでタレントさんでもある方が、この病気であるとカミングアウトされたことをきっかけに有名になりました。

それについての様々な話題を当たって行くと、どうやら対人恐怖症の一つと考えられているように見受けられます。確かに症状のイメージとしては対人恐怖症に含めても良いような感じですね。

そこで、今回は対人恐怖症あるいは社会不安障害と言う病気全般について見て行きながら、その中に含まれるであろう失笑恐怖症の対策を考えましょう。

もちろん受診して治療を受けることも時として必要になることがあります。お薬も有効な対策の一つですので、自分ではどうしようもないと思ったら診療科は「心療内科」になりますので、お医者さんに出かけてみて下さい。

もう一つの笑いたくないシチュエーションは「叱られている時」

これはどなたでもご理解頂けるでしょう。先生や上司から叱責されている際に、おかしくもないのにニヤニヤしてしまったら火に油を注ぐ結果になってしまうのは明らかです。

その場から逃れることが困難になるだけではなく、社会的な評価も急降下することは間違いありません。でも、個人的な感想なのですが、意外に叱られている時にニヤニヤしている若者って、割合多いように思います。

それも、本人は気づいてないような感じなんですよね。例えば、高校生ぐらいのちょっと悪ぶった子の場合は、叱られたことに対して自分のプライドを保つために必死でニヤニヤ笑いをします。これは子供っぽい自己防衛本能の範疇ですから別物です。

そうではなくて、年数の浅い社会人の場合、叱られている時に態度自体は真面目に聞いているのに、顔だけが笑ってしまっているんです。中には気づいていて、必死で笑いを抑えているのが判ることもありますが、多くの場合、本人も気づいていないようです。

ここで重要なのは、叱られている最中に笑ってしまうこと自体ではありません。本人が気づいているかいないかなのです。そして、自分が失笑恐怖症かも知れないと思っている方は、自分が笑っていることに気付いてしまっている人なんですね。

確かに厳粛な雰囲気の場や、遺憾ないしは反省の態度を示すべき時に笑ってしまうのは好ましくありませんが、そのことを必要以上に意識しすぎるのは、それもまた症状を悪化させる可能性のある、好ましくないスタンスだと言えるでしょう。

笑ってしまうと言うことが他人を不快にさせることはあり得ますが、あまりにそれを気にしすぎると、別の意味で対人関係に問題が生じます。この先を読んでもらって、少し気楽に構えてみましょう。

日本の病気と言っても良い対人恐怖症は社会構造に原因がある

対人恐怖症は社会不安障害と言う言葉に置き換えられているのですが、実は海外においてもtaijin kyofushoとして、日本語そのままが病名として通用してしまっているので、日本国内でも対人恐怖症の名前が今でも使われています。

海外の文献などを見ると、欧米を中心にみられる社交不安障害と似ているが、日本の社会風土の中で現れる独特の社交恐怖症を”taijin kyofusho”と言う、といった感じの解説が多いようです。

名前が似ていてややこしいので、この記事では昔のまま、日本の社会不安障害のことは対人恐怖症、欧米のものは社交不安障害と呼ぶことにします。

対人恐怖症は社会と自分とのかかわりに極度の不安を覚える病気

欧米で言う社交不安障害は、どちらかと言うと心身症に近い要素を持っています。社交の場においてあがりやすいとか、話すことが苦手だとか言う性格によって、身体に変調をきたし、余計に社交ができなくなると言うものです。

日本の対人恐怖症は、身体的な変調がある場合とない場合のどちらもが存在しますが、むしろ不安を感じることそのものを障害の中心に据えています。

対人恐怖症は社会と自分とのかかわり全体について恐怖感や不安感を持つ場合もありますが、ほとんどの場合、何か特定のシチュエーションについて不安を持つことが多く、それがエスカレートすることで社会生活に支障をきたすのです。

日本は恥の文化だから対人恐怖症が起こる

日本は「恥」の文化だと言うことがよく言われます。この言葉も解釈によって多彩な意味合いを持ってきますが、対人恐怖症においては「自分があるべき姿でないことは恥である」と感じていると解釈すればいいでしょう。

対人恐怖症の典型的な症状は、他人とのコミュニケーションが上手く行かないのではないか、孤立するのではないかと感じて緊張してしまう「対人緊張」と言う物です。

でも、これは誰にでもある感覚ですね。実際には案ずるより産むが易しで、全く見ず知らずの人の中に入っても、それなりに人間関係は作れてしまっていると言う経験は皆さんお持ちでしょう。

また、良く耳にすることがあるのが「赤面恐怖」です。人前に出た時に顔が赤くなっているのではないかと言うことが気になって、人前に出るのが怖くなってしまうと言う物です。

さらに「発汗恐怖」と言う物も割合多いですね。これは実際に、緊張のあまり人前で大汗をかいてしまうため、それが怖くて人前に出ることができなくなると言う物です。

対人恐怖症のメジャーな症状であるこの辺りは、失笑恐怖症と相通ずるところがありますね。顔が赤くなってしまう、大汗をかいてしまうと言う現象が、笑ってはいけないところで笑ってしまうと言う現象に置き換わっただけです。

誰でも人前に出れば緊張はします。特に初対面の人の場合その傾向は強くなりますよね。対人恐怖症の人は、たまたまその緊張感が強くなりすぎただけなのです。

対人恐怖症の現れ方には実に多彩な形がある

さて、ここで対人恐怖症のさまざまな症状について少し見ておきましょう。失笑恐怖症の人は「おかしくないはずの場面で笑ってしまうのは、自分の感情に問題があるんじゃないか」と考えがちですが、決してそんなことはないのです。

対人恐怖症には亜型の分類に2つの方式があります。先にご紹介した赤面恐怖や発汗恐怖は二次的に身体的な変化が起こることを恐怖の対象とする分類方法です。もう一つはシチュエーションに応じた分類です。まずは身体の変化から見て行きましょう。

失笑恐怖症は表情恐怖の一種かも知れない

表情恐怖と言うのは、主に「笑顔が上手く作れなくて、自分の顔がひきつっているのではないか」と言うことに恐怖感を覚えるものです。

失笑恐怖症とは少し異なるのが「ひきつっているかどうかは確認できていない」と言うことです。実際、他人に愛想笑いをするときに、リアルタイムで鏡を確認する人はいませんよね。

それに対して、笑ってしまっていると言う事実は鏡を見なくても確認できます。もちろん、無意識に微笑んでいるだけであれば、本人は気づかないかもしれませんが、失笑恐怖症の対象の笑いは、ハンカチで押えておかないと笑い声が出てしまうレベルのこともあります。

失笑恐怖症は振戦恐怖にも相通ずるところがある

自分で身体の動きが確認できるのにそれが抑えられないと言う物で見ると、身体が震えてしまうと言うことに対する恐怖感を抱く「振戦恐怖」があります。振戦(震戦・震顫・振顫とも書きます)とは「ふるえ」のことです。

ふるえは寒さや緊張によって無意識に起こる身体の動きですね。お客さんにお茶を出そうとしたら、緊張で手が震えてしまった。それを見たことによって、その震えを抑えようと意識を集中すると、さらに緊張して震えがひどくなってしまったと言う経験は、新人社会人の頃に多くの人が経験しているでしょう。

一度それを経験してしまうと、また同じことが起こるんじゃないかと言う恐怖感から、本当に震えが出てしまうと言う悪循環にはまってしまう事もあります。

震えは自分ではどうすることもできない「不随意運動」の一つです。笑いは不随意運動ではありませんが、自分ではコントロールし難いものであることは間違いありません。そういう意味では失笑恐怖症は振戦恐怖とも共通の要素がありますね。

最も厄介なのは「思い出し笑い」です。周辺に笑う対象になるものがないだけに、うっかり笑ってしまうと周囲から変な目で見られること請け合いです。それがお葬式に参列中だったり、上司に叱られている最中だったりすると大変ですね。

一方、そうした「笑ってはいけない状況」にいる時は、「笑ってはいけない」と言う意識が働いて、笑うと言う行動に意識が向いてしまうことが起こりがちです。

例えばお葬式であっても、特に親しかったわけでもない人を送る葬儀の場合、意識は必ずしも悲しみの方には向いていないでしょう。そんな時に「笑っちゃダメ」と考えてしまうと、笑いに繋がる何かを思い出してしまうかもしれません。

自分でも強く反省しているような事柄について上司から叱られていたら、次の行動について真面目に考えているでしょう。一方、「なぜ叱られなくちゃいけないのか」と思って、上司の怒りのトーンが下がるのを待っているような場合では「笑っちゃダメ」の意識が浮かんできます。

振戦恐怖に見られるように、手の震えを見てしまったことで震えに意識が集中して事態が悪化することを防ぐには、意識を手からテーブルやお客さんの顔に移すことでそれが可能になることも少なくありません。

ですので、笑っちゃいけない場合には、笑うと言うキーワードから離れた何かに意識を向けてみましょう。お葬式なら焼香の際に摘むお香の量やその手触りとか、叱られている時なら、その事実についてとかに意識を集中すれば、笑いにくくはなると思います。

自分の身体が思うように動かないことに対する恐怖もある

失笑恐怖症も、笑いを抑えられないと言う意味では、身体が思うように動かないと言っても良いかもしれませんね。その他、吃音恐怖と言うのも割合よく見られます。

何かを話そうとした時に緊張してしまって、言葉がどもって上手く話せないと言う経験をしてしまうと、次に人前で話すのが怖くなると言うものです。

また、硬直恐怖と言って、緊張のあまり身体が動かなくなるのではないかと言う対人恐怖症の症状もあります。

こうした恐怖感の多くは、一度そうした経験をしたことが原因で起こっている場合もありますが、自分で経験したことがなくても、他人のそうしたシーンを目撃したことで発生する場合もあります。

さらには、思い込みから、実際には経験も目撃もしていないのに発生することもあります。

例えば、自分が人前で意識を失って倒れてしまうのではないかと言う「卒倒恐怖」や、緊張のあまり感じた吐き気から、本当に人前で吐いてしまうのではないかと言う「嘔吐恐怖」と言う物もあります。

さらには、他人と行動を共にしているのに、やたらとトイレに行きたくなるのではないかと言う状況を恐れる「頻尿恐怖」・「頻便恐怖」と言う物も少ないながら見られます。

実は男性用トイレで後ろに並ばれると、早くしなくちゃ悪いかなと感じることがあります。これがひどくなると「待ってる人がいるのにおしっこが出なくなるんじゃないか」と言う「尿閉恐怖」に繋がるんです。

シチュエーションごとに分類すると自分の苦手な場面が判る

先にお話ししたように、対人恐怖症の基本は「対人緊張」です。誰かと一緒にいる場面で、必要以上に緊張してしまうことで、それが恐怖に置き換わって行くと言う物です。

失笑恐怖症では「笑っちゃいけない場面」と言うことになるわけですが、似たシチュエーションとの比較でこれを見てみましょう。

少数の人と一緒にいると発生する恐怖

失笑恐怖症において、上司に叱られているシチュエーションと言うのは、基本的には少数の相手との会話と言うことになるでしょう。たくさんの同僚や先輩・後輩のいる前であっても、対象は上司だけですよね。

むしろ上司に見えないように、こっそり同僚たちに笑って見せられるぐらい肝が据わっていれば、対人恐怖症とは無縁でしょう。

対人恐怖症の亜型で見た場合、目上の人と一緒にいるだけで緊張して行動がおかしくなってしまうことに恐怖を感じる「長上恐怖」と言う物があります。これは自分と相手の社会的立場の差が大きいほど起こりやすいでしょう。

また、異性と一緒にいることについて、上手く行動できないかもしれないと言うことに恐怖を感じる場合もあります。いわゆる「異性恐怖」ですね。

単純に「男性が怖い」「女性が怖い」と言う物ももちろんありますが、むしろ「異性に対して適切に対応できない自分」に恐怖を感じることの方が多いようです。

似たような状況に「電話恐怖」と言う物もあります。これは一見失笑恐怖とは関係なさそうですが、実はそうでもないのです。

電話と言うのは、直接の会話に比べてルールが多く存在している物ですね。仕事の電話を受ける時に「もしもし」を言わず「○○産業株式会社です」のように、自社の名前から始めなさい、と言った指導を受けた人も多いでしょう。

あるいは「お電話ありがとうございます」で電話を受けると言う会社も多いようですね。

にもかかわらず、つい「もしもし」と言ってしまい、その失敗に気付いたことでパニックになって後の受け答えがバタバタになる。そんな経験をした新米会社員は、多かれ少なかれ、ちょっと電話が怖くなります。

これと同じで、叱られていると言ったシチュエーションで、自分では笑ったつもりもないのに、上司から「何をニヤニヤしている!」と追い打ちを掛けられると、笑ってませんと反論もできず、どう応対してよいのか判らなくなります。

そんなことがあったら、つぎにその上司から呼ばれると、また笑ってしまうのではないかと言う恐怖に陥ることは不思議でもなんでもないのです。

その他、会話の相手に正面から見つめられると怖い「正視恐怖」や、食べ方をチェックされているのではないか、自分の食べ方がマナー違反ではないかと言うことに怖さを感じる「会食恐怖」と言ったものも存在します。

多数の人と一緒にいると発生する恐怖

不特定多数と一緒にいると恐怖感を覚える「大衆恐怖」の中には失笑恐怖症も含まれるかもしれませんね。お葬式の場などではこれに近いものがあります。

また、「演説恐怖」や「朗読恐怖」と言う、多数の前で発言することに関する恐怖症もありますし、多数の人から見られることが怖い「視線恐怖」もあります。

さらに、自分が原因で場がしらけるのではないかと言う「思惑恐怖」と言う物も存在しますね。いずれも失笑恐怖症と重なる部分があるのではないかと思います。

これは身体の状態と関係するものでもありますが、自分が臭いにおいを出しているのではないかと言う「体臭恐怖」「口臭恐怖」などと言うのも、実際に出していることが問題なのではなくて、それに気づいていない自分が怖いと言うものです。

自分のネタがすべって笑いが取れなかったらどうしようと言うのも思惑恐怖と言えるのでしょうか。もし、お笑い芸人さんがそれが原因で舞台に立てなくなったら、充分に当てはまるでしょう。

失笑恐怖症を治せる可能性はある!薬や自分でできるツボなどの克服法

これはお医者さんに診てもらって、失笑恐怖症が対人恐怖症の一つであると診断されることが前提になります。

対人恐怖症については、行動療法と薬物療法の同時進行が効果的であると言う報告が数多く上がっていますので、思い切って心療内科を訪ねてみることがお勧めです。

対人恐怖症に効くお薬は抗うつ薬

対人恐怖症に有効なお薬は選択的セロトニン再取り込み阻害薬(SSRI)と言う抗うつ薬が第一選択になります。あるいはベンゾジアゼピン系の抗不安薬が用いられることもあるようですね。

非常に範囲が広く種類も多いので具体的なお薬の名前は省略しますが、いずれも、お医者さんの服薬指導をしっかり守って、行動療法に関する指導も受けた上で服用しないといけません。

以前は三環系抗うつ薬と言うメジャーなお薬も使われていましたが、副作用の関係で、現在では第一選択にはなっていないようです。

自分で対応できることはやってみよう

こうした心の問題は、言うほど簡単に自分で対応できるものではありませんが、それでも一応方法をご紹介しておきますので、自分で試してみてください。これは失笑恐怖症だけではなく、対人恐怖症全体に応用の効く方法です。

まずは人とあいさつをする習慣をもう一度見直してみます。明るく、積極的なあいさつを忘れていませんか。これが意外に効くのです。さらに、時おり腹式呼吸をして肩の力を抜くことも大切です。

家に帰ったら、ローズのエッセンシャルオイルでリラックスしましょう。ローズには抗不安作用があるので、出かける前にも効果的です。リラックスだけならラベンダーもお手軽で良いですね。

そして、ツボ刺激もお勧めです。恐怖症が出そうになったら、手の親指と人差し指のまたを深くつまんでみて、甲側で押えると痛いポイントがあります。それを刺激してみましょう。

これは気持ちを整える合谷(ごうこく)と言うツボです。その後、緊張を和らげる内関と言うツボを刺激すると効果的です。

失笑恐怖症を和らげるツボ合谷の位置

あとは、毎日自分の表情を鏡で見て、自分にとって「いい顔」をうつす訓練をすると、さらによい効果が生まれると思いますよ。

失笑と言う、対応に苦慮するようなトラブルに関わる心の問題だけに難しい面もありますが、専門家の応援を得て治療すれば必ず良くなりますから、受診そのものを怖がらないで下さいね。
キャラクター紹介
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