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風邪とどう違う?マイコプラズマ肺炎の症状は長引く咳が特徴!

咳をする子供を看病する医師

「マイコプラズマ肺炎」は若年層がかかりやすい肺炎で、咳がいつまでもしつこく長引いてしまう病気です。

以前は4年に一度流行するという特徴があったため「オリンピック熱」とも呼ばれていました。しかし最近では周期に関係なく流行するようになっていて、2000年以降、マイコプラズマ肺炎は増加傾向にあります。

特に2011、2012年シーズンには大流行しました。そして2016年10月までの患者報告数によると、2016年も2011、2012年シーズンと同じくらい流行するのではと予想されているのです。

その症状と特徴、そして対処法をしっかり知っておきましょう。

マイコプラズマ肺炎とはどんな病気?その症状の特徴とは

「マイコプラズマ肺炎」は「マイコプラズマ・ニューモニエ」という病原微生物に感染したことによって発症してしまう肺炎です。

肺炎とは、細菌などの病原微生物が肺に感染したことで肺に炎症の起きてしまう病気です。高齢になるほどかかりやすく、高齢者にとっては命に関わるほど非常に怖い病気です。

しかしマイコプラズマ肺炎は他の肺炎と少し違います。高齢者よりも、学童期から青年期にかけての若者のほうがかかりやすいのです。健康な若年層のかかってしまう肺炎の中でも、マイコプラズマ肺炎は主原因になっています。

マイコプラズマ肺炎の特徴とは

マイコプラズマ肺炎の初期の症状は、風邪とよく似ています。風邪だと思っていたのに咳がいつまでも長引いてしまい、やっとマイコプラズマ肺炎に気付くこともあります。

マイコプラズマ肺炎の症状には次のような特徴があります。

マイコプラズマ肺炎の症状にくるしむ子供のイラスト

【マイコプラズマ肺炎の症状の特徴】

  • はじめは発熱、頭痛、倦怠感などが現れる
  • 発熱は39℃以上の高熱となることも多い
  • 発熱、頭痛、倦怠感などの症状の3~5日後から、咳が出るようになる
  • 咳は痰の絡まない乾いたもので、それが3~4週間くらいしつこく続く
  • 咳は長引くにつれて、次第に痰の絡んだ湿った咳になることもある
  • 咳は特に夜間に多い
  • 聴診器できいても、肺炎に特徴的な音がきこえない
  • 他に胸痛、咽頭痛などが現れることもある
  • 感染してから発症するまでの潜伏期間は2~3週間あり
  • 重症感はあまり強くない

マイコプラズマに感染してからマイコプラズマ肺炎を発症するまでの潜伏期間は、2~3週間あります。発症するとまず発熱、頭痛、全身の倦怠感といった症状が現れます。熱は39℃以上になってしまうこともあります。

そして3~5日すると、痰の絡まない乾いた咳も出るようになります。この咳の症状が、マイコプラズマ肺炎の特徴的な症状です。乾いた咳は特に夜間や早朝にひどく、いつまでもしつこく続きます。熱が下がった後も3~4週間、咳だけが残るのです。

咳は長引くにつれて、痰の絡んだ湿った咳になることもあります。他にも胸痛や咽頭痛、耳痛、鼻の症状などが現れることもあります。

症状は比較的軽く治ることが多いのですが、まれに重症となってしまうこともあるため注意は必要です。合併症として中耳炎、脳炎、肝炎、すい炎などが現れることもあります。

マイコプラズマ肺炎は風邪との違いが非常にわかりにくい

マイコプラズマ肺炎の症状の特徴について説明しましたが、ただ特に初期の症状は風邪ともよく似ています。そのためマイコプラズマ肺炎だとはわからずに、風邪と間違えてしまうこともあるのです。

まず聴診器で胸の音を聞いても、一般的な肺炎の音にはなりません。通常は肺炎になると、肺炎に特有の音が聞こえるようになります。しかしマイコプラズマ肺炎では肺炎特有の音は聞こえず、そのため「ただの風邪」と診断されてしまうこともあります。

一般的な肺炎の場合には、空気の通り道である気管支や肺胞がダメージを受けています。しかしマイコプラズマ肺炎では、気管支や肺胞の外の「間質」という部分がダメージを受け炎症を起こしています。その違いにより、胸の音が違ってくるのです。

また一般的な肺炎になると、体内で細菌が増殖しているために血液検査で炎症反応の目安となる白血球数やCRP値が上昇します。しかしマイコプラズマ肺炎ではCRP値は少し上昇するものの、白血球数はほぼ正常のことが多くなります。

レントゲン検査では異常が確認できます。それでもレントゲンだけではマイコプラズマが原因の肺炎ということまでは診断がつきません。そのため、他の検査と合わせて総合的に判断していくようになります。

このようにマイコプラズマ肺炎であると確実に診断するのは難しいのですが、症状の経過や検査の結果などから医師はマイコプラズマ肺炎の可能性を考えます。喉の奥を綿棒などでこすって、マイコプラズマがいるかどうかの検査も行われます。

高齢者よりも健康な若年層がかかりやすい

先ほども言いましたが、このマイコプラズマ肺炎は通常の肺炎とは違い若年層の方がかかりやすくなります。

一般的な肺炎では高齢になるほどかかりやすくなり、また高齢になるほど症状が悪化しやすくなってしまいます。肺炎による死亡者のほとんどは65歳以上の高齢者です。

しかしマイコプラズマによる肺炎の場合には、学童期から青年期にかけての健康な若年層(5~25歳)がかかりやすいのです。特に6~12歳の小児がかかりやすいとされます。大人もかかることはあります。

高齢者もかかりますが、それほど多くはありません。ただし最近は、高齢者の患者も以前よりやや増えているそうです。

乳幼児もマイコプラズマに感染してしまいますが、あまりひどくならずに治ってしまうことが多いようです。

5歳を超えたころから、マイコプラズマに感染すると肺炎にまで進みやすくなります。風邪かと思っていたが咳がいつまでも長引いているというようなときには、なるべく早く病院へいきましょう。

感染力はそれほど強くないが集団感染しやすい

マイコプラズマの病原微生物としての感染力は、それほど強くありません。「くしゃみや咳による飛沫感染」や「手指を介した接触感染」などにより感染しますが、感染するためには濃厚に接触する必要があるとされます。

それでも学校や職場などでは集団感染してしまうことがよくあるため、注意するようにしましょう。流行する時期は秋から冬にかけてとされていましたが、最近は季節に関わらず年間を通して感染報告があるようです。

もしもしつこい咳が続いていて、周りではマイコプラズマ肺炎が流行っているといったときには、すぐにマイコプラズマ肺炎を疑って病院へ行くほうがよいでしょう。病院では必ず「周りにマイコプラズマ肺炎の人がいた」ということも告げて下さい。

気をつけなくてはいけないのは、症状が出る前から人に感染させてしまうことがあるということです。

マイコプラズマ肺炎の潜伏期間は2~3週間と他の感染症よりも少し長くなっています。「潜伏期間」とは感染してから症状が出るまでの期間で、この期間にはまだ症状はなにもありません。

しかしこの期間から既に菌は排出されて、人に移してしまう可能性があるのです。そのため自分や周りが「マイコプラズマ肺炎になった」と気付く前から、他人に感染させてしまうことになります。

なおマイコプラズマ肺炎は「感染症法」に含まれる病気です。マイコプラズマ肺炎と診断されると、医療機関は患者数などを保健所に届けなくてはいけないことになっています。

そして「学校保健安全法」では、マイコプラズマ肺炎の流行の状況によって出席停止の措置をとるように定められています。熱が下がって2日くらいで、医師から登校の許可がおりるようです。

マイコプラズマ肺炎になると、咳が一ヶ月近くも続いてしまうのです。高齢者よりも若者のほうがかかりやすいので、親御さんは特にお子さんを観察することが大切です。

薬の効かないマイコプラズマが増えてきている!でも治療法はあるので心配なし

マイコプラズマ肺炎と診断をされると、主にマクロライド系の抗菌薬の「クラリス」「クラリシッド」「ジスロマック」などによる治療が行われるようになります。(ジェネリックもあります)

ただ最近はマクロライド系抗菌薬が効かないマイコプラズマが増えてきていて、大きな問題になっています。

以前はマイコプラズマに感染しているとわかればマクロライド系抗菌薬が使われ、症状もすぐに改善していました。しかし2000年に初めて、マクロライド耐性(マクロライド系抗菌薬が効かない)のマイコプラズマがいることがわかったのです。

そしてその後も、小児を中心にマクロライド耐性のマイコプラズマはどんどん増えてきているようです。この最大の理由は、抗菌薬の使い過ぎだと考えられます。

ただマクロライド耐性のマイコプラズマであっても、マクロライド系抗菌薬での治療は可能であるとされています。

耐性菌は増殖力があまりないなどということから、マクロライド系抗菌薬で治療をしても(多少時間はかかるものの)しっかり治しきることはできるようです。

もしもマクロライド系抗菌薬を2、3日飲んだけれど効果がない、熱が全然下がらず症状が良くならないといったときには、テトラサイクリン系の「ミノマイシン」やニューキノロン系の「クラビット」「アベロックス」なども使われます。

抗菌薬を飲むと熱はだんだん下がって来ると思いますが、症状が改善しないときには早めに再受診するようにしましょう。咳は、熱が下がった後もしばらく続いてしまいます。

なお熱が下がったからといって、抗菌薬と途中で止めてしまわないようにしてください。必ず医師に処方された日数は飲みきるようにしましょう。中途半端な飲み方をしていることが、耐性菌増加の一番の原因です。

症状によっては薬を飲まなくても自然治癒していくこともあります。ただしまれに重症化してしまうこともあるため、自己判断ではなく医師の診察を受けるようにはしましょう。

「薬が効かない」と聞くと怖いですが、治療方法はいろいろあるので心配はいらないですよ。

マイコプラズマ肺炎を予防するには?

マイコプラズマ肺炎は、咳などによる飛沫感染や手指を介した接触感染によって移ります。予防には普通の風邪と同じように、マスクをしたり手洗い・うがいをきちんと行うことが大切になります。

手洗いうがいマスクを着用する子供のイラスト

咳が出るときには人に移さないためにも、マスクをするようにしましょう。人から移されないよう予防のために、マスクをすることも大切です。そして外から帰ったときや食事の前には、必ず手洗いやうがいをするようにしましょう。

風邪やインフルエンザであっても、マイコプラズマ肺炎であっても、予防のために一番大切なことは手洗い・うがいです。これは子供のときから習慣づけておきましょう。

そしてもちろん、バランスのとれた食事をしたり十分な睡眠をとることで免疫力を高めておくことも大切です。食事を適当に済ましたり、睡眠不足の生活にならないように気をつけましょう。

やっぱり手洗い・うがいは基本でありもっとも大切ですね。季節を問わず、ちゃんとやるようにしましょう。

マイコプラズマは細菌、けれど普通の細菌とは少し違う

ところでマイコプラズマとはどのような病原微生物なのでしょうか。

マイコプラズマは細菌の仲間に分類されますが普通の細菌に比べてとても小さく、構造も少し異なっています。ウイルスよりは大きくなります。

(細菌とウイルスに違いは、自分で増殖できるかできないかです。ウイルスは細菌に比べて小さく、自分の力だけで増殖することはできないため人などに寄生します。また抗菌薬は効きません。細菌は自分で増殖でき、抗菌薬が効きます。)

普通の細菌とマイコプラズマの構造の違いは、細胞壁があるかないかです。普通の細菌には細胞壁があるのですが、マイコプラズマには細胞壁がないのです。この違いが、使われる抗菌薬の違いにもなります。

細胞壁のある普通の細菌には、「βーラクタム系抗菌薬」が有効とされます。これは「βーラクタム構造」を持つ抗菌薬で、ペニシリン系、セフェム系、カルバペネム系の抗菌薬などになります。

βーラクタム系抗菌薬は細菌の細胞壁が合成されるのを邪魔することによって、効果を発揮しています(細胞壁合成阻害作用)。細胞壁がちゃんと合成できないと、そのうち細菌は増殖することが出来なくなり死んでしまいます。

しかし細胞壁のないマイコプラズマには、普通の細菌に使われるこのタイプの抗菌薬は効きません。そのためマクロライド系、テトラサイクリン系、ニューキノロン系の抗菌薬が使われるのです。

ちなみにマクロライド系、テトラサイクリン系抗菌薬は、細菌の持つタンパク質の合成を阻害することで細菌の増殖を抑えます。ニューキノロン系抗菌薬は、細菌のDNAが複製されるために必要な酵素を阻害することで効果を発揮します。

βーラクタム系抗菌薬が効くような一般細菌感染による肺炎を「細菌性肺炎」と呼びます。βーラクタム系抗菌薬が効かない一般細菌以外の病原微生物に感染したことによる肺炎を「非定型肺炎」と呼びます。

症状にも違いがあります。細菌性肺炎は痰の絡んだ咳になりやすいのに対して、非定型肺炎では痰の絡まない乾いた咳になります。非定型肺炎の方が発熱は軽いのですが、呼吸器以外の全身症状も伴うことがあります。

マイコプラズマ肺炎は非定型肺炎のため、治療にはまずマクロライド系抗菌薬が使われるのです。

同じ肺炎でも、その原因によって効果のある薬は違うのです。マイコプラズマは細菌の中でもちょっと変わった存在なので、それに合った対処法が必要なのです。
キャラクター紹介
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